カイロじじいのまゃみゅむゅめも

カイロプラクティック施療で出くわす患者さんとのやり取りのあれこれ。

山本義隆 『福島の原発事故をめぐって』

2012-03-31 12:42:09 | 本日の抜粋

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 それにたいして(二〇世紀に大きな問題になった公害の多く―抜粋者注)、原発の放射性廃棄物が有毒な放射能を放出するという性質は、原子核の性質つまり核力による陽子と中性子の結合のもたらす性質であり、それは化学処理で変える事はできない。つまり放射性物質を無害化することも、その寿命を短縮することも、事実上不可能である。というのも、原子力(核力のエネルギー)が化石燃料の燃焼熱(科学エネルギー)にくらべて桁違いに大きいことが原発の出力の大きさをもたらしているのであるのだが、そのことは同時に核力による結合が科学結合にくらべて同様に桁違いに強いことを意味し、そのため人為的にその結合を変化させることがきわめて困難だからである。原子核一個二個というレベルだあれば、高エネルギーの加速器を使用して原子核を別の原子核に変換することは不可能ではない。しかし、そのさい変換された原子核自体が通常はやはり放射性であることを別にしても、それだけでも恐ろしくコストとエネルギーを要することであり、ましてや何キログラム、何トンという量の物質を変換するようなことは現実的には考えられない(ウラン二三五とプルトニウム二三九の場合にだけ原子核の大量の変換が可能であったのは、電荷を持たない、したがって加速する必要のない一個の中性子の吸収でそれが分裂し、しかもそのさい二個以上の中性子を放出するので、反応がねずみ算式に増加する―連鎖反応が生じる―という特殊事情からであった)。
 無害化不可能な有毒物質を稼動にともなって生みだし続ける原子力発電は、未熟な技術と言わざるをえない。

 山本義隆 『福島の原発事故をめぐって』より みすず書房

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勉強にはなりました、山本さん。
分かり易い物理学の講義を受けた気分です。

でも、、、です。

この本での山本さんの主張は、科学史の薀蓄を別にすれば、山本さん以外でも、多くの人が主張している反原発論です。
科学者だからこその、その熱き思い、断固たる主張が冷静な科学認識に裏打ちされていることをは読んでいて良く伝わってきます。

でも、、、です。

一物理学者として、いくら在野に居られていたとしても(塾の先生をしながら、研究発表を継続されてるその姿に、その位置の取り方には、尊敬の想いしかありません)、今、この事態に物理学者が具体的にどう振舞おうとしているのかが伝わって来ません。
山本さんが見えないのです。

専門家は原発反対を唱えるだけでは駄目なのです。

現在も政府発表を無視して、(あ、事態を無視しようとしているのは政府の方でありりました)放射性物質を出し続ける福島の原子炉の存在に対して、具体的に何が出来るかの方策への模索が必要です。

その不可能性をまともな物理学は言っておるのだ。
国家が、産業界が、御用学者が、利益誘導に走ってまともな物理学からの警告を無視してこのざまだ。
という事なのでしょうが、、、。

パンドラの箱を開けたのは科学者ではなく政治家です。
でも、その時、政治家はパンドラの箱の中身をよくは知らなかった。
中身の本性を知っていたのは物理学者で、彼らが結果的に政治家を誘惑した構図になります。
もちろん、第二次大戦の逼迫した状況下でですが、、、。

原発開発も、日本政府の願望としての核武装も直接的には山本さんと関係ありません。
でも、徳さんは、山本さんに、日本の物理学者の代表になってもらいたい。
物理学に裏打ちされた廃炉への道筋の一つ一つの小さな階段を、不可能といわれる中で提示していただきたい。

もがいていただきたい。



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福岡伸一対談集『エッジエフェクト』

2012-03-30 18:32:10 | 本日の抜粋

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福岡 森村さんは、子供の頃から美術に興味をもたれていたのですか?
森村 どうでしょうか。私は、社会的敗者として出発したような気がするのです。みんなで何かをするという社会生活において、うまく立ち回れなかったのです。そして、どこへ逃げたかというと、空想の世界に走ったのです。今でいう、ひきこもりですね。ただ、そこで、空想の世界を丸ごと外へ投げ出す芸術というものに出会えたことが私にとって幸いでした。つまり、ふくおかさんが著書にも書かれている「内側の内側は外側だ」というものの捉え方ができたことが幸いだったのです。芸術というのは、まさにそうなのです。内向的に、自分の内側へ向かってどんどん入り込んでいくと、そこに「リアリティ」が見つかる。
芸術というリアリティを介して、そとの世界へ出られる通路を見つけることができたのです。それを見つけることができなかったら、私は内側で腐ってしまっていたかもしれません。私のように内側へ向かう人間は、世の中の役に立つことができないのですが、そういう人間に芸術というものが与えられたとき、今までネガティブだったものがポジティブに変わるということもままあるのです。

