サーカスな日々

サーカスが好きだ。舞台もそうだが、楽屋裏の真剣な喧騒が好きだ。日常もまたサーカスでありその楽屋裏もまことに興味深い。

mini review 10451「2012」★★★★★★☆☆☆☆

2010年04月19日 | 座布団シネマ:な行

マヤ暦による2012年終末説を題材に、『インデペンデンス・デイ』『紀元前1万年』のローランド・エメリッヒが手掛けるディザスター・ムービー。地球滅亡を目の前になすすべもない人々が、巨大な自然災害から必死に逃げまどう姿を描く。偶然にも地球の危機を知ってしまうリムジン運転手に『ハイ・フィデリティ』のジョン・キューザックがふんし、大事な家族を守るために奔走する。大地震、火山噴火、津波など最新CG技術による迫力ある映像に注目。[もっと詳しく]

地球の惨劇を目撃しながら、寝転んで突っ込みを入れられるノンキな愉しさ。

アイスランドの火山噴火でヨーロッパの空港はのきなみ閉鎖となった。その規模は、2001年の9.11による航空管制の規模を超えたとも伝えられている。
この噴火の直後、同僚がジュネーブからパリ経由で日本に戻ってきた。もう数時間遅かったら、他の多くの日本人と同じように帰るに帰れず足止めを喰らっていたのだ。
ちなみに、この同僚は、前の9.11の時は(その時は僕も一緒であった)、香港便の最終で日本に帰ってきたのだが、その飛行しているまさにその時に、国連ビルへの航空機の激突があったのだ。もちろん、その後は香港からの便もテロ対策で全面運行中止となった。



同僚はつくづくこういうめぐり合わせなのか。ちょっとマヤ占いで、彼の星でも属性キャラでも占いたいぐらいだ(笑)。
ちなみに僕は、日本でマヤ暦がちょっとしたブームになった二十数年前に、マヤカレンダーを部屋に貼ったりしていた。僕のマヤ占いでのキャラは「黄色い太陽(KIN40)」である。分かる人にはこれだけで分かる(笑)。
まあ、そんなことはどうでもいいのだが、このアイスランドの天に向かって勢いよく噴出する火山灰の黒煙を飽きるほど映像で見ながら、圧倒的な自然のもつパワーをいやおうなしに感じさせられたのであった。
こういう大爆発を前にしては、地球温暖化がどうだとか、生物持続可能性がどうだとかのある意味で倫理的でもある議論も、ふっとんでしまうような気もする。
この『2012』という大災厄パニックムービーと同じように・・・。



『2012』は、マヤ文明で使われたマヤ暦の、ひとつの予言仮説である終末論を扱っている。このあたりはトンデモ娯楽誌『ムー』の度重なる特集をはじめ、難解な専門書やただブームにのっかかっただけのお騒がせ本まで含めて十数冊は読んでは来ている。
惑星直列、フォトンベルト、太陽嵐、地軸の逆転・・・科学、SF、オカルト、哲学・・・なんと言い換えてもいいのだが、こういう話題にはその道の尊敬すべきオタクたちとは、数時間ぐらいは話はできるぐらいの最低限の知識は一応持っている。
2012年の12月21日から12月23日。言語は持たないかわりに、天体観測と暦の生成に関してはとんでもなく精緻であった古代マヤ族の予言の日まで、もうあと1年半ぐらいしかないのだ。
僕としては、これは『2012』という映画で描かれた全地球規模の大崩壊のことではなく、意識次元の転換・上昇(四次元から五次元へのアセンション)とする穏やかなニューエイジ風の解釈の方が平和でいいのだが、まあそんなことは誰にもなにがおこるのかはわからないことだ。分からないことに、科学的・非科学的などと騒いでもしょうがない。



イエローストーン公園で、なにやら立ち入り禁止の札を立て、軍隊がものものしい警戒をしている。
売れない作家のジャクソン(ジョン・キューザック)は子どもを連れて入り込むが、そこでヒッピー風のオタク科学者のようなチャーリー(ウディ・ハレルソン)の警告を受けることになる。
一方で、太陽ニュートリノの変異を観測した科学者たちは、その変異で地球のコアが過熱され、ついには地表が陥落してしまうことを予測する。
これは大統領に届けられ、世界の科学者たちが検証するが、防ぎようがないことがわかり、大衆には秘密で現代版の「ノアの箱舟」建設に乗り出す、といった筋立てだ。
『インディペンダンス・デイ』や『デイ・アフター・トゥモロー』のローランド・エメリッヒ監督である。
僕たち観客はともあれ、どんなディザスター映像を見せてくれるかだけが楽しみだ。まあ、細かいことはどうだってよろしい。
地震、地割れ、噴火、津波、洪水・・・もう世界中で大パニックである。
なにせ、三日で地球の底が抜けるのだから。
いちいち、その悲喜こもごものドラマを追うわけにはいかない。
とりあえず、ジャクソン家族だけに焦点をあてて、あとはみんな仲良く地球と運命を共にしてください、という割り切りのよさ。このあたりはさすがである。



『2012』では嬉しい話題があった。
あの洪水のシーンに日本人クリエイターの坂口亮(31歳)が参加しており、そのデジタル技術が評価されてアカデミー賞科学技術賞を受賞したのだ。
坂口亮は大学三年で中退してアメリカに渡り、デジタル・ドメイン社の門を叩き、日本の中学の教科書などももう一度取り寄せ独学する中で、あの流体力学を駆使したたった数秒間のクリエイティブな、かつて誰も表現できなかった洪水で都市が崩れ落ちるシーンを、見事に映像化したのである。
彼は『パイレーツ・オブ・カリビアン』の海のシーンも担当している。
たしかNHKの「クローズアップ現代」で彼のことを知ったのだが、まことに誇らしく頼もしい気がしたものだ。



