36年前の1979年3月、アメリカのスリーマイル島で原発事故が起きた。
その事故を受けて同じ年の11月、アサヒグラフが『パイプの森の放浪者』という題で原発労働者の実態を告発する特集を組んだ。
文は後に『原発ジプシー』の著者となる堀江邦夫。
絵はあの水木しげる。
この本は、福島原発事故後にそれを再構成したものだ。
少なくとも36年前には今回の原発事故が危惧されていたことが判る。
それにしても、水木しげるの想像力には恐れ入る。
彼の放射能汚染水のイメージはこうなる。
*****
この流出事故の際、逃げ遅れたため全身に水を浴びてしまった者が二、三人いた。彼らの話によると、下着までびっしょりだったという。「防護服」とはいうものの、実際には防水性さえ備えていない代物だったわけだ。
「でも、あの水があまり汚染されてなくて助かったよ。ここが汚染されたかと思ったときには本当にゾーっとしたぜ」
仲間に一人は、自分の下腹部を指さしながら小さく笑っていたが、その表情はかたかった。
*****
*****
後日、原発の仕事を去ってしばらくたったある日、私は、福島原発を管轄する富岡労働基準監督署を訪れた。
私が経験したような労災隠しが原発内ではほかにも行われているのではないか。その問にたいして署長はこう答えている。
「労災隠しは絶対に無いかって聞かれれば、そりゃあ絶対に無いとは言い切れないでしょうね。でも、東電の安全対策は、そりゃあ厳しいもんですよ。ですから、われわれとしても、東電や業者を信用しているってわけですわ」
(中略)「東電を信用している」という言葉を耳にしたとき、私はなかばあきれ、なかば悲しかった。
労働者の健康・安全を守るためにきちんと監督する立場にあるはずの労基署が、電力会社や元請け会社だけを「信用」し、肝心の労働者のほうを少しも向いてないことを知ったからだった。
*****
*****
原発内作業に向かうバスのなかからいつも目にしてた一本の塔……そうだ、東電・福島第一原発の構内に誇らしげに建つ一本の記念の塔がそれだった。
たしか、そこには、こんな文字が刻まれていたはずだ。
「無災害 一五〇万時間達成記念」
「エネルギー危機」の名のもと積極的に推進されている原発だが、定期点検のたびに原発内に入り、そこでさまざまな作業に従事している労働者がいることを知る人は、残念ながら、少ない。ましてや、原発のその奥深くの闇のなかで、その肉体を放射能にさらし、傷つき、苦闘する労働者たちがいることを知る人は、さらに少ない。(中略)
――人知れず闇から闇へと葬り去られてゆく原発下請け労働者たち、その彼らの姿を〝無災害〟の三文字の陰に見いだすとき、私にはこの一本の碑が、声を封じられ、肉体を傷つけられ、ときには生命さえ奪われていったであろう、彼ら労働者たちの、まさに〝墓標〟のように思えてならなかった。
カイロジジイのHPは
http://chirozizii.com/
そして、なんでもブログのランキングというものがあるそうで、以下をクリックするとブログの作者は喜ぶらしい。
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その事故を受けて同じ年の11月、アサヒグラフが『パイプの森の放浪者』という題で原発労働者の実態を告発する特集を組んだ。
文は後に『原発ジプシー』の著者となる堀江邦夫。
絵はあの水木しげる。
この本は、福島原発事故後にそれを再構成したものだ。
少なくとも36年前には今回の原発事故が危惧されていたことが判る。
それにしても、水木しげるの想像力には恐れ入る。
彼の放射能汚染水のイメージはこうなる。
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この流出事故の際、逃げ遅れたため全身に水を浴びてしまった者が二、三人いた。彼らの話によると、下着までびっしょりだったという。「防護服」とはいうものの、実際には防水性さえ備えていない代物だったわけだ。
「でも、あの水があまり汚染されてなくて助かったよ。ここが汚染されたかと思ったときには本当にゾーっとしたぜ」
仲間に一人は、自分の下腹部を指さしながら小さく笑っていたが、その表情はかたかった。
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後日、原発の仕事を去ってしばらくたったある日、私は、福島原発を管轄する富岡労働基準監督署を訪れた。
私が経験したような労災隠しが原発内ではほかにも行われているのではないか。その問にたいして署長はこう答えている。
「労災隠しは絶対に無いかって聞かれれば、そりゃあ絶対に無いとは言い切れないでしょうね。でも、東電の安全対策は、そりゃあ厳しいもんですよ。ですから、われわれとしても、東電や業者を信用しているってわけですわ」
(中略)「東電を信用している」という言葉を耳にしたとき、私はなかばあきれ、なかば悲しかった。
労働者の健康・安全を守るためにきちんと監督する立場にあるはずの労基署が、電力会社や元請け会社だけを「信用」し、肝心の労働者のほうを少しも向いてないことを知ったからだった。
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原発内作業に向かうバスのなかからいつも目にしてた一本の塔……そうだ、東電・福島第一原発の構内に誇らしげに建つ一本の記念の塔がそれだった。
たしか、そこには、こんな文字が刻まれていたはずだ。
「無災害 一五〇万時間達成記念」
「エネルギー危機」の名のもと積極的に推進されている原発だが、定期点検のたびに原発内に入り、そこでさまざまな作業に従事している労働者がいることを知る人は、残念ながら、少ない。ましてや、原発のその奥深くの闇のなかで、その肉体を放射能にさらし、傷つき、苦闘する労働者たちがいることを知る人は、さらに少ない。(中略)
――人知れず闇から闇へと葬り去られてゆく原発下請け労働者たち、その彼らの姿を〝無災害〟の三文字の陰に見いだすとき、私にはこの一本の碑が、声を封じられ、肉体を傷つけられ、ときには生命さえ奪われていったであろう、彼ら労働者たちの、まさに〝墓標〟のように思えてならなかった。
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