なぜ親のすねをかじり続ける"妖怪"が誕生したのか? - 新刊『小説 妖怪すねかじりと受験家族へのレクイエム』
2022.03.31(liverty web)
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2022年5月号記事
大川総裁の新刊小説
なぜ親のすねをかじり続ける
"妖怪"が誕生したのか?
受験の勝利が人生の勝利ではない
大川隆法・幸福の科学総裁がこのほど、『小説 妖怪すねかじりと受験家族へのレクイエム』を発刊した。
日本に蔓延する「東大神話」「学歴信仰」に揺らぎを与え、目指すべき新しい価値観を提示する。
一冊の絵本を100回以上読み聞かせる父の愛
幸福の科学出版
大川隆法著
これは、子供たちの受験勉強や成長をめぐって、高山家で繰り広げられる物語である。
都内に家を構えるベストセラー作家の高山康徳は、妻・洋子、長男・亡羊、長女・咲夜、次男・輝光、三男・裕三、次女・明日香の7人家族だ。
物語は、高山家のリビングから始まる。
幼い亡羊が公園デビューした際、近所の奥さんたちにかわいさを褒められて舞い上がる洋子を尻目に、康徳は、ある不吉な予感を感じる。
亡羊のお気に入りの絵本は『ニンジンさんが赤いわけ』。せがまれる康徳は、夕食後、のべ100回以上は読み聞かせた。
高山家では当初、子供たちは基本的に自由教育でよく遊ばせていた。
宗教家として活動の場を広げていく康徳は、執筆のみならず、東京ドームで5万人を集めた講演会を行ったりテレビで討論をしたりして、時が経つにつれて仕事や社会的影響力が大きくなっていく。
だが、自宅のリビングでは、子供たちを遊ばせながら、「宗教大事典」を読破したり仏典を読んだりしつつも、常に子供たちに目を配り続けていた。
「最上流家庭」を目指す妻 嘘をつく長男
両親の苦闘は、亡羊が小学校に入学する前後から始まった。
康徳は、子供が小学校に上がったら、子供のおつきの人は削った方がよいという意見だった。自立心や自助の心が失われてしまうという理由からだ。
これに対し、洋子は、複数の看護師やお手伝いがいた開業医の家庭で育った自身の体験を重ね、家庭教師グループ、お手伝いグループ、秘書グループなど40~50名を家の周りに囲い、亡羊が小学校に上がると、東大卒の男性など複数の家庭教師を付けた。
康徳の「東大卒の家庭教師を小学校低学年に付けても、頭脳を破壊されるだけで、無駄だ」という主張も、我の強い洋子には何を言っても無駄だった。洋子は高山家を、外見は皇室、中身は鳩山家のような五代続いて東大卒になるような「最上流家庭」にしたかったのだ。
また、亡羊は成人してから、「父親からずっと東大法学部に行けと言われ続けた」とか、「東大・早慶以外は大学でないと言われた」などと雑誌で発言するようになる。しかし亡羊は、康徳の郷里・徳島の田舎の公立小学校の同級生と比べても、徳島大教育学部や同志社大などへの進学者より明らかに学力は下で、早慶には届かずМARCH(*)か東洋大、日大、短大ぐらいと推定された。だから、亡羊の成人後の発言は全くの嘘である。
世間で中学受験にこれがあれば成功すると言われている、「父親の経済力」と「母親の狂気」は、高山家には十分すぎるぐらいにあったが、なかったのは、亡羊の学習能力と忍耐力、なによりも努力する姿勢だった──。
「妖怪すねかじり」の面目躍如と言ったところか。
(*)関東地方にキャンパスを構える私立大5校の通称。明治大学(M)、青山学院大学(A)、立教大学(R)、中央大学(C)、法政大学(H)。
「東大神話」「学歴信仰」に揺らぎを与える
物語はその後、亡羊の中学受験や素行不良、亀の如くゆっくりとしかし着実に前に向けて歩き始める長女・咲夜の生き方、次男・輝光の中学受験、三男・裕三のいじめ事件などに展開。そして物語の終盤、成人していった5人の子供に思いをはせ、康徳はこう語る。
「子供たちは、それぞれの使命をになって、それぞれの道を歩むがよい。親としてやれることはもうない。世界の人々に、救世の言葉を残し続けながら、死んでいくことが高山康徳のささやかな願いである」
受験社会の光と影が描かれたこの物語は、「東大神話」や「学歴信仰」が幅を利かせる現代の日本社会に鋭い問題提起と大きな揺らぎを与える。
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いずれも、幸福の科学出版刊。