 福岡伸一対談集 『エッジエフェクト』より 朝日新聞出版

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森村さんって、知らない人でした。
何しろ、徳さんは、思いっきり芸術から遠い所で生息してるんだもん。

徳さんのためにそのプロフィールを書き写しておく。

森村泰昌

 1951年、大阪府生まれ。美術家。85年、自らゴッホになった作品で美術界に登場以降、名画の登場人物や映画女優、歴史上の人物に扮するセルフ・ポートレートを次々に発表。綿密な研究と独自の解釈と意図で構成された作品は国内外デ高い評価を得ている。
だって。

そして、参考までにその代表作を




なんで、森村さんのこんな発言を抜粋したかというと、誰にでも内向的心というものはあるわけで、一人鬱々としたときに、ネガティブからポゾティブに変化することがあるとの発言は励みになるんだもん。

そう言えば、思い出した。
意味合いは多少違うが、昔、大島渚の『ユンボクの日記』で

「唐辛子は煮詰められていよいよ辛くなり、麦は死して新しい芽を吹く」

という印象的なセリフがあったっけ。


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互いに年取ったね、アーちゃま

2012-03-28 17:42:10 | 本日の患者さん
アーちゃまは、徳さんがカイロの修行時代からの患者さんだ。
かれこれ30年以上の付き合いだ。
同年輩である。
当たり前の話だが、二人が同じように年を取っていくので、互いの年寄り振りになかなか気付かない。
己の肉体力低下を無意識に認識しているのだろう、それに合わせてアーちゃまの体を見ているので、静かに進む老化に対しては違和感なしに、見過ごし勝ちだ。

「最近、関節の動きが悪いですねえ!」

これは徳さんの発言ではなく、アーちゃまの発言だ。

「そういえば、昔は実に軽快にポキポキと矯正音がしたものでした。
最近は、体がすっかり固くなってしまって、、、。
いや~、その頃が懐かしいですね」

いやいや、アーちゃま。
徳さんの腕が金属疲労してる事だってありえますよ、、、。

とは、云わなかったけど、、、、。


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開沼 博 『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』

2012-03-27 15:44:46 | 本日の抜粋

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 原発の危険性をあえて報じようとせず「安全・安心」の大本営発表を垂れ流す旧来型マスメディアへの批判は既にあり、それは今後も追求されるべき点であろう。しかし。一方で、圧倒的な「善意」「善き社会の設立」に向けられているはずの「脱原発のうねり」もまた何かをとらえつつ、他方で何かを見落としていることを指摘せざるを得ない。原発を動かし続けることへの志向は一つの暴力であるが、ただ純粋にそれを止めることを叫び、彼らのせいぞんの基盤を脅かすこともまた暴力になりかねない。そして、その圧倒的なジレンマのなかに原子力ムラの現実があることが「中央」の推進にせよ反対にせよ「知的」で「良心的」なアクターたちによって見過ごされていることにこそ最大の問題がある。とりあえずリアリストぶって原発を擁護してみる(ものの事態の進展とともに引っ込みがつかなくなり泥沼にはまる)か、恐怖から逃げ出すことに必死で苦し紛れに「ニワカ脱原発派」になるか。3・11以前には福島にも何の興味もなかった「知識人」の虚妄と醜態こそあぶり出されなければならない。それが、四〇年も動き続ける「他の原発に比べて明らかにボロくてびっくりした」(前出、三〇代の作業員)福島原発を今日まで生きながらえさせ、そして3・11を引き起こしたことは確かなのだから。
 かつて原子力ムラが平穏だった時、富岡町の住民の口から聞いた言葉が蘇る。「東京に人は普段は何にも関心がないのに、なんかあるとすぐ危ない危ないって大騒ぎするんだから。一番落ち着いているのは地元の私たちですから。ほっといてくださいって思います。」
 中央は原子力ムラを今もほっておきながら、大騒ぎしている。

