セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「誓いの休暇」VS「二十四の瞳」

2010-11-03 11:43:25 | ミックス
 「二十四の瞳」(木下恵介監督・日)と「誓いの休暇」(G・チュフライ監督・
ソ連)
 どちらも鉦鼓亭が好きな映画です。
 どちらも反戦映画の傑作だと思っています。両作とも「戦争反対!!」
(当り前)なんて叫んだり、強調したりしてません。
 戦闘場面は「誓いの休暇」では物語最初5分位、「二十四の瞳」に至って
は皆無。でも、見終わって気がつくと戦争の悲惨さが心に沁みる映画なの
です。
 特に「誓いの休暇」(原題は「ある兵士のバラード」)はソ連映画です、共
産党独裁の国でプロバガンダでない反戦映画を撮る事は本来不可能に近
い事でした。偶々、フルッショフの時、ほんの束の間有った雪解けの時代
(政治的にも映画製作においても)に出来た作品です。
 それでも宣伝臭はします、最初と最後のナレーション、あの新兵苛めで有
名なソ連軍のくせに妙に優しい上官や兵隊とか。でも、これ位にプロバガン
ダ臭を抑えただけで、この監督、何年も干されてます。それ程共産主義の国
らしくない映画なのです。
 簡単にストーリーを書いてみます。
 戦場で偶然手柄を立ててしまった少年通信兵アリョーシャ、勲章をくれると
云う話を断り、故郷の母に会いに行く為、休暇が欲しいと願い出て(「家の屋
根が壊れ、女手一つでは直せなくて困ってる」と母からの手紙が有る)、将軍
から特例で六日間の休暇を貰います。
 この映画はその六日間の物語、故郷の母に会うまでのソ連版ロードムーヴィ
です。
 大まかに言って三つの出来事を繋げていくのですが、その二つ目の話、偶
然、アリョーシャの乗る貨車に潜り込んで来た少女シューラとの出会いと別れ、
これが素敵でした。若い二人の瑞々しさと云うか、こんなに初々しく、また瑞々
しい二人は他に見た事がありません。
 その二人の初恋とも言えない位、淡い恋心。それを映し出すH・ドカエも真っ
青な位の美しい映像(このカメラマンは全編通じて素晴らしい仕事をしていま
す。白黒なのですが、果てしなく続くロシアの地平線、夕日を遮る白樺林等々、
どれもこれも美しい。「第三の男」やH・ドカエの「シベールの日曜日」、宮川一
夫の「羅生門」と並ぶ白黒フィルムの傑作だと思います)。
 鉦鼓亭、「反戦映画」と書きましたが、それは俯瞰で見た表現で、中身は青
春映画だとも思います、儚い、ほんの一瞬の青春物語。

 「二十四の瞳」
 古い映画ですね、「誓いの休暇」よりもっと、もっと古い。
 一般的には大石先生と12人の子役達との交流を描いてる前半の方が評判
がいいようですね(ウチの母もそうだった)。
 でも鉦鼓亭は、ちょっとクサイかもしれませんが最後の手前のシーンが一番
泣けます。(ここは弟と同意見です)
 戦争が終わり、島で先生を呼んで簡単な同窓会を開く、12人の内、戦争や
病気で生残った者は5,6人、男は盲目になってしまった一人だけが生き残って
る。
 で、昔みんなで撮った集合写真を残った者達が見てる場面。
 以下、記憶だけで書きます。

女A「○○(男の名(田村高広))、あんた写真見えないでしょうに」
男、写真を手に取り、それをなぞるようにしながら、
男 「うん、でもな、この写真だけは見えるんや、一番左に○○がおって、その後
ろに○○、その横で○○が??みたいな顔しててな、そんで、その前が○○や、
・・・・・」
戦争で盲目になった男が一人一人、指でなぞりながら説明していく。その半分は
もうこの世にいない。

 このシーンは堪らんです。
 鉦鼓亭、戦争は知りませんが戦争とはこういう事だと思います。


※「誓いの休暇」
 DVDは発売されてます。日本語字幕付なのですが、何カ国語も有る中からロシ
ア語で日本語訳を探すのがチト骨。オマケに最初の台詞は始まってから3分位、
そこでやっと見てるのが何語版なのか解る次第で。
 カンヌで特別賞を受賞した作品ですが、白黒で地味でソ連映画ですから、まず、
レンタル屋さんで見つけるのは不可能でしょう。図書館で取り寄せられればいい
のですが。あとは買うしかない。
 

                                     H21、3,20
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2 コメント

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こんばんは (マミイ)
2013-10-15 19:22:56
>「戦争反対!!」(当り前)なんて叫んだり、強調したりしてません。
冒頭の母の後ろ姿ですでにグッときました。
静かですが、しっかりと反戦の思いが伝わってきました。

出番は少ないですが、とにかく母に共感したので
女の子との話は私はサラッと流して観てしまいました。
でも、別れた後で彼女を思い妄想するところとかはよかったです。

この映画ができた頃の背景も知らなかったので勉強になりました。
そういう時代にこういう映画を作る・・・すごい事ですね。
いらっしゃいませ! (鉦鼓亭)
2013-10-15 22:43:27
 マミイさん、コメントありがとうございます

静かですが、しっかりと反戦の思いが伝わってきました>
僕も、それなりの数の「反戦映画」を観てますが、直截的なものほど、後に残りません。
僕にとって最高の反戦映画は、この作品です。

とにかく母に共感したので>
僕の初見は高2でしたので、やっぱりシューラ。(笑)
どっかのサイトに以前、当時としては異例のアメリカ訪問をした時のスナップ写真が有ったのですが、映画に負けないくらいチャーミングでした。
(この作品がアカデミー賞外国語部門にノミネートされたので、相手役と一緒にアメリカに招待されたんです~当時は、一般のソ連人が西側、ましてアメリカへなど行けなかった)

山田洋次監督が、この作品の最初のエピソード(傷痍軍人の帰郷)をヒントに「幸せの黄色いハンカチ」を作ったとか、
宮崎駿監督が大好きな作品で、「ラピュタ」に出てくるお婆さんのモデルは、この作品の「トラックを運転してたオバサン」とか言われてますけど、
もう、このくらい好きな作品になると、そんな事どうでもよくて、只々、単純に「好き」としか言えないです。

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