と言う訳で「羅生門」。(笑)
「羅生門」(1950年・日本)
監督 黒澤明
脚本 橋本忍
黒澤明
撮影 宮川一夫
美術 松山崇
音楽 早坂文雄
出演 三船敏郎
京マチ子
森雅之
志村喬 上田吉二郎 千秋実
加藤大介 本間文子
或る夏の暑い日、京都洛外で一人の旅の武士が殺され、妻が盗賊に犯された。
盗賊、妻、武士、それぞれが殺したのは自分だと言い張る。
しかし、その一部始終を見ていた目撃者が居て・・・。
「羅生門に住んでいた鬼は、人間の恐ろしさに逃げ出したらしいぜ」
映画「羅生門」とは、芥川龍之介の「藪の中」の話を羅生門(史実では羅城門)の
下で語らせながら、小説「羅生門」のエッセンスを2,3滴振り掛け、それに黒澤ヒュ
ーマニズムを付け足した作品です。
前回も書きましたが、そこに描かれてるのは「真実の多面性」、「真実の相対性」
であり、結局、人が「真実」と思ってるものは個人の「主観」にすぎないのではないか、
という事なんだと思います。
芥川の原作は救いのない人間不信のまま終わっています。
しかし、黒澤監督は「人は嘘をつく救いようのない生き物」だ、しかし、そんな人間
の世の中でも人の善性を「信じたい」、「信じて生きていきていきたい!」、「人は生
まれ変われるんだ」、それも人間なんだ!と訴えています。
この映画はいろいろな逸話に彩られた作品で、一番多いイメージは「難解」だと思
います。
大映の永田社長が「なんや高尚な映画やけど、さっぱり解らん!」とこき下ろし、
撮影中、助監督達が「意味が解らない」と監督の元に談判の来たとか(チーフ助監
督だった加藤泰は結局、説明に納得出来ず降りた)。
映画館から出て来た客も「さっぱり解らない」と不評だったけど、映画館によって
は、ちゃんと理解していて、「何で?」と思ったら解説者だか弁士が付いていたとか
とか。(笑)
でも、黒澤監督は「これは別に小難しいシャシンじゃないです、先入観を持たずに
見て欲しい」と言っています。
僕?僕の印象は「何で?」、「この映画の何処が難解なの?」です。
この映画は、人間のエゴイズムを描いた作品だと思います、その「エゴイズム」の
視点から見れば全然難しい映画でもナンでもない。
ただ、「エゴイズム」と言うものに「面白味」を感じるか、感じられないかで随分印象
が変わってくるとは思います。
この映画に関して、僕は随分理屈っぽい事を書いてきました、「真実の多面性」ウ
ンヌン。
でも、この映画が西洋に影響を与えたのはそればかりじゃないのです、むしろ、そ
ういう理屈面は後からくっ付いて来るものなんです。
それよりも何よりも、映像の力強さと美しさ、流麗なカメラワークと抜群のリズム感、
野性そのままの三船敏郎、魔性を秘めた京マチ子、動の二人に重しとなって物語に
安定感を与えてる静の森雅之、三人の演技合戦。
人が映画に引き込まれるのは「理屈」じゃありません、世界中の人達をこの映画に
引き込んだのは、上記したものが渾然一体となって観る者に迫ってきたからなんだ
と思います。
それは、製作から60年以上経った今でも、それ程、変わりなく現代の人間に迫っ
てきます。
もし興味が湧いて、観てみようと思う方がいらっしゃったら、角川書店が公開当時
にほぼ近い状態に完全復元したデジタル・リマスター版でご覧になるのをお薦めしま
す。
また、ブルーレイ装置をお持ちならば、ブルーレイ版が一番素晴らしいとの事。
僕は何度も観てるから台詞は全部解るけど、初めての方は「日本語字幕」付きで
見るのが無難だと思います。
※杣売りが下人から赤子を奪い、その下人から図星を指された時、僧侶は何故あそ
こまで恐怖に顔を引き攣らせたのでしょう?
