セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「突撃」、「渚にて」

2020-08-31 22:14:07 | 映画感想
 「突撃」(「Paths of Glory」、1957年、米)
   監督 スタンリー・キューブリック
   脚本 スタンリー・キューブリック  カルダー・ウィリンガム  ジム・トンプソン
   原作 ハンフリー・コッブ
   撮影 ゲオルク・クラウゼ
   音楽 ジェラルド・フリード
   出演 カーク・ダグラス
      ジョージ・マクレディ
      アドルフ・マンジュウ
      ラルフ・ミーカー

 第一次世界大戦中の仏軍最前線、不落の要塞「蟻塚」に対する攻撃が決定した、自らの名誉の為、無謀な作戦と知りながらミロー大将は受諾する、作戦当日、敵要塞の銃火は凄まじくダックス大佐の懸命な指揮でも諸部隊は前進もままならず釘付けとなる、戦況に逆上した大将は・・・。

   予告編 https://www.youtube.com/watch?v=drys1OnF35E

 ジャン・ルノワールの「大いなる幻影」が、幻影とも言える貴族の滅びゆく気高さを写すものなら、この作品は、庶民と牛馬の区別が付かない貴族の傲慢、愚劣さを描いた作品。
 「くじ引きで殺されるのか」
 「軍隊ではよくある事さ」
 そういうものなんだ・・・。
 ダックス大佐役のK・ダグラスが好演。

※ラスト間近のドイツ娘、黒澤監督の「隠し砦の三悪人」で人買いの上田吉二郎が言う台詞「戦があると女の出物が沢山あってな」を思い出した。
※今夏の第一次世界大戦モノ、これにて打ち止め、(個人的に)良かった順、「誓い」、「突撃」、「1917 命をかけた伝令」

 R2.8.15
 DVD

 「渚にて」(「On the Beach」、1959年、米)
   監督 スタンリー・クレイマー
   脚本 ジョン・パクストン
   原作 ネビル・シュート
   撮影 ロゼッぺ・ロトゥンノ
   音楽 アーネスト・コールド
   出演 グレゴリー・ペッグ
      エヴァ・ガードナー
      フレッド・アステア
      アンソニー・パーキンス
      ドナ・アンダーソン

 まだTVで映画を見ていた頃以来(荻昌弘さんの月曜ロードショーかと思ってたけど水野晴郎さんの水曜ロードショーでした)の再見、約半世紀ぶり。(笑)

 1964年1月、米潜水艦スコーピオン号がオーストラリア メルボルン沖に浮上した。核戦争の放射能により北半球は全滅、やがて、南半球も同じになると皆解っていたが、不安を押し殺しながらもまだメルボルンは日常が続いていた・・・。

  OPシーン ゴールデングローブ賞で作曲賞を獲ったテーマ曲
   https://www.youtube.com/watch?v=EMzEWpKKOZs&list=PLnZRjAiwJ5RNcW8u2EBY548xB0UHJbU6L&index=2&t=0s

 広島以後、日本以外でも核戦争による終末モノ、デイ・アフターものが沢山作られたと想像するけど、世界映画史に残った最初の作品は多分この作品だと思う。
 家族をアメリカで失った潜水艦艦長のペッグとメルボルンで出会うガードナー、オーストラリアの海軍士官パーキンスと妻アンダーソン、友人の科学者アステア、豪海軍司令とその秘書達の未来の無い絶望の日々を淡々と描いていきます。

 何故、戦争が起きたかの論議が紋切り型だったり、人々が余りに従順とか今から見ると甘い所が多分にあるけど、個人個人の最期の迎え方と静かな覚悟を描いていくので、ウエットな分、胸に迫るものがあります。
 愛と平和の象徴として描かれてる自分達の赤ちゃん(しかし、泣き声だけで姿は殆ど見せない)を自ら殺さなければならなくなった夫婦の苦哀、もし現実に起きれば充分あり得る話で辛すぎるのですが、'60年頃のハリウッドでヘイズコードも健在だったろうから、そこは結果は同じにしろ直接描写は無く上手く逃げてます。
 珍しくA・パーキンスがエキセントリックでない普通の大人を演じてる。(笑)
 折角メインテーマ曲が素晴らしいのに、他の音楽や音の使い方にセンスがなく、あざとくて騒々しすぎる、画面は淡々と描いてるのに「ハイ、ここ強調」とばかりシンバル強打のような事を臆面もなく何回もしてる、そこが残念。自分的には名作半歩手前の秀作という感じです、初回と感想は殆ど変わらなかったと思います。

