
仔猫たちとの出会いから別れまでの8カ月間。
小さな命を育てるにはお互いのコミニケーションが必要。
だから、部屋の中ではいつも仔猫たちと話しをしていた。
そうすると仔猫たちもワタシもお互いの言わんとしてる事が、どんどん分るようになった。
まさかこんな経験をするなんて、考えた事もなく毎日が楽しい事だらけ。
一緒に暮らし、寝食をともにしたためか・・・・・
ワタシ自身がかなり猫と人間の間のような存在になっていた。
が、もうアパートに帰っても飛んで迎えてくれる愛しい仔猫たちはいない。
その代わりに、ワタシにとって天敵のような猫「たま」が浮上してきた。
【たま。。。】
ワタシの住んでいたアパートは木造モルタルの2階建。
1階は大家さん親子が住んでいた。
そして大家さんは仔猫たちがくる半年前に、とても美しい猫を貰ってきた。
それが「たま」だった。
毛並みはグレイで目はグリーン。
うちの仔猫「玉っ子」と見た目はそっくりだった。
たまは既にオスの仔猫を生んで、その仔猫を連れて「ワタシの子供よ♪見て!」
と2階のワタシの部屋に見せにきたりした事もあった。
たまとワタシの関係はごく普通だった。
ワタシが仔猫3匹との生活をしてる階下では、たまがモコというわが子の子育ての真っ最中
だからか仔猫たちとのいさかいも無く、平和な日々だった。
そして仔猫たちがいなくなった後、歯車が狂ったように徐々に壊れていった。
【北風。。。】
大家さんはとてもイイ人で、気さくで朗らかな女性だった。
小学生の息子と猫のたまとたまの息子モコという家族形態。
そこに、ある日柴のちいさな子犬べスが貰われてきた。
ベスは1階玄関のブロック塀の囲まれた小さな庭の犬小屋で寝起きしていた。
最初はご近所さんや大家さんも可愛がり、大人気者の犬だった。
とても無垢で愛らしいくらい元気で、ワタシも2階の自分の部屋に戻る時はよく遊んだ。
だが状況は大家さんの息子が中学生の時から一変。
階下では中学生がひと目も憚らず煙草を吸い、その事を制するような気配はない。
その影響は動物たちにも出始めた。
猫のたまは稀にみるIQの持ち主だったが、その時はまだ分らなかった。
そのたまが粗暴で意地悪な猫になり、人気者のベスを日課のように叩いていた。
ある日ベスを撫でていたら、突然たまが来てベスを攻撃。
ワタシはたまにその事を叱った時だ。
その瞬間、たまはワタシの二の腕に噛みついて放さなかった。
たまの口からワタシの血が滲んでいた。
そのあと、たまはワタシを嫌って、噛むようになった。
この時にもの凄い怒りの感情がワタシにぶつけられたのが分り、生きているものは
全て感情で支配されているんだと驚いたのだった。
これだけには止まらず、息子のモコを毛嫌いするようになり、
モコの事を威嚇するようになった。
威嚇され傷ついたモコはワタシに部屋に来るようになり、モコの避難所の様を呈し始めた。
階下の中学生が荒れ始めると、柴犬のベスが犬小屋の真下1メートルに大きな穴を掘り、
ベスはそこから出てこなくなった。
異変に気がついた時は、もうベスの心は閉ざされ、誰が呼びかけても反応しなくなり。。。
ある日突然、犬小屋ごといなくなった。
【さらなる北風。。。】
大家さんの家の事情は分らないが、ワタシには人も動物もボロボロのように見えた。
そしてベスがいなくなって、大家さんが突然の入院。
中学生の息子さんはいなくなり、階下は「たま」と「モコ」の猫2匹だけに。
でもワタシは2〜3日気がつかなかった。
ご近所さんから大家さんの入院を聞き、1階の縁側に行ってみた。
一階は全部雨戸が閉まっていた。
真っ暗な闇に向かって「たま!」{もこ!」と猫たちの名前を呼んだ。
返答はなく、真冬の寒い風が容赦なく地面に突き刺さるように吹いていた。
もう部屋に帰ろうと思い踵を返した時、真っ暗な縁側のカラーボックスの中から
ワタシをじっと見ていた。
どうも、たまはずーとそこから見ていたらしいのだ。
ワタシは「うちに おいで」と言った。
たまは動かなかった。
今迄の事を考えると、たまがついてくるとは思えなかった。
意を決し、たまを抱っこした。
その時、たまは目を閉じてそのままワタシの部屋にやってきた。
その日からたまはワタシを二度と噛まなかった。
たまは寒さと飢えから、のがれたかっただけだった。
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