セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「はじまりのうた」

2015-02-14 22:04:19 | 映画日記/映画雑記
 う~ん、二兎を追うもの一兎を得ず、の感想でした。
 余り点数というのは付けないようにしてるのですが、5段階評価で3~3.5という所でしょうか。

 「はじまりのうた」(「BEGIN AGAIN」、2013年、米)
   監督 ジョン・カーニー
   脚本 ジョン・カーニー
   撮影 ヤーロン・オーバック
   音楽 グレッグ・アレクサンダー
   出演 キーラ・ナイトレイ
       マーク・ラファロ
      
 才能を見抜き売り出すノウハウを持つプロデューサー、ダン。
 しかし何年も不発で酒に溺れ、自分が作り大きくした会社からも追い出されてしまう。
 そんな時、素朴だけど訴える才能を持つソングライター、グレタを見つける。
 彼女は一緒に音楽をやってきた恋人に裏切られ傷心の真っ只中で、商業主義にも懐疑的だった。
 そんな二人がPVを製作する為、NYのあちこちの街中でゲリラ・レコーディングを開始する・・・。


 ざっと粗筋を書くと、こんな感じなのですが、そこへダンの崩壊寸前の家族再生という展開を同じ重量で入れた為、
どっち付かずになってしまった感じ。
 更にグレタの恋人でスターのデイブとの関係まで押し込むものだから、余計、散漫になる。
 この作品で一番いいのは、ゲリラ・レコーディングの準備段階と録音風景。
 上に書いた「粗筋」に沿って、あれやこれや「膨らませる」べきだったと思います。
 又、話の本筋に入るまでが長く、幾つかのシーンも少し撮り過ぎで短い作品なのに所々、間延び感を感じました。
 総じて演出にキレがないと思います。
 結構、面白くなりそうな話なのに、勿体なかった。

 演技陣はヒロインのキーラ・ナイトレイが中々良かったけど、最初は、もう少しモッサリ感が有っても良かった気がします。
 マーク・ラファロは、胡散臭さが出てて良いのだけど、何か噛み合っていない感も、ほんの少しだけ感じました。
 
コメント (7)
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「おくりびと」

2015-02-10 00:21:06 | 邦画
 「おみおくりの作法」を観る前、「もし、この映画を記事にするなら「おくり
びと」を観てからにしないと」と思ってたのですが、「おみおくりの作法」が
多分被ってないように思われたので、取り敢えず先に書きました。(笑)

 「おくりびと」(2008年、日本)
   監督 滝田洋二郎
   脚本 小山薫堂
   撮影 浜田毅
   美術 小川富美夫
   音楽 久石譲
   出演 本木雅弘
       広末涼子
       山崎勉
       余貴美子

 漸く採用された楽団が解散、路頭に迷うチェリスト小林大悟。
 音楽家を諦め故郷へ妻・美香と共に移り住む。
 新しい仕事にと広告を見て訪ねたNKプロジェクトは、NK(納棺)を行う
会社だった・・・。

 以前、御巣鷹山の大惨事の時、日本人の遺族は指一本、髪の毛一筋
に執着したけど、西洋人の多くは遺体を「あれはボディ、抜け殻だ、魂は
天に召されてる」と遺体の確認を断ったそうです。
 そんな日本人の死生観と意義を丁寧に描いた作品。

 全体的には非常に好ましい作品でした。
 流石、いろいろな賞を受賞した作品だけの事は有ると思いました。
 ちょっとだけ気になる点は、妻である広末涼子の描き方。
 前半は余りに男に好都合で不可解なんじゃないでしょうか。
 信頼してるとは言え、夫の職業をしっかり確かめない女房はマレですよ。
(笑)
 後半の再登場は話の都合に見えてしまいます。
 (ちょっと時間経過が実際以上に感じられたので、「ホントに旦那の子?」
と一瞬思ってしまったロクデナシです(笑)~これでくるだろうと想像してた
から(もっと言えば最初の20分で残りの展開が見えた~だからと言って作
品の価値に棄損はないと思う)
 最後の広末さんの台詞、あの演技だと若干、言葉足らずに感じました。
 「夫はプロの納棺士です、ご遺体の最期を丁寧に装いお送りする事に誇
りを持っています、まして、ご遺体は私の義父であり、夫の父親です。貴方
がたもプロの葬儀屋なら解って頂けると思います」 
 台詞は極力詰める(短くする)が基本だけど、伝わらなきゃしょうもない。
 広末さんが毅然と言うのなら、あの台詞で説得力が出るのですが語尾が
フニャっとする現代的発音だと、これくらい言葉を足さないと「場」に合わな
いと思いました。