同じような時期に見たのが、『アイ・ロボット』でなかなか虚無的でスピーディーな近未来社会を描いたアレックス・プロヤス監督が、ニコラス・ケイジを主人公(宇宙物理学者)に据えた『ノウイング』だ。
こちらも太陽の活動異常で地球は熱放射で全滅してしまうお話。
こちらはなにやら聖書の終末思想的な色彩が濃く、知的生命体が地球に警告を出しており、そのシグナルを受け取った少数の者だけが、ノアの箱舟ならぬ宇宙船で、異星に連れて行かれるという筋書きである。
一方は大地が三日で底抜けし、一方は太陽フレアで一瞬で焼き尽くされる。
ここでは人類の危機を救うスーパーマンなどは登場してくれないのである。
虚無といえば、果てしなく、虚無的な話ではある。
『2012』では人類の種を残すために「選民」だけが「船」に乗り、そのことになんだか「あみだくじ」で乗員を決めた方が良かったのかなどとつまらぬ民主主義談話があったりするのだが、まあほとんど全員が死んでしまうというのは、ある種絶対平等のすがすがしさのような感じもするのだ。



NASAの研究チームは、大真面目に近い将来に「太陽嵐」のせいで都市の電力網に障害が起こり、地球の地磁シールドに穴が開く可能性が高いという報告を出している。
最初の一年だけで、その被害は米国だけで一兆ドルから二兆ドルと見積もられている。
研究予算獲得のための「トンデモ仮説」かもしれないし、もしかしたらそれでもパニックを起こさないために控えめに発表したのかもしれない。
結局、明日何が起こるのかは、誰にもわからないのだ。
だから僕たちはこうした地球滅亡映画を寝転んで見ながら、あの筋書きはどうだ、あの部分のCGはいい出来だとか、子役はどちらの映画も可愛かったが、ヒロインはどちらももうひとつだったなとか、ジョン・キューザックはちょっと太りすぎだし、ニコラス・ケイジは禿げ過ぎだな、などとノンキなツッコミをしながら、娯楽映画を愉しんでいられるのである。


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8 コメント

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3Dだったら? (メビウス)
2010-04-22 20:57:29
kimion20002000さんこんばんわ♪TB有難うございました♪

この作品って粗を探せばそれこそたくさん出てきそうな内容ではありますけど、自分が破壊監督エメリッヒに求めてるものはストーリーよりも有り得ないと思わせる程のディザスター映像に尽きるので、2012年に本当に来るのでは?という懸念は追いとくとして、迫力ある破壊映像の数々にはお腹一杯になりましたね~。

でもこの作品、去年公開とかじゃなく今年公開とかになってたら、先ず間違いなく3D上映だったと思いますねwあの豪快過ぎる破壊映像は自分も3Dで堪能してみたかったと想像してしまいました。
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メビウスさん (kimion20002000)
2010-04-22 23:37:01
こんにちは。
そうですね、3Dでしょうね。
でも作品によっては、コンピュータ処理で元映像を3D処理できますから(作品としては擬似になってしまいますが)そういうものも出てくるかもしれません。
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地球オタク! (sakurai)
2010-04-23 08:42:02
っていうんでしょうか!!
すごいですね。
常々、すごいとは思ってましたが、そんなにお読みになってるんですか!
なんだかんだいいつつ、火山のどかーーんひとつ、大地震のさまを見せられると、人間などいかにちっぽけかがわかりますが、それでもなんとかあがく・・というのがいさぎわるさが人間らしくていいですよね。
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sakuraiさん (kimion20002000)
2010-04-23 10:23:19
こんにちは。
僕の周辺の、オタクたちに較べたら、まるでわかっていませんよ。
とりあえず、話をあわせるために、まあちょっとは興味もあって読んだりしているだけです。
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弊記事までTB&コメント有難うございました。 (オカピー)
2010-11-08 18:46:15
昨年観た「ブラインドネス」なんかもそうでしょうけど、昨今何故か終末思想的な作品が多いですね。
9・11、イラク戦争、サブプライム問題といった悲観的な要素が合わさって湧き上がったのでしょうかねえ。

>ジャクソン家族だけに焦点をあてて
純粋にサスペンスとして観た場合はこれが正論で、「ノウイング」みたいに途中で主人公が助からないと解ったらその後サスペンスなんかどこかへ吹っ飛んでしまう。
終末思想を楽しみたい人にはああいう絶望的な気分の作品の方が有難いのでしょうが、ミーハーの僕はとりあえずハラハラドキドキさせて貰えば良いので、映画としてはぐっと大味でも「2012」の方が“買い”です。前半だけですけど(笑)
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オカピーさん (kimion20002000)
2010-11-09 01:14:08
こんにちは。
まあ、2時間ぐらいの中に、地球の滅亡物語を詰め込むと言うのは、無理な話ですけどね(笑)。
金かかるけど、テレビドラマ全32話というところまで、引っ張って欲しいですけどね。
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初めまして (Hiro)
2010-11-21 23:20:41
TB有難うございました。
設定年を現実の数年先に設定している所が
これまでの塵芥のディザスター映画と違います。
世界規模でなくとも、当地では東海地震がやってこれば
M8規模の被害は予想されている訳で、
それが明日であっても可笑しくない...
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Hiroさん (kimion20002000)
2010-11-22 03:22:33
こんにちは。
ノストラダムス予言のときは、ろくな映画が製作されませんでしたが、マヤ予告のほうは、それなりに見ごたえがありました。
すぐそこの未来ですものねぇ。
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