セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

映画手帳 2015年下半期

2015-12-30 00:00:00 | 映画手帳
 本年中、皆さまには大変お世話になりました。
 映画の話が沢山出来て楽しく、嬉しかったです。
 ありがとうございました!
 
 年内最終更新になりますが、
 皆さま、お身体に気をつけて良いお年をお迎え下さい。

無印・DVD ☆・映画館(新作) ★・映画館(旧作) △再見
  (7月)
「江分利満氏の優雅な生活」、☆「アリスのままで」、☆「ハッピーエンドが書けるまで」
  (8月)
★「恋におちたシェイクスピア」、★「王様と私」、☆「彼は秘密の女ともだち」、「ダーク・シャドウ」、
「クロワッサンで朝食を」、「タイピスト!」
  (9月)
「セクレタリー」、★「ショーシャンクの空に」、★「ピクニック」(1936年)、★「やさしい女」、
「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」
  (10月)
★「夏の遊び」、★「さらば友よ」、「太陽はひとりぼっち」、「愛人/ラマン」、「サンセット大通り」、
「マルタの鷹」
  (11月)
★「新幹線大爆破」、☆「マルガリータで乾杯を!」、「イフ・アイ・ステイ 愛の還る場所」、「イヴの総て」、
☆「夏の夜の夢」
  (12月)
「ジョー・ブラックによろしく」、★「宋家の三姉妹」、△「めぐり逢わせのお弁当」、「ミツバチのささやき」

※記事は最終更新になりすが、以後もコメント大歓迎!です。
コメント (8)
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「ミツバチのささやき」

2015-12-23 22:15:45 | 外国映画
 「ミツバチのささやき」(「El Espiritu de la Colmena」、1973年、スペイン)
   監督 ビクトル・エリセ
   脚本 アンヘル・フェルナンデス・サントス
       ビクトル・エリセ
   撮影 ルイス・カドラード
   美術 アドルフ・コンフィーノ
   音楽 ルイス・デ・パブロ
   出演 アナ・トレント
       イサベル・テリェリア
       フェルナンド・フェルナン・ゴメス
       テレサ・ジンペラ

 非常に寓意的な作品で理解出来てない部分も多く、それ故、トンチンカン
な感想になるかもしれません。

 スペイン内戦後の1940年頃、或る田舎村に住む家族のスケッチ。

 ミツバチ 人間
 フランケンシュタインの怪物と毒きのこ ファシズム
 花を与え殺される少女、目の無い人体図 国民
 光の中、目を閉じ呼びかけるアナ それでも人は神の子なのだ
 多分、そんな事を象徴してるんじゃないかと思いました。
 それを声高じゃなく、淡々と描いてる所が好きです。
 只、そんな図式的なものより、まだ様々な事に耐力の無い子供達の世界。
 繊細で純粋な儚い世界が実に上手く描けてる。
 子供の精神世界を、ここまで綺麗に写し出してる映画は余り記憶にない
ほど。
 その点に、この作品の素晴らしさを感じました。

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 世の中の 正義の数の 妖しさよ 無けりぁ困るし 過ぎても困る
コメント (4)
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「めぐり逢わせのお弁当」

2015-12-22 22:41:22 | 外国映画
 ひとはみな 旅へ誘(いざな)う 声を聴く 荷を捨つるのは 夢と知りつつ
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 「めぐり逢わせのお弁当」(「Dabba」(「The Lunchbox」)、2013年、印・仏・独)
   監督 リテーシュ・バトラ
   脚本 リテーシュ・バトラ
   撮影 マイケル・シモンズ
   音楽 マックス・リヒター
   出演 ニムラト・カウル
       イルファン・カーン
       ナワーズッディーン・シッディーキー

 小学生の子供が居るイラ、倦怠期である夫との関係を修復しようと階上に
住むオバサンのアドバイスの元、心を込めてお弁当を作る事に。
 しかし、お弁当はダッバーワーラー(弁当配達人)の手違いで別の人
へ渡ってしまう。
 それは600万分の一の確率、或る意味「奇跡」とも言える出来事。
 次の日も、その次の日もお弁当は、その別人に元へ・・・。
 夫は誤配されて来る弁当、味が変わった事にも気付かないままだった。
※この作品の重要な台詞「人は間違った電車でも正しい場所に着く」、ちょっ
と運命論的で解釈の難しい台詞ですが、この出来事から物語は始まります。

