セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「かぐや姫の物語」

2015-01-25 01:58:57 | 邦画
 「かぐや姫の物語」(2013年・日本)
   監督 高畑勲
   脚本 高畑勲  坂口理子
   原作 「竹取物語」
   作画監督 小西賢一
   音楽 久石譲
   声優 朝倉あき
       高良健吾
       地井武男
       宮本信子

 古の物語「竹取物語」は結局の所「生と死」の暗喩と僕は捉えています。
 (ギリシャ神話の「オルぺウスとユイリディケ(「オルフェとユリシーズ」)」と
似たテーマ)
 彼岸と此岸。
 人の世は全て「一朝の夢」に過ぎず、「死」は、どんなに深い愛情でも、ど
んなに強い武器や莫大な財宝を持ってしても退ける事は出来ない人間の
及ばぬ摂理。
 その哀しみを描いた物語。

 本作「かぐや姫の物語」も、その摂理を巧みに描いてる。
 そこを踏まえて「かぐや姫」の発する台詞~(羽衣を纏えば)「心のざわめ
きも鎮まりましょう」の言葉に対しての台詞~が、この作品のポイントなの
だと思います。
 この世は決して穢れではなく、喜怒哀楽に満ち、それ故の醜さ、美しさ、そ
の全てが有るからこそ、俗世は素晴らしく、生きて行く意味がある。
 人は、その儚い「生」を持ってるからこそ大事に生きなければならない。
 かぐや姫の台詞から、そんなメッセージが聞こえてきました。

 しかし、僕は、そこまで素直になれない捻くれモノなんですよね。(汗)
 人間の歴史始まって以来、人は一度も「無かった時代」に戻れた事がない、
という事は、これからも「戻れる」事はないだろうと思っています。
 (例え「携帯電話」を強制的に所持不可にしても、そのテクノロジーは消せ
ない)
 今は、平安時代や江戸時代じゃない。
 人類滅亡はおろか、地球消失さえ「夢物語」じゃなくなってる時代。
 人間は、その知力ゆえ他の動物より長命になったけど、その知力で、きっ
と滅び去る。
 一度も人間の「美しさ」が人類の「欲望」を抑えられた事がないのだから、
僕は極めて悲観的です。

 それでも、この作品、良い作品だと思っています。
 子供達に与えるメッセージも、普遍性が有って充分以上に機能してるんじ
ゃないでしょうか。
 何かに「特化」してしまったような「風立ちぬ」より、僕はずっと好きです。

※誰か仲代達矢が出てた意味、教えて下さい。(笑)
 

鉦鼓亭 映画界へ二つの要望

2015-01-18 23:08:12 | 雑記
 要望ったって、一つは歳のせいです。(爆)

 調べる気もないから調べてないけど、「休憩」って何時から無くなったの?
 土曜に「インターステラー」を六本木に観に行ったのだけど、この作品169分有るんだよね、予告編・告知を入れれば3時間を楽に超える時間、座らせられてる。
 頻尿の発作が起きる危険を持つ自分は、こういう場合水分を極力控えて臨む訳ですよ。
 今回は、無事、杞憂に終わって目出度し目出度しだけど、去年「さらばわが愛~覇王別姫」の時は、地獄の苦しみを味わいました。
 あれ3時間モノだけど、2時間経った辺りで尿意を感じて、以後、トラウマになった程の1時間を経験しました。
 日本ばかりじゃない、世界的にもこれから高齢化社会が進んでいく中、150分を超える作品には昔のように「休憩」を入れて欲しい。
 年寄り相手の商売じゃないと言うのなら、こちらから「お断り」だけど、「インターステラー」、2時間超えた頃から、かなりの人数がトイレへ行ってたよ。(膀胱炎になったら訴訟起こしてやる!(笑))
 弱小資本の名画座は回さないと経営に響くから致し方ないとしても、ロードショー館なら出来るでしょ、その方が売店の売り上げだって伸びるし。
 テンションが途切れる?始めから終りまでハイテンションなんて有り得ない、現に「インターステラー」だって、マン博士が冬眠装置から覚醒するシーンで区切れる(時間的にも120分辺りだと思う)。
 「ベン・ハー」、「ウエストサイド物語」、「サウンド・オブ・ミュージック」、「マイ・フェア・レディ」、「七人の侍」、「休憩」が映画の邪魔をしてましたか?
 前半の話があやふやになるから>人の脳ミソ、バカにしてんのかコラッ!!
 と言う訳で、最近流行りの「人に優しい「映画」」を希望します!

