観るも八卦のバトルロイヤル

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意地悪新選組だから呼ばれた「壬生の狼」--「壬生義士伝」

2006年08月18日 | 映画・ドラマ
 「久しぶりに堪能した時代劇」最初に鑑賞した感想。続けざまに3度観た。私の中の日本映画ランキングを大きく塗り替えると確信したが、やはり、弟1位「卒業旅行 ニホンから来ました」を抜くことはできなかった。
 「日本アカデミー賞」を総なめしただけあってストーリーも映像もかなりの出来映え。主演の吉村貫一郎を演じた中井貴一。なぜかこの人って本当にその時代にいたお侍見えてしまう。時代劇と戦争ものには無くてはならない存在だ。
 ということで、中井貴一を配しているのだから重厚さは増しているが、個人的には、本編とは関係ない部分で進行する、大野次郎右衛門(三宅裕司)の(成長した)息子役の村田雄浩の押さえた演技の貢献度を抜いては語れないと思った。
 村田の語り口で観衆を引き付けておいて、ドーンとドラマチックな画面を魅せる。そんな創りだったと言えよう。しかも村田の少年時代を伊藤淳史が演じているとかろが、「うまい配役」。
 斎藤一の佐藤浩市。人間の腹の中にあるものが不本意に外に出てしまう。そんな微妙な心境を演じたらこの人、かなり上手いよね。
 本編ではカットされているのだが、メーキング編に収まっている堺雅人(沖田総司)との意地悪コンビも、「ありそう」な感じ。だいたい、意地悪沖田のキャラって初めてじゃないか。堺雅人の意地悪沖田剣法も凄みがある。凄腕沖田の狂気じみた刹略ぶりが「壬生の狼」と呼ばれるあたりを表現しているのだろう。
 案に坂本竜馬を暗殺したのは、斉藤一(佐藤浩市)といった流れにもなっている。
 映画では、お金のために新選組に入り、家族に送金して、鳥羽伏見の戦いで破れて、南部藩藩邸に逃げ込み、帰参を申し出るも、切腹を申しつかる。脱藩したにも関わらず、帰参。しかも朝敵であるにも関わらず。しかし、実際に人間の心情とはこんなものだろうと思った。ましてや「守銭奴」とまで蔑まれるくらいに金に執着した人間は最後の最後まで望みを捨てないものである(と思う)。溺れる者は藁をも掴もうとするものなのだ。助かる望みが壱分でもあるなら、それにかけてみる。金に執着する人間は命にも主着するものなのだ。
 しかし、冷静に判断し切腹を命じた、朋友大野次郎右衛門の「会津の侍たちと大阪城に入れば生きる道もあったろうに」の台詞が印象深い。
 脇役ではあるが近藤勇を演じた役者(名前知らない)。凄く近藤に似てた。
 重い題材の映画なのだが、達者な役者たちの演技力で、ノンフィクションのような錯覚さえ生じさせられた。
 日本人なら1度は観ておくべきだと思います。最後に、新選組のそろいの羽織も黒と赤だと凄みがあるね。