※「On the Beach」ってA・ガードナーが潜水艦を見送る有名なシーンのイメージかと思ってたけど、台詞として出て来たのはA・パーキンスとD・アンダーソンが出会った場所の事だった。(訳は「浜辺」)
※その有名なスチール写真ですが、「渚にて」と聞くと、何故か「地上より永遠に」のB・ランカスターとD・カーの波打ち際のキスシーンのスチールが真っ先に浮かぶのです。(汗)
※二回目だから無線のカラクリは憶えてましたね、F・アステアが出てるのは忘れてたけど顔見た瞬間、彼の最期のシーンを思い出した。

 R2.8.30
 DVD


 

「恋恋風塵」

2020-08-24 17:50:49 | 映画日記/映画雑記
 「恋恋風塵」(「戀戀風塵」、1987年、台湾)
   監督 侯孝賢(ホウ・シャオシェン)
   脚本 呉念眞(ウー・ニエンジェン)  朱天文(ジュー・ティエンウェン)
   撮影 李屏賓(リー・ピンビン)
   音楽 陳明章(チェン・ミンジャン)
   出演 王晶文(ワン・ジンウェン)
      辛樹芬(シン・シューフェン)
      辛樹芬(シン・シューフェン)
      林陽(リン・ヤン)  梅芳(メイ・ファン)

 家計を考え中学を出ると台北へ就職したアワン、1年後、幼馴染みで許婚のようなアフンも後を追って台北へ働きにやってくる。辛い仕事も寂しさも同郷の仲間たちと助け合い生活していく二人、やがてアワンに兵役の通知が来る・・・。

 歌のない「シェルブールの雨傘」、タイトルで物語を表してしまってます、また、台詞を少なくして間で見せる映画でもありました。
 台湾人なら解るのかもしれないが、兎に角、時間に対して極めて不親切な映画、何年頃を舞台にしてるのか最後まで解らなかった。
 製作年に近い年代なのかと思っていて、その時分、観光で台湾に行った事があり、「それ程、日本と変わらないと思ったけど、地方の山ン中だとやっぱり20年は遅れてたのかなぁ」なんて傲慢に考えてしまいました。雰囲気も吉永小百合の日活青春映画みたいだし。(アフンって、当時の吉永小百合に似てる所がある)
 また、F・O、F・Iで何の説明もなく1年の時間が過ぎていたのでF・Oを時間経過に使うのかと思ったら、そうでない所もあって統一されてない、本当に「今、いつなんだ」がずっと付き纏ってモヤモヤしっぱなしでした、wik見ると'60年代らしく大体、吉永小百合時代で合ってました。(笑)

 篠田正浩監督のようなアンチ・クライマックスは余り好きでないし、ラストのアワンのシャツも、何故、それを着れるのか、その意味も心情も僕には判らない。(「愛は残る」の意味らしいが、僕は絶対着ないな、血迷ってタンスの奥に思い出として残したとしても彼女が出来たら捨てる)
 青春映画、恋愛を使った大人への通過儀礼を描いた作品として悪くはないし、台湾の風景も良くて、見るべきものの有る作品だけど、主人公の心情変化が判り難く隔靴掻痒を強く感じた作品でした。

 祖父の李天祿がいい味出してます、そこに居るだけで味わいが有って景色に馴染んで本当にここに何十年も住み暮らしている感じがして、日本で言えば花沢徳衛さんとか加藤嘉さんかな。

