井須 豊彦(脳神経外科医・釧路)
昨年、日本の政治は大きく変わり、民主党政権となりました。民主党のスロ-ガンは「コンクリ-トから人へ」であり、とても、温かいぬくもりが感じられました。しかし、コンクリ-トの象徴であるダム、高速道路、空港等の建設に代表される箱もの行政の見直しがなかなか進まないようです。総論賛成、各論反対の国民が多いためだと思います。医療行政でも同様な転換が求められています。先日、他院で腰の手術を勧められた50歳代の女性が、私の外来を受診されました。診察しましたところ、単なる筋肉痛であると判断し、「手術する病気ではなく良かったですね」とお話し、薬を処方しました。すると、「直ちに、MRI等の精密検査をしてほしい」と不満をあらわにされることがありました。近年、高級ホテル並みの病院、最新鋭の診断機器をそろえ、直ちに精密検査をしてくれる病院が良い病院と思われています。そのような病院では無駄な検査や治療が行われていないでしょうか。患者の話を聞き、丁寧に診察したうえで精密検査を行うなら、時間はかかりますが、医師と患者の信頼が深まるばかりでなく無駄な検査や治療を減らすこともできます。立派な建物や最新鋭の診断機器等を重視する医療から、ぬくもりを大切にする心の医療への転換を目指す世の中になることを願っています。
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