 「心の空白」を描いた作品。
 イラの弁当が届くサージャンもまた、妻を数年前に亡くし空白を埋められな
いまま過ごしていて、早期退職を決意、どこか違う場所で第二の人生を始め
る気でいます。
 そんな二人が弁当箱を封筒代わりに文通を始める。
 やがてイラは夫のシャツに女の移り香が残ってる事に気付く・・・。

 かつてない程の酷いドジを踏んだ為、今回が二回目の観賞になります。
 強い心の空白を持つ者同士が「お弁当」を仲立ちにして惹かれ合う。
 今回観終わり、ちょっとだけ「フォロー・ミー」要素が有るような気がしました。
 べリンダとクリストフォルー、弁当を「尾行」に置き換えれば関係性が似てな
くもないし、サージャンの後釜として試験採用中のシャイクの口の達者さは、
もう一人のクリストフォルーのよう。
 現に殆ど死者の世界に居たサージャンを現実に引き戻したのは、イラは勿
論だけどシャイクの存在も大きい。
 サージャンがベランダで煙草を吸う時、隣家の窓から見える家族団欒、物
語の進行と共にその窓がシャットアウトから半開き、全開とサージャンの心
模様と重なるように見えます。
 只、「フォロー・ミー」は良く出来た大人の為のお伽噺だけど、こちらは現実
世界の物語。
 浮気も有れば、子供も居る、老いの現実、死、それ程明るくない未来も見
える。
 妻が日々の空しさから別の男に惹かれるなんて、随分前の「昼メロ」みた
いだけど、それでも、それぞれの「空白」は上手に描けてるし、若干、描き過
ぎの気もするけどインド映画らしくない終わり方も良かった。
 一度目はあの終わり方にモヤモヤしましたが、二度目は随分納得して終
われた気がします。
 今迄観たインド映画とテンポがまるで違うので戸惑いましたが、良い作品
だと思います。

※この監督、小津監督が大好きらしいのですが、代名詞のローアングルこ
 そ無いけどテンポがよく似てます。
※「人が増え過ぎだ、妻は寝たまま葬られた、最近、自分の墓を買おうとし
 たら立った姿勢で埋めるとか、満員電車で立ち、死んでからも立ちっ放し
 なのか」
 疑問:インドの都会人って家族別々の場所に埋葬されるの?
 (サージャンはクリスチャンらしい~姓が英語風で住居はキリスト教徒が
 多く住む地域だとか)
 サージャン夫婦の仲はどうだったんだろう、どちらとも取れるんですよね。
 仕事人間のイラの夫と同じだった気がしないでもない。

 2015.1.10
 目黒シネマ
 2015.12.20
 DVD

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 背負う荷を投げ捨てたと思いしも 捨てた重さの倍背負うとは
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「宋家の三姉妹」

2015-12-15 22:55:53 | 映画感想
 「宋家の三姉妹」(「宋家皇朝」、1997年、香港・日)
   監督 メイベル・チャン
   脚本 アレックス・ロー
   撮影 アーサー・ウォン
   美術 レオン・ワーサン   エディ・マー
   音楽 喜多郎  ランディ・ミラー
   出演 マギー・チャン
       ヴィヴィアン・ウー
       ミシェル・ヨー
       ウィンストン・チャオ
       ン・ヒンゴッ

 「一人は富を愛し、一人は力を愛し、そして一人は国を愛した」
 冒頭に記されるテロップ。
 通常、三姉妹なら長女、次女、三女の順なのに、長女、三女、次女の順にな
ったのは、三姉妹の内、次女の視線で話が進行していくからだと思います。
 この作品、邦題、英題より原題の「宋家皇朝」が正確ですね。
 父母が築き上げた財力と娘達が嫁いだ夫達の影響力は正に一つの王朝な
のです。
  宋靄齢(長女) 富豪と結婚し、夫は国民党軍の金庫番となり財政を担う
  宋慶齢(次女) 中国建国の精神的父 孫文と結婚、孫文死後、その思想
             を受け継ぐ、只一人本土に留まり、共産党から国母待遇
             を受け、党籍が無いにも拘わらず共産党副主席、最晩年、
             党籍取得後、名誉国家主席
  宋美齢(三女) 蒋介石へ嫁ぎ、相談役・スポークスマンとして辣腕を振るい
             中華民国(台湾)の国母となる

