キャメンソルの群れは傭兵団であるが、
途中で居合わせた魔物達にとっては脅威そのもの。
遭遇した弱者はたちどころに逃走を開始した。
追い立てられる様に先頭を切って走った。
弱者でない者達はその尻馬に乗った。
遊び感覚でキャメンソルの群れに加わった。
これは、傍目には魔物のスタンピードにしか見えない。
河沿いに展開した国軍が膨れ上がる魔力の南下に気付いた。
魔物のスタンピード、・・・か。
直ちに偵察部隊が発せられた。
その中の魔法使いが探知スキルを駆使し、全体像把握に務めた。
程なく解明した。
「魔物のスタンピードです。
その中核はキャメンソル傭兵団です。
魔物を追い立てながら、こちらに向かって来ています」
国軍の、北側の部隊が迎撃態勢に入った。
キャメンソル傭兵団対策として、前以って用意していた荷馬車五十輌を、
前面に広く並べ、次々に横倒しして防御陣を構築した。
そして、その後方に槍部隊、弓部隊、魔法部隊を置いた。
更には騎馬隊。
万全の態勢。
弓の射程に入るや、スタンピードの群れに一斉射。
それを抜けて来た魔物には攻撃魔法。
荷馬車に辿り着いた魔物を槍衾がお出迎え。
キャメンソル傭兵団を見つけると騎馬隊が投入された。
迂回して傭兵団に突っ込む。
キュメンソル傭兵団は、先頭を走る魔物の崩壊は予想の範囲内。
止まる気配はなし。
速度を緩めず、方向を変えもしないでただ真っ直ぐ突き進む。
それは傭兵団の先鋒が弓の射程に入ってもお構いなし。
キャメンソルの背中には瘤が二つ。
一つは水魔法のタンク。
一つは風魔法のタンク。
タンクには魔力が溜められていた。
それは本来、キャメンソル自身が使用する物だが、
使役する立場の者もある程度であれば利用できた。
であるので傭兵団内では、風魔法で防御できぬ奴が悪い、との認識。
傭兵団は、魔物や仲間の死体を踏み潰して遮二無二攻撃一辺倒。
真っ正直に敵本陣を目指した。
かと言って、彼等に自殺願望がある訳ではない。
島津軍と共に滅亡の道を歩む趣味もない。
傭兵団指揮官は、消耗を抑える為、的確に隊列の入れ替えを行った。
負傷者は後方へ下がらせて治療を受けさせた。
それは国軍も同じ。
防御陣を維持する方向で、巧みに補充と入れ替えを行った。
そんな戦場に変化が訪れた。
西からであった。
早朝、南北からの朝駆けを受けた島津軍が、遂に逆襲に転じた。
敗走する国軍を追って来たのだ。
高みの見物のアリスであったが、油断はなかった。
新たな魔力の塊の接近を感じ取った。
東と北の二つ。
『私が東に向かう。
ハッピーは北を頼むわよ』
東へ飛んで直ぐに見つけた。
アピスの群れ、二百余。
牛の種から枝分かれした魔物の種だ。
こちらに騎乗していたのは国軍、全員が三好兵で編成されていた。
【潜伏】を装着している事から、彼等も伏兵であると判明した。
数は二百余と少ないが、それでも組織された魔物の群れ。
今の状況であるなら国軍の力になる事は確か。
こちらもスタンピードを発生させていた。
先頭には魔物が百余。
その真後ろにアピスの隊列。
更に後ろに四百余の魔物を引き連れていた。
ハッピーから連絡が入った。
『パー、霧島山地上空にワイバーンを見つけたっピー』
日向地方との境に跨る山塊だ。
大樹海の一つでもあったので、境は定められていない。
『その数は』
『プー、上空に八頭ペー。
ホバリングしてる様子から、仲間が揃うのを待ってるのかも』
『こちらに来るかも知れないわね』
『ポー、まず間違いなく』
『了解、引き続き見張って頂戴』
『ポー、こちらも了解』
アリスは引き返して仲間達に事情を説明し、取るべき方策を示した。
『ワイバーンが来る前に移動するわよ。
奴等の好む高度ではなく、その上よ』
『ワイバーンか、討伐したいわね』
『私も』
『私も、私もよ、アリス』
アリスは一刀両断した。
『ワイバーン如き、私達の敵じゃないわ。
ただ、少し我慢してね。
全体の流れを見たいの』
傭兵団はアピスのスタンピードに気付かない。
ただ真正面の突破に拘り、視野狭窄に陥っていた。
それが悪いと言う訳ではない。
効果が出始めていた。
