セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「クロワッサンで朝食を」

2015-08-26 22:49:04 | 映画感想
 「クロワッサンで朝食を」(「UNE ESTONIENNE A PARIS」、2012年、仏・ベルギー・エストニア)
   監督 イルマル・ラーグ
   脚本 イルマル・ラーグ  アニエス・フォーヴル リーナ・スィルドス
   撮影 ロラン・ブルネ
   音楽 デズ・ムナ
   出演 ライネ・マギ
       ジャンヌ・モロー
       パトリック・ピノー

 真冬のエストニア。
 アル中の元夫に絡まれながら、年老いた母を介護するアンヌ。
 その母の死。
 流れていく空白の時間。
 そんな時、介護士の資格を買われてパリから仕事が舞い込む。
 パリの高級アパルトマンで待っていたのは、他人に心を開こうとしない頑
なな老婦人フリーダだった・・・。

 「貴女が孤独なのは、貴方自身に問題があるからよ!」
 キレたアンヌがフリーダに浴びせた言葉。
 このフリーダという老女、財産の有無を別にすれば去年亡くなった伯母に
よく似てる気がしました。
 自分の小さな世界でのみ生きていて、他人の介在を頑なに拒否する。
 親、姉妹、まして他人の言う事を聞く気なし、自分の考え方と気持ちのみ
を喋り自己完結させてしまう。
 伯母を見ていたから、フリーダの扱い難さは実感出来るけど、元アマンと
アンヌに外見は兎も角、「頼る」気持ちのあるフリーダは「まだまだ、甘い」。
 伯母は90歳過ぎても「初志一徹」、急変する3日前、見舞いに行った時も
「何で、来たの!」。(笑)
 こういう人は、当人はいいでしょうが、周りが、その尻拭いを全部やるんで
すから気楽な「生き方」なのかもしれません。
 埋葬の時、教会で懇意にしてた方が「好きな事を存分にやって、考えよう
で幸せな生き方だったんじゃないでしょうか」って仰ってました。
 後で弟と、「お陰で、お袋が全部、背負い込むハメになったんじゃねえか、
お気楽なコト言ってくれるよな」と悔し涙の気分でしたよ。
 好き勝手やって、母以外全員と断絶、何も言わず亡くなって、後始末は全
部僕がやる事になって。
 「自由に生きる!」ってカッコいい言葉だけど、その分、誰かが必ず尻拭い
をさせられるんです。(笑)

 個人的な事を書いてしまいましたが、作品は良かったと思います。
 猫も歳を取り過ぎると化け猫になると言いますが、パリジェンヌの老婆(妖
怪)J・モロー。
 この人、パリを離れたら3日で「あの世」へ行っちゃうんじゃないかと思える
くらい、幾つになってもパリジェンヌ、何処を切ってもパリジェンヌ。
 これは凄い事だと思います。(真面目に褒めてます)
 そしてフランスを代表するパリジェンヌの化け物と堂々とタメ張って一歩も
引かない、アンヌ役のライネ・マギ も素晴らしい。
 日本では無名ですが、J・モローという「化け猫」と対峙する役もあって、歳
の割にチャーミングに見えるし、演技も上手い。
 只、これ日本に当て嵌めると20年前の杉村春子と草笛光子に見えなくも
ない。(爆)
 二人の間で中和剤の役目を負ったパトリック・ピノーも、最初、調子いいだ
けの男に見えたけど、段々、大人の「男」に見えてきて良かったです。

 「貴女が孤独なのは、貴方自身に問題があるからよ!」
 老後を考えれば、この言葉は正論。けれど70越えたら性格変えるのは殆
ど無理。
 気をつけましょう。(勿論、僕の事です(笑))

 2015.8.23
 DVD
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 憧れて 彷徨(さまよ)う巴里の 紙芝居 一幕おりれば 空は明けゆく
 
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「ダーク・シャドウ」

2015-08-19 23:49:57 | 外国映画
 前回は突発、正式参加はこの作品で。
 昼食時、TV点けたら何だかクセのある可愛いコが出て来て、どうやらコメ
ディ寄りのヴァンパイアの話らしいので、今回は「これ」と即決、TV消しまし
た。
 レンタルして観てみると、「きもだめし」要素ゼロだったんで困ったけど、一
応ヴァンパイアだからと強行突破させて頂きます。(汗)