※村の掟なのか、出てくる名前が阿づくし、アワン、アフン、ア何とかばかりで頭こんがらがる(笑)、日本だと佐藤、伊藤、江藤、加藤、工藤でしょうか。
※台湾は「牯嶺街少年殺人事件』に次いで2本目、何か両方とも暗いなぁ、傑作と言われてる「牯嶺街少年殺人事件』もイマイチ合わなくて、長時間座りっぱなしでケツの痛みが何日も取れなかった記憶の方が強い。(汗)

 R2.8.23
 DVD


「銀嶺の果て」

2020-08-16 22:36:58 | 映画感想
 「銀嶺の果て」(1947年、日本)
   監督 谷口千吉
   脚本 黒澤明 
   撮影:瀬川順一
   照明 平田光治
   音楽 伊福部昭
   出演 三船敏郎 (トップクレジットだけど後日改変した?どう見ても主役 志村さんでしょ、出番、ギャラやキャリアから言っても)
      志村喬
      小杉義男 (「七人の侍」では燃やされる農家のリーダー格)
      河野秋武 (續・姿三四郎の敵役)
      若山セツ子 (戦後、大ヒットした「青い山脈」のヒロイン)
      高堂国典 (「七人の侍」の村のじさま、「ゴジラ」では島のじさま、「野良犬」ではアパートの耳の遠い管理人)

 銀行強盗三人組が北アルプスの温泉へ逃げ込んだ、追う警察、強盗犯達は警察を察知、尚も奥地へ、雪崩で一人を失うも小さなスキー小屋へ辿り着く、そこは清浄な山々と住人、客の居る場所だった・・・。

   映像はこれしか無くて https://www.facebook.com/1901339263216388/videos/1953399401343707/
    三分の二くらい延々と山スキー、出てるのは順番に若山、河野、志村、高堂で三船はここには出ていません。
    五竜かなと思ったけど八方尾根らしい、スキー行った時の何となく見覚えのあるような地形はある。(僕達が行く40年前でリフトも何もない時代だけど)

 戦前、P.C.L(東宝の前身)の専属監督だった山本嘉次郎組の助監督達は最早、伝説と言っていいくらい、ファースト助監が谷口千吉、セカンドが「ゴジラ」の本多猪四郎、そしてサードが黒澤明。
 その谷口千吉の監督デビュー作である本作、山男でもあった谷口が「銀行強盗が北アルプスに逃げ込んだら」という構想を黒澤に話して彼が兄弟子の為に脚本を書いた、確か最初のタイトル(仮題)は「山小屋の三悪人」(「隠し砦の〜」でも書いたけど黒澤さん三悪人って言葉が好きなんだよね)だったと読んだ気がする。日本を代表する俳優 三船敏郎のデビュー作でもあります。

 兎に角、昭和22年の作品とは思えないくらい画質が綺麗(リマスターしたのでしょう)、音声に関しては東宝だから(笑)、まぁ、僕は殆ど聞き取れましたけど。(昔観た「酔いどれ天使」より数倍音は良いと思う)
 物語は黒澤ヒューマニズムが滲み出てるけど、その性質は「酔いどれ天使」と同工異曲と言っていいでしょう、山小屋の純真な娘、若山セツ子と「酔いどれ〜」の久我美子がダブって見えます。
 それ言っちゃうと、本作の三船は「酔いどれ〜」の根っからの悪でヤクザの親分だった山本礼三郎の立ち位置と似たもんだし、志村喬の強盗犯リーダーは悪になりきれない松永(三船)で、その志村の演じた酔いどれ医者の位置にいるのが山男の河野秋武(こっちは毒のない善人だけど)かな。

