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それにたいして(二〇世紀に大きな問題になった公害の多く―抜粋者注)、原発の放射性廃棄物が有毒な放射能を放出するという性質は、原子核の性質つまり核力による陽子と中性子の結合のもたらす性質であり、それは化学処理で変える事はできない。つまり放射性物質を無害化することも、その寿命を短縮することも、事実上不可能である。というのも、原子力(核力のエネルギー)が化石燃料の燃焼熱(科学エネルギー)にくらべて桁違いに大きいことが原発の出力の大きさをもたらしているのであるのだが、そのことは同時に核力による結合が科学結合にくらべて同様に桁違いに強いことを意味し、そのため人為的にその結合を変化させることがきわめて困難だからである。原子核一個二個というレベルだあれば、高エネルギーの加速器を使用して原子核を別の原子核に変換することは不可能ではない。しかし、そのさい変換された原子核自体が通常はやはり放射性であることを別にしても、それだけでも恐ろしくコストとエネルギーを要することであり、ましてや何キログラム、何トンという量の物質を変換するようなことは現実的には考えられない(ウラン二三五とプルトニウム二三九の場合にだけ原子核の大量の変換が可能であったのは、電荷を持たない、したがって加速する必要のない一個の中性子の吸収でそれが分裂し、しかもそのさい二個以上の中性子を放出するので、反応がねずみ算式に増加する―連鎖反応が生じる―という特殊事情からであった)。
無害化不可能な有毒物質を稼動にともなって生みだし続ける原子力発電は、未熟な技術と言わざるをえない。
山本義隆 『福島の原発事故をめぐって』より みすず書房
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勉強にはなりました、山本さん。
分かり易い物理学の講義を受けた気分です。
でも、、、です。
この本での山本さんの主張は、科学史の薀蓄を別にすれば、山本さん以外でも、多くの人が主張している反原発論です。
科学者だからこその、その熱き思い、断固たる主張が冷静な科学認識に裏打ちされていることをは読んでいて良く伝わってきます。
でも、、、です。
一物理学者として、いくら在野に居られていたとしても(塾の先生をしながら、研究発表を継続されてるその姿に、その位置の取り方には、尊敬の想いしかありません)、今、この事態に物理学者が具体的にどう振舞おうとしているのかが伝わって来ません。
山本さんが見えないのです。
専門家は原発反対を唱えるだけでは駄目なのです。
現在も政府発表を無視して、(あ、事態を無視しようとしているのは政府の方でありりました)放射性物質を出し続ける福島の原子炉の存在に対して、具体的に何が出来るかの方策への模索が必要です。
その不可能性をまともな物理学は言っておるのだ。
国家が、産業界が、御用学者が、利益誘導に走ってまともな物理学からの警告を無視してこのざまだ。
という事なのでしょうが、、、。
パンドラの箱を開けたのは科学者ではなく政治家です。
でも、その時、政治家はパンドラの箱の中身をよくは知らなかった。
中身の本性を知っていたのは物理学者で、彼らが結果的に政治家を誘惑した構図になります。
もちろん、第二次大戦の逼迫した状況下でですが、、、。
原発開発も、日本政府の願望としての核武装も直接的には山本さんと関係ありません。
でも、徳さんは、山本さんに、日本の物理学者の代表になってもらいたい。
物理学に裏打ちされた廃炉への道筋の一つ一つの小さな階段を、不可能といわれる中で提示していただきたい。
もがいていただきたい。
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