 演技陣はNKエージェントの三人(本木、山崎、余)の安定した演技力が
出色。
 本木の生真面目さと優しさ、山崎、余の滲み出る雰囲気が、この作品を
支えています。

 今は都市も地方も多くが病院で全てを済ます時代だと思います。
 それでも、日本人が忘れかけてる大事な事を思い出させてくれる素敵な
作品だったと思います。

※葬儀屋さんもいろいろ、町で商売してるとシガラミで葬儀屋はあそこと決
 まってるようなものですが、その葬儀屋さんが通り一遍の所で。(笑)
 女房の母が「聞き込み」で見つけた葬儀屋さんは、本当に親切で丁寧(し
 かも半額以下)。
 一番ふっ掛けられるのが病院紹介の葬儀屋、疲れて判断能力が落ちて
 る時だから「おまかせ」にしてしまいがちだけど、よくよく気を付けた方が
 いいと思います。(あくまで個人的経験~葬儀屋さんの知り合いなんてレ
 アケースに近いけど)
コメント (4)
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「おみおくりの作法」

2015-02-08 00:27:15 | 外国映画
 「おみおくりの作法」(「STILL LIFE」、2013年、英・伊)
   監督 ウベルト・パゾリーニ
   脚本 ウベルト・パゾリーニ
   撮影 ステファーノ・ファリヴェーネ
   音楽 レイチェル・ポートマン
   出演 エディ・マーサン
       ジョアンヌ・フロガット
       カレン・ドルーリー

 ロンドン南部の地区民生委員ジョン・メイ。
 彼の仕事は孤独死した人達の後始末。
 身内、知人を探し出し葬儀、埋葬、部屋の整理をする、只、殆どの場合、
ジョン一人が「お見送り」するばかりだった。
 そんな或る日、アパートの向かいの部屋で住人が孤独死した・・・。

 野球で言えば、ずっとゼロゼロで来て最終回2死から逆転満塁ホームラン
みたいな作品。
 87分の短い作品だけど、最後の10分でガラッと印象が変わります。
 そこまでは本当に地味で起伏もなく、何で世間が高評価してるのか解りま
せんでした。
 でも観終わってみると、ここに至るまでの「淡々」が非常に効いてる事が解
ります、そして、世間の高評価も。
 そんな訳でネタバレっぽい事は、この作品では書けません。
 観てもらうしかない、じんわりとした余韻を求めたい方には向いてると思い
ます。

 小津監督が戦後の家族崩壊を見詰めたと言うのなら、これは、もっと進ん
で地域コミュニティの崩壊を描いているのかもしれません。
 タッチも間も、どことなく小津さんに似てる気がしました。
 人生の皮相、皮肉も描いていますが、この作品で最も受ける印象は、東洋
(仏教)の感覚で言えば「功徳」に尽きると思います。

 宣伝部風に言えば「只今、絶賛クチコミ拡大中!」
 銀座シネスイッチ1、何十年振りで沢山の立ち見客を見ました。

※STILL LIFEを辞書で引くと静物画と出ます、と言う事は「遺影」を意味して
 るのかな?
※本日はB1Fから2F(シネスイッチ2)へハシゴ。(笑)
 2本目はジャン=リュック・ゴダール「さらば、愛の言葉よ」
 「観念の観念による観念の為の映画」、「理屈屋の理屈屋による理屈屋の
 為の映画」
 僕にとって、「さらば、ゴダール!」となる作品でした。
 昔からゴダールの、どこが良いのか解らない人間なんです。
 (3Dによるヌード初体験、ヨカッタ(爆))
コメント (2)
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