 演出は少しモッサリしてる所はある、でも、デビュー作として充分過ぎるほどの出来だったと思います、本邦初かもしれない本格的山岳映画でかなり危険な撮影もしてるように見える、新人監督がこれだけ撮影部や照明部に仕事させたというのはP.C.Lの名物男と言われるほどだった谷口さんに、スタッフからの信頼があったからなのでしょう。
 「上手いな」と思ったのは発端の銀行強盗をOPのタイトルバックの短い時間で済ましてしまう所、それも壁に写る影で(もっとクッキリ出来れば「第三の男」なみだった、惜しい)、ここは黒澤明の脚本術「まず核心にズケズケと切り込む」を本人が実践してる訳で谷口さんの手柄ではないのだけど、でも、そのお陰で最初のシーンは松本か大町あたりの警察署で「三人組の強盗犯が山に逃げ込んだ」とスピーディーに話が進められるんですよね。

 尚、本作は「ゴジラ」で有名な作曲家 伊福部昭の映画初仕事であり、ここに使われた曲は少し変えられて「空の大怪獣 ラドン」に流用?されてます。

※編集は黒澤明もやっていて、ある日、ラッシュで崖にしがみ付く男の尻ばかり延々と映ってるフィルムがあり黒澤がハサミを入れると、「この下は300mの絶壁なんだぞ、凄い所でな、撮影するのにどれだけ苦労したと思ってんだ!」と血相変えたクレーム、黒澤が一言、「お客が男のケツ見て喜ぶのか」とチョキ。(上記の映像の最後の方に出てくる崖シーンの出来事のような気がする)

 R2.8.14
 DVD

「1917 命をかけた伝令」

2020-08-15 21:20:43 | 映画日記/映画雑記
 「1917 命をかけた伝令」(「1917」、2019年、英・米)
   監督 サム・メンデス
   脚本 サム・メンデス   クリスティ・ウィルソン=ケアンズ
   撮影 ロジャー・ディーキンス
   音楽 トーマス・ニューマン
   出演 ジョージ・マッケイ
      ディーン・チャールズ=チャップマン
      コリン・ファース  ベネディクト・カンバーバッチ

 スクロールゲームのような作品。

 第一次大戦の西部戦線、ドイツの功妙な戦略的撤退に惑わされたイギリス軍、しかし、攻撃直前に罠と気付く、明朝のデボンシャー連隊の総攻撃が開始されると大兵力の反攻突破で連隊のみならず戦線維持すら危うくなってしまう。電話線を尽く切断された今、危機を連隊に知らせる為、二名の兵隊に伝令を託すしかなかった・・・。

  予告編 https://www.youtube.com/watch?v=GyGosOlFlZE

 ワンカット風に作った作品、それによってリアルな臨場感を得ようとしたのだろうか、が、ワンカットという制約が有れば主人公たちが目的地に到達するのが約束されてしまう(偶然、居合わせる味方に託すというテはあるが)、二人ともやられちゃったら映画、そこで終わっちゃうもの。
 となると、道中のイベントで終わりまで持ってく事になる、これが、最初はいいとして、段々、ネタ切れなのか、偶然、出会う味方部隊、何故か助けてくれるドイツ女性、この為に持たせたような赤ん坊のミルク、遮るものない壊れた橋の欄干をソロリソロリと進み、まるで射的の的状態なのに当たらない敵の弾、ご都合主義のオンパレード、死んじゃ困るとはいえ昔々のハリウッド戦争映画を見てる気になってきた、違うのは映像の綺麗さと多少のリアリズムくらい。
 評判良いけど、本当にこれでいいの?(汗)
 ラストシーンもね、OPシーンとの対比なんだろうけど極めて安直、戦争の無情さを描きたいのは判るが感傷に過ぎる、戦争は終わらないのだからOPと同じ数にした方が「やるせなさ」が感じられるのではないでしょうか。カンバーバッチ演じる大佐が言うように「明日になれば、また、同じような事が繰り返される」のだから。

 飽きずに面白くはあるけど、ゲームと同じで終わってしまえば用済みのような消耗品、そんな感じの作品でした。

※今日観た「突撃」でも思ったが、女を出さなきゃいけない掟なんぞないだろうに。

 R2.8.9
 DVD

「誓い」

2020-08-11 15:11:32 | 映画感想
 「誓い」(「Gallipoli」、1981年、豪)
   監督 ピーター・ウィアー
   脚本 デビット・ウィリアムソン
   撮影 ラッセル・ボイド
   音楽 ブライアン・メイ 
   出演 メル・ギブソン (フランク)
      マーク・リー (アーチー)
      ビル・カー
      ロバート・グラブ

