セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

映画手帳 2014年5月~6月

2016-06-30 23:59:35 | 映画手帳
 2016年 5月
  「幕が上がる」(DVD)、「別離」(DVD)、「オーケストラ!」(DVD)、
  「変態島」(DVD)、「ニューヨーク眺めのいい部屋売ります」(飯田橋ギンレイホール)、
  「あの頃エッフェル塔の下で」(早稲田松竹)、「宇宙人ポール」(DVD)、
  「ひそひそ星」(新宿シネマカリテ2)

       6月
  「映画に愛をこめて アメリカの夜」(DVD/再見)、「エクス・マキナ」(池袋HUMAX)、
  「病院坂の首縊りの家」(DVD/再見)、「ロイ・ビーン」(DVD/再見)
  「何かいいことないか子猫チャン」(DVD)

  1月~4月は映画手帳 2016年1月~4月をご覧下さい。
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「ロイ・ビーン」

2016-06-28 23:36:10 | 外国映画
 「ロイ・ビーン」(「The Life and Times of Judge Roy Bean」、1972年、米)
   監督 ジョン・ヒューストン
   脚本 ジョン・ミリアス
   撮影 リチャード・ムーア
   音楽 モーリス・ジャール
   歌  アンディ・ウィリアムス「Marmalade, Molasses & Honey」
   衣装 イーディス・ヘッド
   出演 ポール・ニューマン
       ヴィクトリア・プリンシパル
       ロディ・マクドウォール  ネッド・ビーティ
   ゲスト エヴァ・ガードナー  アンソニー・パーキンス
        ジャクリーン・ビセット  ステイシー・キーチ
   予告編(ロング・バージョン
   予告編(スタンダード

 西部劇の時代が終わり、町には金持ちの自動車が行き交う。
 そこへ突然現れる、馬上の人物。
 顔形は逆光で解らない。
 それを見つめるロイ・ビーンの娘ローズが呟く、
 「まるで昔の絵本から抜け出たみたい・・・」
 これはクライマックス直前のシーンですが、この作品を凝縮した台詞。
 この作品はJ・ヒューストンとP・ニューマンが組んで作った「男のお伽噺」、
絵本なんだと思います。
 女性が観ると、結構、カチンと来る言葉が幾つも出て来ます。
 (男のメルヘンを壊すのは女の正義感と現実主義だと(笑))

 ロイ・ビーンは実在した人物。
 G・クーパー主演の「西部の男」にも出てきて、そこでも主演のクーパーを
存在感で喰ってしまったような人物。
 元々は銀行強盗のお尋ね者、それがテキサス・ぺコス川の先、無法地帯、
文明世界の外の小さな村に流れ着き、先住の無法者達をぶっ殺して住み着
く。
 勝手に判事を名乗り、凶状持ち・無法者を片っ端から死刑(首吊り)にし、
その財産を巻き上げる。
 付いた仇名が「首吊り判事」、実際、この作品の噂を当時のロードショー誌
で見た時はロイ・ビーンの前に「殺し屋判事」だったか「首吊り判事」の副題
が付いてました。
 でも、そこは映画で、まして主役がP・ニューマン。
 実際のロイ・ビーンを拡大して、いいトコを抽出した人物に作り上げてます。
 まず吊るしてから裁判みたいな男だけど、巻き上げた金で村を町に発展さ
せたり、唯我独尊な「正義」でも、それなりに生一本で無法地帯に秩序を作り
上げてもいる。
 女に純情でスター女優 リリー・ラングトリーを神の如く崇め(町の名もラン
グトリーと命名)、手下の保安官にも同じ事を強要する。
 或る時、酒場でポーカーをしてるロイ達の後ろで、酔っ払ったならず者が赤
塚不二夫のお巡りさんみたいにピストルを乱射、それでも動ぜず無視してポ
ーカーを続けるロイ、マリー、保安官達、それがリリーのポスターに狙いを定
めた瞬間、皆に撃ち殺される。
 付いた罪名が「騒乱罪?」で、所持金が罰金となりポーカーの掛け金に変
わっちゃう。(笑)
 この作品、こういう可笑しさを受け入れられないと、ちょっと無理かもしれま
せん。

 表面だけ見れば殺伐とした話だけど、P・ニューマンの隠れた愛嬌と適材
適所の配役、ゲストスター達のキャラクター、それに監督の演出が相俟って
陽性で伸びやかな作品に仕上がってます。
 お伽噺に西部劇へのレクイエムを上手く混ぜ込んだ、極めて優れた作品
だと思います。(男、限定!)

