セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「イントレランス」

2015-01-05 23:32:19 | 外国映画
 「イントレランス」(「Intolerance」・1916年・米)
   監督 D・W・グリフィス
   脚本 D・W・グリフィス
   撮影 ビリー・ビッツァー
   美術 ?(誰だ!このキチガイ(笑))
   出演 リリアン・ギッシュ
       メエ・マーシュ
       ヴェラ・ルイス

  淀長さん風に言えば、
 「見ましたか、あのセット、あのスペクタクル!これが100年前の映画なん
て信じられませんね」
 いや、ホント、「バビロン編」の攻城戦なんて1959年の「ベン・ハー」が思い
っきり霞んでしまう出色のスペクタクルと言っていいでしょう。
 城壁に迫っていく巨大なタワーと攻防、壮大な広場のセットと群衆。
 100年前だから出来たのかどうか解らないけど、「見た事もない」という表
現が100年後も希釈なしに、そのまま当て嵌まる凄いシーンの数々。
 吃驚しました。(笑)
 只、この「バビロン編」の吃驚のお陰で3時間近い時間、興味が続いたとい
うのも少しだけど事実。
 日本人にとって、かなり宗教色が強く、向こうの「宗教史」に疎い身には話
自体に入りにくい所があると思います。
 撮影手法、文法は余り強くないので深入りはしませんが、殆どの雛型が百
年前に作られていた事を知る、いい機会になりました。

 「イントレランス」とは「不寛容」という意味とか。
 Wikには「人間の不寛容」と書いてありますが、これは故・山本夏彦氏の言
う「正義の不寛容」だと僕は感じました。
 正義は「正しい」と思う故、不純分子を排除しつつ純化・尖鋭化し、「正しい」
故に止められず暴走し、やがて人間にとって大不正義になる。
 山本氏は簡単に「賄賂は国を滅ぼさぬが、正義は国を滅ぼす」の18文字
で表現しています。
 その現象として一番解りやすいのが宗教で、本作でも四つのエピソードの
内、三つが宗教絡み。
 ただ一つ「現代編」だけが違うのですが、他がみんな宗教絡みなので、これ
も無実の青年は、もしかして「フランス編」の逆、プロテスタントに囲まれた少
数派カトリックなのかと思ってしまいそうでした。(笑)
 「現代編」、ちょっと甘い結末ですが、100年前ですから瑕疵にはならない
と思います。
 何にせよ、凄い作品である事に間違いはありません。

※100年前だと裸もスプラッターもOKなんだ。
 槍で串刺しの生首は「ソルジャー・ブルー」を思い出した。
※「10分の時間には10分の物語(出来事)しか入らない」
 「時間の芸術」とも言われる映画の作劇法をハリウッドは殆ど無視しますが、
 既に100年前から無視してたんですね・・・。
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12 コメント

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Unknown (宵乃)
2015-01-06 07:34:03
>山本氏は簡単に「賄賂は国を滅ぼさぬが、正義は国を滅ぼす」の18文字
で表現しています。

これはわかりやすいですね~。
わたしもこの作品は宗教色が強くてとっつきにくかったです。というか、睡魔と闘うのに忙しくて、ちゃんと観たとはいえないんですが…。
バビロン編も小さい画面では迫力半減だったので、いつか大きな画面で再見したいです。
美術担当さんは歴史に残る仕事をしました(笑)

>100年前だと裸もスプラッターもOKなんだ。

これはわたしも思いました。結構、女性の露出度高かったですよね。
お色気目当てで観る人はいなかったのかな?(笑)

今回もご参加ありがとうございました♪
返信する
Unknown (鉦鼓亭)
2015-01-06 22:22:54
 宵乃さん、こんばんは
 コメントありがとうございます!

