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森の中の一本の木

想いを過去に飛ばしながら、今を見つめて明日を探しています。とりあえず今日はスマイル
  

ハロウィーンモンスターの独り言

2007-10-11 01:24:39 | 詩、小説
kiriyの留守の間は、ハロウィーンモンスターのこの俺様がここの番人だ。要するに留守番ってわけだ。ちょっと、時間があるならさ、おいらの呟き、聞いていっておくれよ。「kiriyの留守」って何だろうと思ったら「お知らせ」ってとこ読んでくれよな。


 ある時おいらは夜の街を、ガチャガチャ音を立てながら歩いていた。風は吹いていたけれど、空は雲に覆われて星も月さえも見えない夜だった。なぜか街には、人っ子一人歩いてなんかいやしない。


さみしいよ
さみしいよ
おいらはエンエン泣きながら
歩いてた
だけど、涙の一滴さえも出やしない

エーンエーン
エーンエーン
仕方がないので声だけでおいらは泣いていた。
すると、ねぐらに帰り損ねたカラスが
街灯の上でブルブルと震えて言った。


「すごいねぇ、だんな。そんなに恐ろしい声は聞いたことがない。どうか、このワタクシめに教えてくださいませよ。」

おいらはムカついて
グワァーワァーと吠えてやった。カラスは慌ててどこかに飛んでいった。


さみしいよ
さみしいよ
おいらがそう言うと、
街灯が分別くさくこう言った。

「そりゃあ、あんたが誰の役にも立っていないからさ。この私のようにね。」

そうか、街灯は暗い夜道を照らして、みんなの役に立っているものナァ。
でもどうしたら、誰かの役に立つことが出来るんだろう。
分からない。分からないからさみしいよ。

さみしいよ
さみしいよ
おいらがそう言うと
道を横切って行くネズミが煩そうに言った。

「まったくまったくまったくさ、
あんたはあんたはあんたはさ、
自分自分自分しか愛していないんじゃないのかい。」

まったく忙しいネズミで、おいらが
そんな事はないよと返事する前にどこかへ行ってしまった。
あれ、だけど、そんなこと・・は・・な・・い・・・
ちょっと待てよ。

おいらは自分しか愛していないんじゃなくて、自分さえも愛してはいないよ。
それよりも「愛する」って何だろう。
誰か「愛する」って教えてくれよ。
そうだ、誰かがおいらを愛してくれたら、おいらは自分を愛せるんじゃないかな。
おや、おいらは頭がいい。
みんながおいらを愛したら、おいらはさみしくなくなるんだよ。

・・・・だけど、誰もおいらを愛さない。
だから、おいらはさみしいよ。
さみしいたら、さみしいよ。
エンエン
エンエン
さみしいよ。
    

          ♪    

「ちょっとぉ~、あんた。それ素敵な歌ね。あたいにも教えてくれない。」

振り向くと、鼻の所にブチの模様のある不細工な雌猫が立っていた。
おいらは、同じ言葉を言い過ぎて、どうも節がついていたみたいだ。
こんな不細工じゃあ、この猫もさみしかろうと思った。
おいらは思ったことは、はっきりと口に出すタイプらしい。
「なんか適当に呟いているだけだ、不細工猫よ。」


すると、そのブチ猫はすまして言った。
「アリガトウ。みんな、そう言うのよ。何てまあ、不細工で、なんとまあ愛おしい猫だって。」
ヒェー、おいらは驚いたね。不細工だから愛されているのか。
「あら、あんただってとっても不細工、とってもキュートよ。」

プシュー、
ブチ猫に言われて、おいらのどっかから湯気が出た。


「そう言うことを、別の言葉で『個性』と言うのさ。」
驚いて振り向くと、きりりとした顔立ちの毛並みも艶やかな黒の雄猫が立っていた。声もなんだか爽やかで、思わず耳を澄ましてしまうほどだった。

黒猫とブチ猫は恋人どおしのように目を合わせ、いきなり二本足で立ち上がった。月のない夜には、そんな事もあるものさ。だけど、驚いたのはそんな事じゃない。
パチンと彼らは指を鳴らした。足音さえも立てない足なのに、一体どうやって指を鳴らすんだ。おいらは目を凝らしたが、分からない。二匹の猫はニヤリと笑って指を鳴らしながら、ゆっくりと後ずさる。パチンと同時にニャと言いながら。

ニャ、ニャ、ニャ、・・・♪

「パア~。」とブチ猫が甲高い声で鳴いた。
すると、街中の街灯がキラキラと点滅し、いつの間にか数匹の猫が集まっていた。

「ブチ猫、月もないのに集会かい。」
尻尾の曲がった縞猫が言った。
「そうよ、お客が来たからパーティよ。」


お客っておいらのことかい。

グレーの猫は歌う。
― さみしいよ
  さみしいよ
  風の吹く日はさみしいと
  私のご主人様が言う
  とうに居ないばあ様の、昔語りを思い出す


三毛猫も歌う
― さみしいよ 
  さみしいよ
  雨の降る日はさみしいと
  ぼくのご主人様も言う
  昔別れた恋人が、ずぶ濡れで
  戸口に立っていたことが忘れられない