真犯人は別に居たのかも。(笑)
※妻 真砂の供述の際に流れる早坂文雄の悪名高い?ボレロ。
僕は「七人の侍」の時に書いたように、早坂さんで一番好きな曲なんですが、個人
的に「そそのかしのボレロ」と名付けています。
超えてはいけない一線に身を置かされた時、あの音楽に触れたら「一線を越えて」
しまいそうなんですよ。(笑)
※「殆んど近郊のロケで、オープンセットが「検非違使庁の壁」と「壊れかけた羅生門」
だけ、安い制作費で作った作品」と誤解してる人が多いようですが、あの門を作る
のに莫大な金が掛かっています。
黒澤さん、完成後、大映の重役だった川口松太郎氏に愚痴られたそうです。
「黒さんには一杯喰わされた、確かにセットは門一つに違いなかったけど、あんな
大きなのを建てる位ならセット百位建てた方がよかったよ」
黒澤さんによると、最初からあんな大きなのを建てる気は無かったそうなんですが、
京都に呼ばれて長い事待たされてる内にイメージがどんどん膨らんでああなった
そうです。
(羅城門は都大路の正門にあたる門だから小さい訳がない、と気付いてしまった
~笑)
※興行は不入りと伝説になっていますが、興行成績は大映の4位だったかで悪くな
かったんですよ、ただ、今で言う一種のポルノ映画(レイプもの)の感覚が当時の
人達には有ったみたいです。
「羅生門」(1950年・日本)
監督 黒澤明
脚本 橋本忍
黒澤明
撮影 宮川一夫
美術 松山崇
音楽 早坂文雄
出演 三船敏郎
京マチ子
森雅之
志村喬 上田吉二郎 千秋実
加藤大介 本間文子
或る夏の暑い日、京都洛外で一人の旅の武士が殺され、妻が盗賊に犯された。
盗賊、妻、武士、それぞれが殺したのは自分だと言い張る。
しかし、その一部始終を見ていた目撃者が居て・・・。
「羅生門に住んでいた鬼は、人間の恐ろしさに逃げ出したらしいぜ」
映画「羅生門」とは、芥川龍之介の「藪の中」の話を羅生門(史実では羅城門)の
下で語らせながら、小説「羅生門」のエッセンスを2,3滴振り掛け、それに黒澤ヒュ
ーマニズムを付け足した作品です。
前回も書きましたが、そこに描かれてるのは「真実の多面性」、「真実の相対性」
であり、結局、人が「真実」と思ってるものは個人の「主観」にすぎないのではないか、
という事なんだと思います。
芥川の原作は救いのない人間不信のまま終わっています。
しかし、黒澤監督は「人は嘘をつく救いようのない生き物」だ、しかし、そんな人間
の世の中でも人の善性を「信じたい」、「信じて生きていきていきたい!」、「人は生
まれ変われるんだ」、それも人間なんだ!と訴えています。
この映画はいろいろな逸話に彩られた作品で、一番多いイメージは「難解」だと思
います。
大映の永田社長が「なんや高尚な映画やけど、さっぱり解らん!」とこき下ろし、
撮影中、助監督達が「意味が解らない」と監督の元に談判の来たとか(チーフ助監
督だった加藤泰は結局、説明に納得出来ず降りた)。
映画館から出て来た客も「さっぱり解らない」と不評だったけど、映画館によって
は、ちゃんと理解していて、「何で?」と思ったら解説者だか弁士が付いていたとか
とか。(笑)
でも、黒澤監督は「これは別に小難しいシャシンじゃないです、先入観を持たずに
見て欲しい」と言っています。
僕?僕の印象は「何で?」、「この映画の何処が難解なの?」です。
この映画は、人間のエゴイズムを描いた作品だと思います、その「エゴイズム」の
視点から見れば全然難しい映画でもナンでもない。
ただ、「エゴイズム」と言うものに「面白味」を感じるか、感じられないかで随分印象
が変わってくるとは思います。
この映画に関して、僕は随分理屈っぽい事を書いてきました、「真実の多面性」ウ
ンヌン。
でも、この映画が西洋に影響を与えたのはそればかりじゃないのです、むしろ、そ
ういう理屈面は後からくっ付いて来るものなんです。
それよりも何よりも、映像の力強さと美しさ、流麗なカメラワークと抜群のリズム感、
野性そのままの三船敏郎、魔性を秘めた京マチ子、動の二人に重しとなって物語に
安定感を与えてる静の森雅之、三人の演技合戦。
人が映画に引き込まれるのは「理屈」じゃありません、世界中の人達をこの映画に
引き込んだのは、上記したものが渾然一体となって観る者に迫ってきたからなんだ
と思います。
それは、製作から60年以上経った今でも、それ程、変わりなく現代の人間に迫っ
てきます。
もし興味が湧いて、観てみようと思う方がいらっしゃったら、角川書店が公開当時
にほぼ近い状態に完全復元したデジタル・リマスター版でご覧になるのをお薦めしま
す。
また、ブルーレイ装置をお持ちならば、ブルーレイ版が一番素晴らしいとの事。
僕は何度も観てるから台詞は全部解るけど、初めての方は「日本語字幕」付きで
見るのが無難だと思います。
※杣売りが下人から赤子を奪い、その下人から図星を指された時、僧侶は何故あそ
こまで恐怖に顔を引き攣らせたのでしょう?
