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セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「グランド・ブダペスト・ホテル」

2014-06-22 20:00:32 | 映画感想
 「グランド・ブダペスト・ホテル」(「The Grand Budapest Hotel」・2014年 独・英)

   監督 ウェス・アンダーソン  「ダージリン急行」
   脚本 ウェス・アンダーソン
   撮影 ロバート・D・イェーマン
   美術
   音楽 アレクサンドル・デスプラ
   出演 レイフ・ファインズ
       トニー・レヴォローリ
       シアーシャ・ローナン
       ジュード・ロウ

 6.21、日比谷シャンテにて(満員)。
 女性客多し、次にカップル、男一人客希少。(笑)
 殆ど前情報知らずに観に行ったのだけど、これって、そういうファン層なの?

 ベル・エポックも終わりに差し掛かる頃。
 ヨーロッパ東部に有る架空の国ズブロッカ共和国、そこに在る有名なリゾートホテル「グランド・ブダペスト・ホテル」。
 その名物コンセルジュと新入りベル・ボーイの絆を描く物語。

 独特な感覚の軽喜劇、コメディという程コメディじゃない。
 ミステリー・コメディだけど、そのジャンルでもない。
 「ツマラナイ?」と聞かれれば、「面白いと思うよ」と答えるけど、全面的に面白いとも言えない。
 非常に個性的なんですよね、「受ける」人にはモロ受けするタイプ、W・アレンより30%位間口が広い映画。
 何か、まだ消化しきれてないのだけれど、現在の率直な感想を書くなら、こう書くしかない。

 この作品、「大人の冒険童話」と僕は捉えました。
 実際、映画を観てるというより、(大人の為の)童話を読み聞かせられてる感じなんです。
 原作小説を映画化したと言うより、原作童話を、そのまま映像に焼き直したと言った感覚。
 コメディとしては、僕がこれまで観てきた感覚で言うとハリウッドとは違いますね。
 強いて言えば、笑いの取り方が大仰なのでフランス喜劇に近い感じがします。
 (監督はルビッチ他、古いハリウッドのスクリューボール・コメディを参考にしたと言ってますが、
余り、この映画を観て、そこへ辿り着けるとは思いません(笑~男と男で見れば、残滓はあるか
も。ハリウッドなら、どちらかと言うとB・キートンの乾いた感覚に近いような・・・)
 まァ、その辺は個人の感性にお任せします。

 大人の冒険童話なので、結構、スプラッター風味のシーンが有るのですが・・・。
 人と言われようと、僕は動物愛護精神に欠けてると自覚してます。
 それでも、あの弁護士の愛猫の最期は要らないんじゃないかな。
 勿論、コメディ・タッチだから、猫の死体だって「大の字」でストレートではない、偽悪的な「笑い」
に包まれてる。
 だからと言って、あのシーン必要なのかと言えば、首を傾げざろう得ないんですよ。
 窓から首を出した飼い主の表情で表現出来る。
 「嗤い」は、袋詰めの死体引き取りシーンで充分なんです。
 一点だけ、気に入らない所を指摘しておきます。


 すんなり忘れてくれそうもない、変に残る作品。

※エンドロールの途中から片隅に登場するコサック・ダンスが妙に可愛いくて、クレジットに目が行きませんでした。(笑)
 でも、コサックってウクライナの辺りだから微妙に位置関係が・・・。
※主役のレイフ・ファインズ、誰かに似てるとずっと気になっていたんだけど、やっと思い出した、「シャーロック・
 ホームズ」(グラナダ版)の初代ワトソン君だ!(笑)
コメント (3)
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僕の好きな映画音楽 Ⅷ

2014-06-19 22:31:41 | 映画音楽館
 アメリカと言えばミュージカルの本場。
 (西部劇かミュージカルか迷った・・)

 「ウエスト・サイド物語」(1961年)
   監督 ロバート・ワイズ
       ジェローム・ロビンス
   作曲 レナード・バーンスタイン
   作詞 スティーヴン・ソンドハイム

  「Mambo」
    キャピュレット家のパーティで二人が初めて出会う、
    あのシーンを現代に再現。
    エネルギーとインパクト有る曲調、それがラプソディー風に変わりカオスになる。
    R・バーンスタインの冴え!

      http://www.youtube.com/watch?v=II2uaRmlQNg

  「America 」
    群舞のシーンならこの曲。
    特に最後の1分、素晴らしいクオリティ!

      http://www.youtube.com/watch?v=YhSKk-cvblc

  「Tonight」
    これが歌えるくらい音域が有ったら・・・。
    (相手と英語力は問わない約束)
    本作を代表する名曲!

