けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

福岡の殺害事件の再審開始決定から浮かび上がる問題点

2011-11-30 23:17:56 | 政治
今日、86年に福井で起きた女子中学生の殺害事件の再審開始決定が出た。

NHKのクローズアップ現代でもこの話題を扱っていたので見入ってしまった。その後もいろいろなニュースで扱われていたので、如何に無茶苦茶な裁判だったかは良くわかる。にもかかわらず、第一審で無罪判決が出た後の第二審以降、有罪判決となり刑が確定し、刑期を終えたあとも引き続き再審請求を続けてきていたという。

話を聞いていれば、問題点がどこにあり、どうすればよいかは明らかなようであるのに、実際にはその様な動きはない。政治家であれば、この様なニュースを聞いたら、即座に法改正なりの行動を起こして頂きたいと思う。少し受け売りながら話を整理して見ようと思う。

まず、この様な冤罪(まだ確定していませんが)事件が起きてしまう第1の原因は、「検察の不十分な証拠開示」に尽きる。警察及び検察は、国家権力を駆使して証拠を根こそぎ集めまくる。そこには強制力を伴う、強力な権限がある。一方、弁護側にはその様な権限はなく、自力で証拠を集めようとすれば費用もかかるし、誰かに情報提供を求める場合にも任意での協力を求めるしかない。ここに、極端な非対称が存在する。つまり、圧倒的に検察が優位な状態で裁判を戦うことになる。そこで、弁護側は検察側に対して証拠の開示を求める。検察は、裁判では自分に有利な証拠のみを提示し、不利な証拠は隠してしまう。厚生労働省の村木さんの例にも見られるように、その不利な証拠の中には、被告の無実を証明できる証拠すら含まれていることがある。しかし、その様な証拠が表に出てしまうと真犯人を捕まえることが出来ていない現状を非難されてしまうために、イマイチ疑わしいと思いながらも、都合の悪いところに目をつむって強行突破しようとする。私は、警察がその様な行動を取ることは十分予想ができるが、検察が何故その様な不十分な証拠で起訴してしまうのかが不思議で仕方がない。

では、この様な状況が現実的にある場合、それを覆す最後の砦は裁判所である。弁護側からの証拠開示要求に対し、私は素人ながら「何故、裁判所は証拠開示を命令しないのか?」と思ったのであるが、過去に証拠開示命令を出した裁判官はいたのだそうだ。その後、その命令の有効性を争う裁判が行われ、最高裁で「裁判所に、証拠開示を命令する権限はない」という判決が出て、判例を重視する日本ではそれ以降、開示命令が出にくい状況になってしまったそうである。つまり、ここに決定的な問題がある。裁判所に、証拠開示を命令する権限がない点である。せめて、裁判所が諸般の事情を考慮し、必要に応じて命令できれば全く問題ないのであるが、法的に命令する権限が無い以上、法律に基づく行動が求められる裁判所には何もすることができない。

そこで、次に誰もが思うのは「何故、証拠の開示が許されないのか?」という疑問である。クローズアップ現代にゲストで出ていた裁判官OB曰く、「開示される証拠には、捜査の詳細が含まれるので、もし、真犯人が別にいた場合、その情報の漏えいが真犯人の逃亡を助ける可能性があるから」というのが理由だそうだ。「えっ?」と驚いてしまう理由だが、百歩譲ってその主張が正しかったとしよう。それでも、素人でも気がつく疑問が湧いてくる。私もまさに「では、最高裁で刑が確定した以降であれば、それは理由にはならないよね?」と思ったのである。実は番組の中でも、その点はその裁判官OBも指摘していたのであるから、それは誰でも気がつくロジックである。もう少し言えば、最高裁で刑が確定した後も証拠を開示しない理由が「もし、真犯人が別にいた場合、その情報の漏えいが真犯人の逃亡を助ける可能性があるから」であるならば、「もし真犯人がいる場合、その存在を明らかにするには証拠の開示が必要であるはずなのに、開示を許さないのであれば真犯人が捕まらずに済むように幇助していることに結果的になる」という事実と明らかに矛盾する。

基本は「裁判中に全ての証拠を開示する義務を検察に負わせる」ことだと思うが、それが一足飛びに無理であるなら、最高裁の判決確定後、速やかに求めに応じて全ての証拠を開示する義務を負わせ、不都合な証拠を隠滅したら、その証拠を管理していた責任者と証拠隠滅の当事者を罰する法律を作って欲しい。

多分、このようなことをする検察・警察の方々は、あまりにも単純なことであるはずなのにことの本質を分かっていないのだろう。冤罪を生むということは、真犯人を野放しにしたままの状態を許すことに他ならない。福井での事件の場合には、警察で拘留中の元暴力団員に対し、今回の再審請求が認められた容疑者が犯人である旨の供述をする見返りに便宜を計り、さらにその元暴力団に虚偽の供述を求められた別の承認に対しても、「ここで供述してくれたら、別の事件で捕まっても見逃してやる」と言って供述を求めたそうだ。つまり、真犯人の逃亡をまさに手助けし、気が付けば時効が成立するだけの時間が経ってしまった。自分が自ら手を下して、真犯人の逃亡を助けたという事実を忘れないで欲しい。

ちなみに、今回の再審請求が認められた容疑者にはアリバイがあったそうである。ご両親に加え、兄弟夫婦と事件があった時間に一緒にいたそうである。ご家族としては、自分達が一番無実であること、冤罪であることを知っていながら、容疑者の家族という理由で証言能力を否定されてしまうことがどんなに辛かっただろうかは予想ができる。

失われた時間は戻らない。だからこそ、これ以降に同様なことが起きないような法改正を速やかに行なって欲しい。

←人気ブログランキング応援クリックよろしくお願いいます