セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「グレイテスト・ショーマン」

2018-02-27 22:39:53 | 映画感想
 「グレイテスト・ショーマン」(「THE GREATEST SHOWMAN」、2017年、米)
   監督 マイケル・グレイシー
   脚本 ジェニー・ビックス  ビル・コンドン
   撮影 シェイマス・マクガーヴェイ
   楽曲 ベンジ・パセック  ジャスティン・ポール
   音楽 ジョン・デブニー  ジョセフ・トラパニーズ
   衣装デザイン エレン・マイロニック
   プロダクションデザイナー  ネイサン・クロウリー
   出演 ヒュー・ジャックマン
       ザック・エフロン
       ミシェル・ウィリアムズ
       キアラ・セトル
       レベッカ・ファーガソン
       ゼンデイヤ

 アメリカショービズの概念を作り上げたP・T・バーナムの成功譚をミュージカル化した作品。

 仕立て屋の息子が上流階級の家で下賤の身としてぞんざいに扱われながらも、その娘と結婚。
 やがて、持ち前のアイディアとバイタリティでのし上がる。
 しかし、、真の名誉は得られないままだった・・・。

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=wqGOKoXB3UA

 昔のMGMミュージカルを現代仕様にブラッシュアップしたような作品。
 話の内容は薄いけど圧倒的ミュージカル・シーンで魅せていきます。
 肉体的には異形でも心は人皆同じ、差別される側の哀しみをエネルギーに変える幾つもの群舞シーンは圧巻でした。
 トランプ時代のアメリカ、ヘイト、ジェンダー、区別と言い包める様々な差別、白人至上主義、それらに対するアンチ・テーゼのような作品だけど、決して堅苦しくなくエンタティーメント全開の映画です。
 只、台詞部分のドラマ進行が、ムソルグスキーの「展覧会の絵」のプロムナードのように次のナンバーへの繋ぎに近く、OPからEDまでの6割以上が歌と踊りという感じでミュージカルが苦手な人にはちょっとキツイかもしれません。

 出演陣
 H・ジャックマン 「用心棒」の三船敏郎のような彼の為のワンマンショー、周りが異形だらけというのも似てる、「レ・ミゼラブル」より適役かも、好演。
 Z・エフロン ちょっと影が薄いかな。一流演出家である彼が加わった事で「ここが、明確に変わった」というものが無い、物語の構成上必要だっただけな気が。
 M・ウィリアムズ しどころのない役で、別に演技派の彼女じゃなくても。ザックと同じで物語上必要なだけ。
 K・セトル 髭女。役的にヒューと共に最も輝いていた、圧巻の歌声。体格が実にオアフ島出身でした。
 R・ファーガソン/歌 ローレン・オルレッド
         中盤、キーとなる歌手ジェニー・リンド、レベッカの気品とローレンの圧倒する歌声が見事に融合、この物語の良いアクセントになってました。声アテと言っても、昔は「ウエスト・サイド物語」は2名以外全員、「マイ・フェア・レディ」のオードリーも歌は別人だったから特に気になりません。

 キアラ・セトルが歌う「This is me」
  https://www.youtube.com/watch?v=zgyoKX5oW3E

 ミュージカルが好きな方はハズせない作品だと思います。
 但し、差別に敏感な方はどうだろう、綺麗事になってますが異形をエンタティーメントで隠し、結局は見せ物として実利を稼いでる、と見てしまうと醒めるしかないかもしれません。
 (でも居場所の無かった彼、彼女らが仲間を得て居場所を見付けたのは事実かと)

※色調、街並みが同じだから、何時ロンドンに行って何時帰って来たのか・・・、ここは何処って感じがずっと付き纏いました。
※石炭時代の夜空、あの燻んだようなダークグレーの色調は'64年「メリー・ポピンズ」へのオマージュ?
 その背景でヒューとミシェルが屋上で踊るシーンは記憶が定かでないのですが、「チム・チム・チェリー」だったか何か、「メリー・ポピンズ」にあったような憶えが。(「ウエスト・サイド物語」('61)の「アメリカ」も少し)