 映画は三人の幼少期をプロローグとし、適齢期、それぞれの結婚、そして日
中戦争中の別れまでを描いています。

 中国動乱期を背景にした壮大なドラマなのですが、「さらば、わが愛/覇王別
姫」に較べるとスケール、深み、共に足りない気がします。
 突き詰めれば、配慮が作品に必要な「毒」を消し去ってるから。
 これは宋家の家族物語だから家族の絆と愛情はしっかり描けてるのですが、
立場の違う三姉妹の絆と姉妹愛ばかりで「憎」が無い。
 「愛情物語」だけど「愛憎物語」じゃない平板さ。
 共産党名誉国家主席まで上り詰めた慶齢の視点で進む為、物語上必要な
「憎」を共産党嫌いの蒋介石に全て押しつけてる。
 この2時間半の物語で、だれが悪役かと言えば軍閥でも日本軍でもなく三女
の夫、蒋介石が実質担ってる。
 その為、靄齢の夫・孔祥熙の金銭の汚さ、慶齢の夫 孫文の女癖の悪さ、こ
れらを華麗にスルーしながら蒋介石の短気、女性問題だけはスルーしない。(笑)
 「西安事件」も蒋介石の窮地を救った美齢の武勇談に重きを置いてます。(半
分以上、事実だとしても)

 実は観ながら南京事件をどう描くのか恐々としてたのですが、見事にスルー、
かなりズッコケました。
 帰って調べたら、この作品、香港と日本の合作だった。
 南京市街戦で兵士・多くの民間人の殺戮があったのは事実だと思います、そ
れを宣伝戦で虐殺・大虐殺としたのは蒋介石夫人の宋美齢で、それが今に至
る「南京大虐殺」の重要な証拠の一つなのだけど、スポンサーへの配慮で華麗
にスルー。
 この作品、日本軍の侵攻の描写が極めて少なく、殆ど背景画と言ってもいい
くらい。
 やがて併合される中国への配慮、スポンサーの日本への配慮、それらが蒋介
石一人を悪者にする結果になったんじゃないでしょうか。
 (「南京虐殺」について僕は否定しませんが、故・山本夏彦氏の見解が当たら
ずとも遠からずじゃないかと思っています~日本以外、聞く耳持たないけど)

 確かに三姉妹の関係、家族愛、絆は描けてるけど、それ以外は踏み込み不足。
 これは原題とおり宋家の史記で、その視点で観る作品なのでしょう。
 映画館を出た時は「いい作品を観た」気になりましたが、段々、醒めていく。
 そんな作品でした。

※史記のスタイルでいけば、次女・宋慶齢が「本紀」で、それ以外は「世家」、「列
 伝」となります、本作の美齢は「列伝」と言える存在ですが、靄齢は列伝には遠
 い存在、縁の下の力持ちなんだろうけど、やはり夫が汚なすぎたのかな。
 (国民党の金を横領、私腹を肥やし形勢不利と見るや夫婦で国外へトンズラ)
 「本紀」は美辞麗句(でないと書いた人間の首が文字通り飛びます)、本紀で書
 けないマズイ事は世家や列伝に忍ばせると読んだ事があります。
 列伝とは、それぞれの時代の有能、特異な人物の伝記、世家は或る家系の伝
 記、本作のタイトルが「宋家皇朝」でなければ、これは本来「世家」に位置する物
 語。
※実在の写真見ると、かなり皆、似せてますね。

 2015.12.13
 TOHOシネマズ日本橋

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 覇道以て覇道を制し四千年 時は経るとも人は変わらじ

 中国が舞台なので漢詩風にしてみました(座興です、漢詩なんて出来ないモン)

 覇道以ッテ覇道ヲ制スコト四千年
 時悠久ナレド人亦変ワルコトナシ
 草川朱ニ染マリシモ ヤガテ元ニ戻ラン
 一時ノ静寂有リテ続カズ是則チ也天道
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「ジョー・ブラックをよろしく」