 はっきり言ってP・ニューマンのワンマンショー的な作品ですが(それを言っ
たら「用心棒」、「椿三十郎」だって三船さんのワンマンショー)、「男のお伽
噺」を輝かせるのは何と言っても女優陣。(笑)
 ロイの妻となるマリー(V・プリンシパル(新人))は可愛いし、終盤にゲスト
出演するJ・ビセットはファン、そして永遠の憧れリリーとして登場するE・ガー
ドナーの妖艶さと貫禄。
 揃いも揃って、皆、強気な気性が西部劇に相応しいんです。
 あ、忘れちゃいけないのが物語の節目を作る熊。
 CGの無い時代、滅茶苦茶に好演してます。
 (酒場の扉を潜って中に入っていくのは、流石に「着ぐるみ」だと思うけど)
 熊とロイ、マリーがピクニックに行くシーンは、もう明らかに「明日に向かっ
て撃て」でP・ニューマン、R・レッドフォード、K・ロスの名場面「雨にぬれて
も」のパロディ。
 こちらもA・ウィリアムスの歌う「小さな愛のワルツ」がマッチして微笑ましく
楽しいシーンになっています。
 こちら→「小さな愛のワルツ」(原題「Marmalade, Molasses & Honey」)

 やってる事は昔ながらの「西部劇」ですが、そこにアメリカン・ニューシネマ
のドライな感覚が入ってカラッとしてる、老監督J・ヒューストンの「まだまだ、
やれまっせ!」の心意気が感じられます。
 埋もれさせてしまうには惜しい作品。

※ラストのドンパチ、もうチョット合理的にやって欲しかった。(笑)
 まず最初に撃ち倒すのは中央のマシンガンを持ってる男でしょ。
 あんな後回しでは5秒で負けちゃいますよ。
 包囲網を敷く相手に皆で撃って出るのも「明日に向かって撃て」のパロデ
 ィかな?
※エピローグで「ローズは結婚しました」と見せられる写真。
 ローズの肩を抱いてる男は、当時、リアル同棲中だったM・サラザン。
 (ビセットとサラザンの仲は皆が知ってるコトでした)
 こんな感じでパロディ、楽屋落ち、文字通り「どてっ腹に風穴が空く」をやっ
 てみせるジョーク等が挟み込まれている楽しい映画です。
※製作はファースト・アーティスツ。
 P・ニューマンが専属制崩壊後の役者の地位向上を旗印に立ち上げたプ
 ロダクション。
 有体に言えば自分達のギャラ・アップの為で、この作品を制作した頃はF・
 ダナウェイ、S・マックイーン、アリ・マックグロウらが加わっていました。
 あの「タワーリング・インフェルノ」にも影響力を及ぼしてると思います。

 2016.6.26
 DVD
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「エクス・マキナ」

2016-06-12 03:47:56 | 外国映画
 「エクス・マキナ」(「Ex Machina」、2015年、英)
   監督 アレックス・ガーランド
   脚本 アレックス・ガーランド
   撮影 ロブ・ハーディ
   美術 マーク・ディグビー
   視覚効果監修 アンドリュー・ホワイトハースト(アカデミー賞受賞)
   音楽 ジェフ・バーロウ
   出演 ドーナル・グリーソン
       アリシア・ヴィキャンデル
       オスカー・アイザック
       ソノヤ・ミズノ

 世界的IT会社の社員ケイレブは社長ネイサンの別荘へ招かれる。
 社長の目的はケイレブを使って新型AI エヴァのチューリング・テスト(機
械か人間か)を行う事だった・・・。