    残念ながら映像付きでは、これが一番長いみたい(終わりまで2分以上切れてます)

      http://www.youtube.com/watch?v=m7xTvb-FAhQ

    一緒に歌いたい方は

      http://www.youtube.com/watch?v=5_QffCZs-bg

    「Tonight」フルバージョン(但し映像なし~歌は1:25から始まります)

      http://www.youtube.com/watch?v=Txn1jbdW0fI

  「Quintet~Tonight」
    ジェット団、シャーク団、そしてアニタが歌う「決闘」、そこへ被さる
    トニーとマリアの「トゥナイト」、見事な五重奏。
    今迄観たミュージカルで、こんなに背筋がゾクゾクしたシーンはない。
    又、韻の踏み方が巧みなんですよね。
    「ミュージカルで一番印象に残るシーンは」と聞かれたら、「クインテッド」と答えます。

      http://www.youtube.com/watch?v=QpaS2v-r7cE

      
  「Cool」
    「アメリカ」がシャーク団の群舞なら、ジェット団の群舞は「クール」
    閉塞空間での抑圧と爆発。
    「アメリカ」に較べて短いけど、印象は「アメリカ」に負けないくらい、
    アクセントの女性陣が効いてます。
    男性陣だとR・ベーマーよりJ・チャッキリスより、何故かアイス役のT・スミスが気になる。
    そのT・スミスの一番の見せ場。
    (ちなみにN・ウッドもいいのだけれど、T・スミスの恋人役でシルバーブロンドの娘が一番
    好みかも(笑))
   
      http://www.youtube.com/watch?v=wugWGhItaQA

    
   この作品、7分の序曲から一度聞いたら耳から離れない口笛、そして「ジェット・ソング」、
   この流れが超絶と言ってほど好いのですが、余りに長いので割愛しました。
    
コメント (2)
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「ゴジラ 60周年記念デジタルリマスター版 」観てきたよ!

2014-06-14 23:01:20 | 映画感想
 最近、歳のせいか映画観てると、やたら泣けるんだけど、まさか「ゴジラ」観て涙が出てくるなんて
思いもしませんでした。(笑)

 ‘76.7.22に上板東映で雨だらけの「ゴジラ」を観たのが劇場初見、同じく’76.12.23、ゴジラ
にぶっ壊された旧「日劇」でリバイバル上映された「ゴジラ」、「ラドン」、「モスラ」の豪華3本立てを観
たのがスクリーン最後だから38年振りのスクリーン鑑賞になりました。
 こんなにクリアで光量の多い「ゴジラ」を観られるなんて・・・。
 もう最初の方で、鼻にツンと来てしました。(笑)
 ビデオ・DVDではイマイチはっきり解りかねるゴジラが初めて写るシーン。
 今回は壊される家の戸の向こうにハッキリと通り過ぎるゴジラの足が見えます。
 他にも潰された工場の中、通りすぎていく巨大な足も見えるし、パトカーがやられる直前、ゴジラ
がビルの上から顔を覘かせるのですが、そのビルの窓に人影がはっきり動いてるとか、佐原健二
見っけ!とか(笑)今迄見えなかったもの気付かなかったものが沢山見えました。
 勿論、戦闘機による攻撃の際のピアノ線もクッキリ見えるし、有名なゴジラの初顔出しシーンで山
の上部が揺れてたり高圧線鉄塔の土台部分が揺れてるとか、合成の甘さもデジタルリマスターの
お陰ではっきり解るマイナス面も有りますが、そんな事、このクリアで明るい「ゴジラ」の前では無問
題!!21世紀の今でなく昭和29年(1954年)なのですから。
 もうね、昭和29年の機材のない中、これだけの作品を作ってる事だけでホント涙腺が緩みます。
 「他にもB29の空襲で逃げ惑う人達って、こんなんだったんだろうな」とか、信じた女が裏切る瞬
間とか、それを知った芹沢博士の気持ちとか・・・、他にも社内試写会で「万歳!」の声が鳴り止ま
なかったんだよなって、決して「ゴジラ」フリークではないけど、子供の時から数え切れないくらい観
てる「ゴジラ」1954年版なもんで、クリアな映像に誘われるように色んな思いが沸いて来るのに抵
抗出来ませんでした。