2015-12-07 23:24:24 | 映画感想
 「ジョー・ブラックをよろしく」(「Meet Joe Black」、1998年、米)
   監督 マーティン・ブレスト
   脚本 ロン・オズボーン   ジェフ・レノ  
       ケヴィン・ウェイド   ボー・ゴールドマン
   撮影 エマニュエル・ルベツキ
   美術 ダンテ・フェレッティ
   音楽 トーマス・ニューマン
   出演 ブラッド・ピット
       アンソニー・ホプキンス
       クレア・フォラーニ

 来月、還暦だから、いい加減カッコつけは止めて素直になる頃かもしれな
い。(笑)
 恋愛映画は、この歳になっても大が付くくらい好きなんだと思います。
 ハッピーエンド、悲恋モノ、ほぼ「何でも来い!」でしょう。

 だから、この作品も好きなタイプ。
 マトモなA・ホプキンスって初めてかもしれないけど良かった。
 ヒロインもモデルっぽい女優さんだけど、とてもキュートに見える時があっ
て合格。
 ブラピは・・・まぁ男だから、どうでもいい。(笑)
 (僕達の世代だと、彼の顔の骨格ってR・レッドフォード~寅さんと、ちょっと
造作が違うだけなのに(汗))
 ストーリーも超大金持ちというのが多少気に入らないけど、そうしないと社
内抗争の面白味が無くなるから、これでOK。
 多分、これからも何回か観る事になると思います。

 ・・・で、済ましたいけど。(笑)
 やっぱり、神様(死神だって)は全知全能でないとね。
 神様に「勉強になった」なんて言われたら、人間、立つ瀬がないです。
 そして、最大の問題はラストでしょう。
 今のハリウッドのハッピーエンド縛りは解っているけど、これは「悲恋物語」
にするべき作品だと思います。
 確かに話を上手く繋ぎ、「橋」の象徴性を生かしてハッピーエンドに持って来
てるけど、その強引な力技で話の整合性もファンタジー性も全部吹っ飛んじゃ
った。
 (神様なんだから得意の「神隠し」でよかったのに)
 3時間の作品を最後の5分でブチ壊す勇気は買うけど、DVDは買わない結
果に・・・。

 リクエストして頂いた方には申し訳ないような感想になりましたが、DVD買い
はしないけど借りたり、オンエアがあった時は見る事が多いと思います。 
 「恋愛映画」、好物ですから。
 教えて頂き感謝!です。

 今日の難クセ(こういう性分なんです、許して下さい)
※医療機器が警告音を鳴らさないのは死神だから?
※ピーナッツバターの一瓶くらい「お持たせ」しなきゃ。(また来られても困るけ
 ど(笑))

 2015.12.6
 DVD

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 何と、まあ! 神ともあるに 恋知らず 裁かれし者は 哀れなりけり

 金もあり 愛も手に入れ 望月の 欠けたることも なしと思えば
 (道長の無断拝借)
 
コメント (12)
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「イヴの総て」と「サンセット大通り」

2015-12-03 22:44:39 | 外国映画
 「イヴの総て」(「All About Eve」、1950年、米)
   監督 ジョセフ・L・マンキーウィッツ
   脚本 ジョセフ・L・マンキーウィッツ
   撮影 ミルトン・クラスナー
   美術 ライル・R・ウィラー   ジョージ・W・デイヴィス
   音楽 アルフレッド・ニューマン
   出演 ベティ・デイヴィス
       アン・バクスター
       ジョージ・サンダース
       セレステ・ホルム

 スタッフ関係者が何の気なしに声を掛けたスターの追っかけ、彼女はそれ
を執念深く待っていたのだ。

 「サンセット大通り」(「Sunset Boulevard」、1950年、米)
   監督 ビリー・ワイルダー
   脚本 チャールズ・ブラケット   ビリー・ワイルダー 
       D・M・マーシュマン・ジュニア
   撮影  ジョン・サイツ
   美術 ハンス・ドライヤー   ジョン・ミーハン
   音楽 フランツ・ワックスマン
   出演 グロリア・スワンソン
       ウィリアム・ホールデン
       エリッヒ・フォン・シュトロハイム
       ナンシー・オルソン
       
