セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

映画手帳 2018年7月~12月

2018-12-28 17:36:20 | 映画手帳
 年内、最終更新となります。
 ご訪問頂いた皆様、コメントを下さった皆様に心より感謝申し上げます。

 ☆新作 ※再見 無印 DVD
 延べ34本(洋画27本、邦画7本)
 再見3本(洋画3本)
 劇場8本(洋画6本、邦画2本) DVD26本(洋画21本、邦画5本)
 新作13本(洋画9本(再見2本を含む)、邦画4本)

  (7月)
37.「危険な戯れ」、38.☆「カメラを止めるな!」(池袋シネマ・ロサ)、
39.「KUBO/二本の弦の秘密」、40.「桐島、部活やめるってよ」、
41.「光をくれた人」、42.☆「グリブズビー・ベア」(新宿シネマ・カリテ)、
43.「ジャージー・ボーイズ」

  (8月)
44.「ザ・マジックアワー」、45.「ジェーン・ドゥの解剖」、
46.「ショーン・オブ・ザ・デッド」、47.「白い肌の異常な夜」、
48.「ゾンビ」、49.「湯を沸かすほどの熱い愛」、
50.「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」

  (9月)
51.「午後8時の訪問者」、52.「レナードの朝」
53.「泥棒貴族」

  (10月)
54.☆「バット・ジーニアス 危険な天才たち」(新宿武蔵野館)、55.「俺たちフィギュアスケーター」
56.☆「勝手にふるえてろ」、57.「コーラス」、
58.☆「バーフバリ 王の凱旋」IMAX版(成田HUMAX)

  (11月)
59.「ソフィの選択」(TOHOシネマズ日本橋)、60.☆「日々是好日」(シネスイッチ銀座)、
61.☆「今夜、ロマンス劇場で」、62.「ペティコート作戦」、
63.「ストックホルムでワルツを」、64.※「空軍大戦略」、
65.☆「おかえり、ブルゴーニュへ」(恵比寿ガーデンシネマ)

  (12月)
66.☆「スリー・ビルボード」、67.☆※「ダンガル きっと、つよくなる」、
68.☆「ワンダー 君は太陽」、69.☆「パッドマン 5億人の女性を救った男」(TOHOシネマズ シャンテ)、
70.☆※「グレイテスト・ショーマン」

※「勝手にふるえてろ」は'17年12月23日公開ですが新作扱いとしました。

 良いお年をお迎え下さい。

「パッドマン 5億人の女性を救った男」

2018-12-17 22:00:36 | 映画感想
 「パッドマン 5億人の女性を救った男」(「Padman」、2018年、印)
   監督 R・バーリキ
   原作 トゥインクル・カンナー 「ザ・レジェンド・オブ・ラクシュミ・ブラザード」
   脚本 R・バーリキ
   撮影 P・C・スリーラム
   出演 アクシャイ・クマール
      ソーナム・カプール
      ラーディカー・アープテニ
      アミターブ・バッチャン

 2001年、インドの田舎町に住むラクシュミ、鉄工所の職人である彼は新妻ガヤトリを迎え幸福の絶頂にあった。
 彼は愛する新妻が生理の度に部屋外に出され不衛生な布で処置してるのを知り、高価なナプキンを贈るが妻は価格を知り拒否。
 職人である彼は安く手作りのナプキンを妻に贈るも生理を穢れ、恥と考えるインドの強固な因習は素直過ぎる彼には想像を絶するものだった・・・。

  公式 http://www.padman.jp/site/

 「アメリカにはバットマン、スパイダーマンが居るが、インドにはパッドマンが居る」byアミターブ・バッチャン※インドで最も尊敬されてる俳優。

 ナプキン使用率12%のインドで安価なナプキン製造機を作りインド女性の衛生向上と女性雇用に貢献した男、その実話を脚色した作品。
 インド映画特有の派手さを抑えドキュメント風に作っています(歌とダンスはある)。インド映画は時々、着地のさせ方が強引で、そこをエンタメや外連、或いは歌、踊りで上手にカムフラージュするんだけど、今作はドキュメント・タッチで作ってる分、誤魔化しが効かなかった感がしました。
 でも、「いい話」を面白く作ってるしエンタメ要素も忘れてないので見易い作品だと思います。

