カイロじじいのまゃみゅむゅめも

カイロプラクティック施療で出くわす患者さんとのやり取りのあれこれ。

雪沼とその周辺

2008-10-07 19:40:03 | 本日の抜粋

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 雪沼は優しい。 
 時代遅れで、静かで、品がいい。
 この町には住む者を脅かすものが少なく、人は現代的な新製品や開発やブームやキャンペーンや資本の
攻勢から一歩離れたところで暮らしている。今もってスーパーマーケットではなく個人商店の町。 
 それでは退屈ではないかと都会の者は思うかもしれないが、しかし実はここでの暮らしにはドラマッチック
な起伏もあるし、豊かな感情にも満ちている。派手な激情ではなく、もう少し穏やかで、しみじみとしたもの。
 なぜならば人とはもともとそういうものだから。これをノスタルジアと呼ぶべきではない。人の本来の姿への
回帰なのだ。

池澤 夏樹 「解説 しばらく雪沼で暮らす」より 堀江 敏幸 『雪沼とその周辺』所収 新潮文庫

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小説を読んで、その解説を抜粋するなんて、ちょっと礼儀違反のような気がしないでもないが、ああ、これだと思ってしまったのだから、ここは正直に。

徳さんは文学音痴なので、堀江敏幸という小説家の存在を知らなかった。
まして彼が芥川賞、川端賞、谷崎賞の受賞者なんて知るはずもなかった。
たまたま、カイロの出張先で、そこの団体が主催するバザーの出品物が山積みされていて、ちょっと空いた時間に、古本の詰まったダンボール箱を掻き回しててこの本に出会った。
あれ、知らない人だな。薄い文庫本だし、短編集だし、通勤時に良いかなと思って手にしたわけだ。
ぱらぱらとページをめくって、数行を読むと生活の描写が読みやすそうだ。金数十円を払ってゲット。

家に帰って寝しなに読むと、これが良いのだ。
今まで多くの小説からは味わえない雰囲気が醸し出される。
印象を言えば、淡々、じっくり、しっとり、じわじわ、しみじみ、、、、。

徳さんは、七つの作品の中では「送り火」という奴に特にやられてしまった。