セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「リべリオン」

2015-05-31 22:43:58 | 映画日記/映画雑記
 「リべリオン」(「Equilibrium」、2002年、米)
   監督 カート・ウィマー
   脚本 カート・ウィマー
   撮影 ディオン・ビーブ
   音楽 クラウス・バテルド
   出演 クリスチャン・ベール
       エミリー・ワトソン
       アンガス・マクファーデン

 宵乃さんの所で紹介に有った、
 「ひたすらカッコいい(だけの)”ガン=カタ”アクションを楽しんでほしいとの
ことです」
 いろいろ考える事もあったけど、一周して上記の言葉に僕の感想も収まり
ました。
 「華氏451」の世界をアクションにしてみました、って感じでしょうか。
 (感情の無い世界は「SF/ボディ・スナッチャー」(1978年)が近い感じ)
 ラスト辺りは、「死んでもらいます」の健さんか、「修羅雪姫」、「桃太郎侍」。
 次元大介と五エ門を一人でこなしてましたね。
 こんな事考えるのは野暮ですが、あの後、どうなるんでしょうね?
 警察庁長官、それとも、用済み・・・。
 短い事もあって、珍しく休憩無しの一気見が出来ました。
 「新鮮な驚き」こそ無いけど、飽きずに楽しめました。
 
 紹介が無ければ手に取る事は無く、久しぶりにアクション映画の時間を過
ごせました。
 リクエストに感謝します。

※どうせなら、斬鉄剣で弾ぶった斬ってほしかった。(笑)
※監督名見なかったので、途中から「これ、タランティーノ?」と思ってしまっ
 た。(笑)

 2015.5.31
 DVD 

ハリーの災難

2015-05-26 22:57:55 | 外国映画
 「ハリーの災難」(「The Trouble with Harry」、1955年、米)
   監督 アルフレッド・ヒッチコック
   原作 ジャック・トレヴァー・ストーリー
   脚色 ジョン・マイケル・ヘイズ
   撮影 ロバート・バークス
   音楽 バーナード・ハーマン
   衣装 イーディス・ヘッド
   出演 エドモンド・グウェン
       ジョン・フォーサイス
       シャーリー・マクレーン
       ミルドレッド・ナットウィック

 「博士の異常な愛情:~」や「魚が出てきた日」と同じブラック系だけど、
ニヒリスティックなコメディじゃなく、ほのぼの系ブラック・ユーモアで統一
された作品。
 只、「死体」をマクガフィンと言うかオモチャにする話なので、倫理観の強
い人、潔癖な人は避けた方が無難。
 「映画の中くらい、何でもアリ」と思ってるチャランポランな僕には、完全
にノー・プロブレムな作品です。
 死体を繰り返し埋めたり掘り起こしたりする話で、それをB・キートンやク
ールファイブ時代の前川清宜しく無感動にやり過ごすのが「お約束」。ここ
を笑ってやり過ごせないなら、(勉強の為以外は)早々にリタイヤした方が
心身のバランスに良いかと思います。

 或る日、狩猟に出掛けたヤモメ老人が兎を狙って3発撃った、すると森の
中で一人の男が死んでいる。
 村の人間じゃないし誰も見ていない、さっさと埋めようとすると・・・。

 撃ち殺したと思う元・老船長、金底の靴で頭を引っ叩いたのが原因と思う
老婦人、厄介事が片付いたと喜ぶ妻、巻き込まれてしまった画家。
 この4人のホームドラマなんだけど、その真ん中に「死体」がある。(笑)
 そのギャップを大袈裟な仕掛けにせず、極めてコジンマリした話にした所
がイイ。
 ドタバタ大爆笑より落語の小噺みたいにした所に、ヒッチコックの「粋」を
感じます。
 (落語の「駱駝」も死体を肴にする噺だけど、小噺じゃなくトリが演る大ネ
タ)
 死体という緊迫感と程遠い長閑な展開、その中で「羅生門」のような繰り
返し(埋めたり掘り返したり)が続く、それでも飽きさせない所はヒッチコック
のリズムと演出力、感覚の賜物だと思います。
 声に出して笑いはしないけど、腹の中で小笑いしてる、これは、そんな作
品ではないでしょうか。

