金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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金色の涙(白拍子)200

2010-01-24 09:20:18 | Weblog
 一揆勢はヤマト達が動きをみせない為、半数を砦攻撃に向かわせた。
鬨の声を上げた槍隊、徒士隊が盾を全面に押し立てて前進。
弓隊が火矢を砦内に向けて次々と放つ。
火矢で砦内を混乱させ、それに乗じて槍隊、徒士隊が門に攻めかかった。
梯子を架けて上ろうとする。
 一揆勢の動きに、ヤマト達の焦りを誘う魂胆が透けて見えた。
砦の救援に駆け付けるのを待ち受け、鉄砲隊の餌食にするつもりらしい。
森の出口に向けて鉄砲が筒先を揃えていた。
少人数にも関わらずヤマト達は驚異なのだろう。
 焦れたように慶次郎が、「ヤマト、行くぞ」と怒鳴る。
他の者達も気持は同様らしい。険しい目でヤマトを見ていた。
どうやら己の生き死により、武名を上げることが大事らしい。
 ヤマトはポン太に、「千畳扇は使えるか」と確認した。
ここまでの戦いで「気」を使い切っているかもしれないからだ。
 ポン太は、「大花火は無理だが、風なら起こせる」と。
 次ぎに哲也に視線を転じた。
 哲也は聞かれる前に、「狐火なら使える」と答えた。

 麓に駆け下りた黒太郎は魔物が群れている場所を目敏く見つけた。
月明かりが味方していた。
途中に何の障害もない。普通の田舎道だ。
迷いも恐れも無い。そこを目指してまっしぐらに突き進む。
 背中の赤ん坊は犬に跨っているというよりは、張り付いている感が強い。
その表情が変わった。無邪気な顔から、不気味なまでの笑顔に。
魔物の群れへの接近を喜んでいた。
 少し遅れて老婆や、騎馬の者達が続いた。
数にして三十には足りないが、勢いは隠しようがない。
 魔物達が背後から接近する者達に気付いた。
迎え撃つために、百人近くが隊列を組み直した。
五列の横隊で槍の穂先を揃えた。
 黒太郎は敵の備えを見ても足を弛めない。
無謀にも槍衾に突撃するらしい。
 背中の赤ん坊は真言を唱えて、体内に気を集める。
老婆から習い覚えた方術だ。
手順を省いたにも関わらず、僅かの間に良質の気を大量に溜めた。
 敵第一列に突っ込もうとする黒太郎の大きな身体を数本の槍が出迎えた。
魔物の馬鹿力で繰り出された槍の柄に黒太郎は跳び乗った。
槍の柄を足場に、巧みに二本、三本と勢いをつけて渡り、一人に体当たり。
敵を押し倒し、首を強引に噛み切った。
 周りの敵が態勢を整え、黒太郎に再び槍を。
同時に赤ん坊が動いた。
ここでも方術の手順を省き、両手で「気の矢」を連発した。
溜めた気が無尽蔵ではないかと思えるほど大量に放つ。
狙いは正確で、敵の首に次々と命中した。
当った衝撃で「気の矢」が爆発。敵の首を弾き飛ばした。
あるいは折れた状態になった。
赤ん坊の「気の矢」は常人の方術に比べて破壊力が強い。
 遠間から老婆が敵の一角に向け、口から火球を放つ。
具足に当るや、数人の敵を巻き込む激しい爆発。
これまた破壊力が強い。第二列まで崩した。
 老婆の凄さを間近に見ながら、才蔵達はその一角に突っ込んで行く。
崩れた第一、第二列を抜けて、第三列に挑む。
騎馬の勢いで敵隊列を突き崩そうとした。
が、勢いを敵兵が馬鹿力で押し止めるではないか。
続く徒の者達が敵隊列に当るが、容易には突破できない。
逆に二人、三人と敵の槍の餌食となった。
 遅れていた佐助と小太郎、ぴょん吉が後方から突っ込む。
二人と一匹は示し合わせたかのように、馬を捨て、敵隊列の後方に跳んだ。
 佐助が小太刀『李淵の剣』を抜き、繰り出された槍を鮮やかに斬り払う。
そして、返す刀で敵の腕をも斬り落とした。
流れるような一連の太刀捌きで、小太刀の不利を補う。
 小太郎も負けてはいない。
一カ所に留まることなく移動を繰り返しながら、敵の手首、腕を斬り捨て、
素早く身を寄せて足払い。
余裕があれば、倒した相手の喉仏に剣先を突き入れた
 ぴょん吉は得意の狐拳を使い、敵の無防備な目に突きを喰らわした。
素早い左右の連打で、敵の視力を奪う。
手強い敵が相手だと「狐火」を放ち、顔に当てて両目を潰す。
 もたつく才蔵達。
敵が槍の柄で馬の尻を激しく打つので、馬が暴走を始めた。
次々と落馬させられ、そこを槍で狙われた。
あっと言う間に半数近くが命を失う。
 才蔵は落馬するものの、辛うじて槍を太刀で払い除けた。
反撃しようにも周りの味方は傷付いた者ばかり。当てにはできない。
円陣を組ませて防御するので手一杯。
必死で味方を守る。
 才蔵達を囲む一角が崩れた。
老婆が徒手空拳で躍り込んで来たのだ。手刀で槍の柄を折り、足払い。
傍にいた敵を肩で弾き飛ばし、別の者をも掴むや投げ飛ばした。
倒れた相手にも容赦がない。踵で喉仏を踏み潰した。
手練の早業で敵数人を退けた。
 老婆が、「どうした才蔵」と。
「於福殿、助かりました。こ奴等は何者ですか」
「知らぬのか。大雑把に言えば魔物だ。
退治するには手足の何れかを斬り捨てるのが早い。
そうすれば動きが悪くなる。
そうした上で、止めに首を斬り落とす」
 於福は斃れた味方の太刀を拾い上げ、敵隊列に斬り込む。
鮮やかな体捌きで敵に身を寄せ、首を一刀のもとに斬り落とした。
 才蔵も負けじと駆けた。
突き出された槍を受け流し、恐れることなく前に跳ぶ。
強引に喉仏に剣先を突き入れ、掻き切った。
 魔物の兵達も戦況の不利を悟り、残りの三百人余が動いた。
包囲しようと左右に展開。押し包むつもりらしい。