真犯人は別に居たのかも。(笑)
※妻 真砂の供述の際に流れる早坂文雄の悪名高い?ボレロ。
僕は「七人の侍」の時に書いたように、早坂さんで一番好きな曲なんですが、個人
的に「そそのかしのボレロ」と名付けています。
超えてはいけない一線に身を置かされた時、あの音楽に触れたら「一線を越えて」
しまいそうなんですよ。(笑)
※「殆んど近郊のロケで、オープンセットが「検非違使庁の壁」と「壊れかけた羅生門」
だけ、安い制作費で作った作品」と誤解してる人が多いようですが、あの門を作る
のに莫大な金が掛かっています。
黒澤さん、完成後、大映の重役だった川口松太郎氏に愚痴られたそうです。
「黒さんには一杯喰わされた、確かにセットは門一つに違いなかったけど、あんな
大きなのを建てる位ならセット百位建てた方がよかったよ」
黒澤さんによると、最初からあんな大きなのを建てる気は無かったそうなんですが、
京都に呼ばれて長い事待たされてる内にイメージがどんどん膨らんでああなった
そうです。
(羅城門は都大路の正門にあたる門だから小さい訳がない、と気付いてしまった
~笑)
※興行は不入りと伝説になっていますが、興行成績は大映の4位だったかで悪くな
かったんですよ、ただ、今で言う一種のポルノ映画(レイプもの)の感覚が当時の
人達には有ったみたいです。
リメイクを観た時は「羅生門」のと聞いていたので、「え、これ羅生門違う…」と思いましたよ(笑)
やっとこちらを観たら、羅生門でのやり取りがあるからいいんだなぁと納得できました。ここがないと私は観てられないからなぁ。
薄布?がふわっとなって、京マチ子さんの顔が見えるシーンと雨の中の羅生門ばかりが印象に残ってます。
ボレロは忘れてました。再見は…どうしようかな。10年くらいは観なくてもいいかも(笑)
コメントありがとうございます!
薄布?がふわっとなって、京マチ子さんの顔が見えるシーン>
「そよ風」を映像にした、と言われる有名なシーンですね、涼やかなチェレスタの音が効果的だったと思いました。
薄布>牟子(むし)というそうです。(今、シナリオ引っ張り出して確認しました~笑)
ボレロ>僕はCD持っていて、何度も聞いてますから。
今日半日、頭の中でこれがエンドレスで鳴っていました。(笑)
10年くらいは観なくてもいいかも>映画は「仕事」じゃないから、無理や義務で観てると辛くなりますよ。
昔、映画をリタイアした時の自分がそうでしたから。
今は、肩の力を抜いて「気楽」に観ています。(笑)
私が見たのはこの版で、美しかったですよ~!
その後、BS3でもオンエアがあって、BDに保存してあります☆
>僕?僕の印象は「何で?」、「この映画の何処が難解なの?」です。
私も全然難しくなかったです♪
年間ベスト10にも入れました。
とっても良い作品だと思います。
追伸:「ブルーバレンタイン」のお仲間が増えて良かったですね☆
わぁ、いいな。
一応、黒澤信者としましては、劇場で観たいと思ってDVD封印してるんです。
でも、中々、タイミングが合わなくて・・・。
今年中に絶対観ます!!
初見の時、最初は何なんだろうと思ってたのですが、杣売りが森の中を歩いていくシーンで、ぐっと引き込まれました。
僕も好きな作品です。