 主要人物では、新人ながら存在感を既に感じさせてるS・マクレーンが目
立ってます。
 この地味な作品で彼女の華がなかったら、眠くなったかも。(笑)
 (S・マクレーン、人を見る時、よく目を細めてたけどライトが眩しかったの
かな?)
 只、彼女のE・ヘッドの衣装、悪くないけど、あの田舎村にはいかにも不
釣り合い。
 もう少し、垢抜けない感じの方が良かったんじゃないかと気になりました。

 ヒッチコックの作品中、結構、上位にくる作品。
 締りの悪いクローゼットの扉、まんまと一杯喰わされました。

 2015.5.24
 DVD

 

「ダイヤルMを廻せ!」

2015-05-09 15:18:02 | 外国映画
 「ダイヤルMを廻せ!」(「Dial M for Murder」、1954年、米)
   監督 アルフレッド・ヒッチコック
   脚色 フレデリック・ノット
   撮影 ロバート・バークス
   美術 エドワード・キャレア
   音楽 ディミトリ・ティオムキン
   出演 レイ・ミランド
       グレース・ケリー
       ロバート・カミングス
       ジョン・ウィリアムス

 不貞の妻を殺し、その財産を総取りしようと完全犯罪を目論む夫。

 完全犯罪を巡る、濃密な心理サスペンス。
 「情婦」、「探偵<スルース>」(1972年)、こういうの大好き。
 物凄く面白かったけど、本質的な面白さの多くは元の戯曲に有るのは否め
ない。
 それでも、舞台と違う映画というフィールドで魅せる為、随分カットや構図に
苦心してると思います。

 この作品は、最初に夫が完全犯罪の手口を実行犯に説明してから、犯行
が描かれていきます。
 果たして完全犯罪は成功するのか、破綻するとしたらどこからか、二転三
転していくスリル。
 無実の罪で死刑にされる恐怖。
 実に上手く出来ていて、犯罪が動き出すと最後までハラハラが止まりませ
ん。
 舞台と違い、見せたいものだけを画面にチョイスできる映画の利点、そこを
生かし切ってるヒッチコックの手腕は見事です。

 妻 「完全犯罪って出来るの?」
 作家(愛人)「本の上ではね・・・、現実は小説のように上手く運ばん、決して」
 自分の頭の中では好きに設定できる状況も、完全で有るが故に現実の変数
には対応できない。

 事実、真犯人である夫の計画は、作家の言うとおり現実の変数に負けてしま
います。
 つまり、不貞の相手である憎っくき推理作家に負けてしまう。
 面白いのは、そこで終わらずリベンジの第2Rが有る事。
 今度は、作家が指摘した「変数」の中で「完全犯罪」を新たに作り上げ、完成
させてしまうんですね。
 この映画の面白さは、ここに有る気がします。
 これで夫と愛人は1勝1敗の引き分け。
 夫の脇の甘さからくる破綻を、作家の言う「現実」と見るか、単に勝手に墓穴
を掘り自滅したと見るか。
 いろいろ考える事も出来るんじゃないでしょうか。

 不貞を働いた妻と、その愛人の前で屈辱的な敗北を喫しますが、女房には
死の恐怖を存分に味あわせたし、自分は遺産目当ての殺人教唆で手は下し
てないし、原因は女房に有る訳だから懲役15~20年くらい(想像)、作家に
は一矢を報いたしで、三方一両損って所かな。
 えっ、作家は見合った損をしてない?
 そんな事ないですよ、彼の人気が落ち始めたら、きっと彼女に捨てられます
から。(笑)
 (ここの何行かは、ブラック・ジョークですので、その積りで)

 この物語、一点だけ不満というか弱いと感じたのは、謎解き場面での作家の
存在。
 あんな話、犯人が受ける筈もないのに持ち掛ける不自然さ。
 彼が居なくたって、無事、事件は解決します。
 要するに、不倫二人組の(「愛」の)前で犯人が敗北する、只、その為に必要
だっただけ。
 そこから逆算して、あの場に割り込ませたとしか考えられない。
 緻密な話に、ご都合主義が紛れ込んだ感がしました。

