蒲田耕二の発言

コメントは実名で願います。

執念

2016-08-20 | スポーツ
かなり以前のことだが、テレビの中で、幼い少女が顔面を涙と鼻水だらけにして「勝った〜、勝った〜」と叫んでいた。少女は卓球の試合に負けたが、事実を受け入れることが出来ずにいた。母親とおぼしい女性がなだめると、ますます興奮して泣きわめいた。

確か、小学生時代の石川佳純選手の映像だったと思う。見ていてオレは、はあ〜、と感じ入ったね。ここまで負けず嫌いじゃないと、世界的レベルのアスリートにはなれないんだ。

五輪決勝の吉田沙保里選手にも、鬼の執念を見た。

時間切れで負けが決まった瞬間、吉田はマットにうずくまって泣いた。そうしてなお、彼女は高貴だった。孤高の勝負師の冒しがたいオーラに包まれていた。

だが、欲をいわせてもらうなら、表彰台に上がるときには、気持ちを切り替えていてほしかったね。吹っ切れた笑顔で観客に手を振り、勝者を称えていれば、吉田は日本中の敬愛をさらに高めていただろう。

2日前、エッジボールという不運で負けながら「すべては私の責任です」と言い切った福原愛さんのように。

一つ負けたところで、吉田の14年連覇の偉業にキズがつくわけではない。銀だって、獲れるのは世界で何百万人いるか分からない女子レスラーの中で、たった一人だけだ。彼女には、堂々と胸を張る資格が十二分以上にある。

負けて悔しがるのは、執念。負けを引きずるのは、未練。未練は、アスリートのすることではない。表彰台で鼻の頭を赤くし、目を泣きはらす吉田選手は、彼女らしからぬ未練にとらわれてはいなかっただろうか。
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