 「ダーク・シャドウ」(「Dark Shadows」、2012年、米)
   監督 ティム・バートン
   脚本 セス・グラハム=スミス
   原案 ジョン・オーガスト    セス・グラハム=スミス
   撮影 ブリュノ・デルボネル
   美術 リック・ヘインリックス
   音楽 ダニー・エルフマン
   出演 ジョニー・デップ    (バーナバス)
       エヴァ・グリーン   (アンジェリーク)
       ミシェル・ファイファー
       クロエ・グレース・モレッツ
       ベラ・ヒースコート  (ヴィクトリア/ジョセッテ)

 観終わった後、映画評価サイトを見ると無残な数字。(笑)
 「血は水よりも濃い」と言って、冒頭から「選民思想」丸出し。
 両親を殺され一人息子の当人は結婚前にヴァンパイアにされた挙句、地
中に埋められたのに200年後、末裔が屋敷に住んでるって???。
 クロエちゃんは、何の前触れもなくアレになっちゃうし、ラストの後、正体バ
レちゃってるのにどうすんの?とか、評価も妥当な線と言える作品。

 トロイアの王女カッサンドラ。
 アポロンに誘惑され「予知能力」と引き換えに身を任す約束をしたのに、貰
うものだけ貰ってトンズラ(アポロンに捨てられる未来を見た)、怒ったアポ
ロン(まあね、男なら)が、「カッサンドラの予言は誰も信じぬ」と、もう一つの
お呪いをした為、以後、誰も彼女の言う事を信じなかった。
 この作品に出てくる魔女アンジェリークを見てるとカッサンドラの悲劇を思
い起こします。
 確かにバーナバスを吸血鬼にし、両親と恋人を殺したのはアンジェリーク
なのですが、元はと言えば、立場を利用して弄んだバーナバスに非がある。
 200年経っても、バーナバスに対する恋情は変わらない、ある意味、究極
の「悪(魔)女の深情け」だけど一途に200年忘れず焦がて、自分の心臓ま
で捧げる、何て純情なんでしょう。(笑)
 それも美女の○乗(男性は好みで数字入れて下さい)みたいなE・グリーン
でナイス・バディ付き。
 あ~、それなのにそれなのに(笑)、バーナバスときたら屁理屈つけてまで
絶対受け付けない。
 この作品はアブノーマルな「家族愛」を前面に出してるけど、魔女の哀しい
「純情悲恋」物語として観た方が面白いかもしれません。
 エヴァ・グリーン、彫刻のように美しいし。
 (その彫刻のように美しいお顔にヒビが入るって整形美女への皮肉かな(笑)、
最後のバトル・シーンは「永遠に美しく」の復刻版?)

 でもね、ふふふ・・・。
 突き放せない。(笑)
 作品自体、粗だらけだけどそれなりに可笑しい。
 200年後のバーナバスがマクドナルドのマーク見て「メフィストフェレス!」
と思い込んだり、クロエちゃんがTVの「カーペンターズ」を見てたら「大工が
何してる?」とか、今の人からは?だろうけど、オッサンにはウケた。
 (「top of the world」聞いたのは10年振りくらい(LP持ってるのに)、動くカ
ーペンターズも懐かしい)
 よく考えるとクロエちゃんが違和感なく「top of the world」聞いてるってもシ
ュール。(笑)
 が・・、それ以上というかそれだけと言うか、突き放せない理由は見る角度
によっては顔の骨格・渥美清のべラ・ヒースコート!!!(爆)
 本来なら、この作品のヒロインの位置に居るのに最初と最後だけ出て来て
中テキトーで非道な扱いをされてた可哀そうな、なりそこねヒロイン。
 普通ならバーナバスが燃えてる時、水ぶっ掛けるのはヒロインの務めなの
に、さっさと逃げ出してスクリーンから居なくなっちゃう、仕方ないから下男が
ぶっ掛けるという哀しい展開。
 この時、べラが水ぶっ掛けて見詰めあった後、逃げるか、さもなくば、逃げ
ずに短時間でもジョニデ&べラで一緒に魔女と戦うシーンが有ればラストも
切なくなるのに、完全に無視!無視!無視!(笑~最後の戦いは一族限定)
 そうしておけば、ラストの台詞も少しは効果的だったけど、テキトーなもんだ
から、最後「解釈はお客にお任せ」が「どうでもいいじゃん」になっちゃった。
 まぁ、ティム・バートンがそんな真っ当なコトする訳ないみたいだけどね。(泣)
 精神病院から身一つで逃げ出して映画では真っ直ぐ屋敷に辿り着いたのに、
切符代とかお洋服、バックの中の靴、服、ネグリジェどうしたんでしょうね?
オジサンは不純な事考えちゃいます。(汗)
 そんな事、考えてたら、この作品、成り立たないし疲れるだけだけど。(笑)

