セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

椿説「ドリーマーズ」

2017-05-22 21:51:33 | 映画日記/映画雑記
 「ドリーマーズ」(「The Dreamers」、2003年、英・仏・伊)
   監督 ベルナルド・ベルトルッチ
   脚本 ギルバート・アデア
   原作 ギルバート・アデア
   撮影 ファビオ・チャンケッティ
   美術 ジャン・ラバス
   出演 マイケル・ピット
       エヴァ・グリーン
       ルイ・ガレル
      (ジャン=ピエール・レオ)

 1968年パリ5月革命を背景に、シネマテークに入り浸る映画狂の一卵性
双生児テオ(L・ガレル)とイザベル(E・グリーン)の男女二人、仲間に加わる
アメリカから語学習得に来たマシュー(M・ピット)、三人の愛と決別を描いて
いく・・・。

 予告編
 https://www.youtube.com/watch?v=YU1brBVMBkM

 中々面白いけど何を描きたかったのか、よく解らん。(笑)
 なので例によって唯我独尊、裏読みっぽく書いていこうと。(汗)
 これヌーヴェルヴァーグ、登場人物にゴダールとトリュフォーを仮託した物
語なのでは。
 シネマテークに入り浸り、知り合いとなり同志的(カイエ・デュ・シネマ)に繋
がるも5月革命で決別していくって殆どゴダールとトリュフォーでしょ。
 話の骨格はモロにトリュフォーの代表作「突然炎のごとく」('62)から。
 途中、三人がJ-L・ゴタールの「はなればなれに」('64)を真似てルーブル
を駆け抜けるシーンがあるけど、「突然炎のごとく」で跨線橋を駆けっこする
有名なシーンも一緒に思い出させる。
 テオの部屋に大きな毛沢東のポスターが貼ってあるのは、当時マオイズム
(毛沢東思想)に傾倒したゴダールを指しているのでしよう。
 五月革命で一番尖鋭的だったのはトリュフォー、でも、その後は政治の世界
に背を向けます、トリュフォーほど過激でなかったけど、以後、政治的作品を
量産するゴダール。
 この作品でも焚き付けたのはマシューだけど、彼はバリケードの内側に残
り、飛び出て行くのがテオ。
 只、「突然炎のごとく」と違うのはマシューとイザベルは肉体関係になり愛し
合っても、テオとイザベルには性的関係は有っても双生児というタブーの為
か肉体関係がない事。(最後の一線を越えないだけで、多分、他は全部・・)
 まぁ、心も体も愛し合ってるから、精神的繋がりより強いって事はない訳で、
まして相手は一卵性双生児ですからね。
 「突然炎のごとく」では、ジュールは結局カトリーヌを独占するには遺灰にな
るまで待たなければならなかったけど、流石にそこは違います。

 ではイザベルは何を表しているのか?
 これがよく解らない(笑)、「映画自体」みたいな存在なのかな。
 マシューは映画を愛したけど、テオと映画は愛を超えた不即不離、(一身)
同体のような存在という事なのかも。
 ラストシーンは、この二人に対するベルドリッチの見解なんでしょう。
 ちょっと、「いちご白書」('70)のラストを思い出しました。(笑)

 でも、もしものもしもだけど、僕の見方が幾らか当ってたとして、「それを見
たから何なの?」というのが正直な感想で、わざわざ「映画で見せてもらう必
要」があるんだろうかでした・・・。

※後の「完成された美」という感じのエヴァ・グリーンより、ナチュラルで美人
 なパリジェンヌって感じの本作の方が、遥かに好感度多し。
 尚、R‐18なので、それ相応のシーン多いです。(注意)
※双生児の父親が詩人って、何か、意味がある気がする。
 (ヌーヴェルヴァーグ以前のフランス映画を詩的リアリズムの時代という事
 もあるけど、それとは違う気が・・・)
※シネフィル3人が主人公な為、映画クイズが多いです、一つも解らんかっ
 た。(笑)
 トリュフォーの「アメリカの夜」でも出てきた問題が、この作品にも出てきた、
 しかも同じシーン、これもオマージュなんだろうか。
※目が悪いのか主役のM・ピットが、若き日のデカプリオに見えて仕方なか
 った。(笑)