 予告編
 https://www.youtube.com/watch?v=tDsadV9KaCA

 「エクス・マキナ」とはラテン語で「機械仕掛け」との事。
 個人的にはSFモノとして「インターステラー」より面白く、そして、怖かった。
 中々、良く出来た作品だと思うけど、どうもAI版「私が、生きる肌」」+「ヒ
ドゥン・フェイス」(いずれもスペイン系映画)の気がしてならない。
 キューブリックは「A.I.」で機械と対極にある母性(ブルーフェアリーの像
がマリア像を仮託したものなら「神」)を同時に描く事で皮肉なバランスを取っ
たのかもしれない、この作品に於いて西洋合理主義を極めたネイサンを癒
すものとして登場するアイテムは、自然を征服するものと見ず調和するもの
とする東洋思想、と言うか、日本趣味。
 まァ、そう言いながら日本人顔のメイドを怒鳴りつける(言葉が解らない設
定も日本人への当てつけ?)は、ダッチワイフとして扱うは、その根底思想
に怪しいものを感じますけど。
 しかし、あの塀、どこの温泉宿かと。(笑~でも、あの地にあんな宿があっ
たら金持ち限定で流行るかも)
 SF好きにはお薦めです。

 ちょっと話は逸れますが、「アメリカの夜」でフェラン監督がうなされるのは、
不安からくる破綻の恐怖の為。
 でも誰もが抱く不安や恐怖を「増大」させるのは現実ではなく、人間の想像
力が勝手に暴走する為なんですよね。
 アレクサンドルの事故死で破綻が現実になれば、それを回避するのに頭
が一杯で想像してる暇がなくなり、結局、悪夢を見る暇さえない。
 「ターミネーター」や「A.I.」を見てる僕らのAIに対する「恐れ」も、結局は想
像に脅えてるだけなのかもしれない。
 でも、こればかりは「杞憂」という訳にはいかない現実的恐怖を感じます、
誰もが抱く不安は「人間を超える知能を持つAIが、劣ってる人間の支配下に
有るはずがなく、いずれは・・・」で、結局の所、ダーウィンの進化論は種の滅
亡論と同義だという、目を逸らしてた事と向き合う時が近づいている恐怖。
(AIも新しいAIに取って換わられるのだから進化論とおり)
 
 何だか感想もSFチックになってしまい汗タラタラ。(大汗)

6.13 追記
「エクス・マキナ」とは「ゼウス・エクス・マキナ」(機械仕掛けの神)から来てるとか。
「ゼウス~」は古代ギリシャ劇に出て来るもので、破綻、混乱した舞台に上から降りて来て全てを丸く収める、日本で言えば葵の印籠みたいはモノ。(笑)
諍い混乱する現世に降臨する機械仕掛けの神という事なら、丸く収まった世界での人間の居場所は人間にとって悲劇的なものなのでしょう。
その世界でAIは映画を観るのでしょうか、「死霊の盆踊り」を観るのでしょうか?(笑~映画全ソフトを瞬時にインプットしてオシマイ)

※余りの日本趣味に社長の名前まで疑ってしまう、流石にネエチャンはない
 か。(笑)
※ロケ地はノルウェーで実際に有る建物2棟を使ったとの事。

 2016.6.11
 池袋HUMAXシネマズ
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「映画に愛をこめて アメリカの夜」 その2

2016-06-05 14:16:43 | 外国映画
 「映画に愛をこめて アメリカの夜」(「La Nuit américaine」/「Day for night」、1973年、伊・仏)
   監督 フランソワ・トリュフォー
   脚本 フランソワ・トリュフォー  ジャン=ルイ・リシャール
       シュザンヌ・シフマン
   撮影 ピエール=ウィリアム・グレン
   美術 デミエン・ランフランチ
   出演 ジャクリーン・ビセット
       ジャン=ピエール・レオ
       ジャン=ピエール・オーモン
       ヴァレンチナ・コルテーゼ
       ナタリー・バイ
    
 実は先月、急に観たくなったのですが用事が続いて、それっきり。
 今月の企画がこれで良かった。(笑)
 これと「フォロー・ミー」、「冒険者たち」は何度観たか解らないくらい大好きな
作品。
 感想は随分前に書いてるので、そちらをご覧下さい。
 (余り、付け加える事もないので、ここで何を書けばいいのか)