 開沼 博 『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』より 青土社

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フーッ。やっとこさ読み終えた。

原子力ムラと副題にあるので、てっきり、原発利権に群がる連中の告発書だと思って手にしたが、最初のページであっさり裏切られる。
いや、裏切られて良かった、、、。

本書では中央の原子力行政の構成体を<原子力ムラ>として、原発が立地している地方を原発ムラとしている。

地方のある地域がいかなる歴史を通過して原発を受け入れるようになったか?
世界経済史の中の日本の経済史・政治史として分析されている。
机上で論をこねくり回したものではなく、フィールドワークに裏打ちされたものとなっている。

世界進出に挫折した日本が戦後選んだ道は、国内植民地の形成であった。
「フクシマ」は完成した植民地の姿であった。
そこでは、原発に不安を抱きながらも、フルサト再生、生活の安定を願う地域民に原発依存体質を身に付けさせることになる。
原発ムラは<原発ムラ>に自ら進んで服従していくようになる、、、。

その構造に目を向け、手を付けない限り、「善意」でいくら復興を目指しても、何も変わらない、と筆者は主張している。


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バレリーナの足指の間、アーぼう

2012-03-26 20:23:38 | 本日の患者さん
ようやくハングル文字に曲線が登場してくれた。
世界中の文字を参考にイラスト遊びをしていたが、ハングル文字の直線系にはほとほと苦労させられた。
考えてみれば、この世に直線というものは無い。
ノートに引かれた直線というものも電子顕微鏡で見れば起伏溢れる正体を現す。

徳さん、ほとんど知識が無いが、世界で直線(らしきもの)を基盤にした文字を持っているのは漢字とハングル語しかないように思える。
直線は筆記に向かない。
日本人はいたたまらくなってひら仮名を発明したんじゃないか?

まあ、素人の戯言は置いといて、本日の患者さん。

クラシックバレーのダンサーでもあり教師でもあらせられるアーぼう。

徳さんの世界から見ると極北、極南の世界である。

姿勢はよろしい。(一見)
それぞれの関節の動きはとんでもなくよろしい。(その体の柔らかさにこそ問題が潜んでいる)
40年近くバレーのために鍛え上げた筋力はすばらしい。(でも、人に比べて優れた筋力も、自分自身をバランス良く支えようとした時にはアンバランスが存在しうる)

いくつかの問題点が判明し、アーぼうも納得してくれたようだ。

しかし、解決しぬくい難問の存在がだんだん明らかになってきた。

アーぼうの足指、4、5指の間に魚の目が出来ていて、踊りにさしさわるほどの痛みがあるとおっしゃる。

足の指の間に魚の目が!

信じられない徳さんに、今度はアーぼうが靴下を脱いで説明してくれる。
知らない世界だ。
つま先を立てて踊る時、バレリーナの足指は内側に仕舞い込まれているのだ。

当然、足指の間にはかなりの摩擦がある。
その繰り返しが長年に渡れば、魚の目ぐらい出来るか、、、。

魚の目の痛さを避けるようにして、腰椎の歪みが出来たって不思議じゃない。

徳さんに比べて、肉体のあらゆる部分で秀でているアーぼうだが、患者さんの欠点を指摘するのが徳さんのお仕事。
自分より秀でた人をお説教しなければならない立場の、申し訳なさと苦渋をお察しくだされませませ。



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そりゃないぜ、先生

2012-03-25 17:55:35 | 本日の患者さん
3ヶ月振りにMさんがやって来た。

この間、生活上の問題やら、足の痛みで整形外科に通っていたとのことでなかなか来られなかったとの事。
途中何度か新宿の方へ予約があったが、アクシデントが重なり続け、何時の間にか3ヶ月経ってしまった。

Mさんは脳性麻痺で電動車椅子を利用している。
あいにく、住まいが新宿にも国分寺にもかなりの距離があるのだ。
すぐにおいで、とはなかなかいかない。

「整形ではどんな診断が下ったの?」

「足の骨がボロボロなんですって。歩かないから骨もかなり細いって。股関節も大分狭くなっているし、仙骨と骨盤の骨の位置がおかしいからお尻からドスンと座るようなことは避けるようにって」

