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(天皇陛下がお出ましになるAVをめぐって)
「だから、とにかく、天皇とか皇室とか、ほんと止めてください。あと、最近ではマホメットとか。触らぬ神に祟りなし!お願いします!ほんと、何度ひどい目に遭ったと思ってるんですか!」
「でもさ、よく被災地に行って、腰を下ろして、話を聞いているでしょ、あの人。すごい誠実さが伝わってくるんだよね。いい人だぞ、アキヒトは」
「しつこいなあ、会長‥‥‥。だから、呼び捨てにしちゃ、ダメだってば!」
「それから、先祖の桓武天皇のお母さんが朝鮮出身っておっしゃったよね」
「そんなことありましたっけ」
「ほら!確かに、おっしゃったんだよ。でも、その発言で、よく『非国民!』っていわれなかったよね。あれ、おそろしいいほどの、ご決意で語られたと思うんだよ、ぼくは。で、陛下は絶対、翌日の新聞を見たと思うわけね。『ミチコ、ぼくの昨日の発言、ちゃんと新聞に載ってるかな?』『いえ、あなた、ほとんど載っていないみたいですわ』『ダメじゃん、この国!』っていってたと思うね」
「そんなバカな‥‥‥」
「国旗の掲揚は強制せぬのが望ましい、っておっしゃっていたこともあったよね。わかってるよね、アキヒトは」
「会長、ファンだっていうのはよくわかりました!でも、お願いだから、呼び捨てはやめてください!もしかしたら、盗聴器がしかけられてるかもしれないじゃないですか!」
「いいじゃん、別に。なに、あのハシモトとかいう知事、日の丸を条例で強制させようなんてさ。あんな、大御心がわからない知事なんか国賊だ!大御心は言論の完全なる自由に決まってる!」
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「うるさいね。死んじまったら、上官も部下もないんだよ。あの、みんなで話し合った結果、今日から、ヤスクニでは、パスポートの提示を求めないことにしたんで。どの国も英霊も出入り自由になったんだよ。そこんとこよろしく」(中略)
「『ニュー・ヤスクニ』は、交通事故の死者に過労死した人、公害認定患者に未認定者、虐待死した子どもから実験動物まで、あらゆる死者を受け入れる施設としてうまれかわりました!以後、よろしく!」
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「まあ。、あんな、ひどいものを!おちびちゃん、ディズニーが作る映画はぜんぶ金儲けのためなのよ。金、金、金、金のことしか考えてないのよ、あいつらは。夢とか、童心とか、自然とかいってるけど、あれはぜんぶ嘘なの。金を稼ぐ口実なの。もちろん、金儲けは必要だけど、ディズニーの場合は度を越してるの。なにしろ、『砂漠は生きている』っていいう映画を撮った時、撮影のために何万匹も動物を殺したんだから。なんでだかわかる?金儲けのためよ!」
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ソンタグは、「テロは絶対に許されない」の前に、「テロとは何か。時に、テロを必要とする者もいるのではないか」という問いを置いた。考えるということは、どんな順番で考えるか、ということだ。それ故、彼女は「アメリカ社会の敵」と見なされた。「考える」ことは、時に、社会の「敵」の仕業となるのである。
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(ジュール・ヴェルヌの『動く人工島』について)
ここでいわれているのは、科学技術をコントロールすることが不可能なのではなく、人間の愚かしさをコントロールすることが不可能である、ということだ。それ故、繰り返し、自ら生み出した「技術」によって、人間は自らを滅ぼすのである。
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曾祖母が亡くなったときには、親戚があらかた、彼女の枕元に集まった。亡くなったとき、泣いている者はいなかった。泣く必要がなかったからだ。曾祖母はやるべきことをすべてやってこの世を去っていったからである。曾祖母は、生きながら、ゆるやかに死者になっていったのだ。思えば、その家の人びとは、、長く、死者と暮らしていたのだ。それが当たり前だった。その人たちにとって、「死」や「老い」は「汚れ」ではなかったのである。
高橋源一郎 『恋する原発』より 講談社
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抜粋部からは想像も出来ないだろうけど、この小説は、全編ポルノ仕立て。
3・11大震災を受けて、AV業界のある男達がチャリティーAV(アダルトビデオ)を企画実行するお話。
だから、冒頭は、アア!ウウ!で始まる。
そして、最後は、福島原発の高放射線量下での数万人のアア!ウウ!で完結する。
高放射線量下で高橋源一郎は狂ってしまった、という人がいるかもしれないが、抜粋部からでもわかるように、高橋はごくまっとうに現況に怒っている。
ポルノ仕立てにしたのは高橋の才能だ。
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