 役者陣は完璧。
 だらしないクセにプライド高く、粘着質で冷酷。
 レイ・ミランドの演技は素晴らしかったです。
 警部役のJ・ウィリアムスは「泥棒成金」より単純な役だけど、彼の持つ謹厳
の中に有る、どことなくユーモラスな雰囲気がラストに生きてました。
 レスゲートを演じたA・ドーソンの存在感も秀逸。
 そして、何と言ってもグレース・ケリー。
 不貞妻の役なのに、善悪をちゃぶ台返しにしてしまう美しさ。
 話が入り組んでるから、見惚れてる訳にいかないのが残念。(笑)
 ゴージャスなグレースを観るなら「泥棒成金」
 お茶目な彼女を観るなら「裏窓」
 いろんな表情を観るなのなら本作。
 ヒッチコックのグレース・ケリー3部作、僕の中では現在、そんな分類になっ
てます。

 2015.5.6
 DVD
 

「泥棒成金」

2015-05-06 23:38:30 | 外国映画
 「泥棒成金」(「To Catch a Thief」、1955年、米)
   監督 アルフレッド・ヒッチコック
   脚色 ジョン・マイケル・ヘイズ
   原作 デイヴィッド・ドッジ
   撮影 ロバート・バークス
   音楽 リン・マレー
   衣装 イーディス・ヘッド
   出演 ケーリー・グラント
       グレース・ケリー
       ジョン・ウィリアムス
       ジェシー・ロイス・ランディス
       ブリジット・オーベエル

 引退した宝石泥棒ジョン・ロビー。しかし、彼と同じ手口の新手が現れ、警
察に追われるハメに。
 自らの潔白を証明する為、保険調査員の助けを借り、ターゲットになりそ
うな資産家夫人に近づく・・・。

 この作品、最初の30分位は、つまらなくは無いけど、正直それ程、面白
くもない。
 それが30分過ぎて、資産家夫人の娘としてG・ケリーが登場した途端、パ
ッと画面が華やかになり話が面白くなる。
 彼女がスクリーンに登場し、C・グラントと顔を合わせ、母親らと共に食事
をする。何でもない、たったそれだけの事なのに、スクリーンが一気に「映画
という夢の世界」に一変する。
 映画スターとは正にこの事で、久々に「映画スター」或いは「大スター」とい
う言葉を実感しました。

 話自体は、それ程緻密に出来ていないというか、あくまで二人のスターを
魅せる為に大きな破綻さえ無ければいいという感じ。
 フランス警察は、あの頃のハリウッドがステロタイプで描くおマヌケで、賊
が屋根から侵入するのを知っていながら屋根に警官を配置しない大らかさ。
 でも、そんな事はどうでもいいんです。
 ヒッチコックがG・ケリーの美貌に「めまい」を起こしたのか、多分、生涯に
只1本作ったG・ケリーとC・グラントの為のスター映画なんですから。
 我々も無駄な事を考えず、お洒落な雰囲気の中、二人のスターが織りな
す世界とダイヤのハラハラを存分に楽しめばいい。
 映画の楽しさの原点に戻ればいいんです。

 C・グラントの安定感、演技は達者で女優を光らせる才能が有る。
 名立たる女優達が相手役に望むのも当たり前のクソッタレ。(笑)
 G・ケリー。ハリウッドが生んだ最高のクール・ビューティ。
 フォーマルも、カジュアルも、水の中さえ・・・、ちょっと反則の世界にいらっ
しゃいます。(笑)
 個人的には、今日観た「ダイヤルMを廻せ」のケリーが一番好きだけど、
美貌を生かしたゴージャス感を見るのなら、この作品でしょう。
 よく解らないけど、あのゴールドのパーティ・ドレスを着こなせるのは余
程の美貌と才能が要ると思います。
 彼女の魅力を引き出す、イーディス・ヘッドの才能もまた特筆すべきなの
は言うまでも有りません。
 メインディッシュの肉とソースが幾ら絶品でも、それだけでは彩りに欠けま
す。
 絶えず「剣が峰」に立たされる不憫な保険調査員のJ・ウィリアムス、根性
の座りっぷりが「椿三十郎」の奥方に通じる資産家老夫人ジェシー・ロイス・
ランディス 。
 この二人のコメディ・リリーフが居て、主演二人が一層輝くコントラスト。
 その辺のバランスの妙は「手練れ」の一言でしょう。

