金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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昨日今日明日あさって。(西部戦線は異状ばかり)4

2023-09-24 08:48:57 | Weblog
 アリスは高みの見物、野次馬気分でいた。
そこへハッピーからの知らせ。
興が冷めた。
矮小な人間共が地域の覇権の為に、
魔物共を巻き込んでまでして戦っているというのに、
そこへ空から介入しようだなんて、とんでもない。
許せない。
ハッピーに確認した。
『キングやクイーンはどうなの』
『プー、この群れにはいないっペー』
 キングやクイーンは生まれていないようで、一安心。
『直ぐに戻って頂戴、迎え撃つわよ』 

 ワイバーンの成体の体長は5メートルから10メートルほど。
翼を広げれば10メートルから20メートル。
武器は体力と鉤爪、尻尾、風魔法。
ブレスの形でウィンドスピアを放つ。
群れとしては、広範囲攻撃のウィンドストームがあるので、そこは要注意。

 対してエビスは頭部、胸部、腹部を合わせて全長が70センチ。
胴回りは50センチ。
これに羽根と足。
二対四枚羽根、三対六本足。
 材質は竜の鱗とミスリルを混ぜたセラミック。
頭部にコクピット、後尾にカーゴドア。
動力源は二つ、ワイバーンのキングとクイーンの魔卵を錬金で精錬し、
仕上げた魔水晶。
口の両端から覗く二つの牙が魔法の放出口、
所謂ところの搭載された航空機関砲。
攻撃魔法、防御魔法を自在に放つ。

 エビスは機体が小さいので侮られるかも知れないが、MPは200。
冒険者ならSランク。
そしてなによりも回復が早い。
加えて、搭乗員たるアリス達妖精は種独自の妖精魔法を使う。
ハッピーに至っては滅多に見られないスライムダンジョン魔法。
これらが初見殺しとなり、多くの戦いに打ち勝って来た。
当然、航空戦力としてだ。
ダンタルニャン佐藤が主戦力であったが邪龍を討伐した。
ワイバーンの巣も壊滅せしめ、キングとクイーンも討ち取った。
誇るべき戦果を上げて来た。

 エビス飛行隊は十五機編成。
ハッピーが戻ると横隊になった。
大きなワイバーン群が相手なので、左右に広がった。
戻ったハッピーがアリスに言った。
『ペー、駄目駄目、だっめー。
正面からだと硬い外皮ばかりだっペー』
 妖精の一人がそれに応じた。
『着弾面が狭いわね。
狙うとしたら下からね、腹部を狙いましょう』
 正面から見えるのはワイバーンの硬い頭と、線にしか見えない翼。
狙おうとすれば狙えるが、弾かれるのは確か。
アリスは二人の意見を取り入れた。
『直ちに降下。
森に逃げ込む恰好でね』

 ワイバーンの群れは前方にエビス飛行隊を発見していた。
しかし、蜂の種から枝分かれした魔物・コールビーの群れ、そう認識した。
ちょっと大きいが、翼の一振りで払い落せるとも。
それが急降下し、森に逃げ込んだ。
その時点で関心を失った。
荒ぶる戦気の地へと急いだ。

 アリスの森の中から上を見上げていた。
散開した仲間達もだ。
念話で確認しなくても、やる気で満ちていた。
バイオレンス~♪ バイオレンス~♪ ゲバゲバ。
燃える燃える・・・ルンルン。
 ワイバーンの群れが警戒する事もなく、腹部を晒して飛んで来た。
『成体を狙うわ。
攻撃箇所は腹部に限定、良いわね』
『『『ラジャー』』』
『使う魔法は光。
ワイバーンは風魔法を無自覚に纏っているから、光で突き破るわ』
『『『ラジャー』』』
『攻撃方法は一撃離脱、それを繰り返して撃墜する、これも良いわね』
『『『ラジャー』』』
『ただし、各自一頭撃墜したら、次は好きにして』
 ワイバーンは成体二十四頭、子供七頭、計三十一頭。
こちらは十五機。
それぞれがノルマをこせば、後は甚振るだけ。
『出撃』
『『『ラジャー』』』

 アリスは機体を急上昇させた。
標的は群れの先頭を飛ぶ成体。
狙う箇所は腹部。
最接近し、妖精魔法を起動した。
人間に例えれば股間、ロックオン。
光槍・ライトスピアを放った。
そして成果を見る暇がないので離脱。
速度のまま、擦れ違う様に航空路を斜め上に取った。
 擦れ違う際、成体の周囲の空気が揺れるのを感じ取った。
身体を覆っている風魔法のシールドは、本来は攻撃を逸らすのだが、
失敗したようだ。
シールドが弾け飛んだ。

 好機。
アリスは機体を急転回した。
標的を見下ろし、急降下。
擦れ違う際、標的の様子を見た。
シールドの再生が成っていないようで、慌ててる感じを受けた。
 アリスは梢の手前で再び転回した。
手は緩めない。
再急上昇。
標的がこちらの意図を理解した。
脅しの様な咆哮を上げ、航空路からの離脱を図った。
遅い。
さっきより離れてはいるが射程距離。
股間をロックオン、三連射。

 標的の悲鳴。
股間が弾け、血肉が飛び散った。
三連射なので悲惨の一言。
きっ、汚い。
アリスは逃げる様に標的への航空路から逸れた。
 とっ、大きな黒い影。
別のワイバーンが最接近していた。
相手を見るに、衝突を厭わない様子。
この近距離では反撃は難しい。
アリスの選択は逃げの一手。
相手の来るルートから離脱を図った。

 エビスに施された術式が起動した。
【自動回避】で直撃から逃れた。
それでも相手の風圧に晒された。
機体の軽さの弊害が出た。
風に巻き込まれて制御を失った。
アリス自身もコクピットから振り落された。
幸い畿内は【光体】で満たされているので、怪我はない。
光体の中で浮遊を余儀なくされただけで済んだ。

 ハッピーからの念話が届いた。
『パー、アリスアリス、怪我したの』
 アリスは泳ぐ様にしてコクピットに戻った。
操縦席に腰掛けた。
『ええ、心配かけたわね。
でも怪我はないわ。
直ぐに戻るわ』
 アリスは各種機器を見た。
全て正常に機能していた。
異常なのは自分のみ。
自分で自分に活を入れた。
それから辺りを見回した。
墜落ではなかった。
愛機は地上付近を漂っていた。


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