セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「グッバイ、レーニン!」

2015-04-27 00:03:36 | 外国映画
 「グッバイ、レーニン!」(「Good Bye、Lenin!」、2003年、独)
   監督 ヴォルフガング・ベッカー
   脚本 ベルント・リヒテンベルク
       ヴォルフガング・ベッカー
   撮影 マルティン・ククラ
   音楽 ヤン・ティルセン
   編集 ペーター・R・アダム
   出演 ダニエル・ブリュール
       カトリーン・ザース
       チュルパン・ハマートヴァ
       マリア・シモン

 東ドイツの崩壊を背景にした或る家族の物語。
 母親思いの息子が軋轢を生みながらも嘘をつき通していくのですが、そ
の心情を思うと切なくなります。
 主要3人(母、姉、アネックス)の人間が上手く描けてる、恋人のララがち
ょっとイイ娘過ぎるきらいもありますが、可愛いから許せます。(笑)
 体制崩壊で街が変わっていく様も、壁崩壊以外は、W杯、コカ・コーラ、
車等、肌で感じられる事から描いていて上手いと思いました。
 西側の流入を一つ一つの点で描いてるからなのか、小さな叙事詩の側
面が有り、「叙事詩の中の或る家族」という作品になっていて、そのバラン
スが絶妙でした。
 これはドイツ人でなければ創れない作品だと思います。
 
 「真実が本当の解決になる」、テレビ朝日「相棒」のコンセプトですが、こ
の作品は正反対に位置する作品ですね。
 僕は、そのコンセプトが嫌いで「相棒」見なくなりました。
 明日、地球が無くなるのなら、その時まで知らないでいたいです。(笑)

 上手く感想を書けませんでしたが、良い作品でした。
 エントリーして下さった方に感謝します。

※お母さんは、何故、熱心な活動家に変身したのか。
 銀行にお金を預けなかったのは、国を信用していないからだろうし。
 その辺、想像の余地が多く、面白いです。

 2015.4.26
 DVD

「セッション」

2015-04-26 01:12:53 | 映画感想
 去年、場外ホームランの作品に何本も当たった反動か、今年はイマイチ不
作気味。
 これで初見18本目だけど、HRはおろか3塁打さえ無い感じ、本作は当た
りが強烈過ぎて2塁打止まりだったかな。

 「セッション」(「WHIPLASH」、2014年、米)
   監督 デイミアン・チャゼル
   脚本 デイミアン・チャゼル
   撮影 シャロン・メール
   音楽 ジャスティン・ハーウィッツ  
   出演 マイルズ・テラー
       J・K・シモンズ
       メリッサ・ブノワ

 名門音楽学校へ通うニーマンは、鬼教授フレッチャーの目に留まりエリート・
バンドへ編入される。
 そこで待っていたのは、少しのミスも許されない強烈なレッスンだった・・・。

 この作品、終わり方がいい。
 極めてドライにスパッと終わらせてるのが大好感。
 作品自体、教授vs生徒の一点にピントを合わせた非常にシンプルなものを
スピードで一気に見せるから、この終わらせ方が正解だと思います。
 付属部分のガールフレンドの描き方も最小限。父親の描写がテンポダウン
させてるけど、これが無いとタメの一切無い作品になってしまうから、邪魔だ
けど必要でしょう。
 (ガールフレンドの描き方、凡百ならもっと描き込みたくなる所)
 現代に於いて、これだけシンプルな作品をしっかり魅せる事が出来たのは、
全て教授役J・K・シモンズの個性のお陰。
 確かに主演M・テラーのバチ捌きは素晴らしいの一言なんだけど、それもシ
モンズという強烈な太陽があるからこそ光る事が出来たような気がします。
 「ガンダム」で言えば、シャアという光が有るからアムロが映える、って感じで
しょうか。
 只、強烈な個性に必死に対抗する個性は描けてるけど、「パレードへようこ
そ」と同じで、その内面には余り立ち入っていない。
 表面的な個性を描く事だけで止まってる、それが、この作品の弱い所じゃな
いかと思っています。
 赤い彗星vsガンダム、マシーン同士の戦いは描けてるけど、搭乗してるシャ
アとアムロという人間は類型で終わってる。
 そんな感じがしました。

 昔々のスポ根モノ、「巨人の星」、「あしたのジョー」、「アタックNO1」、いろい
ろ有りましたが、これはモロに「巨人の星」ですね。(笑)
 男性向けかもしれませんが、中々、面白かったです。

※「ジェレミー」(1973年)でチェロの先生がラッキョウ頭だったけど、男の音楽
 教授はラッキョウ頭がデフォなのか。(笑)
 顔も良く似てるし。
※「ペーパー・チェイス」(1973年)では、L・ワグナーとの恋愛パートを削って
 勉強一点に絞った方が良かったと言う人が少なくないのですが、それを実行
 すると、この作品に近くなると思います。

 2015.4.24
 TOHOシネマズ新宿 スクリーン7

「パレードへようこそ」

2015-04-19 23:19:42 | 映画日記/映画雑記
 「パレードへようこそ」(「Pride」、2014年、英)
   監督 マシュー・ワーカス
   脚本 ステファン・ベレズフォード
   出演 ベン・シュネッツァー
       ビル・ナイ

 1984年、鉄の女サッチャー政権下で行われた炭鉱閉鎖計画と、それに反対するストライキ。
 権力に虐げられる炭鉱労働者のニュースを見て、警官に殴られる者という共通項から一方的「連帯」を示すLGSM(炭鉱労働者を支援するレズ&ゲイの会)。
 マイノリティ同士とはいえ異質の者達が「連帯」する事が果たして出来るのか・・・。

