担当授業のこととか,なんかそういった話題。

主に自分の身の回りのことと担当講義に関する話題。時々,寒いギャグ。

時間遅れのある微分方程式。

2014-11-09 23:54:01 | mathematics
解法については全くアイデアがないが,a を定数とする時間遅れのある微分方程式

dy/dx=y(x-a)

について前々から思っていたことがある。

三角関数はこの性質を持っているな,と。

例えば

sin(x) の導関数は cos(x) であり,

cos(x)=sin(x-π/2)

という関係をも満たす。したがって,y(x)=sin(x) は

dy/dx=y(x-π/2)

という微分方程式の解である。気になるのはこれ以外に解があるかという,いわば一意性に関する問題であるが,微妙な気もする。

c を定数として指数関数 y(x)=exp(cx) を考えてみると

dy/dx=cexp(cx)=cy(x)

であるから,c が正の数であって c=exp(-ca) なる実数 a が存在すれば,

cy(x)=exp(-ca)exp(cx)=exp(c(x-a))=y(x-a)

となる。つまり,これは dy/dx=y(x-a) の解である。

むむ,cexp(ca)=1 を満たす実数 a があるような正の数 c の条件とは一体何だろうか。

a=0 とすると c=1 ということになる。このときは時間遅れが無いのであまり興味がない。

例えば c=2 のときは 2exp(2a)=1,つまり exp(2a)=1/2 であるから,2a=-ln(2),つまり a=-(1/2)ln(2) と取ることができる。

ああ,そうか。

exp(ca)=1/c の両辺の自然対数を取ると ca=-ln(c) となり,これから a=-(1/c)ln(c)=(1/c)ln(1/c) という解が導けるのか。

ということは,逆に考えれば,a が関数 (1/c)ln(1/c) の値域に属していれば,a=(1/c)ln(1/c) を満たす実数 c を選び,y(x)=exp(cx) とおけば,この y は微分方程式 dy/dx=y(x-a) を満たすわけである。

では,a=π/2 のときは先ほどの y(x)=sin(x) 以外にも解があるということになるわけだな。

それと,自明な解,つまり y(x)≡0 も忘れてはいけないところであった。

少なくとも exp(cx) と sin(x) という1次独立な解が二つはあるわけだから,通常の1階定数係数常微分方程式とはまるで様子が違うのは確かなようだ。

かなり奥が深そうである。こういう微分方程式があることは大学院の授業で知って以来,ずっと気にかかってはいたのだが,その時は理解できなかったし,いまだに謎のままである。

仮に右辺を Taylor 展開したら・・・,ハハハ,1階の微分方程式じゃなくなっちゃうね♪


※ [2014/11/12 追記] 数年前に図書館で見つけた

内藤 敏機,日野 義之,原 惟行,宮崎 倫子著『タイムラグをもつ微分方程式―関数微分方程式入門』(牧野書店,2002年)

を久々に見てみたら,第1章に上で僕が考察したようなことが大体書かれていた。さらに,数値計算例(具体的には解のグラフ)をたくさん示し,x→∞で減衰したり,あるいは振動し続けるといった挙動の変化が現れるパラメータのしきい値まで紹介されていた。この手の微分方程式の入門書としてはたいへんよさそうな本である。フィードバックによるシステムの制御に興味があってこの微分方程式を勉強したいな,と思っているのだが,この本はとてもありがたい存在である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする