牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

肉質の予測は当たらない

2008-10-21 20:53:55 | 枝肉


生き物は両親から様々な遺伝形質が伝えられる。
それらを人間は、自らの目的に添った形質が発現することをひたすら願っている。
昔は、交尾に頼って種付けを行っていたため、地域にいた種雄牛だけを交配せざるを得なかった。
人工授精の技術が普及し、精液の保存技術も開発され、現在のように、液体窒素による凍結保存が普及し始めると、全国各地で採取される精液が、何処でも利用可能となった。
とくに、家畜改良事業団は全国展開して今日のような実績を年々高めてきている。
凍結保存による輸送体制が確立されたことでの恩恵を受けている。

この様に、子牛生産者は、自らが希望する全国の精液が利用でき、全国で生産される全ての子牛の血統は、どの牛も遜色のない一流揃いとなっている。
一流揃いなのに、それらの肥育成績には、かなりのバラツキがある。
子牛の育成や肥育技術などの差があるなどの遠因はあるが、同一センターで同様の肥育を行ってもバラツキを揃えるには至らない。
と言うことは、同様な交配でも遺伝力の相違が拘わっているとしか判断し得ない。

遺伝能力を肥育センターで吟味しても仕方ない。
これまで、多くの畜主たちが、導入牛の肉質に拘わる形質を探求してきた。
とくに資質の形質とされている角・蹄・毛・皮・骨味・体各部の輪郭の鮮明度・肥育度などがそうである。
しかし、これらの資質についても、肉質と深く関わっているとは言い難い。
このことは、前述している。
写真の2頭の牛は、生後30数ヶ月の雌牛であるが、毛色と毛艶にしっかりとした差がある。写真の右側の牛は、毛色は真っ黒で、てかてかに光沢があり、左の牛は、毛色はやや赤っぽく、差ほどの艶はない。
右のは、末期まで食い込みが衰えず、左は、食い込みが衰えてきていたが、これらを比較して、BMS値が左の牛の方が、2ランクは良いだろうと予測していた。
何れも但馬系と鳥取系の血液割合は7:3である。
格付け結果では、肉質は何れも同じ成績であった。
この様な予測は、なかなか当らないことを実証したようなものである。
むしろ、肥育の仕上がり具合から予測する方が確率が高い感がある。




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3 コメント

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肥育の難しさ (Piyo)
2008-10-22 17:42:28
(・ω・)/
繁殖と違い、
普段目に見えない脂肪交雑やロース芯の面積等を思い通りに…
肥育の仕事は非常に難しく、
でもそれ故に経験と技術がモノをいう世界なのでは、
と想像しています。

だからこそ、
以前ブログに書いたおられた“あっと驚く大三元”や“逆転満塁ホームラン”等の楽しみも生まれてくるのでは?

素牛の購入価格から察するに、
かなり堅実な経営の様ですが、
多少はギャンブル的な要素もあった方が楽しみがあっていいのではないでしょうか。

今のご時世、
楽しみだなんて言ってる場合ではないのでしょうが…。


うちの牧場も堅実な種付けで、
最も高いストローは事業団の福栄で一本\11,000です。

(`∀´)/
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piyoさんへ (kuroiusi)
2008-10-22 18:38:49
1万円を越す福栄は、優秀種雄牛としてのランクはトップクラスです。
こちらでの肥育結果を種雄牛ごとにランク付けしますと、5等級率・上物率・バラツキに関しては、最も優れたランクにあります。
最も、導入素牛のランクが「中の下」であることを参考にして下さい。
だから、福栄の精液代金は決して高くないと思っています。
これらのランクで5等級を狙う醍醐味が、牛飼いに様々な高揚を感じさせるのです。
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名牛・・でした (北のカウボーイ)
2008-10-24 19:36:06
福栄は確かに名牛です。最近では「でした」と過去形を使う場面も・・・

自分の技術不足を棚に上げて言うのもなんですが、最近では枝肉で裏切られることもしばしば・・。
だいぶ後半の方の精液の産子なのでしかたないのでしょうが・・

ウチ御ひいきの小売のお客さんは福栄が大好きでサシけが低いものでも好んで購買してくれます。脂質が良いらしく、平均して食べておいしそうです。

ウチで脂の成分を調べた時は確かに福栄が一番、融点
・オレイン酸スコアとも優れていました。

自分は肥育屋なので、出荷・セリまでしか携わることは出来ませんが、末端の消費者皆様の口に入るまでが我々の仕事!と言う気持ちを絶えず持っていたいものです。
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