睡魔と闘うのに忙しくて>
3日に呑み疲れで少々ダルイし、長いからベットで横になって観ようとしたら(1年でも、こういうスタイルで観るのは1,2本)、10分で眠気が来て15分でギブアップでした。(笑)
映画で途中ギブアップなんて、2年振りです。
翌日、根性入れ直し、ちゃんと座って、しっかり観ました。(汗)

お色気目当てで観る人はいなかったのかな?(笑)
>そのシーンまでに爆睡!に1票。(笑)

率直な感想は、吃驚!でした。
企画のお陰で、いいモノを観させてもらいました。
感謝!です。
返信する
昨夜はコメントを有難うございました☆ (miri)
2015-01-07 14:34:56
>何にせよ、凄い作品である事に間違いはありません。

仰るとおりですネ~。

>美術 ?(誰だ!このキチガイ(笑))

美術監督の件ですが、
もし機会があれば「グッドモーニング・バビロン!」という映画を
是非、ご鑑賞なさる事をお薦めいたします☆

もちろん後世の方がお考えになった事でしょうけど、
「きっとこうだったんだろうな~」と納得できる、この映画の製作過程を
若い映画人 (美術・女優・その他いろいろ・そしてグリフィス監督)の目線で描かれています。
(その映画の内容は、それだけではないのですが、例のセットやら何やらも出てきます)

私はこの映画の「内容の詳細」は、最終盤のベツレヘムの3本の十字架以降以外は
あんまりハッキリとは覚えていないので
万一いつか再見したら、その時は宜しくお願いいたします☆


.
返信する
いらっしゃいませ! (鉦鼓亭)
2015-01-07 22:48:08
 miriさん、こんばんは
 コメントありがとうございます

美術監督の件ですが、
もし機会があれば「グッドモーニング・バビロン!」という映画を
是非、ご鑑賞なさる事をお薦めいたします☆
>いつか機会が有ったら観てみたいと思います。

あの重量に耐えられる設計、意匠、本当に素晴らしい!
でも、本物ではなく、あくまでセットなんですよね。
僕が役者だったら「いつ崩れるか解らんよなァ」と恐怖です。(笑)

映画では眠くならなかったのですが、観終わった後、「サン・バルテルミの虐殺」って何だっけ、とwikで調べたら、長く複雑で最後の文章に辿り着くまでに、かなり眠くなってしまいました。(笑)

万一いつか再見したら、その時は宜しくお願いいたします☆
>こちらこそ宜しくです。
返信する
監督はすごい人ですほんと(笑) (ポール・ブリッツ)
2015-01-08 21:11:33
まあ「気力体力充実」しているときに見る映画かもしれませんね。(^_^;)

わたしは眠くなる暇もないくらいすごく面白かったのですが。

バビロン攻城戦と現代の裁判がオーバーラップする終盤のサスペンス、どきどきしながら手に汗握って見ました。あの演出は「国民の創生」でもやっていたけれど、ほんとどきどきします。

セットですけど、あれはほんとに気合い入れて作ってますよねえ。攻城塔の大きさを人間をスケールにして考えると、バビロンの城塞も含めて、「バカだろ! 監督も、美術も、バカだろ!」であります。そのうえに攻城塔が倒れるシーンでは、当時は発砲スチロールすら存在しないことも考えると、「バカだろ! 監督も、美術も、バカだろ!」だなあ(笑)

グリフィス監督がやりほうだいにやっていて、これはもう、二度とこんな映画作れませんね。「ロード・オブ・ザ・リング」のスペクタクルシーンもこの映画のパクリのように見えてくる。

こんな映画を百年も前に作るような国にケンカふっかけたんだから、やっぱり太平洋戦争は負けるべくして負けたんだなあ、などといらん感慨を(^_^;)

元は八時間あったのを不承不承三時間にカットさせられたそうですが、シネコンのゆったりした席でハンバーガーとコーラ食べ放題のコースつきなら、その八時間バージョンも見たいような見たくないような……。(笑)

不寛容に、すべて宗教がからんでいるのが、監督の問題意識をあらわしていると思います。現代編も、その不寛容を象徴するのは「進歩思想」という一種の宗教ですし。

今度、YouTubeで音楽つきのデジタルリマスター動画を見てみようかな。
返信する
いらっしゃいませ! (鉦鼓亭)
2015-01-08 23:31:24
 ポール・ブリッツさん、こんばんは
 コメントありがとうございます

ちょうど企画期間中に風邪をこじらせ入院してしまったので、遅刻参加になりました。
理屈っぽい事を書きましたが、ちゃんと面白かったですよ。
(慣れた後は(汗))
でも、8時間は無理かな。(笑)

