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福井地裁の正当判断を原発問題バイブルとせよ

2015年04月16日 15時12分10秒 | 政治経済、社会・哲学、ビジネス、

                   

 「植草一秀の『知られざる真実』」

                           2015/04/15

福井地裁の正当判断を原発問題バイブルとせよ

          第1124号

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原発

憲法

TPP

消費税

基地

格差

これが日本の未来を決める六大問題だ。

安倍政権が衆参両院を支配して、強引な政策運営を示しているが、自民党を積
極支持している主権者は17.4%、公明党を合わせても24.7%だ(20
14年12月総選挙比例代表絶対得票率)。

主権者のなかでの最大勢力は選挙権を放棄した人々で47.3%に達する。

選挙に行って自公以外の政党に投票した主権者が28.0%だった。

つまり、安倍政権与党を積極支持していない主権者が全体の75.3%に達す
るのだ。

国会は国権の最高機関だから、衆参両院の多数議席を占有している安倍政権与
党が政策運営の主導権を握ることは避けられないのだが、その結果として、主
権者多数の意思に反する政治運営が現実化することは、日本の主権者にとって
の不幸である。

47.3%もの主権者が投票権を放棄した最大の理由は、野党第一党が崩壊し
ているからだ。

いまの民主党こそ、日本政治を破壊したA級戦犯であり、早期に解党の手続き
を取るべきである。

統一地方選後半戦で、主権者は、はっきりと民主党に退場を命するべきだ。

民主党をせん滅することにより、日本政治は「甦(よみがえ)り」に波動に移
行することができるのだ。



憲法第13条は、

「生命、自由、及び幸福追求に対する国民の権利について、国が立法その他の
国政の上で、最大の尊重を必要とする」

ことを定めている。

この

「生命、自由、及び幸福追求に対する国民の権利」

にもっとも重大な影響を与えるのが、

原発と戦争

である。

この原発について、福井地方裁判所の樋口英明裁判長は、昨年5月21日に、
画期的な判決を言い渡した。

福井県に所在する関西電力大飯原発3、4号機運転差止請求事件に対する判決
で、

「大飯発電所3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない」

とする判決を言い渡したのである。



個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、各人の人格に本質的なもの
であって、その総体が人格権であるとしたうえで、

人格権は、憲法上の権利である(13条、25条)

とした。

判決は、大飯原発の耐震性能が1260ガル以下の地震動に対応するものでし
かないことについて、2008年に発生した岩手宮城内陸地震で4022ガル
の地震動を観測したことを指摘して、

基準地震動を超える地震が、大飯原発に到来しないというのは、根拠のない楽
観的見通しにしかすぎないと断じた。

そのうえで、

本件原発に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが
残る

として、大飯原発3、4号機の運転差止命令を示したのである。



この樋口英明裁判長が、本日4月14日、2016年早期にも再稼働が予定さ
れている、同じ関西電力の高浜原発3、4号機について、再稼働の即時差し止
めを命ずる仮処分決定を示したのである。

同じ裁判長が二度、画期的な判決を示したのである。

今回の判決でさらに画期的であるのは、原子力規制委員会が設定した新規制基
準そのものについて、

「緩やかにすぎ、これに適合しても本件原発の安全性は確保されていない」

「新規制基準は合理性を欠く」

と断じたことだ。

私は本ブログ、メルマガで、

「原子力規制委員会の規制基準が原発の安全性を確保するものになっていない
ことから、原発の再稼働を認めるべきではない」

と主張してきたが、日本の裁判所が正式にこの判断を示したのである。

適正、かつ、正当な判断であり、日本の主権者は、原発再稼働を体を張ってで
も阻止しなければならない。



こんなことは誰が考えても分かることなのだ。

2008年に4022ガルの地震動が観測されている。

この地震は内陸地殻内地震であり、日本中のどこでも、いつ発生してもおかし
くない地震動である。

原子力規制委員会が定めた新規制基準のなかに、原発の耐震性能に関する基準
が設定されているが、

「全国で20カ所にも満たない原発のうち四つの原発に5回にわたり想定した
地震動を超える地震が2005年以後10年足らずの間に到来している」(2
015年4月14日仮処分決定要旨)

ことが指摘された。

そして、

「基準地震動を超える地震が到来すれば、施設が破損するおそれがあり、その
場合、事態の把握の困難性や時間的な制約の下、収束を図るには多くの困難が
伴い、炉心損傷に至る危険が認められる」

