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小説家や映画監督やゲーム・クリエーターになりたい人が多いのはなぜでしょう?
音楽会や歌舞伎や映画といった創作物を鑑賞すると楽しいのはなぜでしょう?
それは、もともと人間の脳が「創る」ようにできているからです。
それが脳本来の仕事なのです。
創作物を鑑賞する行為も、また、あらたな「創る」行為にほかなりません。
それに対して、会社で上司の嫌味を聞くことも、売り上げ全国一になることも、脳の本来の仕事ではありません。
子供が積み木をバラバラにして、ふたたび創りますね?人間の脳は、大人になっても、そういうことが楽しいのです。
でも、人生は、そういった「楽しく創る」仕事とは無縁のことがらが多く、人間を苦しめます。
いったい、どこでボタンをかけちがえてしまったのでしょう?
竹内 薫 茂木健一郎 『脳のからくり』より 新潮文庫
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脳の仕組みを分かりやすく解説しようとするこの本は、過去の脳研究を紹介しながら、ところどころ竹内さんの見解をはさんでいる。
とくに徳さんが惹かれた箇所は2ヶ所。
さかさ眼鏡の原理。
プリズム仕様の眼鏡を使用して、網膜に映る像を逆立ちにすると最初はめまいがするほどでも、やがてまともに見えるようになるという。
網膜に映る像はそのままで、脳の方が認識を再構成するのだ。脳の可塑性と柔軟性の話。
脳の視覚能力の分析による美術鑑賞。
ブリューゲル「雪中の狩人」…視線移動型の網膜絵画
レンブラント「夜警」…視線固定型の網膜絵画
ピカソ「泣く女」…形態視モジュール絵画(モジュールとは脳の視覚に対する作業の分担分け)
モネ「日傘をさす女 左向き」…色彩モジュール絵画
モンドリアン「しょうが壺のある静物Ⅱ」…空間視モジュール絵画
デュシャン「階段を降りる裸体№2」…運動視モジュール絵画
とまあ、こんな風に感心しながら読み進んだのだが、まとめの部分で抜粋の文章に出くわした。
脳の研究者であるから脳に対して肯定的に話が進められてきたのだが、土壇場になってボタンのかけ違いによって、脳の本来の仕事から遠ざかってるのが現在の我々の脳の現状です。で、終わってしまったのでは、これこそ徳さん得意のしりきれとんぼ、、、、。