 「1917 命をかけた伝令」を観たので、似た部分があるという本作を。

 1915年、地方で一番速い足を持つ18歳のアーチー、彼は地方大会で優勝した後、念願だったオーストラリア軍に志願して欧州戦争に参戦しようとするが3つ年齢が足らずハネられる、そこへレースで二番だったフランクが別の街なら大丈夫だと・・・。

  予告篇 https://www.youtube.com/watch?v=CT1JHKpSHXA 
 
 近代要塞や機関銃陣地への突撃は悲惨極まる事になる、日露戦争時の旅順攻略戦で日本は骨身に滲みるほど理解した、しかし、欧米は陥落させた乃木将軍を讃えはしたが、海軍と違い陸軍は極東の僻地で起きた蛮族のレアケースと認識したに過ぎなかった。
 その優越意識の莫大な代償を欧米は欧州大戦(第一次世界大戦)で払う事になる、彼らは日本の何倍もの将兵を無知、無能な突撃戦で機関銃の餌食にさせた。

 この作品を観ると、旅順攻略戦は世界にとって遠い縁ない国のお話、紙芝居のようなものに過ぎなかったんだなと。
 欧州兵も主人公達オーストラリア人も戦争のイメージは牧歌的な中世っぽいものを少し出た程度、精々、ナポレオン時代のものだった、大砲の撃ち合いの後、前進して鉄砲の一斉射撃、そして騎兵と歩兵の突撃。近代戦がどれ程、残酷で個人の尊厳とまるで関係ないものだと知らなかった。
 現代から見ると主人公の一人、アーチーの戦争に行きたがる気持ちが安易に見えて仕方ないのだけど、当時の小説にあるような「危険な冒険に挑む」くらいの感覚だったのでしょう、「長閑だね」とは今だから言える事。
 でも、アーチーの戦争への憧れのような動機が余りに漠然としてるので1時間以上、映画の推進力が足りず散漫な印象を受ける、この話がアーチーとフランクの友情物語だとしても。
 ラスト15分がいいだけに何か工夫が必要だったんじゃないでしょうか。
 僕はファーストシーンが失敗だった気がします、プロローグでも何でもアーチーの戦争への憧れを最初に印象付けておいた方が以後の行動に納得出来る様になったと思う、確かに走る練習の「気合い入れ」がラストに回収される訳だけど、それはセカンドシーンでも充分だったでしよう。
 悲劇としか言いようのない絶望感とその中でのアーチーとフランクの友情、そして「走れメロス」のような熱い仁義、ラスト20分くらいは本当に見せてくれます、見終われば漠然とした1時間も意味あるものと解るのだけど、やっぱり、もっと、やりようは有った気がしてなりません。
 あと一つ、この作品はオーストラリアによるオーストラリアの為の映画でしょう、移民国家であるオーストラリアやニュージーランドの国民が初めて一つになったアイデンティティを確認する為の物語。それが前半、中盤とアジア人にはイマイチな原因かもしれません、最後の生死を賭けた友情の部分は万国共通だから我々にも響く、そういう事なのかなと思いました。

※この突撃戦は大日本帝国の特攻隊と同じだ、遺書、遺品を塹壕に突き刺していくシーンは、学徒出陣兵の「きけわだつみのこえ」や普通の特攻隊員の遺書を読むような気がしました。
※これ、現実だったら悲惨極まる、若気の至りとはいえ偽名、年齢詐称で志願してるから、戦死しても恩給渡す先が解らないし、戦死者名簿にも本名でなく偽名でしか残らない、最早、遺品と戦友の証言だけだけどこの部隊で生き残るのは難しい、戦争はまだ何年も続く。
※原題はオーストラリア軍が初めて国として参戦した第一次世界大戦で上陸したトルコ帝国の地名、オーストラリアにとっては多くの戦死者を出した聖地であり、公費による巡礼が長く続けられた場所、尚、この作戦の大失敗でチャーチルは最初の失脚をしました。