「う~ん。そんな言い方ってひどいよね。近所のお医者さん?」

「うん」

Mさんの足や腰のレントゲン像を見ながらの所見で、それ自体は問題ない。
問題は先生のMさんへの伝え方だ。

脳性麻痺の人はアテトーゼという筋肉の不随運動が不断に起きている人もいる。
その場合、筋肉の緊張の強い力が関節に作用し、長い年月のもとでは関節があらぬ方向に捻じ曲がったり変形してる人が多い。
当然、複雑な構造とたくさんの骨が関与している足首など、小さな骨が変形、融合している。

そのことは、Mさんがお医者さんにかかる時の、Mさんにとっては当然の大前提である。

それを、ただ現状を客観的に述べられても、Mさんは困惑するばかりだ。

「で、お医者さんはどうしろって?」

「足首には布のテーピングをするように、膝はサポーターを貰いました。あと、転ばないようにって」

「う~ん。対症療法しかないのは判るけど、積極的なことって、そこには無いよね」



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寒くないか?セロ!

2012-03-24 19:42:15 | 本日のセロ&ニーニャ
3月も終わりに近づいて来たというのに、今日もなにやら肌寒い。
昨日から降り続いた小雨・霧雨は、春の訪れを予感させるというより、この冬の意地悪な気候の最後っ屁な感じがする。

あれから1週間。

そう、3月18日にセロは去勢手術を受け、本人不同意のまま、宦官の身となった。
当時の宦官手術がどんなものであったか、調べてはいないが、どうせ周りの大人たちが寄ってたかって男の子の手足を押さえ込み、口に猿ぐつわなんかして、暴力的に行なわれたのだろう。
それに比べれば、セロが受けた手術は穏健で、至れり尽くせりのものだった。

剃毛も丁寧にされた。
その結果が、、、。




尻尾の付け根、お尻から陰部にかけてと、緊急時に注射が打てるように両前肢の一部分の毛が、電気バリカンで丁寧に刈り取られた。

徳さん思うに、獣医の先生は、丸刈り専門の床屋さんにならすぐなれる。

先生曰く、これほど広範囲に剃毛する必要はないんですが、毛が生え揃った時に美しく生え揃うためにはここまで徹底した方がいいんです。

この先生、新宿2丁目あたりで、ニューハーフ志向の患者さん相手に商売しても絶対繁盛する、、、。

必要なのは相手に対する配慮・想像力だ。
人獣を問わず、、、。

セロ!
3ヶ月で毛が生え揃うって。
そのシュールな姿と、この寒さ、しばらくの辛抱な。

毛が生え揃った頃が、蒸し暑い梅雨の時期だとは徳さんが図った訳じゃない。

まあ、今回、色々ごめんね。


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福井晴敏 『震災後』

2012-03-23 18:09:56 | 本日の抜粋

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「未来を返せ!」
 鋭い、絶叫のような一声が耳に突き通り、野田は今度こそ言葉をなくした。叫んだ勢いで立ち上がり、父親に追いつきつつある背丈を直立させた弘人は、またしても身を引いてしまった野田との距離を一歩分詰めた。
「あんたらはまだいいよ。これまで好き勝手に生きてきたんだし、定年になるくらいまで細々とやっていける。地震と原発で放射能漬けか、原発やめて黄昏の世界か。どっちかしか選べない世の中を創ってきたのはあんたたちだろう!?返せよ!」
まだ男になりきれていない両の腕が、ゆらりと持ち上がって野田の襟首をつかむ。間近に迫った弘人の目からぽろぽろと雫がこぼれ落ち、野田は耐えきれずに顔をうつむけた。
「このどうしようもない世界で、これから生きていかなきゃなんないのはおれたちだ。返せよ、未来を。おれたちの......返して......」
 あとは声にならなかった。嗚咽を堪えた体を激しく震わせ、弘人はその場に膝をついた。

 福井晴敏 『震災後』より 小学館

     ********************

震災後、マスメディアによって伝えられる青少年の声は、高校野球の感動的な選手宣誓に見られるように優等生的であるものがほとんどだ。
もちろん、そんな彼らの決意や覚悟は本物だろう。
でも、それらは、追い詰められた彼らの感情表現の一方の極だ。