今にも敵防御陣の一部を突き崩す勢い。
攻撃魔法を繰り出す者続出で、遂に一角に穴を開けた。
「あそこに飛び込め」
小さな穴を押し広げ、後方の仲間達を呼び込む。
キャメンソルのスタンピード群の後尾に、
アピスのスタンピード群が勢い良く喰い付いた。
魔物と魔物だが、種も雑多、スタンピードとしての群れも違った。
単純に敵認識した。
当然だが、誰何もなければ、遠慮会釈もなし。
一方がドッと当たれば、もう一方がやり返す。
国軍本陣に傭兵団の穂先が届いた。
彼等の目的は敵指揮官の捕縛でも、本陣掃討でもない。
敵陣中央を突っ切ること。
混乱に陥らせる事が主目的であった。
序に敵指揮官を捕縛すれば、ボーナス、だがそれは無理な相談。
傭兵団の壊滅に繋がる道。
選択肢には入れない。
「団を二つに分ける。
後尾は負傷者を守って右方へ離脱、都城へ入れ。
我等はこのまま突っ切る。
手近の負傷者を真ん中に入れて突っ切り、山中に伏せる」
国軍本陣が二つに切り裂かれた。
それを見て取った島津軍が鬨の声を上げながら渡河を開始した。
国軍本陣は混乱に陥ったが、他の部隊は違った。
個々に対処した。
多くが島津軍の迎撃に向かった。
本陣の立て直しに奔走し、その混乱に巻き込まれる事を嫌った。
それら下々の争いはアリス達にとってどうでも良いこと。
彼女達の視線は、キャルンソル単体とアピス単体の争いに向けられた、
足の早いアピスが後尾に居たキャメンソルに襲い掛かったのだ。
魔物としての意地か、乗り手に攻撃魔法を放つ暇を与えなかった。
共に体躯は2tサイズ。
それがドドンと当たった。
勢いに乗った低重心のアピス。
対して腰高のキャメンソルだが、闘争慣れしていた。
グッと腰を落として、受けて立った。
右肩と左肩、余りの衝撃に二頭の乗り手が振り落された。
これからって時にハッピーから悪い知らせが届いた。
『ピー、ワイバーンが編成を終了。
大人二十四頭、子供七頭。
仕草からそちらへ向かう可能性大。
僕も急ぎ戻るっペー』
途中で居合わせた魔物達にとっては脅威そのもの。
遭遇した弱者はたちどころに逃走を開始した。
追い立てられる様に先頭を切って走った。
弱者でない者達はその尻馬に乗った。
遊び感覚でキャメンソルの群れに加わった。
これは、傍目には魔物のスタンピードにしか見えない。
河沿いに展開した国軍が膨れ上がる魔力の南下に気付いた。
魔物のスタンピード、・・・か。
直ちに偵察部隊が発せられた。
その中の魔法使いが探知スキルを駆使し、全体像把握に務めた。
程なく解明した。
「魔物のスタンピードです。
その中核はキャメンソル傭兵団です。
魔物を追い立てながら、こちらに向かって来ています」
国軍の、北側の部隊が迎撃態勢に入った。
キャメンソル傭兵団対策として、前以って用意していた荷馬車五十輌を、
前面に広く並べ、次々に横倒しして防御陣を構築した。
そして、その後方に槍部隊、弓部隊、魔法部隊を置いた。
更には騎馬隊。
万全の態勢。
弓の射程に入るや、スタンピードの群れに一斉射。
それを抜けて来た魔物には攻撃魔法。
荷馬車に辿り着いた魔物を槍衾がお出迎え。
キャメンソル傭兵団を見つけると騎馬隊が投入された。
迂回して傭兵団に突っ込む。
キュメンソル傭兵団は、先頭を走る魔物の崩壊は予想の範囲内。
止まる気配はなし。
速度を緩めず、方向を変えもしないでただ真っ直ぐ突き進む。
それは傭兵団の先鋒が弓の射程に入ってもお構いなし。
キャメンソルの背中には瘤が二つ。
一つは水魔法のタンク。
一つは風魔法のタンク。
タンクには魔力が溜められていた。
それは本来、キャメンソル自身が使用する物だが、
使役する立場の者もある程度であれば利用できた。
であるので傭兵団内では、風魔法で防御できぬ奴が悪い、との認識。
傭兵団は、魔物や仲間の死体を踏み潰して遮二無二攻撃一辺倒。
真っ正直に敵本陣を目指した。
かと言って、彼等に自殺願望がある訳ではない。
島津軍と共に滅亡の道を歩む趣味もない。
傭兵団指揮官は、消耗を抑える為、的確に隊列の入れ替えを行った。
負傷者は後方へ下がらせて治療を受けさせた。
