カイロじじいのまゃみゅむゅめも

カイロプラクティック施療で出くわす患者さんとのやり取りのあれこれ。

帚木蓬生 『インターセックス』 集英社文庫

2017-09-29 23:06:20 | 本日の抜粋

医者も医療周辺行為者もそのモラルは一緒である。
そんな思いでこの本を読み終えた。

インターとは、-の間という意味の接頭語。
遺伝子の成り行きで男でも女でもない人が誕生する。
その程度は様々でも日本には百万人はいるとされている、社会の目、偏見などがあってなかなかカミングアウトされない。
この本はインターセックスの人々と医療関係者を巡っての推理小説の装いをした啓蒙書でもある。

主人公や当事者の発言の中に、医療関係者が心しなければならない心構えが繰り返し述べられている。

 ***
わたしたちが自覚のないまま踏襲しているのが、パターナリズムとノーマライゼーションです。
黙ってついて来いというのがパターナリズムだとすれば、病気や障害を限りなく正常に近づけようとするのが、ノーマライゼーションの思想です。男と女の中間があってもいいはずなのに、どちらかに近づけようとするのも、一種の誤ったノーマライゼーションでしょうね。
 ***

  *** 
医学医療は、先端技術に関しては猪突猛進的に突き進めていきます。しかし、根本的な事柄に対して、社会を説得する技術は置き去りにしています。社会の側からの啓発によって、医療側がしぶしぶ暴走をやめ、慣習を改めるというパターンばかりです。ハンセン氏病の医療がその典型でしょう。本来なら、医師の側から声を大にして、感染の心配はない、と叫ばなければいけなかったのに、外圧によってようやく隔離医療を廃止しています。
  ***

  *** 
知らず知らず、人間をマイノリティとマジョリティに分別するというワナ。病気自体はいわばマイノリティでしょう。治療は病気というマイノリティを、健常であるマジョリティに近づける行為に他ならない。それが医学を貫く大前提だから、医師はマイノリティの存在には、生理的な嫌悪を覚えやすいの。インターセックスの人たちも、極端なマイノリティとして、医学・医療から排除されてきた。医学はもっと多様性を大事にしないといけないのに
  ***

  ***
みんな大なり小なり、苦境を乗り越えつつあったが、それまでは、いわば過剰な医療の犠牲になっていた。不必要に介入され、主体性を奪われ、まるで禿鷹につつかれた死骸のように、心身ともにずたずたにされていたのだ。
  ***

  ***
本当に身体の診療をしなければならない患者はたおざなりの身体の診療をするよりは、患者の悩みである不眠や手の痺れ、足の冷え、のぼせ、めまいと耳鳴り、倦怠感、頭痛、肩こりに、真剣に耳を傾けたほうがましだ。
  ***

徳さんは、この本によって性差医療の存在を知り、その重要性を知った。


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安藤桃子 『0.5ミリ』 幻冬舎文庫

2017-09-23 10:58:08 | 本日の抜粋
小学高学年の頃、夏休みの宿題とやらで歴史巻物を手作りしたことがある。
学習図鑑に載っていた絵を丸写しにした稚拙なものだったけれど、その時気付いたことが一つだけあって今もよく記憶している。

ある時代の一コマを絵にする。
その時自分が生きていたとして、描かれる線描に自分は参加しているのだろうか?
参加しているとしてそれは0.0000、、、ミリでしかない。
そうならば、画面に塗り付ける色合いは自分の勝手気ままま色合いであっても一向にかまわない。その小さな線分がどちらを向いていても構わない。
問われるべきは、己に正直な色合いであるか、己に正直な方向を向いた線分であるかという事だと。
もちろん、それらは、歴史の大きな色彩の中に埋没してしまうけれど、、、。

この本の0.5ミリというタイトルには、いろいろ考えさせられる。

老人の弱みを握ったうえでの押し掛け介護、という現実にはあり得ない珍妙な設定をすることでしか表現できない、理想の介護がそこにはあった。

それにしても、主人公サワのバイタリティーにはたじろぐばかりだ、、、。

  ***
 今まで私は妻と二人三脚、一生懸命やってきたと信じていたが、従来の人としての彼女が何処か遠くへ消えてしまい、二人三脚と思っていたのは私一人だったという事に気が付いた。日々自分は無能な人間だと思い知らされることばかりである。
憧れの海軍、近所での評判の教師は洗濯機一つ回せない。米の炊き方もわからない、ただの粗大ゴミだったのである。
 出来合いの飼ってきた料理などは死んでも口にせず、生徒の音楽発表会で妻が忙しくスーパーの総菜を買ってきた時は、よく皿をひっくり返したものだ。それが今ではどうだろう、毎日コンビニで飯を買っている。ヘルパーは週3回来るが、規則だと言って家の事は何もしてくれず、洗濯もわざわざ静江の分と私の分を別にする。飯を作ってくれることなどは天地がひっくり返ってもあり得ないことなのである。
  ***

