セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「L.A.コンフィデンシャル」

2012-07-22 22:49:56 | 外国映画
 「L.A.コンフィデンシャル」(「L.A.Confidential」1997年・米)
   監督 カーティス・ハンソン
   脚本 ブライアン・ヘルゲランド
       カーティス・ハンソン
   出演 ガイ・ピアース
       ラッセル・クロウ
       ケヴィン・スペイシー
       キム・ベイジンガー

 現代のスピード感溢れる「三つ数えろ」でした。
 早い分、又々、沢山の名前に振り回されて・・・。(笑)

 今回は、結果から先に書きます。
 作品的には出来の良い作品だと思います、ただ、好きにはなれない作品で
した。
 読んで気分を害する人も居ると思います、そういう方は、ここから先、スルー
をお願いします。
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 僕は、それ程「キレイ事」に拘る人間じゃないですけど、しかし、これは汚いハ
ードボイルドでしたね。
 カタルシスは殆んど感じられないし、感情移入できる人間が一人も居ない、し
いて挙げればK・ベイジンガー演じるリンくらいでしょうか、ハードボイルドなのに
男の誰にもシンパシーを感じられない。
 現代の「ハードボイルド」は、こういう形なのでしょうか。

 登場人物全員が「腹に一物」で一筋縄でいかない人間ばかり(売春組織のボ
ス、ピアスが一番マトモに見える)。
 それは、良いんです、警察組織がヤクザ組織とカードの表裏というのも現実だ
し、変に安っぽい正義感を振り回さないのも良い。
 でも、多少のワルでも別の面で差し引きゼロ以上っていうような奴が一人も居
ないのも・・・ねぇ。
 正義感が強すぎるくらいで頭も切れる、でも、異常な程の上昇志向な奴。
 自分のトラウマを理由にキレっぱなしで、理性より感情、感情よりゲンコが早い
奴。
 目立ちたがりで、小遣い稼ぎに忙しい奴。(こいつが、三人の中では一番マトモ
?)
 そんな3人の「男の物語」と言われても、正直な所「巻き込まないでくれ!」。(笑)

 エド警部補がダドリー警部に冒頭聞かれます、
 「起訴を確実にするために、証拠を捏造できるか?」
 「暴力で自白を強要できるか?」
 「更正の望みのない犯人を背後から撃ち殺せるか?」
 「ノー!」と答えるエド。
 だが、警察組織の日常は、この3点の実践上にあり、ジャック、バド、そして「ノ
ー!」と答えたエドまでも・・・。
 その行き着いた先が、エドのニンマリ笑いながらの台詞、
 「もう一人、英雄がいた方が世間は納得します」
 ダークだなぁ。(笑)
 鈍感で人の良い(笑)僕は、「俺を始末しても、もう一人いるぞ(バド~絶対、生
きてると思った)」とお偉方を脅してるのかと誤解してしまいました。
 「黙ってるから、出世させろ」の意味だったのね、イヤハヤ。(汗)
 30年したら、エドは、あのラスボスより巧妙で危ない人間になるんじゃないかな、
あの人だって昔はエドみたく使命感に燃えていた気がするんですよね。

 そんな訳で、今回は「毒吐き」ばかりになってしまいました。
 すいません。

※ダドリー警部がバドの去っていくのを見て、
 「これでエクスリーはやつが殺してくれる」の台詞は必要ない。
 あそこは「せせら笑う」表情で充分、後のシーンでエクスリー自身が説明してる
 のだから。
※ガイ・ピアース演じるエドが「相棒」の杉下右京に似ていて。(笑)
 尤も、こっちは右京さんと違って行動型でしたけど。
 右京さんも苦手と言うか嫌いだなァ、「真実」が全てを解決するって思想が共感
 できない。
 