として、

「新規制基準は緩やかにすぎ」

「新規制基準は合理性を欠く」

と断じたのである。



原発推進勢力は、

「こんな正論を突き付けられたのではたまらない」

と激昂しているが、福井地方裁判所の樋口英明裁判長の冷静かつ適正、正当な
判断こそ、日本の主権者が起訴に据えるべきものである。

規制基準を超える地震動はいつでも原発を襲い得る。

そうなれば、原発が重大な事故を引き起こすことを避けられなくなる。

福島の二の舞、あるいは、福島よりも深刻な事態が発生するだろう。

こんなことを許してよいわけがない。

安倍政権は大資本の利益だけを追求し、

生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利

を顧みない政権であるから、福島のような事故を引き起こしても、大資本の利
益拡大のために、危険な原発を再稼働させようとしているのである。

だから、原発の安全性に関して、何よりも重要なことすら、ほとんど主権者に
知らせることすらしていない。

原発が事故を引き起こす、最有力の原因は地震の激しい揺れである。

地震の激しい揺れで原子炉が損傷する。

あるいは、原子炉を冷却するための電源が失われる。

原子炉は電源を失うと、あっという間にメルトダウンしてしまう。

福島の悲劇は電源喪失がもたらしたものだ。

4022ガルの地震動が2008年に観測されているのに、大半の原発の耐震
規制基準は600ガルないし700ガルに設定されているのだ。

こんなふざけた話があるわけがない。



しかし、ほとんどの国民は4000ガルの地震動が発生した事実と、規制基準
が600ガルないし700ガル程度にしか設定されていない事実を、まったく
知らないだろう。

政府は

「世界でもっとも厳しい規制基準を定めて」

「その基準をクリアした原発を再稼働させる」

と述べるが、

これが原発の絶対安全を保証するものではない点に十分な注意が必要である。

私はこれを

『日本の真実』(飛鳥新社)


http://goo.gl/8hNVAo

のなかで、

「トリック&イリュージョン」

と表現した。

「偽計による幻想」

である。

「世界でもっとも厳しい規制基準」

と表現することによって、

あたかも

「絶対安全であるかのような幻想」

を創作しているのである。

日本は世界最大の地震国だから、日本の基準が世界でもっとも厳しくなるのは
当たり前のことなのだ。

大事なことは、その基準が、日本で発生し得る地震の揺れに耐えるものになっ
ているのかどうかである。

現実は、

「世界でもっとも厳しい規制基準」

と言うのは事実だが、

「日本で発生し得る地震の揺れに耐えるもの」

には、まったくなっていないのだ。



裁判所は行政府、立法府から独立した存在であると錯覚されているが、大きな
間違いだ。

裁判所は権力機関の一部に過ぎない。

政治権力が裁判所を支配する実権を握っている。

それでも、例外的には、樋口英明裁判長のように、政治権力に対しても、屈服
せずに「正論」を堂々と示す裁判官が存在はする。

しかし、これが例外であって、圧倒的多数は、基本的に「権力の狗(いぬ)」
である。

上級裁判所に行けば行くほど、この傾向が強くなる。

したがって、大飯原発、高浜原発に関して示された裁判所判断が、今後も維持
される可能性は、残念ながら高くない。

しかし、それでも裁判所が適正な判断を示したことは画期的なことである。

判決や仮処分決定の内容を、広く主権者に、正確に伝えてゆく必要がある。



リスク管理の基本は、

“be on the safe side”

である。

「最悪のケースでも安全を確保できる」

位置をキープすることなのだ。

原発で言えば、4022ガルの地震動が2008年に観測されているのだか
ら、地震動に関する規制基準は、一律に、少なくとも4000ガルには設定さ
れる必要がある。

それが、1260ガル、700ガル、600ガルでは、お話にならないのだ。



当面の最大の焦点は、4月22日に予定されている、九州電力川内原発1,2
号機に対する仮処分についての鹿児島地方裁判所の判断である。

鹿児島地方裁判所の前田郁勝裁判官が、樋口英明裁判長に匹敵する、例外的な
優良裁判官であるのかどうかがポイントになる。

日本の裁判所では、優良裁判官が圧倒的少数、不良裁判官が大半を占める。

したがって、確率論的に考えれば、希望的観測を持つことを控えるべきであ
る。

しかしながら、再び重大な原発事故を引き起こされることは、日本の破滅を意
味する。

場合によっては、世界の破滅にもつながるだろう。

そのような事態を私たち日本の主権者は容認するべきでないのである。

主権者は、この重大問題を真剣に考えて、安倍政権が推進する原発全面再稼働
を体を張って阻止しなければならない。

 
 

 

 

 



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