 折角、こんなに綺麗な「ゴジラ」をリバイバルしてるのに、何で東宝は宣伝しないのかな・・・。
 今の人間に笑われたっていいじゃない、あの時代にこれだけのモノを創ったって堂々と胸を張れ
るし、コソコソ上映するなんて先人に失礼極まりないと思います。

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・前にも一度書いたけど、やっぱり宝田明と河内桃子は破壊的な下手さ。でも、今回観て、河内桃子
 の方が宝田明よりも余程酷いことに気付きました(以前は宝田明さんの方が酷いと思ってた)。
・自衛隊(まだ警察予備隊だったっけ)による爆雷攻撃の映像は当時のニュースフィルムだったのか、
 この部分だけはクリアに雨が降ってます。(笑)
・作品の内容に関しては皆が知ってる事だし、それぞれの思いがありますから書きません。
 が、一つだけミステリーだった事が。
 芹沢博士を決断させた、あのTV、誰が点けたんだろ・・・。(笑)
・35mmスタンダード作品ですから、なるべく前の方で観た方がいいと思います。
 スクリーンに近い方がゴジラの質感、圧迫感をより感じる事が出来る気がします。
 僕は前から3列目中央で観ました。繰り返しになりますがスタンダード・サイズですから余程の事が
 ない限り、スクリーンが視界からハミ出す事はないでしょう。
・今回の企画は7月公開の「GODZILLA ゴジラ」の前宣伝で、今日、スクリーンでその予告編を観た
 のですが・・・。
 ゴジラ、アメリカ行って脂モノ喰いすぎ、最早メタボだろ、あれは。(笑)
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「太平洋奇跡の作戦 キスカ」

2014-06-08 20:09:16 | 邦画
 ミッドウェイ作戦の陽動作戦として行われたアッツ島キスカ島攻略戦だった
が本作戦のミッドウェイで大敗を喫し、北方で置き去り状態になってしまう。
 昭和18年5月末、米艦隊及び上陸部隊の圧倒的攻勢によりアッツ島守備
隊2700人が玉砕。
 次は隣のキスカ島が攻撃目標となった。
 帝国海軍首脳は海軍守備隊が多数を占めるキスカ島の撤収作戦を決定。
 戦艦を含む30隻以上のレーダー完備の米艦隊に包囲され、制空権も無く
爆撃機、戦闘機の攻撃を受け続けるキスカ。
 そんな中、霧を只一つの味方にして弱小艦隊が撤収作戦を実行しようとし
ていた・・・。

 「太平洋奇跡の作戦 キスカ」(1965年・日本)
   監督 丸山誠治
   脚本 須崎勝彌
   撮影 西垣六郎 富岡素敬
   音楽 團伊玖磨
   特技監督 円谷英二 
   出演 三船敏郎
       山村聡
       中丸忠雄
       稲葉義男 田崎潤
 

 敗戦国日本の戦争映画で、この作品くらいカタルシスを感じるのは無いん
じゃないかと。
 偶然による局地的な成功、それも撤収戦なのですが、この作戦で5200人
の日本兵が一時的にせよ助かったのは事実で、その後の米軍の喜劇的な
行動と併せ爽快感を感じさせる映画です。
 (犬達を置き去りにしたのは、今の感覚で言えばアレでしょうが、生身の戦
争、それも崖っぷちの状況ですから、当時の感覚で言えば「仕方ない」の一
言で終了だと思います~偶然か動物の本能なのか、猛烈な艦砲射撃や空爆
にも関わらず犬達は生き延び、無事米軍に保護されました)