コメント (10)
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「アザーズ」

2012-07-18 22:29:12 | 外国映画
 「アザーズ」と「シックス・センス」、どちらを書こうか随分迷ったのですが「ア
ザーズ」にしました。
 このアイデアを使ったのは「シックス・センス」の方が早いので、本来ならば、
そっちを書くべきなのですが、その分、ちょっと強引というか反則してる部分
が2ヶ所あるのが気になりました、ただ「アザーズ」もネタばらしの伏線なのか、
旦那のタイミング良い帰還という出来すぎをやっていて、少々、あざとい所が
あります。
 結局、何度でも見れる作品はどちらか?が決め手になりました。
 (「B・ウィリス見てるよりN・キッドマンを見ていたい」と正直に言え!(笑))

 「アザーズ」(「THE OTHERS」2001年・米・スペイン・仏)
   監督・脚本・音楽
       アレハンドロ・アメナーバル
   美術 ベンジャミン・フェルナンデス
   出演 二コール・キッドマン
       クリストファー・エクルストン
       アラキナ・マン
       フィオヌラ・フラナガン

 第2次大戦末期、出征中の夫の帰りを待つグレース(N・キッドマン)と二人
の子供、その3人が住むイギリスの何処かの島にある孤立した古い大きな
屋敷。
 娘のアンと息子ニコラスは光アレルギーの為、夜しか外へ出られない閉塞
生活を送っている。
 窓という窓は厚いカーテンに覆われ、三人は昼夜を問わずランプが手離せ
ない。
 夫の助力が得られない中、先の見えない閉塞感に襲われながらも愛する子
供達の将来のため、教育と躾に没頭するグレース。
 それが、グレースをエキセントリックで例外を認めない頑なな女性に変えて
しまう。
 そんな時、使用人募集の広告を見たという得体の知れない3人の親子が訪
ね来て・・・。

 スタイルは本格的なゴシック・ホラーですが、至ってソフトなホラーですので
余程のホラー・アレルギーでなければ大丈夫だと思います。
 そもそも、この作品はホラーというジャンルを使った魂の救済物語であり、母
子の愛情再生物語なので、怖がらせてナンボという映画ではないのです。
 (ホラーの苦手な僕が全然、大丈夫でしたから)
 映像は美しく落ち着いていて、物語に溶け込んでいます。
 「魂の救済」というテーマも「シックス・センス」と共通してるのですが、映像は
舞台背景の違いもありますが、こちらの方が詩的でコントラストも鮮やかで好
感が持てます。
 更に、特筆すべきはN・キッドマンの美しさ。
 まさしくクール・ビューティそのものなのですが、エキセントリックで、視野狭
窄に陥り柔らかい母性を見失った母親を的確に演じていると思います。
 ホント、この映画、男どもにとっては美しいN・キッドマンを眺めてるだけでも
「元が取れる」のではないでしょうか。(笑)

 いよいよ夏本番を迎え、ホラー映画に最適な季節。
 でも、この「アザーズ」は季節を問わず見れる作品。
 ホラー映画の秀作だと思います。

ーーー(以下、補足事項。ネタバレに付き未見の方はスルー願います)---








※使用人は死んでも使用人、何という夢も希望もない設定なのでしょうか。(涙)
※子供達は死んで生前の病気とはオサラバ出来たのに、死んでから口が
 利けなくなった娘は、ずっとそのまま。
 これもあまりにも哀しすぎる設定。(涙涙)

 
コメント (7)
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「眼下の敵」

2012-07-15 01:16:14 | 外国映画
 「眼下の敵」(「The Enemy Below」1957年・米)
   監督 ディック・パウエル
   出演 ロバート・ミッチャム
       クルト・ユルゲンス
       アル・へディソン

