けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

自民党と民主党の政権公約の具体的読み比べ

2014-11-27 22:23:35 | 政治
先日のブログでは民主党のマニュフェストを取り上げたが、自民党も同様に「自民党重点政策2014」としてマニュフェスト相当の公約を発表した。今日はこの二つの比較をしてみたい。

まず、それぞれの公約は下記の場所で見ることができる。

自民党ホームページ2014年11月24日「自民党重点政策2014」(PDF版
民主党ホームページ2014年11月24日「政権政策Manifesuto」(PDF版


それぞれをパッと見た瞬間分かるのは、具体的政策部分(後半の文字部分)の記述量の分量の違いである。自民党の重点政策の方は約2万4千文字もの長さであり、一方の民主党の政策は約8千6百文字程度である。単純に3倍近い記述があることに驚かされ、実際に読んでみると「長い、長い・・・」と気が滅入ってしまう。そこで、政策の詳細は興味ある方に読んで頂ければということで、最初の部分に安倍政権のこれまでの2年間の成果を端的にまとめている。これに対して民主党はどうかと言えば、最初の前半部分では「如何に自民党政権では駄目だったか」に的を絞り、ここでは具体的な解決策は殆ど示していない。後半部分には具体的な記述もあるが、先日の私のツッコミのブログ「『民主党の重点政策MANIFESTO』へのツッコミ」にも書いたが、「自民党では駄目」と言いたいのは分かったが、「では何を具体的にするの?」という質問に対する答えとしては不十分であった。一方、民主党側は枝野幹事長が民主党のホームページで自民党の公約を下記の様に批判している。

民主党ホームページ2014年11月25日「自民党マニフェスト『無責任、中身ない』枝野幹事長が批判

ポイントを幾つか挙げれば、「安倍政権下では実質GDPが1.7%程度しか増加していないが、民主党政権下では5%も増加している」「自民党の公約は中身がない」「集団的自衛権と言う言葉を隠している」といったところである。

まず、ひとつめの実質GDPについてであるが、確かに民主党政権下では5%の実質GDP増加が確認できる。ただ、下記にGDPの推移が記されているのでそれを確認してみよう。

世界経済のネタ帳「GDPの推移

政権が交代した2009年の実質GDPの約489兆円から2012年の517兆円と確かに約5%増加している。一方の安倍政権では517兆円が2013年の525兆円であり1.7%程度である。ただ、このグラフの読み方は少し注意を要する。明らかに見て分かる通り、リーマンショックの起きた2008年よりも2009年の方がGDPは低下しており、リーマンショックの負の影響をすべて含んだのが自民党政権終焉の2009年のデータである。ただ一方、自民党の麻生政権下では経済対策を行い、更には「選挙目当てのばら撒き」と揶揄された現金の支給などもあり、ある程度のタイムラグを経て2010年ごろからその効果が見え始める。2008年のデータと2010年のデータは518兆と512兆と概ね一致し、一時的な落ち込みが回復していることが見て取れるので、アメリカをはじめとする諸外国のリーマンショックからの立ち直りを加味すれば、寧ろ2008年の518兆円を元々の日本のポテンシャルと見るべきかも知れない。リファレンスを518兆円、ないしは512兆円とすれば、2012年の民主党政権の終わりの517兆円は概ね横ばい、ないしはマイナス成長ということになる。一方、安倍政権の今年は消費税増税による短期的な落ち込み要因があり、今年の評価は微妙であるが予測では530兆円となっている(ただ、このグラフでは7-9月期の落ち込みを織り込んでいないだろうから微妙だが、2014年も1年を通せば若干の増加を予測している)。この様に消費税を増税してもこの増加傾向があることを考えれば、枝野氏の発言はあまりにご都合主義的な論理的な合理性に欠けた言い分と見ざるを得ない。

次に、「自民党の公約は中身がない」の部分を見てみよう。この主張の根拠は理解できなくもない。大体、答えが選挙前に分かっていれば、そんなこと、とっくの昔に実現しているはずだから、蕎麦屋の出前的な記述が多くなるのはその通りである。「何時何時までに議論して、早急に答えを出す」とか、「問題に対して適切に対処する」的な表現は、実効的にはゼロ回答に等しい。民主党のマニュフェストは酷かったが、自民党にも同様な傾向があるのは否定しない。

ただ、では自民党も民主党も同じかと言えば、それは私の言うところの「目糞、鼻糞、本当の糞」で、自民党の内容は「目糞、鼻糞」でパッとしないかも知れないが、民主党の内容は「本当の糞」並みである。目糞も鼻糞も汚いが、それを指先で弾いて飛ばす人がいても「おい、汚いなぁ、まったくもー」と言う程度で済むが、本当の大便を部屋にまき散らす奴がいたら「人間性を疑う」事態になる。その差は歴然としている。たとえて言えば、民主党のマニュフェストは「選挙になった!さあ、皆で有権者が喜びそうな提言をまとめよう!」と言って作ったようなものである。それに対し、自民党の公約は「選挙になった!さあ、皆が日頃から議論している内容をまとめて有権者に訴えよう!」という内容である。既に議論が始まっており、とても役に立ちそうな答えまではたどり着いておらず、概念的な説明しかできないが、それなりに細かいところまでブレークダウンされたところまでは書けるという内容になっている。全ての内容を比較することはできないが、例えば農林水産業に対する対策を、民主党のマニュフェストの記述毎に、それに相当する自民党の記述(厳密には対応していなくても、概ね共通点がある部分を併記)を探し出してまとめてみた。少々長いが色を付けて引用しているので、個別に比較をしてもらいたい。