野田の息子、弘人がもう一方の極とは言わない。
きっと極はいくつもあるのだろう。
ひとりの中にいくつもの極があって、それが揺れ動いているというのが実情なような気もする。
そして多くの青少年たちは感情を極限まで追い詰めることをためらい、刺の萌芽の段階で胸に収めているような気もする、、、。

この小説は、現在進行形の、実際の時間の進行に忠実なドキュメンタリーの面も併せ持っている。
東京で地震にあったものの追体験の役割も持っている。

それにしても、副題<こんな時だけど、そろそろ未来の話をしようか>として指し示される未来が、SSPS(太陽発電衛星。スペース・ソーラ・パワーシステム)とはびっくり。
静止衛星を打ち上げ、太陽光を反射させ、地上で受け取るというものだ。

徳さん、これには反対!
飽くなき進歩を続けることの中にしか人類の未来は無い、なんて、、、、。



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ジャズ喫茶『ちぐさ』復活

2012-03-21 20:51:19 | 本日のしりきれとんぼ
昨日、友人と横浜桜木町で飲む機会があった。
久し振りの桜木町だ。
徳さん、一時期横浜に住んでいた事があったので、野毛近辺には親近感がある。
約束の時間より少し早めに着くようにして、野毛あたりを散策した。

30年前の徳さんの記憶にある野毛地区は無惨という言葉を使いたくなるほど変貌していた。
すたれた小商店の群れの中にこれ見よがしに立ち並ぶ高層マンションが大きな顔をして林立している。
無機質なものが有機物を蝕んでいる、といった感慨を持ってしまうのは、徳さんが年寄りなのだ、という証明なのだろうが、かなりショックだったのは事実だ。

歩きつかれて、ふと『ちぐさ』という看板が目に入る。

ジャズ喫茶とある。

あれ?『ちぐさ』って5年前に閉店となったんじゃなかったっけ?

フラフラと吸い寄せられるように店に入った。

徳さんと同年輩のジジイが4,5人店員として働いてる。
客への対応は素人臭い。

「ここら辺の席が一番音がいいですよ」

注文を聞く前にじじい店員の一人はのたまわった、、、。

それだけで嬉しくなる。

短い時間だったけど、流れる曲の一つが衝撃的だった。

Hobby Kimonのピアノソロ。
知らない人だ。
歯切れが良くて、しかも複雑な音が洗濯機の中の洗い物のようにぶち込まれている。
全体の印象は官能的。

家に帰ってからネットで調べても全くひっかかってくれない。

ああ、だれか知らないか、、、。


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開沼 博 「フクシマ」論 原子力はなぜ生まれたのか

2012-03-19 19:49:28 | 本日の抜粋
現在、読書中。
なかなかはかがゆかない。
堅い本は読むのに骨が折れるのだ。

この本は、東大の院生の修士論文だ。
現在、28歳。
もしかしたら、日本も捨てたもんじゃないのかも知れない。

まず、率直な感想。
いや~。
社会学の学問って大変。
過去の資料を網羅するように漁って、自分の学問に栄養を与えてくれるものに出会うまで、一見無味乾燥な資料に目を通し続ける。
これだけで、徳さんのような軟弱者は腰が引けてしまう。

学問する人の引力と資料の磁力の出会い。

ちょっと、うらやましいような、嫉妬すら覚える事態である。

3・11以前に用意されたこの本の意味は大きいと思う。

で、ともかく、徳さんの能力を軽く超えた、まだ未読の本を前にして、本日は開沼氏が探し当てた資料の一つを抜粋させていただく。
1972年結成の双葉地方原発反対同盟が作ったものだそうだ。

      ****************

  
  「原爆落首」
 
 このごろ、双葉にはやるもの 飲み屋、下宿屋、弁当屋
 のぞき、暴行、傷害事件 汚染、被爆、偽発表 飲み屋で札びら切る男 魚の出所聞く女。
 起きたる事故は数あれど 安全、安全、鳴くおうむ
 形振り構わずばらまくものは 粗品、広報、放射能 運ぶ当てなき廃棄物 山積みされたる恐ろしや。
 住民締め出す公聴会 非民主、非自主、非公開
 主の消えたる田や畑 減りたる出稼ぎ増えたる被爆
 避難計画つくれども 行く意思のなき避難訓練 不安を増したる住民に 心配するなとは、恐ろしや

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