to Heart

~その時がくるまでのひとりごと

少年と自転車

2013-05-24 21:55:50 | the cinema (サ行)

原題 LE GAMIN AU VELO/THE KID WITH A BIKE
製作年度 2011年
製作国・地域 ベルギー/フランス/イタリア
上映時間 87分
出演 セシル・ドゥ・フランス/トマス・ドレ/ジェレミー・レニエ/ファブリツィオ・ロンジョーネ/エゴン・ディ・マテオ
もうすぐ12歳になる少年シリル。父親は彼を児童養護施設に預けたまま行方知れずに。シリルは自分が捨てられたとは露とも思わず、父親を必死で捜し続ける。そんな中、美容師のサマンサと出会う。彼女は、なくなった大切な自転車を取り戻してくれた。そしてシリルは、サマンサに週末だけの里親になってくれと頼み、2人で父親捜しを続ける。やがて、ようやく父親を見つけ出し、再会を果たしたシリル。ところが父親は喜ぶどころか、シリルをすげなく拒絶してしまう。サマンサはシリルを心配し、それまで以上に彼の世話を焼くようになるのだが…。

コチラも公開当時、評判が良くて観たかった作品ですが、DVDにて鑑賞。
思ったよりも厳しく、痛々しい少年の日々を描いた作品でした。

冒頭から、親に捨てられ、それを認められない認めたくない少年の、恐怖というか
痛々しい姿にもう、胸が痛むのですが、、、
何も持たない子供でありながら、
彼は自分で確かめ、その目で見て、聞いた事だけを信じて進む姿が胸を打ちます。

それなのに・・・苦労して会った父親を前にすると、別人のように理解をみせ、
大人っぽく、嫌われないように振舞う姿が痛ましい。。。


本作は、ダルデンヌ監督が2003年に『息子のまなざし』のプロモーションで来日した際、少年犯罪についてのシンポジウムで聞いた“赤ちゃんの頃から施設に預けられた少年が、親が迎えに来るのを屋根にのぼって待ち続けていた”という衝撃的な話に着想を得て作られた。
と、公式サイトで紹介されています。コチラ
『息子のまなざし』は未見ですが、
男の眼差しで、注意深く、丁寧に、孤独の淵の少年心理を描いた作品だと感じました。

物語は、さまようシリルの行動をひたすら追い、うつむきがちな彼の心を映していくのです。

大好きな父親に見捨てられるという恐怖感。
それを、単に父親の育児放棄とは思えず、お金を渡し望みを捨てきれない子供の心理。
痛いほど掴まれたその痛さに、心を掴まれて、親になっていくサマンサの心理。
1時間半弱というサイズに、凝縮されています。

必要とする者。
必要とされる者。
必要としなくなる者―。
どうしようもない環境で、自分の一歩を踏み出す3人。

11歳の少年シリルが、ある時まで、
ただ父親に捨てられるのを怖れて繰り返す脱走劇には、正直、
ゴネてゴネて、、結局は自分の思い通りにしている我儘さも感じましたが、
結果的に彼はそうして自分で幸運を掴み取り、
犯罪を犯したらこう。家庭ではこう、という教えを学べるひとを掴んだのです。

シリルが自転車の次に取り返したもの――
それは、いつも彼を待っていてくれる人。キケンから守ってくれるひと。
これは、「子」が差し出した手を、まるで友情のように握り返した「親」の話でもあり、
血の繋がりとか、親ってなんだ?と改めて考えさせられました。


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4 コメント

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こんにちは~♪ (JoJo)
2013-05-26 16:55:51
kiraさん、こんにちは~!
ブログになかなかお邪魔できず、
スミマセン(泣)

少年と自転車、なんて爽やかな
一陣の風が吹きそうなタイトルなのに
内容は、かなりシリアスだったのですね・・・。

kiraさんのおっしゃるように、血のつながりとか
親子とか、人と人の関係とか、なんのだろうと
ふと考え込むことがありますよね。

この映画の場合、少年と女性の関係は、
血のつながりのない他人同士ではあるけれども、
何かしら、科学的には理解しがたい、
ただ相性が良い以上に不思議のご縁のあった
魂では、親子のような存在なのかも。

話変わりますが、バーン・ノーティス、
kiraさんのツイート読んで、ものすごく
興味持ったので、観てみるね~♪

映画を観ていないせいで、なかなか
お邪魔できないのですが(汗)、ツイッターで
おしゃべりの相手、お願いしま~す♪
返信する
JoJoさ~ん♪ (kira)
2013-05-27 12:30:11
こんにちはお忙しいのですね

そうなの、
この作品は日本人の弁護士の、とある少年犯罪に至る
生い立ちからのエピソードに、監督がインスパイアされて出来たストーリーらしいです。
私も鑑賞後、HPをみて知りました。

ですが、少年の親を乞う切ない心理は万国共通でも、
その置かれた環境によって、孤独な少年を待ち受ける闇も
少年犯罪の入り口がちがう(厳密には同じか)ため、
親の目で観ていると怖いのですよ~。

バーン・ノーティス
テンポがよくて軽いのよ~(笑)
「NCIS~」の、無駄なお喋りがちっとも面白く感じられなくて(笑)
コチラのセリフの面白さにシフトしちゃったの

ツイッター、JoJoさんの登場~、お待ちしてるわ
ただ、2人ともドラマは録画鑑賞だから、オンタイムで共有できないね~
返信する
シリルとサマンサ (ぺろんぱ)
2013-05-29 20:19:52
こんばんは。

>親が迎えに来るのを屋根にのぼって待ち続けていた”という衝撃的な話に着想を得て

胸が締め付けられますね。

シリルのまとった“棘”が少しずつ柔らかくなっていゆくのと同時に少しずつ“親になってゆく”サマンサの姿に、温かく甘酸っぱい感情が湧きあがりました。
返信する
ぺろんぱさん♪ (kira)
2013-05-31 00:19:11
施設に預ける時に、親と交わされた面会の「約束」。
それをどんなに子供が心の支えにし、待ち続けているか、、
どんな状態であってもとにかく会って欲しいのに、
親は「約束をやぶる」。。。逃げるのですよね・・・
どんな姿であれ、正直に子供と向かい合ってくれれば、
子供はきっと解るはず。

子供を不幸にするオトナがいる一方で、誠実に、親になろうとするサマンサに救われました~
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