セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「最高殊勲夫人」

2023-04-26 21:52:45 | 映画感想
 「最高殊勲夫人」(1959年、日本(大映))
   監督 増村保造
   脚本 白坂依志夫 
   原作 源氏鶏太 「最高殊勲夫人」
   撮影 村井博
   音楽 塚原晢夫
   出演 若尾文子
      川口浩
      丹阿弥谷津子
      船越英二
      宮口精二
      
 中堅商社三原商事の社長夫人に収まった丹阿弥谷津子は早速、亭主 船越英二(長男)を尻に敷き三原家の次男と自分の妹を結婚させる事に成功、そして、次に狙うのは大手商社に勤めてる三男 川口浩と末妹 若尾文子の結婚、それを察知した二人は姉の目論みに反旗を翻す・・・。

  映像(音楽は別物) https://www.youtube.com/watch?v=Q2lKYDyFu7g

 僕は二回りくらい離れてるから全然、時代じゃないけど6つ上の従兄弟が若尾文子の大ファンだったし、絶対TVに出ないと息巻いてた吉田拓郎さえ若尾文子と会えるならとドラマにゲスト出演した事もある、そんな、魔性のスターの魅力を探るべく鑑賞(嘘)。
 若尾文子さんのイメージは清濁何でもござれの演技力と際どい作風でも臆せず出演して作品を支配してしまう女優でしょうか、本作では彼女の陽性で溌剌とした健康美を堪能出来ます。
 この作品の一番の長所は日本映画では珍しくコメディとして、すこぶるテンポがいいこと、淀みなく滝川のようにスイスイと進んでいく、その分、深みはないけど軽喜劇として充分以上な合格点だし、そこに若尾さんの魅力が加わり非常に見易いものとなっています。
 只、今の時代に観るには余りに前時代的で昭和男の僕でさえ「それでいいのか」という感覚で合わせるのが大変、とにかく、物語の根幹が「女は結婚して早く子供産んで家を支配するのが幸せ」で、その為にはいい会社のいい男を如何に捕まえるか、それが全ての価値観という映画だから今の女性には到底受け入れられないんじゃないかな。(と思ったら、評判は良い)
 それと舞台が東京 丸ビルにオフィスがある中堅商社で主要人物は社長一族とその社長と結婚した平民一族、そしてライバルとして大手商社の社長令嬢、殆どが女子憧れの丸の内に勤める一流社員とOL(劇中はBG(ビジネス・ガール))、庶民が観るには少し胸糞な連中ばかり。(笑)
 そんなマイナス点に目を瞑れれば、そこそこ面白い作品だと思います。
 一番可笑しかったのは口八丁手八丁の丹阿弥さんが三男の婚約をぶち壊す為、乗り込んだ令嬢の本宅で応対に出た母親 東山千栄子に話すいと間を与えられず、おっとりと喋り続けられ撃退されてしまう所、上には上が居るのが面白かったです。それと、平凡なサラリーマンの親父を演じるのが抜群に上手い宮口精二さん(「七人の侍」の久蔵)、やはり、得意な役どころだけあって流石でした。

  縁故なら 一足飛びに 社長秘書
   やってられるか ビジネス・ガール

※増村保造監督は「大地の子守歌」(1976年)でトラウマ級の苦手意識を植え付けられてたから、中々、観るのに勇気が要りました。(汗)
※最近の省略ばかりの汚い日本語に囲まれてると、この時代の日本語が何と上品でお淑やかに聞こえることか、耳の浄化になりました。
※ビール2本までは正気、3本飲むと触りたがる、4本飲むとキスしたがる、5本飲むとホテル行きたがる男、6本飲ませるとどうなるのでしょう。(笑)
※知る人は少ないけどインパクトあるジャケット写真を含めカルト的人気を持つ作品のようです。

 R5.4.26
 DVD
 
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「水の中のつぼみ」

2023-04-25 16:46:21 | 映画日記/映画雑記
 「水の中のつぼみ」(「Naissance des pieuvres」、2007年、仏)
   監督 セリーヌ・シアマ
   脚本 セリーヌ・シアマ 
   撮影 クリステル・フルニエール
   音楽 パラ・ワン
   出演 ポーリーヌ・アキュアール
      ルイーズ・ブラシェール
      アデル・エネル

 アーティスティックスイミングのリーダー フロリアーヌ、彼女の事が気になって仕方ないマリー、やがて二人は親密になっていくが・・・。

  予告編 https://eiga.com/movie/53519/video/

 ソフィア・コッポラ監督「ヴァージン・スーサイズ」(2000年)と同じ感じがした。男の窺い知れない、触れてはならない女性の内緒話を聞いてしまったような居心地の悪さを感じる作品、男には解りづらい作品でした。
 Lと聞いてるからか監督の私小説のような作品に見えます、私小説的映画という意味ではグレタ・ガーウィック監督の「レディ・バード」とも似てるけど監督の性質なのか、こちらは静謐で陰がある。
 物語は思春期の少女の憧れ、その対象となった女神の崩壊と再構築を経ての失恋、脱却という事なのかな。もし、これが私小説なら孤高を保つ主人公マリーと品性に欠ける友人のアンヌは監督の心の分身でマリーとアンヌ二人が合わさってセリーヌ・シアマという一人の人格なのではないかと感じました、そして、もう一人の自分、アンヌを見下しているマリーの侮蔑的視線も正直に描いてる。
 プールに浮かぶ二人のラストシーン、厭がっても、結局、二人は切り離せない同一人物なのだと理解してみる事にしました。(汗)

 「燃ゆる女の肖像」を創ったシアマ監督のデビュー作、まだまだ深さも芸術性も産まれる前という感じだけど、静かに「見る側」と「見られる側」の葛藤という雛形は既に表れていると思いました。
 何にせよ、余り男が立ち入る世界ではないような。(笑)

  目に映る 心はなれぬ 人もみな
   時分の花か 蝶のうたかた

 R5.4.24 
 DVD
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「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」

2023-04-20 19:52:21 | 映画日記/映画雑記
 「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」(「WHAT WE DO IN THE SHADOWS」、2014年、ニュージーランド)
   監督 タイカ・ワイティティ  ジェマイン・クレメント
   脚本 タイカ・ワイティティ  ジェマイン・クレメント
   撮影 リチャード・ブルック  DJ スティップセン
   音楽 プラン9
   出演 タイカ・ワイティティ
      ジェマイン・クレメント
      ジョナサン・ブロー
      コリ・ゴンザレス=マクエル

 秀作「ジョジョ・ラビット」の監督だし、filmarksの点数も平均ながら「面白い!」と言う人も多いので期待して鑑賞。

 ニュージーランドのウェリントンの一軒家に379歳と183歳、862歳、8000歳の4人のヴァンパイアが住んでいる、それをヴァンパイアの許可を得てクルーが撮影、「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」のように各ヴァンパイアのインタビューを挟みながら彼らの日常を追っていく。

  予告編 https://www.youtube.com/watch?v=b8pLwYXj5ew

 駄目だ、殆ど擦りもしなかった、自分には何処が面白いのかさっぱり判らん、辛うじてシュールなコメディという事は理解出来たがそれだけ、評価してる人、ごめんなさい。
 面白くなりそうな素材と発想なのに全てが中途半端な感じがして勿体ない、いっそ、吸血鬼族とオオカミ族で「ウェスト・サイド物語」風ミュージカルにしてはっちゃければ面白くなったのかもしれない、救いは85分という時間だけだった。

  店減って TSUTAYAも遠く なりにけり
   期待はずれて ペダルが重い

 R5.4.20
 DVD
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