 映画には人間を追求していくタイプと事象を追っていくタイプとが有ると思います。
 勿論、事象を追っていくタイプでも、そこに登場する人間達をしっかり描いていく事が基本。
 この作品は事象を追っていくタイプであり、又、群像劇でもあるのですが、残念ながら登場人物達の描き方が上っ面ばかりで内面に殆ど踏み込んでいないと感じました。
 登場人物の内面が解らなくて、説明も無いので想像しなきゃいけない事が多過ぎ。
 例えば、創設メンバーの女性が運動の過程でレズの権利に特化した第2グループに加わらなかったのは何故なのか。
 多分、彼女が「レズの権利」より「差別されるマイノリティの権利」という、より大きな目的に惹かれたのだろう、とか。
 何故、リーダーのマークはニュースを見ただけで、「神の啓示」のように運動を決心したのか。
 狂言回し役の青年が運動に首を突っ込むのも、何か不自然に感じるし、青年の母親が「私も、そうだった」って、一瞬「ぽか~ん」としてしまいました。(笑)
 人物描写が深くないから、流れを眺めてるだけの感覚。
 
 ラストは最近の「お決まり」、登場人物の「その後」が説明されます。
 この作品で一番の悪役、村の組合幹部の女性(頑迷な保守派、もう一人のサッチャー)は、どうなったんでしょうね。
 全炭鉱労組全会一致という事は、元々、孤立気味だった彼女は一層孤立したんでしょうね、それでもサッチャーと同じく鉄の意志で一人頑迷に生きていったと。
 もう一人、後に大学へ行きウェールズ最初の女性議員になったという女性の旦那、土壇場のシーンで一方的な誤解の上で彼女から詰られてたけど、夫婦仲はどうなったんだろう。
 最後のシーンで見かけなかったような・・・。
 中途半端、或いは描きたくない事が有るのなら、取捨選択等せず一切やらない方がマシだったと思います。

 退屈こそしなかったけど、さして面白いとも思いませんでした。
 残念。
 (タイトルの邦題、かなりマズイ気がします)

 2015.4.19
 銀座シネスイッチ2

(4.24 追記)
※他の方のレヴューを読むと、「合唱」のシーンが良かったと。
 確かに感動的な所だけど、どうしても1972年の「キャバレー」(ボブ・フォッシー監督)を思い出してしまう。
 アブナイ、アブナイ。

「きっと、うまくいく」と「ペーパー・チェイス」

2015-04-06 23:43:18 | 映画日記/映画雑記
 予めおことわりしておきますが、僕は「ペーパー・チェイス」をコメディ化したのが「きっと、うまくいく」だなんて思っていません。
 只、設定に似てる部分が多いのは事実。
 こなた、インド最難関のICE工科大学、片や、何人もの大統領、司法長官を輩出してるハーバード法学院。
 主人公が恋に堕ちる相手が鬼学長の娘なら、「ペーパー・チェイス」では、最難関と言われる契約法の鬼教授の娘。
 どちらも主人公は、それと知らずに出会う。
 理由は違うけど、即退学となりうる不法侵入シーンもあるし、
 ペーパー(試験)を追うばかりの空しさを訴えてるのも似ています。

 でも、似てるのは、そこまで。
 「きっと、うまくいく」はコメディで、「ペーパー・チェイス」は軽めのシリアス話で雰囲気がまるで違います。
 学長はちいっとばっか考えを変えたかもしれないけど、「君達の脳ミソを法律家仕様に作り変える」と宣言するキングスフィールド教授は一切変化しません。
 出来は、個人的見解ですが「きっと、うまくいく」の方が遥かにいいと思っています。
 (教授が生徒の顔と名前を憶えていない、というオチは使ったかな(笑))

 ハーバード法学院はICEや日本と違って、1年目で勝負が決まるそうです。
 ここで優秀な成績(特に難関科目)を取った者だけが次のステップへ進める、進級は一緒でも、2年目で「超エリート」と「その他」に選別され、「その他」から「超エリート」へは編入出来ない。
 「ペーパー・チェイス」という映画は、その1年目を描いた作品です。
 (日本も同じらしいけど、そういう所へ行ったら目の開いてる時間は全て勉強・判例調べに費やされ、映画のように「恋」なんてしてる暇は全く無いとか~ハーバード法学院の場合、授業が終わると直ぐに付設図書館、図書館の閉館はAM3:00)

 只、この作品、「きっと、うまくいく」に無い面白い点が一つだけ有ります。
 それは、何故か無性に勉強したくなる事。(笑)
 映画を観て「何かしたくなる」というのは結構ありますが、「勉強したくなる」という珍しい経験は、この作品以外、感じた事がないです。
 (「マダム・イン・ニューヨーク」も似た感覚を持つ人が居ると思いますが、僕には「ペーパー・チェイス」の方が、断然、強烈でした~「マダム~」は、そういう作品じゃないし)

※僕が「ペーパー・チェイス」を忘れられないのは、ヒロインのリンゼー・ワグナーの大ファンだったから。(笑)

 「ペーパー・チェイス」(「The Paper Chase」、1973年、米)
   監督・脚本 ジェームス・ブリッジス
   原作 ジョン・ジェイ・オスボーン・ジュニア
   撮影 ゴードン・ウィリス
   音楽 ジョン・ウィリアムス
   出演 ティモシー・ボトムズ
       リンゼイ・ワグナー
       ジョン・ハウスマン(アカデミー賞助演男優賞)