 森の出口に忍び寄ったヤマト達の目の前で、敵の鉄砲隊が動揺していた。
背後の魔物の軍勢が何者かに襲われていたからだ。
 低い姿勢で慶次郎が、「これは天佑だな」と柄にもないことを言う。
 フフンとばかりにポン太が慶次郎の頭を飛び越えた。
仲間の二匹の狸も同様だ。
森の外の闇に身を置き、間隔を置いて立つと残った気を放った。
技は「千畳扇」。ポン太の股間から風が巻き起こった。
 ポン太は仲間の気の助けを借り、強力な風に仕立て上げた。
地にある物を全て巻き上げ、鉄砲隊に向けて飛ばした。
枯れ草から枯葉は無論、枯れ枝、小石までもが勢いよく飛んで行く。
 鉄砲隊は物を巻き込んだ強風に視界を失った。
小石や枯れ枝が矢弾のように襲ってくるのだ。
たまらずに背中を向け、身を屈めた。
具足で身を固めていなかったなら大勢が傷付いていただろう。
 すかさず哲也が仲間三匹を従えて飛び出した。
狐得意の「鏃の陣形」で、「狐火」を次々と放った。
ことに哲也の「狐火」は威力が段違い。
当ると爆発し、巻き込まれた者の持つ火薬にも飛び火した。
あちこちで鉄砲が暴発。隊列が崩れた。
 慶次郎が愛馬・鈴風に跨った。
「行くぞ」
 答えも待たずに飛び出した。




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久し振りに夢を見ました。

何故か、夜。家路を辿る俺。
前方に家の灯り。暗闇にただ一軒だけ。
俺の帰宅を待っていたのか、女房が一瞬、顔を向けてきた。
そして、直ぐにそっぽを向いた。
怒っているのかどうかは分からない。
女房が、「あの人が来るから、子供達を連れて遊びに行って」と。
 すぐに夢の中の状況を理解した。
俺は、以前は腕の良い職人だったが、今はただの飲んだくれ。
俺が作った駄作を買いに来る商人がいて、それを高く売るために、
女房が枕営業をするというのだ。
 女房がそっぽを向いているので、表情は読めない。
本当に枕営業なのか、それとも淫乱なのか。
 俺は何も言わず、子供達を外に連れ出した。
何も知らぬ子供達は夜にも関わらず、嬉しそうに遊び回る。
俺は一人、闇の中に腰を下ろして、ジッとしていた。
 そして、どのくらい経ったの知らないが、「もういいだろう」と思い、
トボトボと家に戻った。
女房はそっぽを向いたまま何も言わない。
 そこに、報せが届いた。
俺の子供が死んでいると。
遊んでいる途中で不意にかき消え、死体で見つかったそうだ。
他の子供達が泣きながら戻って来た。
 言葉を失う俺。

そこでアラームが鳴った。

これはどういう夢なんだ。
死因は。
殺しなら犯人は。
そして、どういう理由で殺されたのか。
俺と女房に、家族に、明るい未来はあるのか。


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