映画「世界侵略:ロサンゼルス決戦」感想

2012-04-09 19:51:17 | 戦争映画

未曽有の流星群が世界中に降り注ぎ

やがて正体不明の敵が各国の海岸に出現

各都市に対し一斉攻撃を開始

全世界が戦時下におかれた




これは2011年に公開された『世界侵略:ロサンゼルス決戦』(Battle: Los Angeles) という物凄いB級っぽいタイトルの映画。
いわゆるエイリアン物で『インデペンデンス・デイ』『宇宙戦争』のように、
侵略してくる宇宙人たちを米軍がかっこよくやっつけるという単純明快な映画である。
何故こんなあまり売れそうにない邦題がつけられたのかはわからないが、
B級っぽいタイトルとは裏腹に派手で映像的によくできた作品である。

尚以下のレビューはネタバレに配慮しないので、一応新作なので気にする人は注意である。
しかし難しく考えず力を抜いて観るジャンルの映画なのも確かだ。
なのでネタバレとか関係ないかも知れない。




数ある宇宙人侵略物の中でこの作品がユニークなのは、「戦争映画」として作られていることである。
例えば前出の『インデペンデンス・デイ』を観て戦争映画だという人はいないが、
このロサンゼルス決戦はある種のドキュメンタリー調の撮影と演出がされている。

海兵隊兵士たちにはリアリティーがあり、装備も現実のものだし、
泥臭い戦場、そこまで現実離れしていない戦闘はまるで
『プライベート・ライアン』『ブラックホーク・ダウン』のようである。

それら定番戦争映画と本作の違いは、ドイツ軍やソマリア民兵が相手ではなく、
敵の正体が宇宙人であるという一点のみのようだ。
一度視聴するとあらすじから受ける印象とは裏腹に、
全く戦争映画然としているのが誰にでも理解できる。




しかし戦闘にリアリティーを求める為か、この映画の最大の欠点でもあるのが、
宇宙人がそんなに強そうに見えないということである。
例えばこの作品では宇宙人物にありがちな、スーパー威力な衛星兵器だとか、
メガ粒子砲みたいなやつとか、ピュンピュンするレーザー銃なども登場しない。
宇宙人側もあくまでも実弾兵器で戦っているのである。

その実弾兵器の描写も実際の軍よりもさほど圧倒的なのを感じさせるものでもない為、
各地で米軍が敗走をしているらしい描写があるが、正直、米軍の敗走に説得力がない。
軍事マニアとして実際の軍隊の戦力と限界について多少の知識がある立場からすれば、
この作中の宇宙人軍団との戦いなら普通に米軍が勝利しそうな感じである。

特にヘリボーン部隊に対して、小口径機関砲みたいなのしか迎撃で撃ち上げてこないってのはどうなんだ。
相手は宇宙人なので口径はわからないが、描写から判断すれば恐らく20mm程度の低空用対空火器で、
それを曳光弾をひきながらヘリ部隊に対して撃ち上げているのだから、さながらノルマンディーのような絵になっている。
「宇宙人諸君、その戦術と装備は人類は第二次世界大戦時に通過しているんだ。」という気分である。

確かにこれは映画なので劣勢にならなければ話にならないが、
本格的な戦争映画のような作りだけにそこの説得力が重要だと思えた。
リアルに再現された現代米軍を退ける割には宇宙人側の装備が陳腐である。
これが全くのただのSF映画であれば、または観る人が軍事オタクでなければ、気にしないことであろう。




尚映画のストーリーとしては、戦争映画あるあるの結集編といった感じである。

「このままでは全滅してしまう。俺を置いて逃げろ、隊を頼んだぞ!ドカーン!

「前の戦場であの隊長だけが生き残った。あいつは死神だ。」
反抗的な部下たちの前で隊長が決死のスタンドプレイで部隊を救う。
「隊長・・・!」(反抗的な部下が改心する。)

「あの隊長は前の戦場で俺の兄を見殺しにしたんだ!」
「やつは俺の親友だった・・・。」(苦悩を吐露する。)
「隊長・・・!」(反抗的な部下が改心する。)

「隊長、何をする気です!?撤退しましょう!」
「あれをやれるのはここにいる俺たちしかいない。皆は逃げろ、俺一人で行く。」

その後隊長が後ろを振り返ると部下が全員勢揃い。「隊長が心配なんでね。」


ほぼ上のダイジェストで本作のドラマは網羅している。
だがこの作品は恐らくドラマを観るものではない。
当レビューでは薄っぺらな作品と評してるように見えるかも知れないが、
暇な時に観るとそこそこ楽しめる映画なのは確かである。
本作がロードショーでやれば2ch実況板で盛り上がれる的な。