 でも、全部許す!!
 べラ・ヒースコートの変な魅力で許す!カテゴリーも彼女のお陰でUP!
 この作品の感想は、グダグダ書いたけど↑の一行です。(汗)

 誤解されるので一言だけ、弁解させて頂きます。
 「僕、ロリコン嫌いです!だけど、誰にでも「例外」はあるらしい」(笑)

※この作品、‘60~‘70年代に掛けて放映されたTVシリーズの映画化。
 TVの方ではクロエちゃんの件、べラの件は説明されてたんじゃないかな。
 映画化に当たってアメリカなら大概知ってるからと省略されたのかもしれま
 せん。
 アメリカ国内向けの作品なんでしょう。

 2015.8.16
 DVD

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 百年の 恋も醒めずに また百年 魔女が囁(ささや)く 私はジョセッテ

 霧深き やもめ岬の 風音は 永遠の扉の 軋(きし)む泣き声
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「彼は秘密の女ともだち」と「悪魔のワルツ」 (ネタバレです!)

2015-08-15 01:58:07 | 映画感想
 今月の「ブログDEロードショー」、予定外の作品。(笑)
 3章立てなので長くなります。

 「彼は秘密の女ともだち」(「UNE NOUVELLE AMIE」、2014年、仏)
   監督 フランソワ・オゾン
   脚本 フランソワ・オゾン
   原案 ルース・エンデル
   撮影 パスカル・マルティ
   出演 アナイス・ドゥムースティエ  (クレール)
       ラファエル・ペルソナス  (ジル)
       ロマン・デュリス  (ダヴィッド/ヴィルジニア)
       イジルド・ル・ベスコ  (ローラ)

 小学校へローラが転入してきて、クレールとローラは無二の親友となる。
 いつでも一緒の二人は遊びで「血の盟約」を交わしたりもした。
 やがて大人になった二人は、それぞれの伴侶を見つけ、ローラは妊娠、
出産。
 しかし、その直後、ローラは病を得て他界。
 葬儀でクレールはローラの夫 ダヴィッドと名付け親でもあるローラの娘
を生涯見守っていく事を誓う。
 ダヴィッドは赤ん坊がミルクを飲まない事で困るが、亡きローラの服を着
て飲ませる事に成功。
 それが抑えていた「女装趣味」を復活させてしまう(ローラは趣味を承知
してた(笑))・・・。

 男から見たら「ふざけんじゃねぇ!」
 でも、多分、観る角度は、そこからじゃないんでしょうね。(笑)

 ヒロインの夫ジルは、福山雅治似の美形で生活力有って、性格は一点
の曇りもないイイ人。
 (これでヒロインも超美人というなら別だけど、「赤毛のアン」が成長した
ような可愛いけど普通なんですよね)
 「宗教映画」でもないのに、こういう人が出てきたら「物語上、必要なだけ
で実態は「透明人間」」と思えばいいのかも知れません。(笑)

 クレールはダヴィッドの趣味を知った時、嫌悪感を感じて去るのですが、
捨てても置けず、やがて化粧のアドヴァイスや脱毛の手伝いもするように
なります。
 只一人、ダヴィッドの秘密を知る事で、「秘密の共有」者同士の親密さが
増してしまうんですね。
 やがて二人は一線を越えそうになるのですが、その度にクレールの理性
が押しとどめます。
 しかし、そのクレールも亡きローラと「愛し合う」、或いは夫ジルとダヴィッ
ドが「愛し合う」妄想を見るようになってしまう。
 (話の都合上なのかダヴィッドは「女装趣味」で「女」になりたくても、ホモ
ではなくアレはノーマル)
 夫と亡き親友の夫、二人の間で揺れるクレール。
 この作品の惹句は、
 「一度きりの人生を、自分らしく生きたいと願う“女たち”の物語」
 だとか。(笑)

 普通に観れば、大概は惹句とおりの見方で収まるんじゃないでしょうか。
 (話はイイんだけど結論部、全然、納得できません)

