「みじかくも美しく燃え」(「Elvira Madigan」1967年・スウェーデン)
監督 B・ウィデルベルイ 出演 ピア・デゲルマルク、トミー・ベルグレン
作詞家の岩谷時子さんが付けた美しいタイトルの映画。
この詩的なタイトルが評判良くて、似たようなタイトルの映画が幾つか出
ましたが、やっぱり、一番最初のインパクトが全てだと思います。
原題は「エルヴィラ・マディガン」、女性の名前です。
ヨーロッパ三大心中事件の一つだそうで、スウェーデンの陸軍中尉で伯
爵の称号をもつシクステン・スパーレとサーカスの綱渡り芸人エルヴィラ・
マディガンの「道行き」物語。
昔、TVで放映した時、解説の淀川長冶さんが、
「恋愛モノなんですけど、変わった作りの恋愛モノで、二人が出会って幸
せになるまでを描くのが普通なんですが、これは逆、最初が一番幸せで、
そこからラストへ向かって一直線に落ちていく映画」と仰ってましたが、当
に、その通りの作品。
妻子あるスパーレ中尉が、サーカスのスターだったエルヴィラと激しく惹
かれ合い、遂に、家族も地位も名誉も捨てて駆け落ちしてしまう、映画は、
その駆け落ち直後から始まります。
スウェーデンの短い夏が始まった頃、二人は野原でピクニックを楽しみ
ます、しかし、貴族の男は働いたことがない、手持ちの金も無くなり、忽ち、
困窮に陥る。
さりとて、エルヴィラを働かす(見世物を演じる)のはプライドが許さない、
二人は遂に、手に手をとって・・・。
確かに、タイトル通り「短かった」けど、美しいかどうかは・・・。
でも、美しいんですよ、内容以外は。(笑)
スウェーデンの短い夏を写すカメラの映像が、透き通るような感じで美
しい。
ヒロインのエルヴィラ・マディガンを演じるピア・デゲルマルクが、知的で
清楚で美しい。
(「伊豆の踊り子」もそうですが、当時の職業柄、「美人で清楚」というの
は信じ難いけど、野暮は言いっこなし)
モーツァルトのピアノ・コンチェルト第21番・第2楽章の旋律が、画面と
素直に馴染んでいて美しい。
すぐ話が横へいきますが、僕が始めて好きになったクラッシックの曲は、
これです。
ピア・デゲルマルクは、この映画で世界中に強い印象を与えた人ですけ
ど、この後、2、3作出ただけで引退?しちゃいました、ちょっと残念です。
だから、知らない人が殆どかもしれません、例えればスウェーデンのカト
リーヌ・ドヌーヴって感じでしょうか。
まるで、この映画に出演する為に生まれて来たような人。
北欧の淡い陽光の中、戯れに物干し場で「綱渡り」をする場面、ヒロイン
の無邪気さが良く出ていて好きなシーンです。
そんな無邪気さの中に秘めた一途な心、自分が狂わせてしまった男の
運命に潔く殉じようとする一人の女性を、儚さを交えて好演してると思いま
す。
(ここから、完全ネタバレです)
この映画で一番有名なのは、最後の心中に至る場面だと思います。
最後の持ち物を売った金だったか、エルヴィラが中尉の言い付けに背い
て酒場の男達に「綱渡り」の芸を見せて(綺麗な足も見せて)稼いだ金だっ
たかで、パンとワインを買い最後のピクニックへ出掛けるシーン。
始めのシーンと同じく明るい日差しの中、野原で二人きりの昼食。
ふとした弾みで零れるワイン、赤く染まっていくシーツ。
やがて、察したエルヴィラが中尉の胸に顔を埋めて静かに目を閉じる。
バスケットの底に隠した拳銃を取り出す中尉。
銃口をエルヴィラへ向け、引き金の指に力が入る・・・、だけど、どうして
も撃てない。
再び目を開くエルヴィラ、その前を蝶がヒラヒラと飛んでいく。
つられるように立ち上がり蝶を追いかける。
無邪気な笑顔を見せながら蝶と戯れるエルヴィラ。
見つめていた中尉の手が動き出す。
蝶を追いかけるエルヴィラが笑顔のまま、突然、ストップ・モーション。
そこへ一発の銃声が被さる、画面はストップ・モーションのまま、やがて、
もう一発の銃声が響きわたりエンド・クレジットが流れ出す。
内容は絶望的で悲惨なのですが、それを捉える映像は限りなく美しく、こ
のラスト・シーンを、観た人の記憶に残るものとしました。
※フランスで始まったヌーヴェル・ヴァーグが北欧に影響を与え、この作品
が出来たとも言われましたが、そのヌーヴェル・ヴァーグがアメリカへ渡り
「アメリカン・ニュー・シネマ」と名前を変え生まれた作品に「明日に向かっ
て撃て」(ジョージ・ロイ・ヒル監督・1969年)があります。
ストーリーは勿論、全然違いますが、ストップ・モーションに銃声が被さりエ
ンド・クレジットという流れはそっくりです。
※ヨーロッパ三大心中事件のもう一つは、オーストリア=ハンガリー帝国の
皇太子ルドルフと男爵令嬢マリー・ヴェッツェラの心中事件で、オマー・シャ
リフ&カトリーヌ・ドヌーブで「うたかたの恋」(T・ヤング監督・1969年)とい
う映画になっています。
