知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~
映画『道頓堀川』(1982)の中で、
主人公の美大生の安岡邦彦(真田
広之)は、小料理屋「梅の木」の
ママであるまち子(松坂慶子)に
心を寄せる。
そして、まち子の面影を辿りなが
ら、スケッチブックに彼女の姿を
記憶を頼りに描画する。
だが、邦彦がスケッチブックに
描いていたまち子の顔は、その後、
まち子が邦彦と暮らすために、
パトロンである淀屋橋の建設会社
の老社長に手切れを申し入れた時
の顔だったのである。
見事な映像作品の表現トリック。
静かなる布石が、かなり早い段階
で本編には登場していたのである。
未知なる未来を予感したかのよう
な。
だが、愛し合う二人は、一つにな
り、共に暮らそうと決めた時から、
そうした未来は一切、全く予見で
きないものになってしまった。
先の見えない運命。
それは、まさに二人の幸せと隣り
合わせの絶望的な不幸がすぐそこ
にあったのだった。

それにしても昨夜19時からけさがた5時55分までの間の撞球は、
やたら入った。
映画『道頓堀川』(1982年)の舞台
となった道頓堀川沿い戎橋たもと
の喫茶店リバー。
40年後の2022年現在はこれ。
おぐらビル。
ロケ時の1982年には喫茶おぐら
だった。
これがザ・玉屋である。
作品中3軒の玉屋が出てくるが、
実はすべて松竹撮影所内のセット。
しかし、店内の造作や様子はウル
トラリアルだ。本物の玉屋にしか
見えない。深作組の大道具さん、
凄い。
私が1980年代に育った玉屋も、
もろにこんな感じの店だった。
ビリヤードキューの滑り止めの
チョークは実用消耗品だ。
使えばどんどん減るし、減らない
といけない。
上の画像は左列が新品、右に行く
程使っている状態。すぐに減る。
毎日練習したら一ヶ月もたない。
基本的にチョークはワンショット
ごとにタップに塗るので、ほんと
にすぐに無くなる。
チョークはあくまでも実用消耗品
だ。
最近のプール用のチョークの傾向
としては、ねっとりしすぎている
感が強い。
曲玉ならともかく、あまり良い事
は多くの面で少ない。
サラサラとしていながらもタップに
良く乗るが、一撞きでパッと粉に
なって散り落ちるチョークが良い。
ショットの時にスローモーション
で見ると黒色火薬のオールドリボ
ルバー発砲時の煙や日本刀の高級
上質打ち粉を刀にポンポンやった
時のように、煙幕が出るようにな
ってチョークが飛び散っている質
の物が良い。
その特性を持つチョークがショット
でのスピンの乗りも良く、かつ、
玉も台も汚れない。
ねっとりし過ぎるチョークは、
タップへのチョークの粘着残存性
にのみ開発の主軸を置いたもので
あり、決して、多角的に良い結果
は残さない。
総合的に冷徹に判断するに、サラッ
としていながらもタップへの乗り
が良く、ワンショットですべて飛
び落ちるようなチョークが質性と
しては良性を具備している。
チョークはスヌーカーやキャロム
のように毎回塗るのが基本なので、
一撞きで落ちてもいいのだし、ま
た落ちないとならない。
いつまでもタップに残っていて、
手玉も的玉も汚しまくり、台の
ラシャも塊のように汚すのは、玉
の適正な動きを妨げてスキッドを
多発させる。
テーブルは使用後にはブラシでラ
シャに散った見えないチョーク粉
末を掃き清め、チョークの痕跡も
ブラッシングで綺麗にする。
また、固く絞った濡れタオルを
ブラシの板に巻いてラシャを押す
ように拭いて行くのも、台持ちや
ビリヤード場の仕事のうちの一つ
だ。これも必須。車の洗車は当た
り前、というのと一緒。
ボール掃除磨きと共に必ずやる。
これは、台持ち者やビリヤード場
の義務でもあり、掃除が面倒だか
らねっとりチョーク使用禁止とい
うのは間違いだ。面倒がらずに掃
除をやるのはあまり前で当然の
助動詞シュッドだ。
ねっとりチョークが良くないのは、
玉と台を不必要に汚す事で、玉の
動きに不自然なスキッドやスロウ
の増殖をさせる現象を極力避ける
ために良くないと指摘するところ
だ。店員や台持ちのなまけの為に
ねっとりチョークが良くないと言
っているのではない。プレーの不
必要な重大な阻害要因となるから
良くないと言っているのである。
過去にあったチョーク程、一般物
でも質性が良い。
その「良い」とは、掃除が楽ちん
とかメンテに手抜きできるとか、
ショット毎にチョークを塗るのが
手間だとか、そうしたプレーの質
の向上とは逆の邪心の欲求を満た
す事ではない。
客観的に見て、物理的にプレーの
阻害要因を除去する質性を持ち、
プレーでは十二分に撞球者の能力
を発揮させてくれるチョークが
「良い」チョークなのである。
剣先からバットスリーブまでブラ
ジリアンローズウッドの一本物が
貫いている。
現代では、こうした作りのキュー
は殆ど無い。

ハンドル下のスリーブまでハギ中から一本の木。バットエンド樹脂
の内部構造を見るに、スリーブの
リングの中も芯としてそれが貫か
れている。
つまり、エンドキャップを被せ止
めてある最エンドまで剣先からの
ローズウッドが通っている。
スリーブの被せはローズとメイプル
とタネ板のステッチリングで構成
されているが、それの内部の芯は
ブラジリアンローズの一本物だ。
現代物では見られない構造。
打感は極めてソリッド。ぼやけない。
このキューを初めて10時間ぶっ
通しで使ったら、めちゃくゃ玉
が入った。
入って手玉はきちんと出る。
5ゲーム先取りが1セットで、
6セット対4セットで私の勝ち。
カキーンコキーンぴったんこ。
打球音は甲高い木琴音だ。
こりゃあ、いいぞ!
(鎌倉に引っ越して来た当日の
第一話の小林くん=森田健作風。
ちょうど50年〜51年前のドラマ
「俺はオトコだ!」の中での台詞)