 今回は映画の直接的な感想はここまで、この作品を観て思った別の事を書きます。
 インド映画の縛りの変遷、まぁ、大好きだけど専門的に調べた訳ではなく、浅薄な知識に基づくものなので間違ってる所も有ると思います、その点は予め御了承下さい。
 インド映画には昔有ったハリウッドのヘイズコードに似たものが存在していましたし、今でも残ってると思います。(宗教上からの制約も多い)
 ・キスシーンはNG?
 2007年の「恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム」ではNGでした。キスシーンは2回あるけど何れも撮影角度でしてるように見えるだけ(1回はシルエットだし)、多分、これでも、当時は進化途中の段階ではないかと。
 でも、2011年の「きっと、うまくいく」では堂々とブチューとしてたから、この4年の間に解禁されたと推測。
 ・ヌード、ベットシーンは?
 際どいシーンは前から有るような。(笑)
 これをインド映画に求めるのは違う気がするし殆どないんじゃないかと思う、けれど、半分以上アメリカを舞台にしたインド映画「マルガリータで乾杯を」(2015年)では有ったから絶対無しという事ではないと思います。
 ・不倫?
 この規制は今でも有るんじゃないかな。
 「恋する輪廻〜」でも、オームが手を繋ごうとするけど、シャンティは既婚者だから拒否してた。(結局、オームの純情さにほだされて手だけは許したけど)
 「めぐり逢わせのお弁当」は夫に問題有りだけどイラの精神的不倫話、ただ、次のステップへ行く前に夫婦関係を清算しようとしてるから、実質は伴ってない。
 「マダム・イン・ニューヨーク」も本作も、そこを知ってれば着地点は自明。
 でも、本作では未婚女性が既婚者(多分、離婚届にはサインしてない)に、本気を挨拶でカムフラージュしたキスがあるから、この辺も厳格でなくなってきてるのかもしれません。

 「マダム・イン・ニューヨーク」のシャシの判断は、僕はあれだから良かったと思ったのですが、フランス男のローランとくっ付くべきだという女性の意見が少なからず有って、「そうなのかな」と疑問を持ってました。
 本作は、その立場の男女逆転版。(笑〜監督の奥様は「マダム〜」の監督ガウリ・シンディで、話の構成、偏見をベースにしクライマックスにスピーチを持ってくるとこまで全く同じだ)
 今度はラクシュミの協力者となったパリーとくっ付いた方が良かったんじゃと思う自分が居て(彼が奥さんを愛してるのを解っていても)、つくづく、男の保守思考の身勝手さを感じてしまいました。
 まぁ、奥さん、激怒してもラクシュミをまだ愛してるのが解るから、こちらの方が目出度いし実話ベースで多分、今でも良い夫婦なんだろうし。(パリーのモデルは女性大学教授で恋愛感情は一切無かった)

 最後にインド映画界は歌舞伎の世界に似て門閥主義、五大名家の出じゃないと主役もいい作品も巡って来にくい。(本作のパリー役の女優さんも名門カプール家の一族出でしょう、今まで見たカプール一族の娘達の中で一番の美人ではある)
 賞も門閥外には大きなハンデがあるみたい、あれだけ大ヒットした「バーフバリ」の主役ブラヴァースが演技的にも素晴らしいのに大きな賞と無縁なのは非ボリウッド(ボリウッドは北インド、彼は南インドの俳優)というハンデの他に映画一家出でも名門の出自じゃないからというのもあるらしい。(噂としてカーストも絡んでるとか)
 ボリウッドのキング、シャー・ルク・カーンは例外なのかな。(汗)
 
 今回は、ちょっと横道に突き進んでしまいました、すいません。(要するに、悪くないけど自分的には「あと一、ニ歩足りなかった」し、よく考えたら奥さんの作った「マダム・イン・ニューヨーク」の丸パクリに近い、演出のセンスも奥さんの勝ち)

※キスの定義(笑)、唇同士の接触で、おでこや頬なら昔もOKだったように思う。
※インド映画では珍しく(本当に珍しく)歌に魅力を感じなかった。
※主役の人、名前だけは知ってたけど顔見て「きっと、うまくいく」のランチョー(本物の方)の人だと思った、ら、違ってた。(笑)
※実在のムルガランナム氏によれば、この映画の85%は実際に有った事だとか、つまり、パリー(ヒンディー語で妖精を意味する)とのロマンス風味が脚色部分なのでしょう。

 H30.12.16
 TOHOシネマズシャンテ

「ワンダー 君は太陽」

2018-12-10 20:57:22 | 映画日記/映画雑記
 「ワンダー 君は太陽」(「 WONDER』、2017年、米)
   監督 スティーヴン・チョボスキー
   原作 R.J.パラシオ 「ワンダー」
   脚本 ジャック・ソーン  スティーヴン・コンラッド  スティーブン・チョボスキー
   撮影 ドン・バージェス
   音楽 マーセロ・ザーヴォス
   出演 ジェイコブ・トレンブレイ
      ジュリア・ロバーツ
      オーウェン・ウィルソン
      イザベラ・ヴィドヴィッチ

 遺伝子疾患から変形した顔で生まれたオギー、数度に渡る形成手術を経て小学校へ編入するも皆は驚くばかり、そんなオギーが精神的自立を果たすまでと、オギーを取り巻く家族、知人、友人達の変化を描いていく・・・。

  予告編 https://www.youtube.com/watch?v=oFyAFL2OmCo

 日本の「湯を沸かすほどの熱い愛」と同じで全力で泣かしに掛かかってくる映画。
 「湯を〜」が死別を使って家族とは何か?を問う作品なら、こちらは難病の子供を触媒として人々が成長していく話。
 思いやりと愛に溢れた作品で、暖かい気持ちになれる、でも、意地悪くみればクリスマス向けの映画とも言える。
 家族皆んなで優しさを思い出すには最適でしょう、その辺が世間的に不朽のクリスマス映画と言われてる「素晴らしき哉、人生」に通じます。
 不満を言えばJ・ロバーツの起用かな、全然、悪くはないんですよ、でも、彼女って凄く目立つ存在だから目が必要以上に行っちゃう。
 オギーが目立つ存在だから、もう一人目立つ人を使って相殺させたのかもしれないけど。(汗)