 理詰めで観ず、肩の力を抜いて見ましょう。
 楽しさにかけては「ファミリー・プロット」同様の魅力が有ります。

 ラストの鐘は、祝福の鐘?
 いやいや、あれは優雅な独身貴族に別れを告げる弔鐘。(笑)

※スタンリー・ドーネンの「シャレード」(1963年)、ブレーク・エドワーズの
 「ピンクの豹」(1963年)のエッセンスは、ここに有ったのかもしれません。

 2015.5.4
 DVD

「ファミリー・プロット」

2015-05-06 01:00:20 | 外国映画
 「ファミリー・プロット」(「Family Plot」、1976年、米)
   監督 アルフレッド・ヒッチコック
   脚本 アーネスト・リーマン
   原作 ヴィクター・キャニング
   撮影 レナード・J・サウス
   音楽 ジョン・ウィリアムス
   出演 カレン・ブラック
       ブルース・ダーン
       バーバラ・ハリス
       ウィリアム・ディヴェイン

 巨匠アルフレッド・ヒッチコック、最後のプレゼント。
 「フォロー・ミー」が遺作になったキャロル・リードといい、遺作の出来が良いと「い
い監督人生」だったと素直に思えるので、実に羨ましいです。

インチキ霊媒師ブランチは資産家の老女から、1万ドルで行方不明の甥の所在
を見つけるよう依頼される・・・。

 この作品、今迄、観てきた作品の中で一番コメディ色が強い。
 ドタバタ喜劇一歩手前くらいなんだけど、コメディ担当のインチキ霊媒師&タクシ
ー運転手コンビ、シリアス担当の宝石商&愛人のバランスが絶妙で、楽しいサス
ペンス・コメディになっています。
 「フォロー・ミー」のリード監督と同じで、巨匠の肩書を降ろしチカラを抜いた作りで、
映画作りが心底好きな感じが出てる、だから、観てるこちら側までリラックスして楽し
めます。
 本格サスペンスを期待したら裏切られるかもしれませんが、軽くても中身まで軽い
訳ではないので充分にヒッチコックを楽しめると思います。
 (ヒチコック印の階段シーンもちゃんと有ります)

 気が付いたのは、この作品1シーンが長い、最初の交霊シーンだけで10分近くあ
るし、他にも10分くらい続くシーンが多数。
 でも「汚名」と違い、全然飽きない。
 長くても、この作品には物語を語るリズムが崩れてないからでしょう。
 この物語は二組のコンビを交互に描きながら、しだいに絡み合わせていくのですが、
その最初のバトンタッチ、リアルから見れば酷い偶然かもしれませんが、映画として
は流れるような主役交代で、流石のテクニックと感じました。

 でも、この作品は、そんな細かい事を気にせず観るのが最良の観方でしょう。
 人を怖がらせる事、楽しませる事に執念を燃やし続けた老巨匠の作品を、一本の
映画として存分に楽しみましょう。
 ラストシーン、ヒッチコックらしい「最後の挨拶」のユーモアを受け取れた事は、映画
ファンとして感慨深く、幸せな一瞬でした。

 K・ブラックは苦手中の苦手なので、観る前はかなり不安だったけど、上品にしてれ
ばアクセントの強すぎる顔立ちも、それ程、気になりませんでした。
 そのK・ブラックを含め、演技陣は申し分なし。
 中でもクレジット3番目ながら実質主役だったB・ハリスが特に素晴らしく、相方のB・
ダーンも負けずに好演でした。
 ブレーキ効かなくなった車中でのB・ハリスには大爆笑。

 個人的には、人に薦めるヒッチコック作品として、かなり上位の作品。
 お薦めです。

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 さて、ここからは超個人的な感想

 生前のヒッチコック監督のコメントを見ると、黒澤監督については、「畑違いだから、
それ程、興味はない」感じでした。
 この作品の、車が横転してブランチがジョージの頭を踏み台にして脱出。
 踏まれたジョージの顔が思いっきり「イテテッ」。
 これ観た瞬間、
 「椿三十郎・・・」
 まァ、ああいうシチュエーションではよく有る事なのですが、そう感じたのは事実。
 で、観終わった後、つらつら考えてると、これって「隠し砦の三悪人」も入ってる気
がしてきて。
 貧乏で金蔓を離さない為なら危険も何のそのの小市民ブランチとジョージが、金
300貫の為なら何でもしますの百姓又七と太平(後のC-3POとR2-D2)。
 真面目組のアーサーとフランは「隠し砦~」と違って敵側だけど六郎太と雪姫。
 何となくキャラが被ってるような気がしました。