 H30.2.25
 TOHOシネマズ六本木ヒルズ TCX/ドルビーアトモス
 
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「高慢と偏見とゾンビ」

2018-02-12 18:10:00 | 映画感想
 「高慢と偏見とゾンビ」(「Pride and Prejudice and Zombies」、2016年、米・英)
   監督 バー・スティアーズ
   原作 セス・グレアム=スミス
   原案 ジェーン・オースティン
   脚本 バー・スティアーズ
   撮影 レミ・アデファラシン
   音楽 フェルナンド・ベラスケス
   出演 リリー・ジェームス
       サム・ライリー
       ジャック・ヒューストン
       べラ・ヒースコート
       ダグラス・ブース

 パッケージの惹句は「不朽の名作 感染」。(笑)
 という訳で、J・オースティンの最高傑作と云われる「高慢と偏見」を感染させたらこうなりました。
 物語は、ほぼそのままなので映画版「プライドと偏見」で検索してみて下さい。
 違うのは5人姉妹がアマゾネス化というか、「キル・ビル」風になってます。

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=p7COEYiV5LM

 只、この作品、知らずに観ても、それなりに面白いかもしれませんが、やはり「プライドと偏見」をご覧になってから観るべき作品でしょう。

 この作品の良い所は、パロディに寄りかかってオースティンの品を落としていない所。
 どうしてもパロディ作品は遊び心が入るから、エロ、下品に陥り易いし、そこが面白くもあるのだけど、この作品はゾンビのグロさは入れていても決してオースティンの気品は落していません、そこに「物足りなさ」を感じる人は居るかもしれませんが、僕はパロディとして最上級の仕事だったと思います。(本家に比べれば予算3~4割カットくらいかな、でも、ちゃんと格は保ってる)
 「シンデレラ」(2015年・米)で出世したリリー・ジェームスがエリザベス役で、キーラ・ナイトレイの先例に倣ってるとは云え充分にタメ張ってると思います。只、他の4姉妹は時間の制限も有ってか本家に比べ見劣りが若干しまいた。(長女は「ダーク・シャドウ」(2012年、米)で見染めたB・ヒースコートなんだど)
 
 「プライドと偏見」のゾンビ版という事でブラックな展開を予想してたけど、そこは○○設計でした。
 ゾンビと「プライドと偏見」が好きな方にはお薦め!(責任は持てません(汗))

※グロいの苦手だけど、これくらいと言うか余りリアルじゃないから充分観られました。
※しかし、リリー・ジェイムスとケイト・ウィンスレットって区別がつかん。(汗)

 H30.2.12
 DVD
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「わたしは、ダニエル・ブレイク」

2018-02-04 22:58:04 | 映画感想
 「わたしは、ダニエル・ブレイク」(「I, DANIEL BLAKE」、2016年、英・仏・ベルギー)
   監督 ケン・ローチ
   脚本 ポール・ラヴァティ
   撮影 ロビー・ライアン
   音楽 ジョージ・フェントン
   出演 デイヴ・ジョーンズ
       ヘイリー・スクワイアーズ
       ディラン・フィリップ・マキアナン
       ブリアナ・シャン

 心臓発作で倒れ職を失ったダニエル、彼の前に立ち塞がる役所の厚
い壁・・・。

 去年観た「幸せなひとりぼっち」と似た感じ。
 「幸せなひとりぼっち」は老境をどう生きるかが主題だったと思うけど、
こちらは、もっと社会派作品。(ダニエルは初老の入り口辺りで、老人と
いう訳でないけど病後静養中)
 作品は、弱者の為のシステムがマニュアルでしか動かず、人間性を失
い、それによって弱者がより一層疎外され転落していくイギリスの現状を
告発しています。
 似た結末でも、ハッピーエンド感のある「幸せな~」と違い、僅かな救い
はあっても何一つ変わらぬ状況が続く本作は暗澹たる気持ちにさせられ
ます。
 家持ち年金生活者のオーべとホームレス手前のダニエルという経済
格差が根本にあると言ってしまえば、身も蓋もないのですが。
 頑なで排他的なオーべより、正直で他人に親身になれるダニエルの
方が救われないのは、映画の中とはいえチト辛いかな。

 景気が悪く失業者も多いから、生活保護局もフルイの目を粗くして落
せる者は容赦なく落すのだろうけど、やがて、日本も同じになるんだろ
うな。

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=NE9QXcEWQaE

※イギリスでは医師の診断書に信用がないの?

 H30.1.28
 DVD
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