それは国軍も同じ。
防御陣を維持する方向で、巧みに補充と入れ替えを行った。
そんな戦場に変化が訪れた。
西からであった。
早朝、南北からの朝駆けを受けた島津軍が、遂に逆襲に転じた。
敗走する国軍を追って来たのだ。
高みの見物のアリスであったが、油断はなかった。
新たな魔力の塊の接近を感じ取った。
東と北の二つ。
『私が東に向かう。
ハッピーは北を頼むわよ』
東へ飛んで直ぐに見つけた。
アピスの群れ、二百余。
牛の種から枝分かれした魔物の種だ。
こちらに騎乗していたのは国軍、全員が三好兵で編成されていた。
【潜伏】を装着している事から、彼等も伏兵であると判明した。
数は二百余と少ないが、それでも組織された魔物の群れ。
今の状況であるなら国軍の力になる事は確か。
こちらもスタンピードを発生させていた。
先頭には魔物が百余。
その真後ろにアピスの隊列。
更に後ろに四百余の魔物を引き連れていた。
ハッピーから連絡が入った。
『パー、霧島山地上空にワイバーンを見つけたっピー』
日向地方との境に跨る山塊だ。
大樹海の一つでもあったので、境は定められていない。
『その数は』
『プー、上空に八頭ペー。
ホバリングしてる様子から、仲間が揃うのを待ってるのかも』
『こちらに来るかも知れないわね』
『ポー、まず間違いなく』
『了解、引き続き見張って頂戴』
『ポー、こちらも了解』
アリスは引き返して仲間達に事情を説明し、取るべき方策を示した。
『ワイバーンが来る前に移動するわよ。
奴等の好む高度ではなく、その上よ』
『ワイバーンか、討伐したいわね』
『私も』
『私も、私もよ、アリス』
アリスは一刀両断した。
『ワイバーン如き、私達の敵じゃないわ。
ただ、少し我慢してね。
全体の流れを見たいの』
傭兵団はアピスのスタンピードに気付かない。
ただ真正面の突破に拘り、視野狭窄に陥っていた。
それが悪いと言う訳ではない。
効果が出始めていた。
今にも敵防御陣の一部を突き崩す勢い。
攻撃魔法を繰り出す者続出で、遂に一角に穴を開けた。
「あそこに飛び込め」
小さな穴を押し広げ、後方の仲間達を呼び込む。
キャメンソルのスタンピード群の後尾に、
アピスのスタンピード群が勢い良く喰い付いた。
魔物と魔物だが、種も雑多、スタンピードとしての群れも違った。
単純に敵認識した。
当然だが、誰何もなければ、遠慮会釈もなし。
一方がドッと当たれば、もう一方がやり返す。
国軍本陣に傭兵団の穂先が届いた。
彼等の目的は敵指揮官の捕縛でも、本陣掃討でもない。
敵陣中央を突っ切ること。
混乱に陥らせる事が主目的であった。
序に敵指揮官を捕縛すれば、ボーナス、だがそれは無理な相談。
傭兵団の壊滅に繋がる道。
選択肢には入れない。
「団を二つに分ける。
後尾は負傷者を守って右方へ離脱、都城へ入れ。
我等はこのまま突っ切る。
手近の負傷者を真ん中に入れて突っ切り、山中に伏せる」
国軍本陣が二つに切り裂かれた。
それを見て取った島津軍が鬨の声を上げながら渡河を開始した。
国軍本陣は混乱に陥ったが、他の部隊は違った。
個々に対処した。
多くが島津軍の迎撃に向かった。
本陣の立て直しに奔走し、その混乱に巻き込まれる事を嫌った。
それら下々の争いはアリス達にとってどうでも良いこと。
彼女達の視線は、キャルンソル単体とアピス単体の争いに向けられた、
足の早いアピスが後尾に居たキャメンソルに襲い掛かったのだ。
魔物としての意地か、乗り手に攻撃魔法を放つ暇を与えなかった。
共に体躯は2tサイズ。
それがドドンと当たった。
勢いに乗った低重心のアピス。
対して腰高のキャメンソルだが、闘争慣れしていた。
グッと腰を落として、受けて立った。
右肩と左肩、余りの衝撃に二頭の乗り手が振り落された。
これからって時にハッピーから悪い知らせが届いた。
『ピー、ワイバーンが編成を終了。
大人二十四頭、子供七頭。
仕草からそちらへ向かう可能性大。
僕も急ぎ戻るっペー』
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