 ええと、もう一つですけど。
 あのォ、パンフレット、昔のようにサイズ統一してくれませんかね。
 縦型、横型は仕方ないにしても、サイズが不統一なのは本棚に整理しとくのに不規則、不格好でイヤなんですよ。
 基本的に潔癖症で、縦のモノが横になってるだけで落ち付かなくなる脅迫症なもんで。(汗)

2014年 キネマ旬報ベスト・テンと「そこのみにて光輝く」

2015-01-15 22:27:39 | 映画感想
 キネマ旬報のベスト・テン及び各賞が発表されたようです。
  http://www.kinenote.com/main/kinejun_best10/2014/award/

 「そこのみにて光輝く」
 キネマ旬報邦画部門1位。
 僕のベスト10でも、新作部門3位でオールタイム・クラス10位。
 主演女優賞候補に池脇千鶴、助演男優賞候補に菅田将暉。
 記事を書く積もりは無かったのですが・・・少しだけ書いてみます。

  監督 呉美保
  脚本 高田亮
  原作 佐藤泰志
  撮影 近藤龍人
  音楽 田中拓人
  出演 綾野剛
      池脇千鶴
      菅田将暉

 貧乏が更なる貧乏を呼び、貧乏が全ての不幸を呼び込む。
 画面の隅々まですえた匂いのする、「みんなビンボが悪いんや」という作品。
 2013年の「共喰い」と同じく、地方都市の底辺に生きる人達の、どうしよも
ない遣る瀬無さと強烈な閉塞感は素晴らしい程に良く描けてると思います。
 でも、昔からこの手の作品は、どうにも好きになれない。
(邦画の暗いジメッとした4畳半物語)
 西洋の貧乏物語は平気なんだけど、邦画だとダメなんですよね。(汗)

 池脇さん、演技も良かったけど彼女の肩からふくよかな二の腕にかけてが
ね(笑)、美しくはないのだけど何ともエロっぽくて実に女盛りって感じで、演技
を超越してました。(汗)
 只、この役、彼女のベビーフェイスが邪魔しています、ドスを利かせる時に凄
味が出ないんですよ。
 菅田くんは、どうにもならない鬱屈を抱えながらも、あくまでも軽薄に生きてる
ダメ男振りが良かった。
 (まるで「傷だらけの天使」の水谷豊だったのが、ちょっと難点)
 最後の見せ場も含めて、主役を喰っていたと思います。

※この先、何が有るかは知らないけど、僕にとって、この手の作品は「祭りの準
 備」一本有れば、もう充分。
 これは観た年齢なのかな、もし今が二十歳頃なら、この作品や「共喰い」が「祭
 りの準備」の位置を占めるのかもしれません。
※「東京の人には、この感覚、きっと解らないと思う」、福井出身の義弟に言われ
 ました。

「イントレランス」

2015-01-05 23:32:19 | 外国映画
 「イントレランス」(「Intolerance」・1916年・米)
   監督 D・W・グリフィス
   脚本 D・W・グリフィス
   撮影 ビリー・ビッツァー
   美術 ?(誰だ!このキチガイ(笑))
   出演 リリアン・ギッシュ
       メエ・マーシュ
       ヴェラ・ルイス

