玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

パーフェクトより凄い

2007年11月02日 | 日々思うことなど
私は野球に興味がない。
なにしろ最後に印象に残ってるのは原の引退セレモニーである。特にファンじゃなかったけど(というか悪口ばかり言ってた)彼が引退したのは寂しかった。
そんな私でも日本シリーズでパーフェクトゲームが達成されそうだったと聞けばちょっと興味を引かれる。打たれて記録が途切れたのなら仕方ないが、大記録が幻になったのは継投のためと知れば大変もったいない感じがする。
山井投手の「幻のパーフェクトゲーム」について書かれた記事をいくつか読んだ。

肯定派

  中日山井大介投手交替について - [重]塾講師のつぶやき

  不倒城: 皆さん、山井の希望も聞いてあげてください(><)

  やくみつると佐々木信也はいますぐ首を吊って死んでください。 - How Does It Feel To Feel ?

  にわか日ハムファンのブログ 敗軍のファン、用兵を語る


批判派

  404 Blog Not Found:君たちは野球の何を見ているんだい?

  落合博満の“オレ流”完全試合潰しに抗議する / ハチシロ(ハチミツとシロツメクサ)

  落合采配に玉木氏も激怒「中日新聞への寄稿やめる」 - MSN産経ニュース


どちらかといえば自分は肯定派に入る。肯定・否定の割合で言えば6:4くらい。
仮に中日が三勝三敗の状況であれば「交代は当然」、三勝二敗なら「交代やむなし」。今回は三勝一敗なので悩むところだが、目の前に「53年ぶりの日本一」が手の届く状況で自分だったらどうするだろうか。簡単には決められない。だから当事者の決断を尊重する。
昔から落合を尊敬して、というとちょっと大げさだが、孤高の域に達した人と認めていたから「オレ流(非情の・非常識な)采配」にも納得してしまう。
もちろん山井投手の決断も凄い。

中日スポーツ:山井にナゴヤ心酔! 圧投24アウト:ドラニュース(CHUNICHI Web)
 胴上げ、そして前人未到の快挙まであと3人。異様な緊張感が覆うナゴヤドームの一塁側ベンチ。山井は決断した。「代わります」。8回までパーフェクト。ベンチに戻り、森バッテリーチーフコーチに「体力的にどうだ」と聞かれ、降板を申し出た。

 日本シリーズの胴上げ完全試合。未来永劫(えいごう)現れることのなさそうな大記録も、欲はなかった。「個人の記録とかは、この試合に限ってはどうでもいいと思っていた。4回にマメがつぶれたのもあったし、握力的にも落ちていた。それに最後は岩瀬さんに投げてほしいという気持ちがあったので、代わりますと言いました」


本当の気持は彼自身にしかわからない。
この場面で「最後まで投げます」と言えば投げられただろうし、仮に打たれたとしても誰も責めなかっただろう。
それでもチームの勝利のため総合的に判断し自ら降板を決意したのだとすれば本当に凄い。「立派だ」とか「見習いたい」とか簡単には言えないけどとにかく凄い。私心を捨てる見事さというかファンの期待を裏切る小心さというか、あまりにも常人離れしている。ドイツで三億円の宝くじに当たったのに受け取りを拒否した男性がいたが、山井投手と対談したら気が合いそうである。

「パーフェクトを見たかったのに!」と怒っているファンの方々に対しては、気持は分かるけれどもうすこし落ち着いたらどうかと言いたい。
野球ファンでない私がこの「事件」に興味を持ったのは「目の前のパーフェクトをを幻にする決断」の凄さに感嘆したからである。もし単なるパーフェクトゲーム(というと語弊があるが完全試合の価値を貶めるつもりはない)であればそれこそ「単なる記録」として聞き流しただろう。
世の中には「パーフェクトゲームはすばらしい」と思うだけではなく「パーフェクトゲームを幻にする決断ができる人間がいることが凄い」「それほどまでに日本シリーズ優勝に価値があるとは」「野球というのは表層的なお祭り騒ぎじゃなくて奥深いスポーツなんだ」と感心する私のような人間もいる。