   ***
人間そんな簡単にホンモノの博愛主義者になんてなれる訳がない。
   ***

本日のおまけ
 (Herpmann Japannというブログに掲載されてた安藤桃子さんへのインタビュー記事より)
   ***
人は誰もが「必要とされる」ことを欲するけれど、いま一番「必要とされることを必要としている」のはお年寄りです。保育園と老人ホームを併設している施設が出てきましたが、そんなふうに、子どもと老人が関われる、日本人がもともと持っていたコミュニティが復活、そして増えてくればいいなと思っています。
   ***




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『へんな生きもの へんな生きざま』 早川いくを 株)エクスナレッジ                                 へんな』

2017-09-19 09:57:12 | 本日のパクリ
52年前、そう高校時代を思い出してしまった。
下校時の徳さんのカバンは異常な重さである。
図書室にある図鑑の類を持てるだけ持ち帰るのだ。
帰宅後、まずはその図鑑のページを最初から最後までめくる。
読むんじゃなしにただ眺める、、、。
学業は二の次、、、。

その頃徳さんを悩ましていたのは、自分が世の中の事をまるで知らないことだった。
ネンネの自分が嫌だった。
石ころだっていい。虫けらだっていい。何でもかんでも知りたかった。

70才を前にして、図鑑を開いて感想はだいぶ違う。

場末の酒場の、若いとは言い切れない年頃のホステスさんの口元!
悪くはない。
今時の人は、なかなかこんな下品な化粧をしてはくれない。
(ホットリップ アルゼンチン、メキシコのアカネ科のはな。本当の花は中心部)


小さくて(4センチ程度)真っ白でふわふわとした体毛。
中央アフリカに生息するコウモリ。シロヘラコウモリという名前。
これは子供ではなく全員がメスで一匹のオスコウモリに寄り添うハーレムを形成している。
本能にインプットされているんだから仕方ないか、、、、。
でも、この可愛さは人間好みだ。


アフリカの砂漠に棲むミズカキヤモリ。
こいつも人間の目から見てかわいい。かわゆい。
どうしてお前のお目めはそんなに大きいの?
水の乏しい砂漠で、空中にわずかに含まれる水分をその目ん玉に受け止め、目まで届く舌でペロペロやる次第。
これからますます厳しくなる地球環境の中で、人類にも新たな環境適応種が出現するに違いない。
でも、何千年か何万年かの日月を要す。
それまで持つか人類は、、、、?


徳さんがどうしても知りたいその生命力、クマノミ。
ひとたび乾眠状態に入ると、クマノミは世界最強である。
高温にも低温にも、高気圧にも、真空にも放射線にも耐えうる。
1ミリメートル以下の大きさで、徳さんちの小さな庭にもいる可能性がある。
ただ、見つけられないだけだ。
これはその電子顕微鏡写真。
ただ、プラスチック様の口元が電化製品の部品のようで生き物にそぐわない、、、。


この図鑑の表紙を飾るのは、ハダカデバネズミ。
東アフリカのみに生息し、蜂や蟻のように女王を頂点とする階級社会に生きる。
働きハダカデバネズミは分業して働くわけだが、その作業の細分化は徹底してて、子供を温めるだけを一生の仕事としているものもいるそうだ。
これも本能にインプットされていなければ耐えれない仕事に思える、、、。

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赤川次郎 『セーラー服と機関銃』 角川文庫

2017-09-16 21:23:18 | 本日のしりきれとんぼ
徳さんの友人には変わった人が多い。
みな己丸出しで付き合ってくれるのでその人の個性が強く現れる。

先日R君とたわいない話をしている中で薬師丸ひろ子が話題になった。
話題と言っても、徳さんは薬師丸ひろ子の事をほとんど知らず、R君の妙に詳しい情報の講習を一方的に受けるだけなのだが、、、。
そう、どういう訳か、R君はおば様になった現在の薬師丸ひろ子のファンなのだ。
CDも何枚か、そして『セーラー服と機関銃』のDVDも持っていて今度貸してくれるそうな。

徳さんが自力ではまず手にすることのない『セーラー服と機関銃』を手にしたのは、こんな事情による。

そして、丸一晩、一気読み!
こんな経験はあまりない。ともかく面白いのだ。読みやすいのだ。軽快なのだ。
赤川次郎がベストセラーを続ける訳もよく分かった、、、。



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『ヒラムシ』 小野篤司 誠文堂新光社

2017-09-14 11:22:05 | 本日のパクリ
かつてウミウシをどこかの海岸で見つけたことがある。
その美しさと、華麗に海中に漂う姿に興奮したものだ。
この本によって、ヒラムシなるものの存在を知った。
かつてその時に見たウミウシがヒラムシだったかもしれない。
(知らないという事は恐ろしいもので、知らなければこの世に存在しないのだ)

体長5ミリから5センチぐらいのものまであり、海中に漂っていたり、浅瀬の岩の裏や海藻にへばりついている。
肉食性で貝類やほや類を餌とするそうで、養殖カキの被害は深刻なんだそうだ。

徳さんの関心はまずその構造。
呼吸器と循環器を持たず、腸が毛細血管のように体中の隅々まで発達している。
まさに食性に全身の能力を結集している。
その単純さが良い。


