セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「君の名は。」

2016-09-25 13:44:00 | 邦画
 「君の名は。」(2016年、日本)
   監督 新海誠
   原作・脚本 新海誠
   以下スタッフ・キャストは多人数なのでWikを参照して下さい

 千年に一度の大彗星接近。
 それが時空を歪めたのか、或る朝、飛騨山中の町に住む高校生・宮水三葉
と東京の高校生・立花瀧の中身が入れ替わっていた・・・。

 個人的にナイーブ過ぎてちょっと響かなかった「言の葉の庭」、でも絵(背景)
はとても美しかった、その監督の新作なので多少不安が有りましたが、これは
大当たり、今年観た作品では「別離」と並ぶ作品。
 (完成度は「別離」だけど、愛着度はこちらが圧倒的)
 湖の形が変わる程の隕石衝突で被害があれ程というのはご都合主義でしょ
うが、時空移転のファンタジーだし彗星を一種のマクガフィンと考えて納得して
います。(笑)
 中々に優れた「ボーイ・ミーツ・ガール」(最初に逢いに来たのは三葉だから
「ガール・ミーツ・ボーイ」かな)ものであり「青春純情物語」。

 やっぱり、この作品も絵が美しい。
 物語は最初、大林監督の「転校生」(未見)のような男女入れ替わりモノかな
と思いましたが、時空移転(ホントはこのタイプ嫌い(笑))を上手く使ってスケ
ールの大きな作品にしていたと思います。
 最初に描かれる「誰そ彼」、「逢魔が時」の古典授業。(先生はカメオ出演?
の雪野先生、この作品パラレル系だし)
 「組紐」に込められた意味。
 それらを伏線とした展開も巧みだったと思います。
 只、終章にちょっと停滞感を感じたのですが、あの幾つかの「すれ違い」は多
分「君の名は」へのオマージュなのでしょう、僕達の世代まで「君の名は」と言え
ば「すれ違い」の代名詞でしたから。(笑~これを数寄屋橋横の日劇で観たのも
何かの縁なのか)

 作品評価に責任は持ちませんが、老若男女を問わず観られる作品だと思う
し(多少、ややこしいけど)、多分、今年最大のヒット作になるでしょう、観て損
はないと思います。
 60年前、数寄屋橋が「君の名は」で聖地になったように、この作品で四谷の
あの階段も聖地になったとか・・・。
 (配達で外苑東通りはよく使うから、ほとぼりが醒めた頃、娘と行ってみよう
かな(笑))

※義母の里が監督の生まれた町から5kくらい奥へ入った村。
 あの辺では、ちょっと知られた会社だとか。

 H28.9.24
 TOHOシネマズ日劇

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 消え去りし 記憶の中で ただひとつ
  知りたきものあり 君の名はと
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「そして父になる」

2016-09-06 23:05:11 | 邦画
 「そして父になる」(2013年、日本)
   監督 是枝裕和
   脚本 是枝裕和
   撮影 瀧本幹也
   美術 三ツ松けいこ
   音楽 松原毅 、 松本淳一 、 森敬
   出演 福山雅治
       尾野真千子
       真木よう子
       リリー・フランキー

 公開時、観たいと思いながら行けず、熱が冷めると今度は気が重くなり
何となく後回しにしていた作品、漸く、盆休みを利用して観る事が出来まし
た。
 話の内容から、中盤以降「ずっと修羅場が続くんだろうな」が理由だった
のですが、修羅場は修羅場でも内面に焦点が当ててるので目を背けたく
なるような事は無かったです。
 激しい言葉の応酬をしなくても修羅場はちゃんと描ける、監督の演出の
方が一枚上手という事でした。(汗)

 自分が自営の小売店主だからなのか、福山雅治の斎木家への言動が
イチイチ癇に障る。(爆)
 あの立場の人間なら、そう考えるのが多いと解っていても「このヤロー
!」ですね。(笑)
 でも、その考え方、行動パターンから「父になる」過程、負けた事のない
奴が親と子の関係に真剣に向き合い悩み変化していく、最初の姿から最
後の姿へ成長していく様を福山さんは上手く演じていたと思います。
 (自分が、あの立場だったら、あれだけ成長できるか正直、自信は余り
ありません)
 が、やっぱり、その上を行く演技を見せたのはリリー・フランキーと真木
よう子でしょう。
 真木さんは「さよなら渓谷」、「ゆれる」で、その実力の程は知っていた
ので左程、驚きはありませんでしたが、自営業の女房の感じがよく出てい
ました。
 その真木さんより良いと思ったのがリリー・フランキー、上手かったです。
(何で上州・前橋辺りで関西弁なのか、よく解らん)
 まぁ、二人共、もうちょっと生活に疲れた感じが有ってもいいとは思いま
したけど。(笑)
 余り口に上らない尾野真千子さんもスター、実力者に挟まれながら決し
て見劣りせず、演出の上手さも有るだろうけど、大人4人と子供達のアン
サンブルが実に自然に感じられ、この作品を上質なものにしていたと思い
ます。

 赤ん坊の取り違えという途轍ももなく重い話、凡庸に描けばグチャグチ
ャ、ドロドロになる所を、静かに上手く纏めながら、その重いテーマをしっ
かり描いています。
 沢山の賞を受賞してるのは伊達じゃありませんでした。
 (でも、やっぱりテーマが重すぎて、何度も観たいとは思えません)

※何年か前、「撮影で福山雅治が来た」って町の噂が有ったけど、これだ
 ったのね。(笑)
 父親の見舞いに弟と歩くシーン、TVや映画で都電が出て来るシーンの
 7割くらいは、あの辺り。
(ウチから200mくらいの所)
 写真だとサンシャイン60をバックにした学習院下停留所辺りが定番だけ
 ど、遠景になるから役者が出るTV・映画には不向きなんでしょう。

 2016.8.15
 DVD

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 濁り川 嵐すぎれば 澄みしとも
  倒れる草に 修羅場ありしと 
コメント (6)
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