 H29.5.21
 DVD
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「レオン」

2017-05-19 22:38:28 | 外国映画
 「レオン」(「Léon」、1994年、仏・米)
   監督 リュック・ベッソン
   脚本 リュック・ベッソン
   撮影 ティエリー・アルボガスト
   美術 ダン・ウェイル
   音楽 エリック・セラ
   主題歌 スティング   ドミニク・ミラー
   衣装 マギャリー・ギダッチ
   出演 ジャン・レノ
       ナタリー・ポートマン
       ゲイリー・オールドマン
       ダニー・アイエロ

 ハリウッドにフレンチ・ノワールを上手く混ぜ込んだ作品。
 物語の骨格は「グロリア」(未見)、そのバックボーンとなる心象風景は「シ
ベールの日曜日」、他にも「狼は天使の匂い」の台詞に近いものがあったり、
多分、いろいろ調べれば他にも有るのでしょう。
 それを大鍋に入れてベッソン印の調味料を振り掛け、じっくり煮込んでみた
ら、あら不思議、味わい深く美味しい料理が出来ちゃった、そんな感じの作品。
 でも、いいんです(笑)、映画の出来が上出来なら、それはそれでオリジナル。
 伊達や酔狂、あざとい継ぎはぎではfilmarksで4.3点は獲れません。

 冷酷で有能な殺し屋だけど空っぽの中身を抱え、根無し草を象徴するかの
ように鉢植えの観葉植物を只一つの友とするレオン(J・レノ)。
 家族から虐待、疎外され只1人心を通わせていた弟も失い天涯孤独となっ
た少女マチルダ(N・ポートマン)。
 マチルダの父親が麻薬をクスね隠蔽した事から事件が起き、それが元でレ
オンとマチルダの奇妙な同居生活が始まる・・・。

 この作品、J・レノと、まだ少女だったN・ポートマンの配役が決まった時点で
ほぼ勝負はついた。(笑) 
 そこへ強烈なスパイス、アクセントとしてイカレた麻薬捜査官G・オールドマ
ンが加わり鉄壁の布陣に。
 実際、オールドマン扮するスタンフィールドの狂いっぷりがなければ、それ
なりの作品で止まった気がします。
 それが証拠に?、麻薬だの殺し、復讐が無くても、この三人を見てるだけで
満足出来ちゃう。
 レオンがゴルゴみたいな冷徹マシーンじゃなく、虚無と哀しみを秘めながら
も何処か茫洋とした雰囲気に包まれてるのも良かった、あのタレ目具合が効
果的だったのかな。
 あと、元締めを演じたD・アイエロも胡散臭くて好演。アンタ、「預けた金、全
部返せ」って言ったら、ぜってぇ、別の殺し屋差し向けるよね。(笑)
 シーンとしてはマチルダとレオンの「コスプレ私は誰でしょう?」が印象に残
ります。(J・ウェイン?はマカロニ系ガンマンにしか見えなかったけど(笑)) 
 あの時、二人は長い間忘れきっていた笑いを心に感じたんじゃないでしょ
うか。
 役者と演出が絶妙過ぎるくらいピタリと決まった、filmarksの点数通りの素
晴らしい作品。

※この作品、一言で言えば、バイオレンス版「シベールの日曜日」
 誰かが書いてた感想だけど、120%同意!
※ベートーヴェンに殺しって、「鍵泥棒のメソッド」の近藤はここから?(笑)
※僕が確認したfilmarks4.3点(採点人数1000人以上、ソフト化して半年以上)
 は「素晴らしき哉、人生!」、「七人の侍」、「情婦」、「牯嶺街(クーリンチェ)
 少年殺人事件」、「レオン」、「きっと、うまくいく」だけ、4.4点「丹下左膳餘話
  百萬兩の壺」は採点人数がまだ300人台、4.3点の「この世界の片隅に」は、
 ほぼ確定だろうけど未だソフト化されてません。
「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事」には、やや「意義あり!」だけど、他は
 納得の採点ですね。
(因みに未登録だけど僕が点数付ければ、「素晴らしき哉、人生!」4.0、「七
 人の侍」5.0、「情婦」5.0、「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事」3.9、「レオン」
 4.7、「きっと、うまくいく」5.0、「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」5.0、「この世界の
 片隅に」5.0)

 H29.5.14 
 DVD
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「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」

2017-05-05 12:09:37 | 映画感想
 「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」(「牯嶺街少年殺人事件」/「A Brighter Summer Day」、
  1991年、台湾)
   監督 エドワード・ヤン
   脚本 エドワード・ヤン  ヤン・ホンヤー
       ヤン・シュンチン  ライ・ミンタン
   撮影 チャン・ホイゴン
   美術 エドワード・ヤン  ユー・ウェイエン
   音楽監修 チャン・ホンダ
   出演 張震
       楊靜恰
       王啓讃  柯宇綸
       林鴻銘  張國柱 