  淀長さん風に言えば、
 「見ましたか、あのセット、あのスペクタクル!これが100年前の映画なん
て信じられませんね」
 いや、ホント、「バビロン編」の攻城戦なんて1959年の「ベン・ハー」が思い
っきり霞んでしまう出色のスペクタクルと言っていいでしょう。
 城壁に迫っていく巨大なタワーと攻防、壮大な広場のセットと群衆。
 100年前だから出来たのかどうか解らないけど、「見た事もない」という表
現が100年後も希釈なしに、そのまま当て嵌まる凄いシーンの数々。
 吃驚しました。(笑)
 只、この「バビロン編」の吃驚のお陰で3時間近い時間、興味が続いたとい
うのも少しだけど事実。
 日本人にとって、かなり宗教色が強く、向こうの「宗教史」に疎い身には話
自体に入りにくい所があると思います。
 撮影手法、文法は余り強くないので深入りはしませんが、殆どの雛型が百
年前に作られていた事を知る、いい機会になりました。

 「イントレランス」とは「不寛容」という意味とか。
 Wikには「人間の不寛容」と書いてありますが、これは故・山本夏彦氏の言
う「正義の不寛容」だと僕は感じました。
 正義は「正しい」と思う故、不純分子を排除しつつ純化・尖鋭化し、「正しい」
故に止められず暴走し、やがて人間にとって大不正義になる。
 山本氏は簡単に「賄賂は国を滅ぼさぬが、正義は国を滅ぼす」の18文字
で表現しています。
 その現象として一番解りやすいのが宗教で、本作でも四つのエピソードの
内、三つが宗教絡み。
 ただ一つ「現代編」だけが違うのですが、他がみんな宗教絡みなので、これ
も無実の青年は、もしかして「フランス編」の逆、プロテスタントに囲まれた少
数派カトリックなのかと思ってしまいそうでした。(笑)
 「現代編」、ちょっと甘い結末ですが、100年前ですから瑕疵にはならない
と思います。
 何にせよ、凄い作品である事に間違いはありません。

※100年前だと裸もスプラッターもOKなんだ。
 槍で串刺しの生首は「ソルジャー・ブルー」を思い出した。
※「10分の時間には10分の物語(出来事)しか入らない」
 「時間の芸術」とも言われる映画の作劇法をハリウッドは殆ど無視しますが、
 既に100年前から無視してたんですね・・・。

 謹賀新年 2015

2015-01-01 00:00:00 | ベスト10
 あけましておめでとうございます
  旧年中は大変お世話になりました
  本年が皆様にとって良い年になりますように

   平成27年 元旦 

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  (2014年)
   劇場26本 DVD34本 計60本
   外国映画33本 邦画27本
   初見48本 再見12本

 2014年、心に残った作品・監督・俳優・脚本・音楽(初見作のみ)

1. 「さらば、わが愛/覇王別姫」(1993年)
2. 「近松物語」(1954年)
3. 「情婦」(1958年)
4. 「きっと、うまくいく」(2009年)
5. 「太秦ライムライト」(2014年)
6. 「マリーゴールド・ホテルで会いましよう」(2012年)
7. 「バルフィ!人生に唄えば」(2012年)
8. 「洲崎パラダイス 赤信号」(1956年)
9. 「愛は静けさの中に」(1986年)
10.「そこのみにて光輝く」(2014年)



監督     陳凱歌(チャン・カイコー) 「さらば、わが愛/覇王別姫」
主演男優  張國榮(レスリー・チャン) 「さらば、わが愛/覇王別姫」
主演女優  香川京子 「近松物語」
助演男優  チャールズ・ロートン 「情婦」
助演女優  マギー・スミス 「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」
脚本     李碧華 「さらば、わが愛/覇王別姫」 
音楽     早坂文雄 「近松物語」
新人     上白石萌音 「舞妓はレディ」