 上記は個人的妄想ですが、もう一つ、これは結構、確信。(笑)
 (もしかして有名?でも、余り聞いたコトない)
 宝石商のアーサーって、「ルパン三世 カリオストロの城」の伯爵そっくり。
 上下に圧縮したようなガッシリした体型、四角い顔、前歯だけ見せて笑う。
 途中からアーサーが出てくる度に、集中力乱れました。(笑)

 2015.5.5
 DVD

「汚名」

2015-05-04 00:23:04 | 外国映画
 「汚名」(「Notorious」、1946年、米)
   監督 アルフレッド・ヒッチコック
   脚本 ベン・ヘクト
   撮影 テッド・テズラフ
   音楽 ロイ・ウェッブ
   製作 デヴィッド・O・セルズニック
   出演 ケーリー・グラント
       イングリット・バーグマン
       クロード・レインズ

 戦争中、ドイツのスパイだった父を持つアリシア(I・バーグマン)。
 自暴自棄に陥った彼女を、米諜報機関が自らの手先として利用する事に。
 相手はブラジルに逃れたナチス協力者の頭目セバスチャン(C・レインズ)・・・。

 「いつバレるか」のドキドキ。
 アリシアの正体、他にも鍵の受け渡しシーンなんかヒッチコックらしかった
ですね。
 進むに従ってセバスチャンにも「いつバレるか」が付いてきて、その辺は巧
みだと思いました。
 只、この作品、ヒッチコックの中では、どうなんでしょう。
 凄くテンポが悪い。
 会話が多すぎるため停滞する事が多く、リズムが作れてない気がします。
 それと、この作品は「ハニー・トラップ」を仕掛ける話なので、どうしてもカタ
ルシスを得難い。
 ハニー・トラップの場合、「北北西に進路を取れ」や一連の「007」のように
仕掛けられたけど、女が本当の愛に目覚め相手の為に組織を裏切る、この
タイプの方が映画として共感しやすいし、大概がこのタイプの作品になると思
います。
 仕掛けるとなると女を道具として使う側だから、どうしてもスッキリという訳に
はいかないでしょう。
 その「汚さ」を中和(言い訳)する為に、台詞を多用するハメとなり、それがテ
ンポのブツ切りに繋がった、そんな気がしました。

 1946年製作、戦争直後を考えれば「国家の仕事」の感覚は、現代よりずっ
と神聖視されてたと思います。
 素直になれない男と女が、「国家の仕事」を言い訳にしてズルズルと泥沼に
嵌る話。
 現在では、ちょっとピンと来ないかもしれませんね。

 バーグマンは相変わらず美しい、この作品は「カサブランカ」同様バーグマ
ンに見惚れる作品。
 只、最初のヤサグレたシーンは上手くいってない。
 彼女なら、もっと上手く出来ると思うけど、観客やセルズニックが「あくまで銀
幕のスター」を要求したのかもしれません。
 C・グラントは本作ではイマイチな感じ、グラントならではのユーモアが無いか
らなのか。
 男優ではセバスチャン役のC・レインズの方が「やり甲斐」のある役で、的確
な演技が光ってました。
 (しかし逃亡中に昔の女が現れる、これに引っ掛かるなんて脇が甘過ぎ(笑))
 この作品は「レベッカ」に似たメロドラマ+サスペンスなのですが、その「レベッ
カ」のダンヴァース婦人と同じ雰囲気を持つ、セバスチャンの母親を演じたレオ
ポルディーネ・コンスタンチン も印象に残る良い演技だったと思います。
 デブリン(C・グラント)の上司プレスコットを演じたルイス・カルハーン も、飄々
とした演技でC・グラントより光ってた。(笑)
 総じて演技陣は頑張ってたと思います。
 それだけに、ちょっと残念でした。

 2015.5.3
 DVD