 1961年に実際起きた事件から発想を得た作品。
 詳しくは公式サイトを参照にして下さい。
 http://www.bitters.co.jp/abrightersummerday/
 休憩なしの236分、よく頑張ったけど、2時間経った今、まだケツが痛い!
 1960年の台湾事情が余り理解出来なくて・・・。
 主人公の外省人達と内省人の反目も有るんだろうけど、そこは全然解らな
いし。
 普通の少年(度胸も腕っ節も外見に寄らず有るみたい)が、多感な思春期
に周りの友人達の影響で不良に染まり出し、そこに親の期待やら、誰にも理
解されない孤独(只一人、妹は解っていたけど)、初めての恋人との諍いから
15歳で殺人者へ転落していく。
 その連鎖、閉塞感、心情、特にやるせなさは描けてると思うけど、共感はし
ずらい。
 日本の「青春の殺人者」を思い起こしたけど、あれはこの作品の半分の時
間で描いてて、僕の捉え方が間違ってないのなら「青春の殺人者」に軍配を
上げたいです。
 まぁ、台湾の1960年を描いててテーマは違うけど、「青春の殺人者」も19
70年代中頃の日本の空気を描いてるっちゃ描いてるから少しだけ似た感じ
はする。
 多分、僕より映画上級者向けの作品。
 登場人物達の関係と顔を把握するのに1時間以上掛ったと思う。
 率直な感想は「とにかく疲れた!」

※1960年の台湾って植民地時代の日本家屋が結構、残ってたんだ。
 この作品の主要人物達は皆、接収した日本家屋に住んでる。(主人公の家
 なんて、まるで小津安二郎)
 父は陸軍軍属として徴用派遣され終戦まで台湾に居たけど、米軍の「飛び
 石作戦」の為か沖縄ほど空襲は酷くなかったとか。
※アジアの子供達を中心とした群像劇、それを通して描く国の「今」、編集、
 少しだけど「タレンタイム 優しい歌」に似てる。でも、僕は「タレンタイム」を
 遥かに好みます。

 H29.5.4
 シネスイッチ銀座2
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映画日記5

2017-05-02 00:05:20 | 映画日記/映画雑記
 「バーフバリ 伝説誕生」(「Baahubali:The Beginning」、2015年、印(タミル語))

 実の息子に国を追われ赤子を抱いたまま川に流される女帝シヴァドゥ、自身の命を代償に赤子の救済をシヴァ神に祈る。
 赤子は滝の下の国の民に拾われ順調に成長、或る日、女神に導かれるように滝の上の国へ。
 彼、バーフバリーはその国の王位継承権を持つ、直系の王子だった・・・。

 インド版「ランボー 怒りの神話編」
 本国で「きっと、うまくいく」、「PK」の興収を超えたと言う宣伝文句に釣られて観てみれば・・・。
 何とも大味な神話アクションもので、オマケに前編だった。(涙)
 まぁ、飽きないっちゃギリギリ飽きないけど、それだけ。
 女王がシヴァドゥで蛮族に攻め込まれるのをバーフバリーの父の活躍で撃破って、ヒンドゥーの神々が阿修羅軍に攻め込まれたのをドゥルガー神とその夫シヴァ神達が返討ちにしたってのが元ネタなのかな、よく解らんけど。
 見所は1000人単位の大人海戦術による戦闘シーン、人件費が安いからって、まぁ、そこは凄いです。(笑)
 しかしねぇ、大人海戦術ならソビエト時代のモスフィルムが散々、やってますから。
 何より興を削がれるのは個人のアクションシーンが全てスローモーションって所、この映画、スローモーションだけで30分くらい有ったような。
 作品の7,8割がVFXというのは神話もどきだからいいとして、スローモーションの度にテンポが急ブレーキ、多用過ぎてアクションシーンなのに爽快感まるで無し。
 ヒロインも美人だと思うけど、余り魅力がない・・・。
 後編は家督争いの経緯と裏切り、そして・・と言うのが目に見えてんだけど、観ないと一応スッキリしないしなァ、だから、続きものは手を出さないようにしてたのに、完全にアチャーです。

※シヴァ神の妻はパールバァティー(バーフバリに語感が似てる)、その化身がドゥルガーらしい。

 H29.4.30
 丸の内TOEI①
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