【民主党の記述】●[民主]農林水産業の再生
【自民党の記述】○[自民]強い農林水産業を
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●[民主]米価の大幅下落に対応するため、農業者戸別所得補償制度を法制化するとともに、日豪EPAをにらみ、畜産・酪農所得補償制度の導入を検討します。
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○[自民]価格低下等による収入減少時のセーフティネットとして、収入保険制度の導入を検討します。燃油高騰が続いている施設園芸において、ヒートポンプ等の省エネ設備の導入や燃油価格が一定以上になると補填金を支払う「燃油価格高騰緊急対策」を着実に推進します。
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●[民主]6次産業化などによって農家所得の安定・向上、農村の活性化を図り、新規就農者を増やします。多面的機能を評価する声が高まっている都市農業も振興します。
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○[自民]平成26年産米の価格下落等に対して万全の対応を行うとともに、米の生産調整の見直しや飼料用米等の本作化を進め、一層の水田のフル活用を図ります。米の生産コストの低減、安定的な取引の拡大、輸出の加速化等により、農業者の所得増大に取り組みます。
○[自民]関係事業者が連携・結集して地域ぐるみで収益性の向上を図る畜産クラスター(高収益型畜産体制)の構築、国内飼料生産・利用の拡大等を進めることにより、生産基盤を強化し、畜産・酪農分野の競争力強化、成長産業化を実現します。
○[自民]農商工連携・地産地消・6次産業化を推進します。国内はもちろん、拡大する世界の食市場も取り込むことにより、2020年に6次産業の市場規模を10兆円(現状約2兆円)に拡大し、わが国農林水産業の成長産業化と農業・農村の所得倍増を目指します。
○[自民]「国別・品目別輸出戦略」に基づいてオールジャパンでの輸出拡大を着実に進め、2020年の農林水産物・食品の輸出額目標1兆円(現状5500億円)を達成した上で、更に大きく伸ば7していくことを目指します。
○[自民]各都道府県に新設された農地中間管理機構(農地集積バンク)をフル稼働させて、今後10年間で、全農地面積の8割を担い手に集積・集約化します。再生利用可能な耕作放棄地のフル活用を図るとともに、農地中間管理事業と併せて農業農村整備事業を推進します。
○[自民]経営のレベルアップ等につながる法人化を推進し、法人経営体数を2010年比約4倍の5万法人にします。青年等の新規就農・雇用就農を倍増(年間1万人から2万人に)し、世代間バランスがとれ、地域農業を維持・発展させるための取組みを強化します。
○[自民]農地の大区画化、汎用化、畑地かんがい等を加速化し、農業の生産性の向上、高付加価値化を図るため、農業農村整備事業を推進します。
○[自民]農林水産業の成長産業化を技術革新で先導するため、ロボットやコンピュータ技術等わが国が得意とする最先端技術を活用しつつ、農畜産物・食品の高付加価値化、生産体系における大規模化・省力化、ニーズに応じた業務用野菜等の品種開発等の研究開発を強化し、地域や担い手の所得増大に貢献します。

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●[民主]路網整備、森林施業集約化による国産材の利用促進を図ります。
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○[自民]施業集約化や路網整備等森林整備加速化・林業再生対策を進めるとともに、森林組合、林業事業体、自伐林家等多様な担い手を育成し、強い林業経営を確立します。
○[自民]CLTと呼ばれる新しい木材製品の普及加速化、木質バイオマスの利用促進、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会での木材利用等新たな木材需要の創出による国産材の利用の拡大により、林業の成長産業化を実現し、中山間地域の雇用と所得を増やし、山村の振興を図ります。

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●[民主]漁業者所得補償制度や省エネ・省コストな漁船導入支援などにより、漁業経営の安定化を図ります。
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○[自民]農山漁村における雇用の確保、地域のコミュニティ機能の維持、都市と農山漁村の共生対流を進め、農山漁村の所得の向上を図り、地域ににぎわいを取り戻します。
○[自民]住みよく美しい活力ある農山漁村を実現し、若者や高齢者が安心して生き生きと暮らしていけるようにするため、「農山漁村計画法(仮称)」の制定に向けた検討を進めます。また、「山村振興法」を延長し、支援の充実を図ります。
○[自民]「浜の活力再生プラン」の策定・実施を進め、持続的な漁船漁業や養殖業の展開、漁村地域の活性化を図ります。
○[自民]燃油価格の高騰等に左右されない力強い漁業経営の確立に向けて、収入安定対策・担い手対策、燃油高騰・省エネ対策を実行します。