 この作品くらいショボい艦隊を主役にしたのは余り思い当たらない(笑)、戦
艦も空母も出て来ない、重巡洋艦も艦橋のデッキが写るだけで作戦に参加し
ない。
 登場するのは第5艦隊所属、第1水雷戦隊の軽巡洋艦「阿武隈」と駆逐艦
数隻、海防艦だけ。
 でも、この軽量さが却って映画では功を奏し、モノクロ、霧の条件を得て、中
々、リアルで見られるモノになっています。
 特に霧の中、単縦陣で進む艦隊、一番手前の先頭艦は流石に模型感が一
杯ですが後続の駆逐艦群は実際の駆逐艦のように見えます。円谷英二特技
監督の素晴らしい仕事振りです。
 俳優陣も戦隊指令の三船敏郎を始め藤田進、田崎潤、佐藤允、軍人演らせ
たら右に出る者なしの面々を山村聡、土屋嘉男、西村晃、中丸忠雄(珍しく良
い人)ら芸達者な人達が支えて、他、志村喬、稲葉義男、平田明彦(ああ見え
ても陸士出)、とにかく東宝男優陣総出演の豪華さは見ものだと思います。
 あ、女優さんは一人も出ていません。(笑)
 今の戦争映画と決定的に違うのは士官・将校の人達の顔付きと軍服の決ま
り具合ですね。
 みんな、本当にサマになってて、それだけで作品の重みが変わります。
 (「永遠の0」と較べてみて下さい)
 三船さんは、この後も山本五十六、東郷平八郎、阿南陸相、いろんな偉い軍
人を演じてますが、僕は、この作品の大村少将(史実では木村少将)が一番良
かったと思ってます。
 無口で謹厳実直100%、苦悩する司令官というのは三船さんの定番だけど、
その中では、この作品の大村少将が一番柔軟性を感じる事が出来て好きなん
です。
 
 「帰れば、また来ることが出来る」
 何でも最近「艦コレ」のゲーム?で、この台詞が有名になったそうですが、実際
に木村少将が言ったといわれる台詞を、本作の三船さんも、ちゃんと言っていま
すよ。(笑)
 他にも、
 参謀「乗艦を取り上げられ陸に上がり、缶詰工場に間借りしてる提督なんて、
    長い帝国海軍の歴史にも有りません・・・」
 5艦隊司令「ははは、外国にも無いだろうね」
 なんてシーンも好きですね。

 最後にアメリカの有名戦史家が米軍の本作戦を評した言葉を添えておきます。
 「史上最大の最も実戦的な上陸演習」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ちょっとオカルチックな話
 
 映画ですから史実とは多少違い脚色されてますが、史実では、
 26日に米艦隊が捉えたレーダー誤反射・誤認による、架空の日本艦隊に対
する総攻撃。
 レーダー反射の消滅により日本艦隊を撃破したとの思い込み。(霧が深く確
認が出来なかった)
 これによって弾薬・燃料不足が生じ、27日全艦一時帰港、再出港30日とな
ったのが米軍にとって致命的だったのですが。
 このレーダーの誤反射が何なのか、よく解っていない(一応、暗礁のような小
島を誤認したのではないか、という事になってる)。
 又、濃霧の中でのキスカ湾突入は危険極まりないものなのですか、何故か
湾内へ入る時だけ霧が薄くなって入港を容易にし、出港、湾外へ向かうと同時
に霧が深くなり艦隊を隠してしまったとか。
 先の幽霊艦隊といい、入出港時の幸運といい、キスカで助けられた人達は、
皆一様にアッツ守備隊2700人の霊が守ってくれたと思ったそうです。
 帰還する日本艦隊がアッツ島沖を通過する際、アッツ島の方向から「万歳!
万歳!」の声が聞こえたとも言われています。
 (アメリカ得意の「飛び石作戦」なのか、アラスカに近いキスカではなく樺太寄
りのアッツから攻めた)
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