 難病や死別で泣かしに来るのは個人的に苦手なので、こんな感想ですが、「良い作品」だとは思います。
 「いい話だなぁ」を観たい方に。

※あくまで個人的感想ですが、演技的には「湯を〜」の圧勝で、人物の掘り下げも「湯を〜」の勝ち。「ワンダー〜」では長女の話が良かった(ちゃんとオギーの話で泣いたけど)。

 作品と関係ないけど、本格的に寒くなってきたので一句

  身支度に マフラー探す 初武装

 H30.12.9
 DVD

映画日記 2018年その10

2018-12-03 22:47:25 | 映画日記/映画雑記
 「おかえり、ブルゴーニュへ」(「Ce qui nous lie」、2017年、仏)
   監督 セドリック・クラピッシュ
   脚本 セドリック・クラピッシュ   サンティアゴ・アミゴレーナ
   撮影 アレクシ・カビルシーヌ
   音楽 ロイク・デュリー   クリストフ・“ディスコ”・ミンク
   出演 ピオ・マルマイ
       アナ・ジラルド
       フランソワ・シビル
       マリア・バルベルデ

 父危篤の知らせを受けた兄は10年に及ぶ失踪から帰郷、そして、父の死。兄弟妹、3人のわだかまりを1年掛かるワイン造りを通じて解消、絆を取り戻していく物語。
 ブルゴーニュの四季が美しい。

   予告編 https://www.youtube.com/watch?v=5ZmIjdsybt4

 愛する息子が居ながら妻と離婚寸前の兄、父のドメーヌ(葡萄畑と醸造所を併せ持つ農家)を継ぎワイン造りに悩む妹、養子先の義父とソリが合わない弟、そこに50万ユーロの相続税が重くのしかかる。
 「日々是好日」がハウツー茶道なら、こちらは「ワインの作り方お見せします」って感じ、只、四季の見せ方は日本のお家芸(「日々是好日」はやり過ぎだけど)、此方から見ると繊細さに欠ける気がしました。
 まぁ、相続税も深刻な問題ではあるけど債務超過じゃないから、どう算段するかで、結論は実に「あっけない」。(笑〜在庫処分の不足(20万ユーロ)を払うって話だよね)
 三人の悩みも描けてるし収穫祭は19世紀に戻ったようで楽しいし、これと言って文句は無いけどドラマがある割に平板に感じてしまった。
 個人的にはブルゴーニュの美しい風景を見る映画でした。

 H30.11.25 
 恵比寿ガーデンシネマ

 「スリー・ビルボード」(「THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI」、2017年、英・米)
   監督 マーティン・マクドナー
   脚本 マーティン・マクドナー
   撮影 ベン・デイヴィス
   音楽 カーター・バーウェル
   出演 フランシス・マクドーマンド
       ウディ・ハレルソン
       サム・ロックウェル

 僕にも娘がいるから「ああなったら」あのように頑なになるかもしれない。
 悪い感想を見つけるのが大変なくらい評判の良い作品、しかし、2時間不機嫌な顔見てたら、此方まで気分悪くなってしまった。(汗)

   予告編 https://www.youtube.com/watch?v=uKzmKRELmJI

 娘をレイプされ焼死体にされた母ミルドレッド、半年経っても犯人が見つからず我慢の限界を超えた。
 彼女は町に通じる道路脇の看板3枚(スリー・ビルボード)を借り警察を詰る・・・。

 この作品が何を訴えたかったのか今いちピンと来なかったけど、「怒りは怒りを来たす」という終盤の台詞にキーポイントがあるようだから、その辺りなのかもしれない。人間という不確かな生き物を描こうとしたのでしょうか。
 「娘さんの事では町の皆が君の味方だ、しかし、署長の事では敵だ」、他人の同情など当事者にとって屁のツッパリにもならないとしても、署長が人格者で広告資金を寄贈してくれるような人だとしても、犯人に報いをと、自分が納得しなけりゃ何してもいいとなったら警察署が幾つ有っても警官が何人いても収まらない。
 で、結局、「怒りは怒りを来たす」で皆を不幸、不快に巻き込んでる、あの更生仕掛けた元警官を「必殺仕事人」にしてしまう積りなんだろうか、「途中で考える」なんて言ってたけどあの性格じゃ復讐鬼のまま突っ走りそうに感じました。

 「お菓子買って!」と店先に寝転んでジタバタしてる子供、最初は生温かく見た他人さえ幾日も続けたら避けて通る、そんな冷たい感情が湧いてきてしまいました。
 つまり、俺って人間はやっぱり優しくないなと・・。(涙)

 H30.12.2
 DVD