セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「A.I.」

2014-10-13 22:19:06 | 映画日記/映画雑記
 「A.I.」(「A.I. Artificial Intelligence」・2001年・米)
   監督 スティーブン・スピルバーグ
   脚本 スティーブン・スピルバーグ
   原作 ブライアン・オールディス
   撮影 ヤヌス・カミンスキー
   音楽 ジョン・ウィリアムス
   出演 ハーレイ・ジョエル・オスメント
       フランシス・オコナー
       ジュード・ロウ

 何か後味の悪い映画でしたね。
 多分、言いたい事の[道具]として「親子の情」を利用したからだと思います。
 そのテーマも一つの映画に二つのテーマを詰め込んだ感じで、焦点がぼや
けてるんじゃないでしょうか。
 一つは人間の嬌慢、科学の盲目と独善。
 二つ目は「2001年 宇宙の旅」と同じ「知の継承」、只、前作が形而上的と
いうか哲学的で神話に近いスタイルだったのに対し、ロボットが知の継承者と
いう極めてドライで身も蓋もない話、確かに人間と科学の嬌慢が行き着く先と
しては最も可能性があるのですが。

 人間の嬌慢と独善を描くなら、海の底でブルー・フェアリーに見守られ意識が
無くなっていったと云うシーンで終わらせるべきだった。
 (この救いの無い結末に映画=利益と考えるハリウッドを支える資本家が金を
出すとは思えない、フランス向きなテーマ)
 でも、キューブリックは「知の継承」への拘りを捨てられなかったんでしょうね。
 それで無駄に思える30分が続いてしまった。
 あの結末を「救い」として作る事自体が僕は人間の驕りと感じます。

 しずくさんが書いていらした、進化したロボットによるディビットの安楽死。
 確かに、それがディビットに対する最も幸せな方法なのかもしれません。
 それを「救い」と感じるしか術のない映画でした。

 今の時代の人間としては、そんな高尚な啓示より捨て犬、捨て猫の連想ばか
りしていました。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「キャバレー」

2014-10-12 23:15:30 | 外国映画
 1972年制作の音楽付き映画(これがミュージカルかは疑問)、再見になり
ますが今回の「ブログDEロードショー」はこの作品で参加します。

 「キャバレー」(「Cabaret」・1972年・米)
   監督 ボブ・フォッシー
   脚本 ジェイ・プレッソン・アレン
       ヒュー・ホイーラー
   原作 クリストファー・イシャーウッド
   音楽 ジョン・カンダー
   作詞 フレッド・エッブ
   編曲 ラルフ・バーンズ
   撮影 ジェフリー・アンスワース
   美術 ロルフ・ツェートバウアー
   出演 ライザ・ミネリ
       マイケル・ヨーク
       ジョエル・グレー
       ヘルムート・グリーム

 1931年ベルリン、ワイマール体制下で共産党とナチスが争い徐々にナチ
スが幅を効かし出してた時代。
 下宿先を探してたイギリスの学生ブライアンは或るアパートでキャバレー歌
手のサリー・ボールズ(アメリカ人)と出会う・・・。

 背徳、退廃、暴力をナチズムのもう一つの側面と見るなら、「地獄に堕ちた
勇者ども」、「愛の嵐」の系譜に連なる作品。
 オープニング、歪んだ鏡面に映る客席、アップで入り込んでくるMC(司会進
行~J・グレイ)の冷笑含みの退廃と滑稽なメイク。
 キャバレー「キットカット・クラブ」で繰り広げられるショーの世界は、背徳と退
廃の毒花が咲き乱れ甘酸っぱく妖しい腐臭が充満した裏の顔、そして表の世
界ではナチスの台頭による暴力が満ち溢れてる。
 映画は主役たちの生きる現実世界に反射するようなキットカット・クラブで行
われるショーの世界を差し込みながら進行して行きます。
 受難のユダヤ人とナチスの退廃と暴力、如何にもアメリカ受けの教条主義的
な構図で、人に依っては陳腐と言う人も居るだろうけど僕はそれ程悪いとは思
いませんでした。
 ブライアン、サリー、男爵の関係と破綻の部分は良く描けているんじゃないで
しょうか。
 しかし、この作品の素晴らしい所はそこじゃない、キットカット・クラブで繰り広
げられるショーの数々こそがこの作品の見所。
 ラスベガスで鍛えられた一級のエンタティナー、ライザ・ミネリのパフォーマン
ス、そのライザ・ミネリさえも喰ってしまいそうなMC役のジョエル・グレイの達者
さと存在感。
 この二人の舞台を観てるだけで、この作品は元が取れます。
 二人を取り巻く美しくないダンサーや楽団の醸し出す雰囲気、ピンポイントで
効果を出してるパントマイムの人形。
 ボブ・フォッシーの才気と演出が冴えわたっています。

 キャバレーのオーナーがナチス党員によって殴打されるシーンをショーの合
間にカット・インさせたシーンは効果的だけど、キューブリックの「2001年 宇
宙の旅」、「時計仕掛けのオレンジ」からの引用でしょう。
 オリジナルを未消化だとは思うけど、それなりに良く出来たシーンだと思いま
した。
 美青年が歌うナチス党の歌に聴衆が雷同していくシーンも非常に印象的な
シーン。(どっかで観た気もするけど)

 歪んだ鏡面に写し出される歪んだ世界。
 このキャバレーの世界こそが現実であり、フィナーレを飾る「life is a Cabaret」
(人生はキャバレー」)。
 音楽映画らしからぬ鬱な世界で後味の良い作品では有りませんが、僕はそ
れでも名作だと思っています。

