セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「バルフィ!人生に唄えば」

2014-09-21 14:21:24 | 映画感想
 先日観た「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」でインド美人に興味が出て・・・。

 「バルフィ!人生に唄えば」(「Barfi!」・2012年・印)
   監督 アヌラーグ・バス
   原作・脚本 アヌラーグ・バス
   音楽 プリターム・チャクラボルティー
   出演 ランブール・カブール(バルフィ)
       プリヤンカ・チョプラ(ジルミル)
       イリヤーナー・デ’クルーズ(シュルティ) 

 (さわり~「あらすじ」ではありません)
 聾唖だけど悪戯ッ子がそのまま大人になったような陽気で憎めない男バルフィ。
 そんなバルフィがタージリン市に引っ越してきたシュルティに一目惚れ。
 しかし彼女には既に婚約者が・・・。

 インド映画は丸で知らないのですが、この作品、ボリウッドがハリウッドのサイレ
ント映画にオマージュを捧げてるような映画でした。
 全体としてはC・チャップリンの作品、特に「街の灯」、「モダンタイムス」がベース
になってる気がします。主役バルフィの動きもB・キートン、C・チャップリン、ロイド
兄弟を参考にしてると思いました。
 (電柱が倒れてきて友情を確かめるシーンはキートンからのインスピレーション
だと思うし、警察署の引き戸を使ったギャグはチャップリンでしょう、他にもイロイ
ロ)
 トーキーでサイレント映画の雰囲気を作る為なのか、バルフィは聾唖、Wヒロイ
ンの一人ジルミルも自閉症で言語が不自由(知恵遅れ)という設定、ギャグシー
ンではコマ落としが多用されています。

 チャップリンと言うと、腹を空かせた浮浪者といたいけな女性(少女?)というイ
メージがパッと浮かぶのですが、本作に於いて似てるのは二人の雰囲気だけか
も知れません。
 「街の灯」、「モダンタイムス」がベースと思うと書きましたが、では何処が?と聞
かれると窮します。
 でも観てる時、観終わった後、「チャップリン映画に似てるな」と常に感じていま
した。

 勿論、違う所は沢山有りますが、本質的に違う所を一つだけ書きます。
 チャップリン中期までの作品には大恐慌というバックグラウンドが有り、貧しい
故の諍い、要領、助け合いを描き庶民のペーソスを滲ませていきます。本作は主
役バルフィこそ定職が有りませんがWヒロインのシュルティ、ジルミルは共に有産
階級で「お金持ち」。(カーストの中で3人が何処に位置してるか解りませんが低く
はないでしょう)
 バルフィにしても定職が無く生きていけたのは親父が働いてるお陰。
 落語に大店の若旦那の道楽が過ぎて勘当を喰らう噺がありますが、その時、道
楽息子が切る啖呵、
 「お天道さまと白い飯は、どこだって付いて回らぁ」
 で、実際は「お天道さま」だけが付いて回る・・・。
 しかし、この映画では、どういう訳か「白い飯」も付いて回る。
 落語でさえ付いてこないのが、この映画ではちゃんと付いてきます。
 この作品はチャップリンや落語と立ってる位置が全然違う、完全なファンタジー・
ワールドだと思います。
 そのファンタジーを楽しむ映画。

 話は1972年から現在(が何年なのか?(笑))までの約40年に渡ります。
 その40年の中で、実によく、あっちこっちに時間が飛びます(大体、4つくらいの
時間軸がある)。
 これ、飛びすぎでしょ。(笑)
 混乱する一歩手前で綺麗に繋げていきますが、ここまで時間軸をパズルにする
意味があったのか不明。
 基本ハートフル・ファンタジーなのですが、その中にジルミルの誘拐・身代金要求
というミステリー要素を入れたので、そのミステリー部分のテンション(と言っても極
めて薄味だけど)を維持したかったのかなァ・・・。
 それと、監督がミステリーの勉強をしたいのか、伏線の回収が律儀すぎ。
 これミステリーじゃないんだから。(笑)
 身も蓋もない言い方だけど、オーソドックスに時間通りで作っても、それ程差異は
無いような気がします。

 インド美人に興味が出て・・・
 この部分は期待以上の大満足。
 シュルティ役のイリヤーナー・デ’クルーズ。
 「二股女」かもしれないけど、超ベッピンさんだから無問題。
 (旦那さん何も悪くないので可哀そうだけど)
 映画の世界で男にとって綺麗・可愛いは大正義。
 女だってイイ男には・・・(誤爆)
 今は(インドで)スターさんらしいです。
 バルフィ役のランブール・カブール。
 動きはキートンだったりチャップリンだったりなのに顔が時々S・スターロン(笑)。
 何とも奇妙ですが上手いとは思います。
 ジルミルの役は「ギルバート・グレイプ」のL・ディカプリオと同じ、多分、上手いの
だろうし、この役じゃなければ、この人もキュートだと思います。
 (調べたら2000年ミス・ワールドだって(汗))

 クライマックス、シュルティがバルフィに教えるシーンは切なく美しい。
 151分はちょっと長すぎだけど、悪くない作品だと思いました。

※時間に余裕のないのも、現在では150分の長さじゃ入らないのも解る。
 でも監督が「Intermission」って入れてるんだから・・・。
※元鉄道マニアとしては、ナローゲージのタージリン鉄道を一杯見れて嬉しかった
 です。(笑)
※元の素材が乏しいのかパンフレットは資料として使えません。
 スタッフ・キャストさえマトモに載ってない。(あきれた~笑)
注)堅く見るとバルフィが犯罪しまくりなので、そういうのが苦手な人はダメかも。
 
 
 
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