セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「いつか晴れた日に」

2017-10-30 23:03:34 | 外国映画
 「いつか晴れた日に」(「Sense and Sensibility」、1995年、米・英)
   監督 アン・リー
   原作 ジェーン・オースティン  「分別と多感」
   脚色 エマ・トンプソン
   撮影 マイケル・コールター
   美術 ルチアーナ・アリジ
   衣装デザイン ジェニー・ビーヴァン   ジョン・ブライト
   音楽 パトリック・ドイル
   出演 エマ・トンプソン (エリノア)
       ケイト・ウィンスレット  (マリアンヌ)
       アラン・リックマン  (ブラントン大佐)
       ヒュー・グラント  (エドワード)
       グレッグ・ワイズ (ウィロビー)

     
 19世紀初頭、イングランドのサセックス州。
 私園ノーランド・パークの主が亡くなり、残された後妻と三人の娘は館を
出る事に。
 その娘エリノアとマリアンヌの愛と成長の物語。

 ちょっと最初は、「若草物語」か「恋のエチュード」のどちらの路線かと思
いましたが違った。(笑)
 とても上質なメロドラマを叙事詩風に描いた作品。
 登場人物がやたらと多く、相関図が幾らか曖昧なまま見終わったのです
が(ルーシー、誰の娘なのか鑑賞中、誤解したままだった)、ドラマに影響
を及ぼすまでではなかったです。
 話が整理されていて登場人物の感情がよく解り、それが綺麗なイングラ
ンドの風景に溶け込んでいて、その辺はD・リーン監督の「ライアンの娘」
(‘70、英)を思い出しました。
 只、エドワードの処理は強引な感じがしてしまった、そこが、ちょっと引っ
掛かったけど、それ以外は申し分なかったと思います。

 主要登場人物が皆、健気(薄情者のウィロビーさえ、ラストでマリアンヌ
への想いが本当だったという律儀さ。(笑))。
 だからこそ、エリノアが報われる場面で感情を共有できる。
 又、それを納得させる役者陣の演技も皆、良かったです。
 特に主役を演じたエマ・トンプソンの抑えた演技が素晴らしく、自ら脚色
しただけあって長女エリノアに成りきっていました。

 秋の夜長によく似合う作品。

※この入り組んだ相関図、ドロドロさせてヘンテコな殺人事件を起こせば
 横溝正史。(笑)

 H29.10.29
 DVD

「ドリーム」

2017-10-08 12:45:00 | 映画感想
 「ドリーム」(「Hidden Figures」、2016年、米)
   監督 セオドア・メルフィ
   脚本 アリソン・シュローダー   セオドア・メルフィ
   原作 マーゴット・リー・シェッタリー  「Hidden Figures」
   撮影 マンディ・ウォーカー
   音楽 ベンジャミン・ウォールフィッシュ  ファレル・ウィリアムス  
       ハンス・ジマー
   出演 タラジ・P・ヘンソン
       オクタヴィア・スペンサー
       ジャネール・モネイ
       ケヴィン・コスナー

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=cOw2BMDcFag       

 「事実に基づく映画」みたいな表示が冒頭に出るけど、「事実にインスピレー
ションを得た映画」と言うくらい脚色されてます。
 原題の「Hidden Figures」は「隠された人影たち」とでも訳すのかな、NASAの
マーキュリー、アポロ計画には天才と呼べる多くの黒人スタッフが核心部分に
寄与していた、その事実に光を当てた作品。
 邦題はマーチン・ルーサー・キング牧師の有名な演説「I Have a Dream」に重
ね合わせたものだと思います。(ニュースフィルムの形で作品内にキング牧師
も出て来るし)

 公民権運動が始まるも、まだ黒人をジム・クロウ法によって合法的に差別し
ていた1961年、NASAの計算部(本格的コンピューターが導入される前~人
間が計算をしていた頃)、技術部に天才的な三人の黒人女性が居た。
 その三人、キャサリン(数学の天才で本部に異動した初の黒人)、ドロシー
(やはり数学の天才で西計算部(黒人だけの計算部)で初の黒人統括責任者
(映画では臨時で嘱託))、メアリー(後にNASA初の黒人エンジニアとなる)が、
様々な差別に遭いながらも自らの才能と努力、更にソ連のスプートニク・ショッ
クの追い風もあって認められていく物語。男たちはK・コスナー以外、殆ど刺身
のツマだから、かなり女性映画の風味あり。

 ソツなく作られた如何にもハリウッドな作品、時々挟まれる、キャサリンと黒
人将校ジムのロマンスシーンに少し停滞感を感じたけど、これが無いと作品に
タメが出来ないし潤いに欠けるかもしれない。ま、お陰でプロポーズのシーン
で感動できるからいいんだけど。(笑)
 それと、冒頭の物語に引き込む掴みのシーン、何て事ないけど良かったで
すね。
 厭味な奴は居るけど、基本、善人ばかりの話でサクセスものだから観ていて
気持ちいいのは保証出来ます。(汗)
 深みに欠けるかというと、黒人差別という暗黒の闇が背景にあるし、それを
観客は知ってるから殊更掘り下げなくても塩梅としてはいいんじゃないでしょう
か、エンタティーメント作品なのですから。

 役者陣では主役キャサリンを演じたタラジ・P・ヘンソンより、ドロシー役のオ
クタヴィア・スペンサーの方が印象に残りました。
 あとメアリー役のジャネール・モネイがH・ヒューストンにソックリな感じで、直
接、絡むシーンが無かったからいいけどケヴィン・コスナーと同じシーンに居た
ら別の映画を思い出してしまいそう。(笑)

 個人的には、佳作と秀作の間くらいの作品でした。

※記憶だから間違いかもしれませんが、シドニー・ポワチエが主役を張った作
 品は有ったけど、ハリウッドが黒人層をターゲットに映画を作りだしたのは遅く
 て「110番街交差点」(1972年~但し主役はA・クイン)辺りからだったと思
 います。
 評論家が、都市部の白人:黒人の人口比率接近により、最早、白人相手の
 作品だけでは先細り確定で黒人の財布をアテにした、とか言ってた憶えがあ
 る。
※「私は差別主義者じゃないのよ」
 「御自分がそう信じてることは理解しています」
 結構、皆に当て嵌まる秀逸な台詞(ジョーク)。(汗)

 H29.10.7
 TOHOシネマズ日本橋

映画手帳 2017年7月~9月 

2017-10-01 00:00:00 | 映画手帳
 ☆新作 ※再見

  (7月)
35.「タンゴ・レッスン」、36.「黒猫/白猫」、37.「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」(TOHOシネマズ日本橋)
38.「幸せなひとりぼっち」、39.「アギーレ/神の怒り」、40.「グット・ウィル・ハンティング/旅立ち」(TOHOシネマズ日本橋)
41.※「恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム」
  (8月)
42.※「PK」、43.「怪談」、44.「娼婦べロニカ」
  (9月)
45.「ロバと女王」、46.「泥の河」(TOHOシネマズ日本橋)、47.☆「新感染 ファイナル・エクスプレス」(新宿ピカデリー)
48.☆「ベイビー・ドライバー」(新宿バルト9)、49.☆「ダンケルク」(TOHOシネマズ新宿 IMAXシステム)

 下半期ベスト(7~9月)
1.「泥の河」
2.「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」
3.「新感染 ファイナル・エクスプレス」
4.「幸せなひとりぼっち」
5.「娼婦ベロニカ」