そしてヒラムシそれぞれの種が色彩豊かである。


さらにその泳ぎはひだを風をあおるように連続してなびかせ、まるで海の舞姫のようである。


図鑑を開いてみると、ヒラムシの種類は多岐にわたり分類学者を悩ませているようだ。
それが証拠にこの図鑑で〇〇ヒラムシ属の一種という記載が多い。

これを人間に当てはめて見ると、まず、ヒラムシ=平民。
一メートルの身長の者から10メートルの者まで混在している。
人種は多様で黒人、黄色、白人なんて分け方じゃ追いつかない。
何百もの人種が数え上げられ、人種差別をしている暇なんてない。
国境もなしに、上手に、勝手気ままに共存している。
人類が学ぶ事多し、、、、。



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竜田一人 『いちえふ』 講談社

2017-09-11 12:18:57 | 本日の漫画
この漫画は図書館で借りて読んだ。
最近の漫画は質の高いものがあるので、図書館は積極的に漫画も置いて欲しい。

『いちえふ』は週刊漫画雑誌「モーニング」に連載された、福島第一原発作業員によって描かれた原発ルポ漫画である。

大方の意に反して、この漫画は原発を批判して描かれたものではない。
労働現場を人間模様も含めて、精密に丹念にリアルに描写した漫画だ。
ただ、原発事故の後始末作業の特殊性がついて回る。
安全第一を心がける関係で、その作業は夏の炎天下の下でも重装備でなければならない。
浴びざるを得ない放射線の関係で、その作業は小刻みに、短時間で行わなければならない。

現場での一番の苦労はその暑さだったり、


痒くても搔けないもどかしさだったりする。


一見、滑稽な原発労働者のそんな苦労は、逆に、放射線という人間が扱いきれぬものの空恐ろしさを浮き彫りにする、、、。

そしてここでも、産業の多重構造という下請け制度の悪弊が一向に改善されぬままに放置されている。




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カギムシ

2017-09-04 10:58:57 | 本日のパクリ
イグ・ノーベル賞受賞者、V・B・マイヤーロホの『動物たちの奇行には理由がある』という本を読む。
期待したほどの事はなかった。
よくよく見れば、この本はPart2とある。
編集者は二匹目のドジョウを狙ったのだろうが、この手の本で二番煎じは良くない。
著者にしてみればPart1に面白い話を動員しているのは当たり前だからだ。
次はPart1に挑戦だ。
でも、収穫はあった。
「カギムシ」という見知らぬ、そして興味深い生き物に出会えたのだ。

中南米やオセアニアの湿気の多い地域に住むとかで日本にはいない。
まずはその大きさと形態。


分かり易いイラストで。


そのかわいらしさ。


その奇妙な習性。
脱皮をするそうだが、その脱皮した殻を自分で食べてしまう。


その他にも、餌の昆虫やミミズ、ヒルなどを補足する時に、また外敵に襲われそうになった時、粘り気のある唾を吐きかけるそうだが、カギムシには<生きた化石>としての存在意義もある。
これは5億年前のカンブリア紀に生息してたハルゲニアの想像イラストだがカギムシはそいつと同類らしい。


まだある。カギムシの口元はイラストのように恐ろしげだが


この口元の構造は、(前)カンブリア紀の覇者アノマカリスと瓜二つなのだ、、、。


以上、『古世界の住人』、『ありんこ日記』というブログからの完全パクリでした。



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池澤夏樹 『花を運ぶ妹』 文芸春秋

2017-09-01 08:58:26 | 本日のしりきれとんぼ
池澤夏樹さんの小説というので張り切って読んだのだが、肩透かしを喰らった感じがするのは徳さんの読む態度に問題があるのだろうか?
数多くの書評や、世界文学全集、日本文学全集の池澤流編集や、沖縄・原発への発言など池澤さんには畏敬の念を抱いているのだが、、、、。
もちろん、文章は上手く、物事の説明も噛んで砕くように分かり易い。
でも、何で他のテーマを差し置いてこの小説なのか?

麻薬(ヘロイン)の魅力とその魔力、禁断症状のすざましさ。はよく分かった。
バリ島の魅力はよく分かった。ある一人の画家の内面、絵への態度はよく分かった。
でも、それだけの気がする。

以下の引用は、主人公の片割れの画家がヘロインを進められるくだり。
ちょっと、高尚なヘロインへの誘いである。

   ***
その時になってわかったの、アンコールワットで私が見たものは時間のフィルターをくぐった人造物だったと。人が造ってすぐにはその建造物には十年単位の時間しか含まれていない。しかし、それから時間がたつうちに、建物には千年単位の時間がゆっくり浸透して、まるで別のものに変わる。私が見たのはその姿だった。建築というのはそれだけ長い時間を内に蓄えられるものであるはず。山や海に拮抗できるものであるはず。うつろいやすいものを捨てて、そぎおとして、揺るぎないものだけを残す。時間にまかせれば勝手に実行してくれる。アンコールワットの魅力はあの回廊の神話の彫像群だわ。
   ***

徳さんも対抗してみよう。
古さでは到底及ばないけれど、新座市にある平林寺の片隅に捨て置かれていた、昔の水車の木製の歯車。




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