ただ、あと一つは残念ながら不明です。
監督 B・ウィデルベルイ 出演 ピア・デゲルマルク、トミー・ベルグレン
作詞家の岩谷時子さんが付けた美しいタイトルの映画。
この詩的なタイトルが評判良くて、似たようなタイトルの映画が幾つか出
ましたが、やっぱり、一番最初のインパクトが全てだと思います。
原題は「エルヴィラ・マディガン」、女性の名前です。
ヨーロッパ三大心中事件の一つだそうで、スウェーデンの陸軍中尉で伯
爵の称号をもつシクステン・スパーレとサーカスの綱渡り芸人エルヴィラ・
マディガンの「道行き」物語。
昔、TVで放映した時、解説の淀川長冶さんが、
「恋愛モノなんですけど、変わった作りの恋愛モノで、二人が出会って幸
せになるまでを描くのが普通なんですが、これは逆、最初が一番幸せで、
そこからラストへ向かって一直線に落ちていく映画」と仰ってましたが、当
に、その通りの作品。
妻子あるスパーレ中尉が、サーカスのスターだったエルヴィラと激しく惹
かれ合い、遂に、家族も地位も名誉も捨てて駆け落ちしてしまう、映画は、
その駆け落ち直後から始まります。
スウェーデンの短い夏が始まった頃、二人は野原でピクニックを楽しみ
ます、しかし、貴族の男は働いたことがない、手持ちの金も無くなり、忽ち、
困窮に陥る。
さりとて、エルヴィラを働かす(見世物を演じる)のはプライドが許さない、
二人は遂に、手に手をとって・・・。
確かに、タイトル通り「短かった」けど、美しいかどうかは・・・。
でも、美しいんですよ、内容以外は。(笑)
スウェーデンの短い夏を写すカメラの映像が、透き通るような感じで美
しい。
ヒロインのエルヴィラ・マディガンを演じるピア・デゲルマルクが、知的で
清楚で美しい。
(「伊豆の踊り子」もそうですが、当時の職業柄、「美人で清楚」というの
は信じ難いけど、野暮は言いっこなし)
モーツァルトのピアノ・コンチェルト第21番・第2楽章の旋律が、画面と
素直に馴染んでいて美しい。
すぐ話が横へいきますが、僕が始めて好きになったクラッシックの曲は、
これです。
ピア・デゲルマルクは、この映画で世界中に強い印象を与えた人ですけ
ど、この後、2、3作出ただけで引退?しちゃいました、ちょっと残念です。
だから、知らない人が殆どかもしれません、例えればスウェーデンのカト
リーヌ・ドヌーヴって感じでしょうか。
まるで、この映画に出演する為に生まれて来たような人。
北欧の淡い陽光の中、戯れに物干し場で「綱渡り」をする場面、ヒロイン
の無邪気さが良く出ていて好きなシーンです。
そんな無邪気さの中に秘めた一途な心、自分が狂わせてしまった男の
運命に潔く殉じようとする一人の女性を、儚さを交えて好演してると思いま
す。
(ここから、完全ネタバレです)
この映画で一番有名なのは、最後の心中に至る場面だと思います。
最後の持ち物を売った金だったか、エルヴィラが中尉の言い付けに背い
て酒場の男達に「綱渡り」の芸を見せて(綺麗な足も見せて)稼いだ金だっ
たかで、パンとワインを買い最後のピクニックへ出掛けるシーン。
始めのシーンと同じく明るい日差しの中、野原で二人きりの昼食。
ふとした弾みで零れるワイン、赤く染まっていくシーツ。
やがて、察したエルヴィラが中尉の胸に顔を埋めて静かに目を閉じる。
バスケットの底に隠した拳銃を取り出す中尉。
銃口をエルヴィラへ向け、引き金の指に力が入る・・・、だけど、どうして
も撃てない。
再び目を開くエルヴィラ、その前を蝶がヒラヒラと飛んでいく。
つられるように立ち上がり蝶を追いかける。
無邪気な笑顔を見せながら蝶と戯れるエルヴィラ。
見つめていた中尉の手が動き出す。
蝶を追いかけるエルヴィラが笑顔のまま、突然、ストップ・モーション。
そこへ一発の銃声が被さる、画面はストップ・モーションのまま、やがて、
もう一発の銃声が響きわたりエンド・クレジットが流れ出す。
内容は絶望的で悲惨なのですが、それを捉える映像は限りなく美しく、こ
のラスト・シーンを、観た人の記憶に残るものとしました。
※フランスで始まったヌーヴェル・ヴァーグが北欧に影響を与え、この作品
が出来たとも言われましたが、そのヌーヴェル・ヴァーグがアメリカへ渡り
「アメリカン・ニュー・シネマ」と名前を変え生まれた作品に「明日に向かっ
て撃て」(ジョージ・ロイ・ヒル監督・1969年)があります。
ストーリーは勿論、全然違いますが、ストップ・モーションに銃声が被さりエ
ンド・クレジットという流れはそっくりです。
※ヨーロッパ三大心中事件のもう一つは、オーストリア=ハンガリー帝国の
皇太子ルドルフと男爵令嬢マリー・ヴェッツェラの心中事件で、オマー・シャ
リフ&カトリーヌ・ドヌーブで「うたかたの恋」(T・ヤング監督・1969年)とい
う映画になっています。
ただ、あと一つは残念ながら不明です。