 「人生は舞台、人は皆役者」
 「人の世で起こる事は、すべて舞台の上でも起きる」
 「人生はキャバレー」

 「キャバレー」 OP
 「キャバレー」より「Money、money」

 これで漸く僕のナチス3部作(デカダンス部門)が終了出来ました、機会を与
えて下さった宵乃さんに感謝です。

※「life is a Cabaret」のエルシーを語る部分、♪酒とクスリで死んで、人は嘲笑う、
 でも彼女の死に顔は女王のようだった、私もそうありたい♪
 何だかJ・ガーランドの事のような・・・。
 L・ミネリにとってJ・ガーランドの娘と言う束縛から脱した作品。
※ドラマにカット・インする冷笑的なJ・グレイのカット2つ、印象的なんだけど、
 ちょっと「やり過ぎ」な感無きにしも有らず。
※この頃のライザ・ミネリ、顔は個性的過ぎて勘弁だけど、あの太ももはオヤ
 ジ目線になってしまいます。(笑)
 
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

挑戦 2本立て

2014-10-05 23:30:43 | 邦画
 4,5年前から映画を再び観出したのですが、以前と違い集中力が続かなくて、中々、劇場2本立てに挑戦する気になれませんでした。
 今日も、本当は溝口健二の「近松物語」だけにしようかなと思ってたのですが、入れ替え制じゃないので都合の良い席(トイレで他人に迷惑にならない、且つ、なるべく前方)で観るべく1本目の「女殺し油地獄」も観る事に急遽決定。
 場所は懐かしい旧文芸坐の場所に再建された新文芸坐。
 1Fから3Fに変わったけど、スクリーンの感じが昔と同じで嬉しかったです。
 旧文芸坐の最前列は、いつも浮浪者の方々が1日中寝てて、その臭いが名物だったけど、今は勿論そんな事なく綺麗で、それでいて映画書籍が充実してるのは昔のまま、ちょっと嬉しかったです。

 心配は杞憂、映画館の暗い環境なら2本立てでも全然平気でした、家でDVDだと、これが結構ダメで殆ど2回くらい一服休憩してしまうんですけど。(汗)
 映画も素晴らしかった。
 「近松物語」は溝口さんだし、心配は殆どなかったけど、意外だったのは「女殺し油地獄」(堀川弘通監督・1957年)が負けないくらい素晴らしい作品だった事。
 これは本当に拾い物でした。
 2本とも雨だらけなんだろうなと思ってたのですがデジタルリマスターしたのか、とても綺麗なフィルムだったので吃驚。
 これも嬉しい誤算でした。
 今日、観ていて痛烈に感じたのは、
「もう、このレベルの時代劇は永久に出来ないんだろうな・・・」ですね。
 役者さん達の言葉遣いが(時代劇言葉)が完全に消滅してるし、これを今の役者さんがどんなに上手くやっても、こんなに自然には絶対出来ないと思います。
 例え1人が出来ても、これらの作品のように全員というのは不可能でしょう。
 ホント、両作品とも役者さん達が上手すぎて惚れ惚れしてしまいました。
 (どっちも上方の話だから上方言葉なのですが、今のTVで聞く汚い関西弁とは全然違います、綺麗なんです)
 女衆も既婚者は、剃り眉、カネもちゃんと付けてるし、髷もご新造さん仕様で美しいし、観てて「ああ、ちゃんとしてるな」と安心できるんです。

 「近松物語」は噂に違わない傑作でしたし、香川京子さんが人妻役だけど凄く綺麗で着物も美しくて、いかにも大店の「お家さん」で素晴らしかった。
 今まで観た香川京子さんの中で最高。
 早坂文雄さんの音楽も凄かった。(最高傑作と言われる由縁も納得)
 「女殺し油地獄」も完璧に救いようのない放蕩息子に対する親の情がしみじみ伝わってきて、とても素敵な作品でした。

 外は大雨でしたが眼福の一日でした(反動が怖い)。
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画手帳 2014年7月~9月

2014-10-01 00:00:00 | 映画手帳
    (7月)
32.※「フランケンシュタイン対地底怪獣」  2日  DVD
33.※「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」 3日  DVD
34.※「砂の器」                 13日 (TOHOシネマズ日本橋)
35. 「超高速!参勤交代」          19日 (TOHOシネマズ日本橋)
36. 「ハモン ハモン」             21日  DVD

    (8月)
37. 「GODZILLA ゴジラ」          3日 (TOHOシネマズ日本橋)
38. 「ジゴロ・イン・ニューヨーク」      10日 (日比谷シャンテ)
39. 「血を吸うカメラ」             14日  DVD
40. 「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」  15日  DVD
41. 「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」   16日  DVD

    (9月)
42. 「太秦ライムライト」            6日 (シネマート六本木)
43. 「バルフィ!人生に唄えば」      20日 (新宿シネマカリテ)  
44.※「羅生門」                22日 (TOHOシネマズ日本橋)
45. 「舞妓はレディ」             27日 (TOHOシネマズ日本橋)

※印は再見作

(初見作の感想)
全体的にハズレの少ない(「ハモン ハモン」、「GODZILLA ゴジラ」くらい)第3四半期でした、中でも9月は当たり月だった気がします。
第3四半期で一番印象に残ったのは「太秦ライムライト」かな。
助演女優賞候補 邦画 田畑智子 「舞妓はレディ」
            洋画 マギー・スミス 「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」
新人賞候補        上白石萌音 「舞妓はレディ」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする