カイロじじいのまゃみゅむゅめも

カイロプラクティック施療で出くわす患者さんとのやり取りのあれこれ。

高橋源一郎 『非常時の言葉 震災の後で』 朝日新聞出版

2017-08-31 09:36:22 | 本日の抜粋
この本では、非常時の言葉として、震災の後も耐えうる言葉として、加藤典洋、ジャン・ジュネ、石牟礼道子、川上弘美、堀江敏幸、古市憲寿などの文章が紹介されている。
今日は、石牟礼道子『苦界浄土』について。

徳さんは国家公務員の息子で、東京と地方都市を交互に移動するという子供時代だった。
小学校は6回転校し、担任の先生は12人という記録を持っている。
従って、故郷というものを持っていない。故郷に寄せる心情を持ち合わせていない。
いわば根無し草で、人が小中学校の同窓会の話を楽しそうに、懐かしそうにしているのを羨ましく聞いている。

なのに、どうして『苦界浄土』に登場する、じっさま、ばっさまの語り言葉に魂を揺さぶられ、あわせて懐かしさをも感じてしまうのだろうか?
人間には本人にも分からない出生以前の遠い記憶というものがあるのだろうか?
何世代もの前の自分を取り巻く人々や環境はこのようなものであったのか、遺伝子の記憶にそんなものが乗っかっているのか、、、?

   ***
 確かに、これは「地獄」を描いた「文章」であることに、間違いはない。なぜなら、目の前には、貧窮に苦しむ家族が、治癒することのない難病に生まれた時からかかっている少年が、いるからである。
 少年は、動かぬ体、開くことのできない口をもっていて、他人の世話を受けなければ生きてはいけない。いま世話をしている老人たちは、もうすぐこの世を去ろうとしている。この家には、明るい希望は、どこにもない。
 それにもかかわらず、どうして、この「文章」を、ぼくたちは「美しい」と感じるのだろう。
  ***

  ***
 この「文章」は、ぼくたちが知っている、どんな種類の「書き言葉」にも似ていない。確かに、これは、水俣の人々が、日々話していることばにちがいない。けれど、それを正確に、文字に変えただけでは、こんな「文章」にはならない。
「話し言葉」は、多くの場合、不鮮明で、繰り返しが多く、聞くに(見るに)耐えないのである。
「あねさん」には、ことばにひそむ音楽を聞く能力があったのだ。そのことばにひそむ、たくさんの音楽に聞き入り、最も美しい部分を、書き抜いたのである。
 ぼくは、この「文章」を読みながら、いつしか、小さく口ずさんでいる自分に気づいた。実際には、口ずさむことなどなくても、ぼくの頭の中では、ふだんと異なったことが起こっていた。
 いつも、その意味だけしか興味がなかった「文字」が、この「文章」の中では、どこかに、確かに存在している誰かの、口から直接出てきた、かけがいのない「音」だということに、気づかされたのだ。
   ***

   ***
「あねさん」が耳をかたむけ、収集した「爺やん」の「ことば」を、ぼくたちに届ける。
その「ことば」は、「杢」が、ふだん聞いている「言葉」でもあるだろう。それと同じ「言葉」を、ぼくたちも聞くのである。
 ぼくたちが、このような悲惨な場所を「地獄」であると感じないのは、この「ことば」を耳にしているからだ。
「爺やん」が、ふだん「杢」に向かって話している「ことば」が「地獄」にふさわしくないからだ。
   ***

   ***
『苦界浄土』を読みながら、読者は、そこが、想像しうる限りもっとも悲惨な世界であるのに、「地獄」であるより、「天国」ではないかと一瞬感じる。いや「天国」ではなく、この世界の言葉づかいによるなら、苦しみのない「浄土」なのだろうか。そして、人は、このような苦悩を経た後ではないと、「浄土」にはたどり着けないのではないか、と思うのである。
   ***

   ***
 水俣病の患者は、国や社会によって、この社会によって、殺されたのである。あるいは、徹底的に破壊されたのである。
 だが、人間が、徹底的にに破壊されるとは、ただ殺されることではなく、忘れ去られること、その生が意味などなかったとされることではなかろうか。  
 そのことを知って、「あねさん」は、これらの「文章」を書いた。そして、生涯、「文章」などとは無縁だった「坂上ゆき」は「あねさん」の「文章」の中で、蘇ったのである。その生涯が、どれほど豊かであったかを、証明するために、その「文章」は書かれたのだ。
 それは、死にゆく「坂上ゆき」への「祈祷の朗唱」でもあっただろう。
   ***


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君の名は

2017-08-30 20:01:15 | 本日の路上観察

飯能市の水天宮の片隅に放置されてた材木(昔の祠の残骸?)の端っこから何やら顔を出している。
菌類の一種だが徳さんに名前が判るはずがない。
手元に図鑑がある訳じゃなし、長く滞在してその生態を知る由もない。
今のところは、その鄙びた、それでいて華麗で生き生きした外観を楽しむしかない。
近くには、粘菌類のようなものも勢力を張っていた。

郊外のさびれた神社も捨てたもんじゃない。



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藤崎童士 『のさり 水俣漁師、杉本家の記憶より』 新日本出版社

2017-08-26 22:49:53 | 本日の抜粋
「のさり」とは天からの授かりものという意味。幸運だけでなく不運や不幸も含めていう。

「人を恨むな。人は変えられん。自分の方から変わらんば」

水俣病の公式確認は1956年とある。
当然それ以前に水銀が生き物に蓄積し、中枢系を破壊した歴史がある。
およそ70年にもわたる水俣病の歴史は人間においては、体を破壊されただけではない。
当時、伝染病とのうわさの元、昨日まで親しくしていたものから、公共放送によって発表された日から突然の差別を受ける。
近隣の者から受ける差別は特別のものであった。
窓を閉ざされ、糞尿をぶち撒かれ浴びせられ、暴行さえ受ける。
日頃密接な小さな共同体であるが故、その排除、嫌悪は凄ましいものとなり、生計をも脅かされる。


水俣病の爆心地百間港を中心とした水俣湾は埋め立てられた。
メチル水銀に汚染されたヘドロとドラム缶にコンクリート詰めされた汚染魚はそこに封じ込められた。
市民に提供される公園となったその地で、1994年、水俣病犠牲者慰霊式、続いて、鎮魂と地域再生の願いを炎に託した第一回「火のまつり」が催された。

抜粋部は、白装束に身を包んみ、紫の布で額を包んだ、祭主、杉本栄子による「祈りの言葉」である。


   ***

 おっどんが魚(いお)じゃった時の話ばい/
 ここは昔 海じゃった/
 おっどま あしこん(あそこあたりの)藻ん中で生まれ/こっちんこん 瀬で育って/
 小(こ)まんか魚どんたちを追いかけ 太(ふと)か魚どんたちから追われ
 毎日仲間どんたちとようここで遊びよった/
 人ん来らすとば待って 人ん喜ばれればほっとして/毎日賑やかだったばい/
そげん そげん/
 ここはおっ母さんの懐ごとあったよかところじゃったもんな/
 よか海じゃった/よか海じゃったもん 

 急に人ん来られんごとなったち思ったら/
 仲間どんたちが あっちも こっちも 何処もここも 浮いた/
 まあ なにが起きたじゃろかち おどま 何もわからんかった/
 逃げようにも逃げられず 逃ぐるところもなかったもんな/
 誰に訴えるこつも 文句をいうこつもできんだったばい

 今生きとる者ば大切にする そは一番たい/
 じゃばってん 昔生きとった者んも思い出してくれんな!/
 人は人 魚は魚ち思うとらす者もいっぱいおらすばってん そるがほんなこつじゃろか?/
 みんな目に見えん小まんかもんから とてつもなか太かもんまで
 お互いに 生かし生かされながら みんな繋がっとっとばい

 あんたの立っとらす そこん! そこの足下に おっどん 埋められとっと!/
 知っとっとかな?/知って貰いたかあ=!

 おっどんも早う土になろうごたっと ばってん まだ なりきれんと/
 納得できたとき 土になろうち思う/
 納得でけんときゃあ 化けてでるかもしれんとばい!/
 おっどま「ごめんなさい」ち言うてもらうためじゃなか
 あんたたち あんたたちのお陰様ですち思い出して貰いたか!/

 そうそう/祈りの言葉はありがとうーたい/
 ありがとうーち言うて貰いたか/
 上も下も 右も左も前も後ろも 今も昔もありがとうーたい/
 そげんそげん そげんじゃな/
 嬉しかこっでん 腹ん立つこっでん 悲しかこっでん 楽しかこっでん
 おんのち おっで そっが水俣ばい

 まこて 今日はよかった/
 みんな こげんして来てくれらったで 嬉しかったー/ほんなこつ今日は 嬉しかった/
 こげんいっぱい灯りを点けてもらえて なんて今日はよか日じゃったろうか/
 はんなこつ嬉しかった……

 水俣ん好きな者は みんな 帰ってきてくださーい!
   
   ***  



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足立則夫 『ナメクジの言い分』 岩波科学ライブラリー

2017-08-22 10:02:39 | 本日の悪食
  ***
触角の下に口はある。人間の唇にあたる唇弁に囲まれ、中央に開いた口腔の上側に顎板と呼ばれる顎がある。その下の奥に口球という丸みを帯びた舌がある。その表面に矢じりのような形をした軟骨性の小さな歯がびっしり生え、これで葉の面をこすってこそぎ落とすのだ。あるナメクジの歯はざっと二万七000枚もある。
  ***

ナメクジをなめんなよ!ということらしい。

単細胞動物だって、様々な機能を持って環境に適応し十全に生きている。
はるかに高等動物であるナメクジが歯を二万七千本持っていたって不思議じゃない。
なのに、このびっくりさは何だろう?
ナメクジの小ささと二万七千という数の多さに驚いているのだろう。

考えてみれば、高等とか下等かとか、人間が勝手に評価しているわけで、この世に生きるものは、皆、系統樹の最先端に位置するもので、完成体とみなすべきだ。
他の生き物に謙虚であるべし、、、、。


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『干潟生物観察図鑑』 風呂田利夫*多留聖典 写真 中村武弘

2017-08-20 21:38:26 | 本日の悪食
友人に海のほとりに移り住んだ奴がいる。
もう徳さんはうらやましくってしょうがない。
70歳を迎えんとし、仕事らしい仕事もせず、友人を訪ね歩いたり、緑を求めて沿線沿いの東京郊外をうろついてる身にとっては、身近に自然がある環境は垂涎の的だ。
徳さんだったら、毎日海辺に出て、海辺の小動物に夢中になるに違いない。
呆けた老後にぴったりの感あり、、、。

で、仕方ないので図鑑を眺め、恍惚感に浸る、、、。

まずはアナジャコの巣穴。意味不明のYの字構造。深さは2メートルもある。
捕食者から逃れるためだろうがYの利点が判らない。


見慣れぬせいか、不気味に感じてしまうものも多くいる。
ゴカイ類は地上にもにたような形のものもいるが、いつも身を引いてしまう。
徳さん、ご幼少の頃、ミミズを手のひらに乗せて「ムチムチいたよ」と母に報告しては母をビビらせていたのが嘘のようである。やはり無垢は強い!


食べたこともあるだろうツメタガイ。
こいつの捕食行動は残酷で、足を広げて獲物のアサリなどをを覆い、酸で穴を開け身を啜る。
こいつの卵塊は黒いお椀のようで滑稽だ。




そうそうプランクトンだって無数にいる。




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雑草の逞しさ

2017-08-19 20:17:40 | 本日の路上観察
近くのスーパーへの途中、雑草が折られており気になっていた。おそらくセイタカアワダチソウと思える。径が2センチにもなり折られた面はささくれだっていた。まるでちょっとした樹木だな、、、というのがその時の感想。
数日後、そこを通ったら、折口から四方八方に若芽を伸ばしていた。雑草の強さを目の当たりにした気分。

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小川洋子 『博士の愛した数式』 新潮文庫

2017-08-14 13:22:55 | 本日の抜粋
数学音痴でも感動する、数学に魅せられた記憶喪失の老数学者と家政婦さんとその息子の心温まる小説だ。

   ***
自分のおかずがルートよりも多いと、博士は顔を曇らせ、私に注意した。魚の切り身でもステーキでも西瓜でも、最上の部位は最年少の者へ、という信念を貫いた。懸賞問題の考察が佳境に入っている時でさえ、ルートのためにはいつでも無制限の時間が用意されていた。何であれ彼から質問されるのを喜んだ。子供は大人よりずっと難しい問題で悩んでいると信じていた。ただ単に正確な答えを示すだけでなく、質問した相手に誇りを与えることができた。ルートは導き出された答えを前に、その答えの見事とさだけでなく、ああ、自分は何と立派な質問をしたのだろう、という思いに酔った。博士はまた、るーとの体を観察する天才でもあった。逆睫毛を見つけたのも、耳の付け根にできたおできを見つけたのも、私より早かった。じろじろ眺めたり触ったりしなくても、目の前に子供がいるだけで、注意を払うべき場所を一瞬にして察知した。しかも本人に不安を与えないよう、発見した異変は私だけにこっそり教えた。
  ***

ルートとは家政婦の息子を博士が呼ぶ名。

最上のものを最年少の者へ。
この言葉は、純粋無垢な老数学者にして言える至上の言葉だ。
この言葉で世界が覆われたら、と思うのは徳さんだけじゃないはず。

もちろん、数学の素晴らしさが文学者の目を通して語られるのも新鮮だ。

  ***
「真実の直線はどこにあるか。それはここにしかない」
博士は自分の胸に手を当てた。虚数について教えてくれた時と同じだった。
「物質にも自然現象にも感情にも左右されない、永遠の真実は、目には見えないのだ。数学はその姿を解明し、表現することができる。なにものにもそれを邪魔できない」
空腹を抱え、事務所の床を磨きながら、ルートの心配ばかりしている私には、博士が言うところの、永遠に正しい真実の存在が必要だった。目に見えない世界が、目に見える世界を支えているという実感が必要だった。厳かに暗闇を貫く、幅も面積もない、無限にのびてゆく一本の直線。その直線こそが、私に微かな安らぎをもたらした。
  ***



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高橋源一郎 『文学王』 角川文庫 

2017-08-08 10:18:16 | 本日の抜粋
  ***
文ちゃんはすごくエライんだ。だって、あの明治の文豪、幸田露伴の娘なんだから。露伴は自ら、文ちゃんに、料理を含め家事一切を教えた。あの頃の家庭教育はすごかったらしいけど、露伴という人は超変人でもあったので、その教育はもうむちゃくちゃハードだったらしい。そして、文ちゃんは家事百般に通じた女の人になったんだけど、どういうわけだか、お父さんが死んじゃった後は、それだけは教わってなかった文学に進んじゃったのだ。血は争えないんだねえ。
  ***

高橋源一郎という人は本の紹介とか小説家の紹介が抜群に上手い。それも紹介している著書によって趣向を変え、したがって文体を変えスタイルを変えたうえだ。アイディア一杯なのだ。
徳さんもその上手な誘いに乗って幸田文の『台所のおと』を拝読。
家事労働が生きている!