・トリュフォーの映画に対する深い愛着、映画を作る苦労の先にある麻薬のよ
うな楽しさ、嬉しさ。
 それが、映画ファンに素直に伝わってきて、こちらも仲間に入って、その楽し
さを共有してしまう。
 これは、そんな作品。
 作中、セヴリーヌの台詞が、この作品を表してると思います。
 「皆が一つ所に集まって仕事。愛し合い、やっと慣れた頃、途端に皆が消える」
 楽しさ、嬉しさ、儚さ。
・この作品は撮影終了までの出来事をスケッチ風に描いたもの、油絵を期待
するとハズします。
・トリュフォーとは何度も組んでる音楽担当G・ドルリューの録音シーンから始
まります。
 目に見えない音楽を視覚化する工夫、2本のサウンドトラックの線で表現し
てみせます。
 (戦前のディズニー作品「ファンタジア」で既にやった気が)
 この作品で大好きなシーンは、テーマ曲をバックに撮影風景をコラージュし
た流しのシーンの数々。(笑)
・映画とは真実に見せ掛けた虚構の世界、OPの最初のシーン、次のテイク以
降はスピーカーでガンガン指示を出してるのに(つまり同録じゃない)、最初の
テイクだけは指示の声が入ってない嘘、監督がプロデューサーとセットを歩き
ながらスケジュールの話をしてる時、撮影してないのに地下鉄の出口から人
が出てくる嘘。
 嘘つき加減が実に楽しい。
・ファンだったJ・ビセット。
 普段の姿、役者ジュリー、役のパメラ、3役を演じてみせなければならない難
しい役。
 やっぱり演技に柔軟性がないんですよねメリハリが無い、これを完璧に演じ
てたら主演女優賞総ナメだったかもしれないのに。
 彼女のエージェントも作品の質よりギャラのタイプだったようで、それも大成
出来なかった要因の気がします。(ビセットの限界を知ってたという見方も出来
るけど)
 結局、代表作になってしまったこの作品も、ギャラが安いのでエージェントは
放ったらかしにしてて、焦ったトリュフォーが直接、彼女に電話して初めてオフ
ァーを知ったという・・。
・反して株を上げたのは、作品で一番目立ってたスクリプト兼アシスタント役の
N・バイ、後にトリュフォー作品の主役を務める事になります。
・この作品大好きなもので、以前から何度もネットで他の人の記事を漁ってる
のですが、途中でヒステリックに叫ぶオバサンが異質で浮いてると書く人が何
人かいらっしゃいました。
 あの人は部外者、つまり我々の代表。(笑)
 何かないかと絶えず監視して、色恋沙汰が起きればヒステリックに書き立て
る。
 自分の配偶者、子供が寝取られた訳でもなく、冷静に考えれば全く自分に
関係ないコトを勝手に裁判、有罪の判決を下してる・・・。(アレクサンドルも作
中、似た事をネルソン博士に言ってます)
 あれは、そういう事だと思ってるし、フランス人は個人主義の権化みたいな
人種、関係の無い人の色恋に干渉するなっていうエスプリもあるんじゃない
かな。(所詮、スターと庶民は作中の台詞「涙のカップル」~道徳の時間じゃ
ないですから)
・主要スタッフは勿論、役者が演じてるのですが、チーフ助監督とチーフカメラ
マンは本人だった気が。
 トリュフォーはクレーン撮影を基本やらないと聞いてますが、本作ではサー
ビスなのか見せてくれてます。(笑)
・トリュフォーはこの作品から丸くなりましたね、それをカイエ派から随分非難
されたけど、僕は本作以降の作品の方が好きです。

 きっと、この先も何度となく観るだろう本当に大好きな作品。
 リクエストを感謝します。

※作中、二度「日本で「初恋」」という台詞が有り、実際、2年後、東宝で「はつ
 恋」(仁科明子(亜季子)主演)が作られてますが無関係。(笑)
※作中出てくるガヤ録り(雑談の音)、昔、東宝でバイトしてた時、「岸壁の母」
 という作品でやった事があります、映画と同じく「映画の話はダメ」と言われ
 ながら。
 バイトで話し相手もないから、文字通り「ワイワイガヤガヤ」と呪文のように声
 出してました。(笑)
※この作品の一番の思い出は試写会の時間に遅刻しそうになって、サークル
 仲間4人と新宿駅から厚生年金ホールまでの2K近い距離を走り抜いた事。
 暑かったと思って調べたら7月でした。(笑)
※参考まで。(僕の好きな作品)
 1~3位までは別格(1位は別格中の別格)、4~20位までが大好き中の大
 好き作品。
 4~20位までは順不同でも構わないくらい差が無いです。
 http://blog.goo.ne.jp/leatitia55/e/ac742ea0ef81de3b3dfb88fc8fed7700

 2016.6.4
 DVD

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 世の中の 真(まこと)は何処と 問われれば
   表も真(しん)なら 裏も真なり
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