  シネスイッチ銀座1
  2015.8.14

 「悪魔のワルツ」(完全ネタバレ)
  (「The Mephisto Waltz(ザ・メフィスト ワルツ)」(1971年、米)
   監督 ポール・ウェンドコス
   脚本 ベン・マドウ
   原作 フレッド・マスタード・スチュアート
   撮影 ウィリアム・W・スペンサー
   音楽 ジェリー・ゴールドスミス
   出演 アラン・アルダ (マイルズ)
       ジャクリーン・ビセット  (ポーラ)
       クルト・ユルゲンス (ダンカン)
       バーバラ・パーキンス (ロクサンヌ) 

 元ピアニストで現在は音楽ライターで生活してるマイルズと、その妻ポー
ラ。
 或る日、名ピアニスト ダンカンを取材した事からダンカンと娘のロクサン
ヌに気に入られる事に。
 マイルズは幾度もダンカンの屋敷に招かれるようになるが、実はダンカン
には死期が近づいていた。
 そしてダンカンの死。
 ポーラがマイルズの変化に気付いたのはベットの中だった。
 急にテクニックが上手くなり、ポーラの肉体はそれまでにない快感に包ま
れる。
 ベットばかりでなくピアノも急激に上達していくマイルズ。
 不気味に思ったポーラは、ロクサンヌの元夫を訪ね、二人が「悪魔崇拝
者」で近親相姦関係にある事を知る。 
 しかし、その元夫もポーラの娘も急死してしまう。
 次に狙われるのは自分と自覚したポーラは反撃に出る。
 「悪魔の儀式」を受け入れ、自らの生命を悪魔に差し出す事でマイルズを
取り戻そうと。
 幾日後、ダンカンの屋敷でマイルズはロクサンヌと抱き合う。
 ロクサンヌの顔には勝利の歓びが浮かんでいった。

 この作品、ちょっと変なんですよね。
 確かにポーラはマイルズを取り戻したけど、マイルズの中身ってダンカン
なんだもの。(笑)
 一体、何なんでしょうね?、男としては数少ないJ・ビセットのオッパイが拝
見出来る希少作品なので、それだけで合格!なんですけど。(汗)

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 何が言いたいかっていうと。(笑)
 クレールが愛したのは、本当にダヴィッドなのかという疑問なんです。
 「血の盟友」関係だけども、ダヴィッドと同じく性向はノーマルで二人はレ
ズでもバイでもない。
 けれど、クレールはローラに「愛される」夢を見てるから、ローラに無かっ
たにせよクレールには少なからず「願望」は有った気がする。(ローラが姉、
クレールが妹の雰囲気)
 ヴィルジニア(女装時のダヴィッドの名前)が瀕死の重傷で危篤状態にな
った時、クレールが二人で行ったゲイ・バーで歌われてた歌を口ずさみなが
ら、病室に持ち込んだ衣装でダヴィッドをヴィルジニアに変えてしまいます。
 これが「悪魔のワルツ」の儀式に当て嵌まるなら、ヴィルジニアの姿で覚
醒したのは誰なのでしょう?(笑)
 「血の盟友」関係の二人とローラの娘、親子三人の姿が本当に見た目の
ままなのか・・・。
 この物語はヒロイン・クレールの視点で進行していきますが、本質的な所
は「クレールとローラ」の話ではないでしょうか。
 そうです、これは、普通の映画に見せ掛けた「ホラー」なんです!!

 ・・・な、訳は有りません。(爆)
 (そうでも考えないと男は「やってられねぇ!」(怒))

※ヒロインのアナイス・ドゥムースティエ、いかにもフランス女優って感じ(特
 別綺麗な訳じゃなく、普通っぽいけど魅力が有る)なんだけど、いいなァ。
(エロ目線有り~笑)
8.17 追記
※この作品を観て「自分に素直で何処が悪い」と思った女性陣、ヴェルダ監督の
「幸福」観ても怒らないでね。(笑)

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 忍ぶれど にじみ出るのか わが趣味は おとこ好きかと ひとの問ふまで
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「恋におちたシェイクスピア」

2015-08-06 23:06:21 | 外国映画
 「恋におちたシェイクスピア」(「Shakespeare in Love」、米、1998年)
   監督 ジョン・マッデン
   脚本 マーク・ノーマン  トム・ストッパード
   撮影 リチャード・グレイトレックス
   美術 デイヴィッド・ガンブル
   衣装デザイン サンディ・パウエル
   出演 ジョセフ・ファインズ
       グウィネス・パルトロウ
       コリン・ファース
       ジュディ・デンチ
       イメルダ・スタウントン