 売れない脚本家が借金取りに追われ偶然逃げ込んだ家、そこはサイレン
ト時代の大スター ノーマ・デズモンドの屋敷だった・・・。

 「サンライズサンセット」というミュージカルナンバーが有りますが、「イヴの
総て」が日の出なら「サンセット大通り」はタイトルのままで日没でしょう。
 しかし描かれるのは美しい景色ではなく、イヤな一日が始まりイヤな一日
が終わったというゲンナリしたもの。
 それでも、人が持つ「業」の厭らしさをスターの光と影を使って描いた秀作
だとは思います。
 奇しくも同じ年に公開されアカデミー賞で激突した作品。
 どっちも「うっかり、子泣きジジイを拾ってしまった」顛末を描いています。(笑)

 映画として観易いのは「イヴの総て」でした。
 それは僕にとって想定の範囲だったという事でしょう。
 どんなに厭らしく描いていても限度内で突き抜ける事はなかったし、二つ
程、引っ掛かる所もありました。
 一つはカレンがガソリンを抜いたのを何故イヴが知ってるのかという事(僕
が気付かなかっただけかも、知ってる人がいらっしゃいましたら教えて下さい)、
二つ目はアディスンに図星を差されたイヴが泣き崩れる所。
 特に二つ目、イヴのような強かで機転と目はしの利く女が首根っこ掴まれ
たくらいで(得意のポーズにせよ)泣き崩れる違和感。(これは時代のセイで
しょうが、観ていてちょっとシラけた)
 確かにアカデミーに値する作品ではあるけど、内幕モノの秀作止まりとい
うのが僕の印象です。

 「サンセット大通り」
 毒まみれの作品、後でWikを読み余計にそれを感じました。
 G・スワンソン自身はノーマ・デズモンドのように零落せず、舞台や実業に
勤しんでいて映画と正反対、活発でしたが他がね。
 最早、「鬼畜の所業」と言っていいくらい。
 いつも軽妙洒脱で親しみ易い作品を作ってるB・ワイルダーも、作品を良く
する為には何でもする芸術家の暗黒面を持っていたんだなと、ちょっと安心
しました。
 この作品、毒気の強さに観てるのがシンドクなる所も有るけど、万事ソツ
無く作ってる「イヴの総て」より印象に残ります。
 特にラストの階段シーン、あれ、もう殆どノーマ・・・と言うよりマックスの精
神的心中でしょう。
 DVDで観たからよかったけど、大きなスクリーンで観たら多分、夜中にう
なされます。(笑)

 故・淀川長治さんは「サンセット大通り」派でアカデミー賞の結果に激怒し
たらしいけど、この作品、パラマウント社長も激怒したように映画界に対して
トコトン後ろ指差してますからねぇ。
 「イヴの総て」は冷笑だけど、「サンセット~」は、そっと忍び寄り人のケツ
にいきなり指突っ込むような厭らしさに満ちてる。(下品な例えですいません)
 アカデミー会員の「受け」は悪いと思いますよ。
 「イヴの総て」のラストの多面鏡、イヴのような女(男も)は幾らでも居ると
いう示唆に大した驚きはないけど、「サンセット大通り」のノーマ、マックスの
狂気は背筋に来るものが有りました。
 僕は淀長さんと同じでサンセット派になると思います。
 (どちらも余り再見したくはない(笑))

※ガソリン>多分、旦那が後でピンときて、それを「女房は君の味方でね」と
 か、うっかりイヴに喋った。
 それ以外、想像つかない。
※「サンセット大通り」を元ネタにした手塚治虫氏の「ブラック・ジャック」読ん
 でたから、ファンレターのカラクリ他、既視感が有って、そこは、ちょっと残
 念でした。
※イヴは疲れてたから「あの子」を置いたけど、朝、目覚めたら叩き出すと
 思いますよ。
 たった1年前の自分なんですから。
※G・スワンソンは本作でアカデミーにもノミネート、出演依頼が山のように
 来たそうですが、いずれもノーマの同工異曲。
 「バカにしないで!」とばかり全部蹴っ飛ばしたそうで、性根の座った大ス
 ターと尊敬してしまいます。

 「サンセット大通り」
 H27.10.18
 DVD
 「イヴの総て」
 H27.11.23
 DVD 

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 踏み入れば 出るに出られぬ 芥子(ケシ)畑 甘き香りに 身は腐りゆく
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