高橋源一郎が女たらしかどうかは知らないけれど彼が読者たらしなのは間違いない。

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『一神教と国家』 中田考*内田樹 集英社新書

2017-08-06 08:57:32 | 本日の抜粋
中東世界の事について知りたいと思ってもなかなか理解が難しい。
戦乱の状況報告やテロの報道が表面的にされるだけで、その背景や肝心の中東に生活している人々の実態は脇に追いやられたままだ。
ならば、家内工業的に情報を集めるしかない。

アメリカの(西欧諸国の)ダブルスタンダードについて
  ***
 内田 日本や韓国のような非イスラーム圏に対しては、自由貿易によって市場を開放させ、食料の自給自足体制を破壊し、英語公用語化を進め、固有の食文化や商習慣を廃絶して、国民国家としての自立性・主権性をなし崩しに無化していく。その一方で、イスラーム圏においては、それぞれの正当性に乏しい独裁的な政権を支援して、境界線によって厳しく分断し、イスラーム内部の連帯が成立しないように全力を尽くす。アメリカにしてみたら、もっとシンプルな世界戦略を採択したいのでしょうけど、現にイスラーム圏という領域国民国家を超えた巨大な宗教的連帯が存在する以上、ダブル・スタンダードでいくしかない。このイスラーム圏を政治的に無化することはアメリカ主導のグローバリゼーションにとって必須の戦略的課題であるわけです。
  ***

とりわけ現在のシリア情勢の背景について
  ***
中田 いちがいには言えませんけれど、これもやはり西欧的な思想が入ってくることによって、もともとあった人々の共存のシステムが崩されてしまったところにあるのではないでしょうか。オスマン帝国が解体した後、シリアはフランスの植民地になり、その後独立したわけですけど、不自然な境界線によって仕切りが作られることによって、複雑なものが混在しつつ生きてきた許容力みたいなもの、知恵のようなものが破壊されてしまったのではないかと。レバノンもイラクも皆そうですね。根底にあるのはそれではないかと思います。
内田 なるほど。で、今そうやって無理やりにつくった境界線が解体している、と。
中田 ええ。変な話、私今のシリアを見ていると、ああ、やっぱりイスラームには国家なんかいらない、政府もいらないと実感するのですよ。そんなものなくてもやっていけるじゃないかと。
  ***


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海堂尊 『極北クレーマー』 朝日文庫

2017-08-04 09:52:11 | 本日の抜粋
この本の解説は村上知彦さんが書いている。
一時財政破綻で話題になった夕張市立病院に派遣医と就任して以来、地域医療の再生に尽力した人だ。
海堂尊の小説にも彼をモデルにした人物が何度か登場する。

  ***
 後日、海堂氏と作品に関する対談をする機会に恵まれた。開口一番、「良く取材しましたね。面白く読ませてもらいましたよ。とてもリアルで驚きました」と私が言うと、作者本人は戸惑った顔をした。話によると、あくまでも夕張の取材はモチーフであり、イメージを膨らませて医師として勤務した彼の経験から「病院がこんな具合なら最悪だな」という気持ちで書き上げたというのである。そんなに細かく取材したっわけではないし、登場人物も迷惑がかからない様になるべく非現実的に書いたつもりです、という話を聴いた。実際、当時のスタッフへの取材は半日もなかったので、細かいエピソードはほとんど聞かなかったらしい。
 つまり、恐ろしい事ではあるが、フィクションがノンフィクションになってしまったのである。
  ***

本当に恐ろしい事だ。

海堂さんは医者であるのに、いや医者であるが故に、作品の中で現在の医療の問題点を所々に散りばめている。もちろん良医の存在もアピールしながら。

メタボ健診の愚について、、、。

日本医療機能評価機構という厚生労働省天下り組織の欺瞞性について、、、。
(そういえば、この半年間徳さんが入院していた病院の玄関ホールにも、この機構から認定証が飾られていたっけな)

それらを面白おかしく物語の中に織り込んでいる。

徳さんは「厚生労働大臣官房秘書課付医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長補佐」という肩書きを持つ姫宮香織という登場人物の大ファンである、、、。


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