 ペストが流行し劇場は閉鎖、パトロンから資金の返済を迫られ窮地に落ちるローズ座
座長、頼みは座付き作者シェークスピアの新作だけだった。 
 しかし、そのシェークスピアはスランプ真っ只中・・・。

 F・トリュフォーの「アメリカの夜」に似た一種の「劇中劇」と言えるし、「ロミオとジュリエ
ット」のパロディとも言える作品で、「ロミオとジュリエット」を劇中劇にした上質のパロデ
ィと言うのが僕の感覚。
 ヒロインが「男装」する事で「十二夜」の要素を入れ、それをラストに生かすと言う「芸」
も上手いと思いました。(ヒロインの名前を「十二夜」から持ってきてるから、両者を交錯
させる設計は明白)
 「劇中劇」に於ける虚と実の境が低い為、ラスト近く宮内長官やエリザベス�世が舞
台に上がると、映画で有りながら、まるで舞台の芝居を観てるような錯覚を起こす演出
も、中々凝っていて面白い。
 既婚者と婚約者の「禁断の恋」という壁は、正直、かなり苦しい部類に入るけど、「ロ
ミオとジュリエット」のパロディと考えれば、それ程、細かく考えなくてもいいんじゃない
かと僕は思いました。(ちょっと後味の悪さは有ったけど)

 この作品を観て違和感を感じたのは、シェークスピアが美男子過ぎる事。
 あれだけの文才、詩才が有って、且つ、美男子と言うのは違反事項というか不条理。(笑)
 シラノが共感を呼ぶのは「天は二物を与えず」の庶民感情が有るからなんですよ!(汗)
 肖像画のイメージが有るので、座付き作者は知ってても役者もやってたのは記憶か
ら落ちてた。
 その肖像画、よく見れば後年のモノだし、あれを若くして不足がちの髪を足せば役者
をやるくらいの男前だったのでしょう。
 う~ん、やっぱり、世の中は「不条理」だ。(爆)

 この作品、「ロミオとジュリエット」が好きな人には非常に楽しい。
 劇中に出てくる色々な台詞の元ネタを二人に語らせたり、パリス伯爵にティボルトの
性格を与えられたようなC・ファース演じるウェセックス卿、ロザラインの実態、最後に
エリザベス�世がヴェローナの領主の位置に立ってしまう演出、F・ゼフィレッリの作品
を思い出させる舞踏会の出会いとダンス等々、一種の「楽屋落ち」かもしれないけど、
何かニンマリしてしまいました。
 (「ロミオとジュリエット」のパリス伯爵は非常に哀れな役だけど、ウェセックス卿は道
化度が十割増しなので哀れを通り越して悲惨(笑))

 役者陣ではヒロインのG・パルトローが断然良かった。
 最初、出て来た時はそれ程でもなかったけど、進むに従ってドンドン魅力的になって
いく、やはり、「ロミオとジュリエット」ものはヒロインが魅力的でないと成り立たないので
す。(笑)
 後、地味で目立たないけどマキューシオの役を演じたベン・アフレックも良かった。
 乳母のイメルダ・スタウトンも良かったけど1968年版のパッド・ヘイウッドが素晴らし
かった分、ちょっと割を喰ったかもしれません。(これはイギリスとイタリアの違いで仕方
ない部分)

 一点だけ不満が有るとすれば、劇中、演じられる「ロミオとジュリエット」がイマイチだっ
た事。
 初演で劇を超えた感情のぶつかり合いなのは解るけど、シェークスピア特有の英語の
美しさ(韻とリズム)を殆ど感じられなかったのは、少し残念な感じがしました。(特に主役
のJ・ファインズ)
 

※シェークスピア役のJ・ファインズ、ずっとライアン・ゴズリングだと思ってた。(汗)
 年初めの「めぐり逢わせのお弁当」で、ヒロインのときめき相手と旦那を区別出来なか
 った苦い失敗を思い出し、顔面識別能力の劣化を嘆いています。(笑)

 H27.8.2
 TOHOシネマズ新宿
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 移り香に 惑い恨めし 後朝(きぬぎぬ)の 儚く消える 運命(さだめ)ありせば
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