攻城塔が倒れるシーンでは~ 監督も、美術も、バカだろ!」>
タワーが倒れたシーンに一番吃驚しました。
丸太を出して来た時、「倒されるな」と思ったのですが、丸太攻撃→タワーの兵士達の恐怖顔→地表に砕けたタワーと散乱する死体、みたいにカットを割ると思ってたら、本当に倒すし、倒れてくる方向にカメラが居るし・・・。
壮大なバカを観るのは、実に清々しいものです。
個人的には「ベン・ハー」の戦車戦なんて目じゃない面白さでした。

「進歩思想」という一種の宗教
>成程、納得しました。

伝説の作品とは言え、3時間近いサイレント映画、多分、企画に乗せてくれなければ一生観る事もなかった気がします。
良いものを観させて頂きました。
感謝、感謝!です。
返信する
Unknown (take51)
2015-02-16 21:20:34
こんばんは!!
いや~、本当に凄い映画でした。
見終えるのに相当の時間を要しましたが。。(^▽^;)

>「見ましたか、あのセット、あのスペクタクル!これが100年前の映画なん
て信じられませんね」

信じれらません(笑)
僕には古代エジプトでピラミッドが作られた衝撃くらいの
印象があります。あのセットを作ったメイキング映像なんて
残ってないでしょうか??(^▽^;)

>日本人にとって、かなり宗教色が強く、向こうの「宗教史」に疎い身には話
自体に入りにくい所があると思います。

頭に入ってきてない部分が宗教色の強かった部分なんでしょうね、、
よく分からない部分が結構あったように思います(笑)

>※100年前だと裸もスプラッターもOKなんだ。

この辺はプロジェクターで見ると全体がモザイク映像のような
感じで細部が分かりずらかったです。TVで見直そうかな??(笑)

いずれにせよ、これは凄まじい映画だと思いました!
内容を理解しきれないのが残念です。

もっと残念なのは、あまりに凄いセットのせいで
映画自体の素晴らしさが伝えきれてないような気がします、、(^▽^;)

返信する
鉦鼓亭 (鉦鼓亭)
2015-02-16 22:57:59
 take51さん、こんばんは
 コメントありがとうございます!

見終えるのに相当の時間を要しましたが。。(^▽^;)
>お疲れさまでした(笑)。
ミッション・コンプリートした方には、「おお、同士!」と肩を叩きたくなってしまいます。
DVD借りてる間、弟に貸したのですが、
「1時間、我慢したけどギブ・アップ!」の伝言と共に返って来ました(やはり宗教的な所がツラかったみたい)。

よく分からない部分が結構あったように思います(笑)
>フランス編の所、高校の世界史の授業で聞いた事が有るような無いような・・・。
wikで確認してみたのですが長い長い。
読んでる内に眠くなってきて、結果は概略だけ「何となく」理解して、「どうでもいいから、この項、早く終われ」でした。(爆)

もっと残念なのは、あまりに凄いセットのせいで
映画自体の素晴らしさが伝えきれてないような気がします、、(^▽^;)
>解ります!!
あと、もう一つ。やっぱり、外国の金持ちは桁違いの金持ちなんだなと再確認しました。(笑)
返信する
Unknown (ポール・ブリッツ)
2017-03-05 23:48:07
探したら「グッド・モーニング・バビロン!」GYAOでネット配信されてた(^^;)

http://streaming.yahoo.co.jp/p/y/00908/v13702/

GYAOのストアで1週間432円という微妙な金額。

GYAOはアニメの無料配信を見る以外では使ったことがないので字幕があるかどうかも分からない(^^;)

来月あたり、ブログDEロードショーで、432円払える有志を募って企画やりましょうか。そうでもないと一生見ないと思うので(^^;)

返信する
Unknown (鉦鼓亭)
2017-03-06 09:00:26
 ポール・ブリッツさん、おはようございます

「人魚伝説」
最後は「必殺シリーズ」か「修羅雪姫」のパターンで〆かなと思ったらやっぱりでした。(笑)
残念ながら僕には合わなくて・・。(汗)
何だかここ連続でリクエストした方の気分を害するような事ばかり書いていて、心苦しく思ってます。
ごめんなさい。

 「グッド・モーニング・バビロン!」
初見の映画をPC画面で見ないと決めているので。(汗)
只、代官山の蔦屋に在庫があったのでGWになら観られるかもしれません。
別の作品の事もあり、いつか代官山ヘ行かなきゃならないと思っていたんです。(家から15k離れた所ですが、最近、出不精なもので(笑))
それで宜しければ後追いになりますが予定に入れてみます。
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