(作品)
1位と2位の違いは単に自分の嗜好で差は無い。
スケールの大きい作品に、より惹かれたというだけ。
(監督)
隙の無さでは溝口健二だけど、スケールの大きな話を見事に纏めた陳凱歌(チャン・カイコー)に。
(主演女優)
M・ディートリッヒ(「情婦」)の存在感は捨てがたかったけど、香川京子の美しさとラストの表情に。
他に、鞏俐(コン・リー)「さらば、わが愛/覇王別姫」、ジュディ・デンチ「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」、池脇千鶴「そこのみにて光輝く」、マーリー・ワトソン「愛は静けさの中に」、プリヤンカ・チョプラ「バルフィー!人生に唄えば」、新珠三千代「洲崎パラダイス 赤信号」「女殺し油地獄」
(主演男優)
他に、福本清三「太秦ライムライト」、ランブール・カブール「バルフィ!人生に唄えば」、イヴ・モンタン「恐怖の報酬」
(助演男優)
 進藤英太郎「近松物語」、中村雁治郎「女殺し油地獄」、葛優(グォ・ヨウ)「さらば、わが愛/覇王別姫」、菅田将暉 「そこのみにて光輝く」、蟹江敬三「十九歳の地図」、佐藤允「独立愚連隊」
(助演女優)
三好栄子「女殺し油地獄」、浪花千栄子「近松物語」、田畑智子「舞妓はレディ」、轟夕起子「洲崎パラダイス 赤信号」

2014年公開作品 ベスト10
1. 「太秦ライムライト」
2. 「バルフィ!人生に唄えば」
3. 「そこのみにて光輝く」
4. 「美女と野獣」
5. 「ジゴロ・イン・ニューヨーク」
6. 「6才のボクが、大人になるまで」
7. 「舞妓はレディ」
8. 「アナと雪の女王」(吹き替え版)
9. 「超高速!参勤交代」
10.「グランド・ブタペスト・ホテル」

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今年は大豊作の年で、4位までがオールタイム・クラス。
何十年、殆ど変わる事の無かったオールタイム・ベスト10に大変動を起こしました。
一応ここに、変動後のオールタイム・ベストランキングを記しておきます。
(完成度6割、好き度4割)

1. 「七人の侍」(1954年)
1. 「さらば、わが愛/覇王別姫」(1993年)
3. 「近松物語」(1954年)
3. 「地獄に堕ちた勇者ども」(1969年)
5. 「フォロー・ミー」(1972年)
6. 「ひとりぼっちの青春」(1970年)
7. 「誓いの休暇」(1959年)
8. 「狼は天使の匂い」(1973年)
9. 「ローマの休日」(1953年)
10.「用心棒」(1961年)

11.「第三の男」(1949年)
12.「天国と地獄」(1963年)
13.「情婦」(1958年)
14.「冒険者たち」(1967年)
15.「カサブランカ」(1942年)
16.「ルパン三世 カリオストロの城」(1979年)
17.「人情紙風船」(1937年)
18.「羅生門」(1950年)
19.「きっと、うまくいく」(2009年)
20.「隠し砦の三悪人」(1958年)

 (外国映画)
1. 「さらば、わが愛/覇王別姫」
2. 「地獄に堕ちた勇者ども」
3. 「フォロー・ミー」
4. 「ひとりぼっちの青春」
5. 「誓いの休暇」
6. 「狼は天使の匂い」
7. 「ローマの休日」
8. 「第三の男」
9. 「情婦」
10.「冒険者たち」

 (邦画)
1. 「七人の侍」
2. 「近松物語」
3. 「用心棒」
4. 「天国と地獄」
5. 「ルパン三世 カリオストロの城」
6. 「人情紙風船」
7. 「羅生門」
8. 「隠し砦の三悪人」
9. 「飢餓海峡」(1965年)
10.「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」(1935年)

※ 1.17 オールタイム・ベスト10、及び、邦画ベスト10の一部修正をしました。