本屋の年寄り猫も歌う
― さみしいよ
  さみしいよ
  空を見上げてさみしいと
  わたしの御主人めもそう申す
  あの友この友みんな見送って
  とうとう自分が最後の一人


「ああ、それは本当にさみしいわ」
ブチ猫、黒猫が声をそろえて言う。

又、本屋の猫が歌う
―朝が来たから、さみしいと
ジュリエットは悲しみ
川の流れに身を任せながら
オフィーリアは嘆く


「あれは雲雀ではないわ、小夜鳴鳥(ナイチンゲール)よ。」とグレー猫。
―イヤイヤ、ジュリエット。あれは朝を告げる小鳥の鳴き声、早くロミオを送り出して。―

「オフィーリアよ。尼寺に行け。」尻尾曲がりの縞猫も言う。
―To be or not to be , that is the question.
生きるべきか死ぬべきか、なすべきかなさざるべきか、そいつが問題だ。―

―Get thee to a nunnery!
 聖女になるか娼婦になるのか、そいつも問題だ。―


            ♪    ♪     ♪


猫たちのパーティは盛り上がり、歌え踊りの大騒ぎ

訳も分からず、おいらもガシャコンガシャコン踊ってしまう。踊りつかれて、ふと思い出す。

「不細工猫のブチ猫よ、みんながおいらを愛すれば「さみしさ」なんて、なくなってしまうんじゃないのかい。」

「それはないわよ、おにいさん。だって夜空のお月様はみんなが見上げて、綺麗だ好きだと言われているけれど、高いお空にポツンと一人。なんだか時々とってもさみしそう。」


         ・・・長くなってしまったので、ちょっと区切ります。そのまま続けてお読み下さい。


 
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ハロウィーンモンスターの独り言(続き)

2007-10-11 01:23:42 | 詩、小説
ハロウィーンモンスターの独り言の続きです。

「だけど、月は夜の闇を照らしてみんなの役に立っているんじゃないのかい。」
「そうかも知れないけれど、お月様はそのことを知っているのかしら。」と、ブチ猫はしみじみと言った。
「愛されていても愛していても、誰かの役に立っていたとしても、みんなさみしいものなのかい。」

「オイオイ、嘆くなよって、兄弟。」と黒猫が、やたら説得力のある声でそう言った。
すると、ここの猫達はすぐに歌いだす。

―さみしくなんかなかったら、
 昔別れた人たちを思い出すことなんかないだろう。

―さみしくなんかなかったら、
 詩も歌も生まれない。

―さみしくなんかなかったら、
 自分の事なんか見つめない。

―さみしくなんかなかったら、
 誰も愛することをしないだろう。



      ☆    ☆    ☆

 その時、目の前を蜘蛛が糸を一本はき出しながら、風に乗って通り過ぎていった。

「盛り上がっているようだけれど、もうすぐここは風が雲を吹き飛ばすわよ。そしたら空には、まん丸お月様。猫たちは大喜びだと思うけれど、あなたはいいの?」
と、教えてくれた。

そうだった。
おいらは、風があるのに、月もない、星もない、そんな夜にだけ目が醒める期間限定のモンスターだったよ。急いで目覚めた所に帰らなくては、動けなくなってしまう。朝日を浴びたら、元の姿に戻ってしまう。
ちと、遠出しすぎたよ。


盛り上がっている猫達を尻目にそこを立ち去った。
立ち去る時に振り向いた。
歌い踊っている猫達を見たときに、おいらの何処かがキリキリと音を立てた。

さみしいよ
さみしいよ


でも、おいらは何か不思議な気持ちがした。
さみしいけれど、空っぽではない、そんな感じ。



「また来いよ、、兄弟!」と、黒猫が遠くの方から声をかけた。
振り返ると、ブチ猫も手を振っていた。


「やっぱり、不細工だよなあ~。」と、おいらは呟きながら、帰り道を急いだよ。



  ★        ★      


おいらは、いつの間にかゴミ捨て場になっちまってる森の奥で、目が醒めたんだ。

やっとの思いで帰ってきた時に、高い木の梢で 
グワァーワァーと、カラスが鳴いた。

見上げると、雛とメスガラスを守るように 若いカラスが威嚇の声を上げていた。


カラスはおいらを見つけると
「よっ、だんな。サンキュな。」と言った。





なんだか、おいらは、うれ・・し・・い・・



その時、朝日の強い光が森中をを照らした。
カシャカシャカシャ、おいらは、元のあれやこれやのゴミの姿に戻っていった。



風があるのに、月もない、星もない、そんな夜にまた会おう―。





―おいおい、こらこら。それじゃあ、留守番にならないだろうって―   
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