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●[民主]外国人漁業規制法等の改正による罰則強化を通じ、徹底した取締りを行い、水産・海洋資源を守ります。
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○[自民]資源管理の推進、多面的機能の発揮対策、消費・輸出拡大等生産段階から販売段階までの総合的な施策を講じます。
○[自民]鯨類をはじめとする水産資源の持続的活用の方針を堅持し、商業捕鯨の再開を目指します。

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以下は自民党公約のみに記載があり、民主党には記載がなかったものである。

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○[自民]食料自給率及び食料自給力(農地・農業用水等の農業資源、農業技術、農業就業者等)を維持向上させます。
○[自民]人々の安全や農林業、生態系に深刻な被害を及ぼすシカ・イノシシ・サルの生息数等を今後10年間で半減させることを目指し、市町村に設置される鳥獣被害対策実施隊を中心とした取組みを推進します。
○[自民]家畜伝染病や病害虫の侵入・まん延防止を徹底し、安心できる営農環境を守ります。
○[自民]農業・農村が果たしている多面的機能の発揮を促進するため、法制化された「日本型直接支払い制度」を着実に推進します。その中で、中山間地域等直接支払い制度について次期対策の充実を図ります。
○[自民]間伐等の森林整備・保全による森林吸収源対策に積極的に取り組み、地球温暖化防止に貢献します。

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繰り返すが、民主党のマニュフェストに記載の内容は全て引用してある。農林水産関連の部分の100%同士の比較である。自民党の公約も詰めが甘いものが多く、結局、それを実現するにはどの様にアプローチするのか分かり難いものが多いが、しかし、それでもこれだけの分量の記述はその場の思い付きではなく、個別に何らかの議論をした形跡は窺える。核政策に対するその本気度の違いの差がそのまま表れていると言っていい。

例えば、農業に対する民主党お得意のアプローチはばら撒きであり、自助努力に基づく政策は少ない。しかし、金を与えてじり貧になった実績がモノを言い、民主党の政策では農家が消滅する歩みを少しだけ遅らせるだけである。しかし、自民党の基本理念は農家が一本立ちできるための政策を目指している。例えば、減反政策の見直しなどは、減反で金を渡して農地を休眠状態にするのではなく、飼料米の生産にシフトする形で「自分で稼げる」環境を作り出そうとしている。また、飼料価格等は先物取引や外国の気象変動などで価格の乱高下も多々あり、飼料の国内生産化とその効率化で安価で安定的な飼料の供給ができれば酪農農家へのアシストにもなる。バター価格の高騰などが話題になるが、その様な背景も酪農農家の採算割れと後継者不足である。さらに上記の政策が成功すれば、直接的に自給率の改善効果も期待できる政策である。勿論、日本での飼料米が現時点で価格競争に勝てないことは事実としてあるだろうが、現状の問題を根本的に解決しようという意気込みは見て取れる。乗数効果的に、ひとつの政策の恩恵が次の課題に連鎖的に有効に影響するところなどが期待でき、これらを株式会社化して高効率化を図るなどして、今後の展開を期待してみたくなる程度の内容は含まれている。

その他にも、最後の自民のみの政策には、シカ・イノシシ・サルなどの鳥獣被害対策であったり、森林西部を「森林吸収源対策」と位置付けたり、「日本型直接支払い制度」なるものにも言及している。私は日本型直接支払い制度というものを知らなかったが、下記の様な精度らしい。

くまにちコム「【ニュースとことん知り隊】「日本型直接支払い」って? 農業の多面的機能支える

このサイトの下の方に「農業の多面的機能の例」の図があるが、農地には「空気をきれいにする」「気温の調整をする」「山崩れや土砂崩れを防ぐ」「水をためて水不足や洪水を防ぐ」等の機能があり、単なる農家の保護だけではなく、これらの多機能性を意識した政策を取るというものである。少々大風呂敷を広げた感はあるが、これは日頃から議論している証拠ともいえる。民主党からは出て来得ない政策である。

以上、部分的な比較でしかないが、これだけ見ても内容の充実度は歴然としており、自民党の政策が満点ではないのは認めるが、民主党とは雲泥の差があることは否めない。

最後に「集団的自衛権隠し」について補足すれば、これは「言葉遊び」に他ならない。言葉として「集団的自衛権」を議論するより、個別の事象に対して現行憲法のもとでの自衛隊による対処の可否を議論するのが自民党にとっての本質であり、「かって、集団的自衛権とも呼ばれていた事象」であることを理由に政府にネガティブ・キャンペーンを仕掛けるのは「言葉遊び」である。何故なら、実際の事象に関しての結論は、大局においては与野党で大差がないのだから・・・。であれば、野党の「言葉遊び」に与党も「言葉遊び」で応える必然性はなく、「中身で勝負」とするのが筋である。政策から集団的自衛権の文言が消えたのはその様な背景であろう。

以上、色々と説明してきたが、野党は「イメージ戦略」で自民党を批判しているが、実際にはまやかしの批判であることは多い。有権者が誤解することを期待するのではなく、もう少し「中身で勝負」をしてもらいたいものである。

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