 駆逐艦VS潜水艦。
 男なら、もう、それだけでワクワクしてしまいます。(笑)
 時代的背景を含め1957年製作の戦争映画として考えると、非常に珍し
い米独対等映画で、馬鹿なドイツ兵(勿論、日本兵、イタリア兵も)が出て来
ません、それだけで好感度UPです。
 (頼りにならないヒットラー崇拝者が出て来るのは「お約束」)
 お互いが、正々堂々と戦い、正々堂々と騙し合う。(笑)
 戦争なんて非常に陰湿で汚い殺し合いだと思うので、ちょっと綺麗事に過
ぎるんですけど、見方を変えれば、これは戦争映画の形を借りたスポーツ
映画、特にアメリカ人の大好きなアメフト(オフェンスとディフェンスに明確に
分かれてる)の感覚に似た映画です。
 「悲惨と破壊に終わりはない、頭を切り落としても、また、生える蛇だ」(こ
の戦争が終わっても、又、次の戦争が始まる、人間が居る限り争いはなく
ならない)という重いシニカルな言葉も有るのですが、観終わった後に感じ
る清々しさは、その言葉を越えて、戦争映画というよりもスポーツの好試合
を観た感覚と言って差し支えないと思います。
 頭脳、体力、忍耐、自分(達)の全てを賭けて対等の相手と戦う、この男に
とって望み得る最大の理想を、この映画は見せてくれるんです、だから究極
の男の映画とも言えます。女の人、一人も出て来ません。(笑)

 アメリカ新鋭駆逐艦の新米艦長は、新婚の妻をアメリカへ帰国させる途中、
Uボートの攻撃を受け目の前で妻を失った男。
 Uボートのベテラン艦長は、ヒットラーが始めた戦争で二人の息子を戦死さ
せられた男。
 と言って、二人の艦長共、相手を呪うより戦争を憎んでいて、戦場に居るの
は「国民の義務」と思ってる。
 そんな二人が広い大西洋の真っ只中で出会い、命を賭けて戦う。
 「巨大な相手に怯む事無く戦いを挑む」というのはアメリカ人の大好きなパ
ターン、この作品でも、胆力あるドイツの親父に立ち向かう若いタフガイとい
う構図で、それが踏襲されています。

 アメリカの新米艦長は出港以来、一度も艦長室から出ずにいて、皆に「船
酔いしてる素人艦長」と馬鹿にされているのですが、それを一発で逆転し全
乗組員の信頼を得る描写は(上手くいき過ぎですが)巧みで、前半部で一番
好きなシーンです。
 この映画「絶対、最後まで観るぞ!」と思ってしまう程、スカッとさせてくれま
す。
 また、ドンパチ→頭脳戦→ドンパチ→心理戦→ドンパチと続くので、物語に
緩急があり、それが一層面白さをアップさせてると思います。

 ただ、今の映画テンポからすると冒頭の掴み部分が少し長い気がしないで
もない、C・ユルゲンスは説明が要らないくらい一目で人物が解るのですが、
R・ミッチャムの人物設定には、ある程度の説明時間が必要で、その部分を、
もう少し手短に描けていたら尚良かったかもしれません。
 (僕は、ここで作った充分なタメが、中盤、後半に生きてきてると思うのです
が)
  駆逐艦の艦長にR・ミッチャム、対するUボートの艦長はC・ユルゲンス。
 二人とも役に嵌って好演ですが、特にC・ユルゲンスの親父振りは強く印象
に残り、彼の代表作に数えられると思います。

 戦争映画は絶対見ない!という方以外にお勧めの作品。
 傑作と言って良いと思います。

※ドイツ人が英語を喋ってるのが残念と言われますが、当時のハリウッド製
 作の戦争映画で、ドイツ兵がドイツ語を喋ってるのは殆んど無いと思いま
 す、それくらい目を瞑りましょ。(笑)
※潜望鏡を覗きながら「魚雷・・・発射!」(「torpedo・・・lose!」<これは女性
 の方には理解出来ないと思うけど、男は多分、一度でいいから言ってみた
 い(やってみたい)言葉。(笑)



コメント (4)
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