  間に合わず 突撃の笛 鳴り響く
   我れを恨めと 我れを恨めと

 R2.8.10
 DVD

「フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛を込めて」

2020-08-05 13:50:44 | 映画日記/映画雑記
 「フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛を込めて」(「Fisherman's Friends」、2019年,英)
   監督 クリス・フォギン
   脚本 ニック・モアクロフト  メグ・レナード  ピアーズ・アシュワース
   撮影 サイモン・ティンドール
   音楽 ルパート・クリスティ
   出演 ダニエル・メイ
      ジェームズ・ヒュアフォイ
      タペンス・ミドルトン
      テイブ・ジョーンズ

 古い時代に生まれた土地土地の歌にはその国固有のリズムがあるという。
 ヨーロッパは概ね騎馬民族だから馬の走ったり歩いたりするリズムが基本、日本は農耕民族なので田植えや刈り入れの作業に適したリズムで皆の動作を合わせる為か「ハァ」、「ホレ」、「ソリャ」みたく合いの手が入る、沖縄やハワイのような島は寄せては返すゆったりした波のリズムが顕著。
 10代の終わり頃、朝5時に深夜放送が終わり、付けっ放しにしたラジオから民謡が流れてきた、宮城の「大漁唄い込み」(♪エンヤートット、エンヤートット♪)、それはよく聞く整った綺麗な唄でなく、綺麗な着物着て歌ってるようなものでもなかった、荒々しく強いリズムの当に漁師が力一杯網を取り込む為の労働歌だった、「確かに重い網を引き揚げるには、この力強さとリズムだよな」と、その時、心底思った、北海道の「ソーラン節」も目的は同じだから元を辿れば、きっと、似たようなものだったのだろう、あれで僕の「民謡」という概念が確実に変わった。

 この作品はイギリス南西部、ドーバー海峡に面するコーンウォール地方が舞台で、ゲルマン大征服にも屈しなかったという独立心の強いイギリスにあってイギリスでないような地域の出来事、実話をヒントにしてるそうですが、映画としては、よくあるタイプの話でした。

 ロンドンの音楽会社の数人が息抜きでコーンウォールの港町にやって来る、そこの漁師たちが港で恒例のコーラスを披露すると、それを聞いた重役が「素晴らしい、お前、契約してこい!」とプロデューサー1人を残して帰ってしまう、それは都会だから許されるタチの悪い冗談だった・・・。

  予告編 https://www.youtube.com/watch?v=Itcpgazw7iA

 漁師たちの歌う素朴な民謡がロンドンでヒットしてしまう、材料が違うだけでお決まりのパターンではありますが、それなりに面白く、その安定感は定石の強みでしょう。
 他人の結婚式でアレしちゃうというのは、都会のジョークと田舎のジョークの対比なのかもしれないけど、我々から見るとどちらも悪趣味、でも、ロンドンのパブで客たちと意気投合して大コーラスとなるのは、イギリスの民謡の素朴さと力強さが感じられてとても良かった。
 あと一つ、事実というのは大概、面白くも可笑しくもないものだからドラマを作って盛り上げようというのは判るけど、パブの売り買いの件は少し人為的に感じられたかな。

 悪くはないと思うけど中庸を脱するまでには至っていないと感じました。

※ヒロインの人、「わたしは、ダニエル・ブレイク」の人かと思ったら違った、「おみおくりの作法」もあんな感じだったような、イカン、最近、イギリス顔が同じに見えてしょうがない。(汗〜予告編のOP、挨拶してる人がダニエル・ブレイクの人ではあった)
※原題はこの漁師バンドの名前、その元ネタは潮風から喉を守る為に漁師たちが好んで舐める強烈なミント味トローチの事だとか。

  北風に 潮の香りも 濃くなりて
   明日は時化かと グラス重ねる

R2.7.12
DVD