チャチャヤン気分

《ヘリコニア談話室》後継ブログ

蜃気樓

2004年10月04日 20時10分34秒 | 読書
宗左近『蜃気樓』(芸林書房、04)

 著者「覚書」によれば、「1行作品302句を集めたもの」で、それぞれの句は「俳句以前であって現代詩以前、そして両者の中間、よって中句と名付けます」とある。
 「生死混沌の日々を送って」いるという著者だけに、かなり弛んだ句が多いのも致し方ない。
 例によって気に入った句を抜粋します。

  月光の 垂直の 凍滝(しみたき)
  春の辞書 めくれば眩暈の谺して
  現生の裏への転生 日照雨
  青空を仰いでから 大蜥蜴 振り返えり
  小春日和 明るい影のほの昏さ
  車椅子 わたしの影を轢く わたし
  故郷の月 生き返ってくる影ばかり
  谺の沈む谷あって 紅葉の逆光線
  転生のさなかの遙けさ 年暮れて
  蝉の殻を影にして やっと 月落ちる
  おのれの影に磨かれていて 水すまし
  冬没(い)り陽 あの世に電話 できなくて
  夢のなかにまるで出ないもの 未来 青
  点く杵の音(ね) いっせいに奔り 花の道
  死んだ夢たちの水葬 天の川
  助ケテエ 夜の音に射ぬかれたまま 昼の星
  蜃気樓 現(うつつ)よ 透明(あかる)い わたしの螢(はか)

コメント
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