昭和20年6月18日、沖縄では連日うだるような酷暑が続いていました。
この日、私は、鉄血勤皇隊の一員として戦闘に参加、
沖縄戦最後の激戦地摩文仁の自然洞窟-ガマ-の中にいました。
そこに南西諸島守備軍(第32軍)の地下司令部で、死傷者が狭い通路を埋め尽くし、
壕内暑気と悪臭に蒸れ返り、文字どおりの断末魔の様相を呈していました。
陸・海・空からの敵軍の激しい攻撃になす術もなく、
あまつさえ、食物や水はおろか医薬品もなく、
逃げ道も閉ざされたまま、ただ死を待つよりありませんでした。
「GAMA-月桃の花」のモチーフとなった「GAMA(ガマ)」は、
この悲惨な沖縄戦を象徴する鍾乳洞のことです。
また 「月桃」は、沖縄に自生する4月から盛夏にかけて、
白に紅色を帯びた可憐な花を咲かせる植物です。
ガマは、沖縄戦において、県民の避難壕としての役割を果たすとともに、
米軍の攻撃の標的ともなり、
また、日本軍のによる強奪や虐殺といった惨劇の舞台となりました。
この映画は、一人の母親をとおして沖縄戦を見つめ、
この悲惨な実相を映画化したばかりでなく、
戦争とは、平和とは、家庭とはといった
普遍的なテーマを私たちに投げかけ、深く問いかけています。
私は、昨年、沖縄戦終結の地、摩文仁の平和祈念公園内に、
国籍を問わず敵味方の区別も、軍人、非軍人の別もなく
沖縄戦での戦没者すべての名前を刻んだ記念碑「平和の礎」を建設しました。
これは、戦争を知らない世代が我が国の人口の半分を超え、
戦争の風化が叫ばれる中、沖縄の地から
世界の恒久平和を願う波を全国に発進したいがためです。
「GAMA-月桃の花」をご覧になる全国の多くの皆様には、
映画を通じて沖縄戦実相に触れられ、
改めて戦争に醜さと愚かさ、平和の尊さ、
そして家庭愛の深さを考える一つの契機としていただきたいと思います。
終わりに、「GAMA-月桃の花」の制作に当てられました関係の皆様の熱意と御苦労に、
心から敬意を表しますとともに、
この映画から、世界に訴える心が力強く発進されるよう心から期待申し上げ、
私のメッセージといたします。
平成8年9月
沖縄県知事 大 田 昌 秀
映画 「GAMA-月桃の花」パンフレットより
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